病気

驚いた....

2008年7月7日 晴れ
七夕の日です。とっても暑い!

さて、彼の国の首脳部は...オリンピック期間中のハンセン病患者入国を禁止しました....。

患者の入国禁止撤回を=北京五輪委、厚労省に要望−ハンセン病市民学会 7月7日16時6分配信 時事通信
魚拓

『北京五輪組織委員会が大会期間中にハンセン病患者らの入国を禁止した問題で、支援者や学識者らでつくるハンセン病市民学会(熊本市)などは7日、厚生労働省で会見し、舛添要一厚労相と組織委側に対し、文書で禁止措置の撤回を要望したことを明らかにした。
 同組織委は6月2日、五輪期間中の外国人の出入国に関する「法律指針」を公表。ハンセン病患者らの入国禁止を掲げた。
 同学会の神美知宏共同代表は「中国がオリンピックという場で、ハンセン病などへの間違った理解と偏見を世界に発信することは黙認できない。オリンピックが差別を植え付ける場になってはならない」と話した。』

ハンセン病に関してはwikipediaから...。

『ハンセン病(ハンセンびょう、Hansen's disease)とは、抗酸菌の一種であるらい菌 (Mycobacterium leprae) の末梢神経細胞内寄生によって引き起こされる感染症。病名は1873年にらい菌を発見したノルウェーのアルマウェル・ハンセン (Gerhard Henrik Armauer Hansen) に因む。以前はハンセン氏病とも呼ばれた。東洋医学では大風(麻風)、癘風とも呼ばれる。 らい菌の発見以前はハンセン病という概念自体が存在せず、ハンセン病に似た症状の皮膚病を広く癩病(らいびょう、leprosy)と総称していた。そのため、歴史的文献における癩病はハンセン病とは限らない。らい菌の発見以後は、癩病はハンセン病の同義語として使われるようになった。なお、日本では癩病は差別用語として忌避される。また、英語圏でも、leper(らい者)は、非常に悪い印象があり、注意が必要である。』

更に、感染に関しては....

『感染は未治療のらい菌保有者(特に菌を大量に排出するL型患者)の鼻汁や組織浸出液が感染源となり経鼻・経気道的におこる(飛沫感染説:ヌードマウスに菌のスプレーを与えた動物実験による:伝染は一瞬と考えられる)。ただし感染・発病率は非常に低く、ほとんどの感染が排菌中の患者との濃密な接触環境下に置かれた場合に起こるとされている。また、らい菌と接触する人の95%は自然の免疫で感染を防ぐことが出来る。 感染時期のほとんどは小児期である。大人から大人への感染発病も極めて例外的である。日本においては小児期以降の感染による発病は近年では認められていない。 また、ハンセン病治療薬の一つであるリファンピシンで治療された患者からは伝染性はないことは証明されており、適切な治療を行っていれば感染源になることはない。

つまり、患者さんとの厳格な隔離は必要でなく、ましてオリンピック期間中に入国を制限する等は、感染防止の面から考えてほぼ何も役に立たないといえます。日本も誤った認識に基づき、ついこの間まで強制的隔離を続け、重大な人権侵害を続けてきました。彼の国が、この過ちを繰り返さない様...祈るのみです。

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後頭部の腫瘤と血小板減少_診断治療編

2008年6月28日 雨のち曇り

昨日の症例の続きです。
患児は人工呼吸器を装着されたが、翌日には呼吸状態が改善し抜管できました。後頭部の腫瘤は、表面が紅く、やわらかいものでした。当時、オーベンであった小児科部長は『この腫瘤は恐らく血管腫で、血小板減少を伴っているのであればKassabach-Merritt症候群を合併しているのであろう』と推察。一日経過して、血小板は更に1万まで減少し、皮膚に出血斑が出現。腫瘤の皮膚生検よりさきに、ステロイドによる治療を優先。パルス量のメチルプレドニゾロンを使用し、一旦は血小板が10万程度まで上昇。

その間に、皮膚生検を施行していただき、結果は「毛細血管種」でした。ステロイドはプレドニゾロンで20mg/日程度まで減量し経過を観察しましたが、血小板は一進一退。入院すること2ヶ月、腫瘤の退縮傾向もみられず、感染を契機に血小板は一気に3,000に減少しました。

血小板の輸注を行い、当時はインターフェロンやIVRも発達していない時期でしたので、最後の手段として放射線治療を行っていただきました。表面に近い腫瘤ですので、電子線を用いて治療しました。

効果は歴然としており、一旦上昇した血小板は正常下限を割ることがありませんでした。ステロイドは漸減中止でき、腫瘤もみるみるうちに退縮しました。

放射線治療後、1ヶ月で退院し、その後経過フォローしましたが...腫瘤は跡形もみられない状態になり、血小板も低下することはありませんでした。

追記です。Kasabach-Merritt 症候群の実際に症例の紹介があります。(本日御紹介している文章のモトとなった方ではありません。)

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壊死性リンパ節炎

2008年6月13日 晴れ
蒸し暑い一日でした。

壊死性リンパ節炎は現在では組織球性壊死性リンパ節炎と呼ばれることが多い様です。1972年当時、福岡大学第1病理学教授であった菊池昌弘先生により報告されたとされています。その特徴は「比較的若い女性に多く、初め前駆症状として 扁桃腫大をともなう上気道症状が発現し、それとあい前後して主に側頚部の皮下リンパ節腫大と白血球減少をきたし、腫大リンパ節に壊死巣が存在し、組織球と大型のリンパ球が増殖しているが、好中球などの浸潤は見られないという特異な組織学的所見が見られる全身性の病気」とされます。

リンパ節腫脹はその中に、悪性リンパ腫やその他の悪性疾患の表現としてとらえらることがあり、その診断にはリンパ節生検が必要になることも多いといえます。

ココからは私の経験にもとずいて、作り上げたフィクションとなります。

数年前に経験した患者さん。

8歳男児 1週間前程から「首が痛い」と訴えていた。そのうちに、頚部にシコリができて受診。頚部にゴロゴロとしたリンパ節を触れ、圧痛は僅かにある様子。貧血はなく、肝脾腫はみられず、血液検査では白血球2,400/μlと白血球減少を認めるのみで、CRP 1.22と炎症所見も僅かであった。とりあえず、抗生剤を処方して経過を観察したが、リンパ節腫脹は変化なく、白血球も2,500/μlと減少が続いていた。

その数日後、38℃代の発熱があり再診。頚部の痛みが、やや強くなっており、相変わらず白血球数は2,300/μlと白血球減少がみられていた。肝由来酵素のGOT/GPTはそれぞれ30/46と明らかな上昇はみられず、LDHのみ350と軽度増加。フェリチンは120と増加なし。リンパ節生検も含め、入院して観察とした。この時、御両親には1.悪性リンパ腫、2.ウイルス感染にともなうもの、3.壊死性リンパ節炎などの可能性をお話ししリンパ節生検の必要性を納得していただいた。

入院後は、40℃に及ぶ高熱が持続。数日間続いた。この間も炎症所見は極軽度で上昇せず、また、抗生剤も使用していたが解熱しないことなどから、いわゆる細菌感染によるものではないことが示唆された。白血球は相変わらず3,000/μl以下を推移。頚部より、リンパ節生検を行いスタンプ標本を鏡検。血液の上級医師とともにのぞく。

モノクローナルなリンパ球増加はなさそうであった。所々に、細胞質の明るい貪食細胞(マクロファージ)がリンパ球の核と思われる部分を細胞質内に取り込んで貪食、破壊している像がみえる。弱拡大でみると、リンパ球の密集した部分と貪食細胞の明るい細胞質が...あたかも星空のようにみえる....。starry-sky appearanceって、何か聞いたことあるな....。バーキットリンパ腫??
病理の結果を待つことにする。

骨髄穿刺では、芽球の増加はみられず、貪食像も多くない...。術前に施行した胸腹部CTでは特に縦隔、腹腔にはリンパ節の腫大はみられない。

そのうちに、解熱しリンパ節の疼痛も軽快してきた。しかし、相変わらず白血球数は低下したまま...。食欲は今ひとつ....下血などはみられない。

病理の結果が数日後に返却されてきた。Histiocytic ncrotizing lymphnode adenitis- Kikuchi's disease: 組織球性壊死性リンパ節炎との診断。よかった...良性で....。

熱は下がったが、リンパ節の疼痛は持続、白血球も減少傾向にあることからステロイドによる治療を行い、退院とした。

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どうだろう...

2008年5月13日 晴れ
清々しい天候です。どこかにドライブでも行きたいくらいですが....重症を抱えるとそうもいきません。(悲)

さて、悲しいニュース。まずは、55歳でくも膜下出血にて亡くなられた女性、及び、その御遺族の方々に深甚なる弔意を表します。

記事は信濃毎日新聞から。

くも膜下出血見逃し女性死亡 佐久病院医師を書類送検
魚拓

『県厚生連佐久総合病院(佐久市臼田)で2004年10月、頭痛を訴え受診した佐久市岩村田、主婦小林美幸さん=当時(55)=がくも膜下出血で死亡し、夫の哲さん(59)夫が医療ミスがあったとして告訴していた問題で、南佐久署は13日、診察した同病院のF医師(29)=佐久市中込=を業務上過失致死の疑いで地検佐久支部に書類送検した。』

残念なことです。どのようなミスがあったのでしょうか??

『調べによると、深沢医師はくも膜下出血の初期段階を疑い、適切な検査と治療をしなければならなかったのに怠った過失により、05年1月12日、同病院で小林さんを死亡させた疑い。同日、告訴状を受理し、捜査をしていた。深沢医師は過失を認めているという。』

頭痛は普遍的な症状で、その中にはくも膜下出血の初期段階のようにほっておくと死亡に結びつく様な疾患も含まれます。特に、急激に発生した「いままで経験したことのないような」頭痛においては、原因精査のため検査を行うべきだと思われます。

『同署などによると、小林さんは04年10月23日、後頭部に急激な痛みを感じ、同病院の救急外来を受診。「肩凝りによる頭痛」と診断され帰宅したが、数時間後に意識不明になって同病院の集中治療室(ICU)に入院し、意識が戻らないまま死亡した。受診時に小林さんはくも膜下出血の恐れを伝えたが、深沢医師はCT(コンピューター断層撮影)検査などをしなかったという。深沢医師は研修2年目で、当日は土曜日だった。』

頭痛の患者さんに、すべて頭部CTを行う訳ではありません。危険な症状(急激に発症したもの、項部硬直を伴うものなど)を呈するものはするべきであろうと考えています。また、くも膜下出血の初期は、髄腔内に漏れる血液量が少なく、頭部CTでも診断できない症例も多くあります。診断するためには、頭部MRIを併用し、それでも診断できなければ腰椎穿刺して髄液中に血液が漏れていないか?を評価します。しかし、そうこうしているうちに、second attackが起きて助からない....。ということもあるのです。かなり、コワい病気です....くも膜下出血。

最初の時にCT撮ってれば、診断できたでしょうか??ギモンは残りますが、CTを撮っていれば...「診断が難しかったのだ....」と思えるのかもしれません。

『哲さんは「医師はくも膜下出血の症状をよく知らなかったようで憤りを感じる。病院側は示談を申し込んできたが断った。起訴されるか経過を見守りたい」と話した。』

憤りを感じるのは仕方がないでしょうね...ただ、この医師が起訴されて刑事事件となれば、その鬱憤は晴れるのでしょうか?どうでしょうね....。

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デング熱

2008年3月28日 晴れのち曇り
湿度が高く、ムシムシした一日でした。

さて、最近行けた学会での症例報告。輸入感染症としてのデング熱を聞きました。聞き慣れない病名ですが...どのような病気でしょうか?Wikipediaから....

『デング熱(デングねつ、dengue fever)は、デングウイルス(dengue virus)による感染症。ネッタイシマカ(Aedes aegypti)やヒトスジシマカ(Aedes albopictus)などの蚊によって媒介される。「テング熱」と記されることがあるが、これは誤りである。「天狗熱」は当て字である。
潜伏期間は4日から7日。
デング熱は、一過性の熱性疾患で、東南アジア、インド、中米、南太平洋などに広く分布する。近年の、熱帯・亜熱帯地域の都市部におけるアウトブレイクには、急激な都市化が関連している。
突然の発熱、頭痛、眼窩痛、筋肉痛、関節痛が現れる。食欲不振、腹痛、便秘を伴うこともある。発症後3~4日後より胸部から非特異性の発疹が出現し、四肢、顔面へ広がる。四肢にかゆみを伴うことが多い。こういった症状は通常3~7日程度で消失し、回復する。』

現在のところワクチンはない。予防は蚊に刺されるのを防ぐことが重要。ヒトスジシマカは、日中活動し、室内にもひそむ。』

要約すると、デングウィルスの感染により発症する疾患。ウィルスは蚊により媒介され、潜伏期は4〜7日。症状は発熱、頭痛、筋肉痛などで、発症後3〜4日より胸部から発疹が出現し四肢へと拡大する。通常は3から7日で回復し後遺症を残さない。ワクチンは現在のところ存在しない。ということであろうと思います。

ただし、重症の病態があり...「デング出血熱」と呼ばれます。

『デング出血熱(dengue hemorrhagic fever)は、デング熱とほぼ同様に発症するが、特に流行地の小児において、発熱後、下血や出血を主とする重篤な致死的病態を示す。血管の透過性亢進がその基本病態であり、高確率で胸水や腹水が現れ、肝臓の腫脹、補体の活性化、血小板等の減少などが起こり、出血が続くと血液量の不足からショック状態(デングショック症候群)に陥ることもある。
デングウイルスの型は1類から4類まであり、同じ型のデングウイルスには感染することはないが、異なる型のデングウイルスに再び感染した場合にデング出血熱になる可能性がある。』

コワい病態です。そして、このウィルスに対する抗ウィルス剤は開発されておらず、ワクチンもありません。出血熱が発症すれば、根本的治療のないまま、支持療法で診て行くしかありません。

そして、熱帯の都市部などでアウトブレイクが散見されます。温暖化で、熱帯の蚊が日本で生息できる様になれば、日本もその例外とはならないでしょう....。

さて、記事はCNNより....
デング熱死者54人に、ブラジル・リオデジャネイロ州
魚拓

『リオデジャネイロ──南米ブラジルのリオデジャネイロ州でデング熱が流行しており、今年に入ってからの死者が少なくとも54人に達したと、同州の保健当局が27日に発表した。

病院では114人が死亡しているが、デング熱と確認されたのが54人で、残る60人については現在調査中。そのため、デング熱による死者は、さらに増える恐れがある。

今年1月からの感染者はリオデジャネイロ州だけで4万3000人を超え、昨年1年間の感染者2万5107人の倍近くになっている。』

まさにアウトブレイクです。根本的治療法のない感染症は恐ろしい....。

『死者のうち31人は、リオデジャネイロ市で発生した。また、約半数が13歳未満の子供だった。』

都市部での大流行ですね....。

『デング熱はマラリアと同様、蚊が媒介する感染症。厚生労働省検疫所によると、デング熱を媒介するネッタイシマカやヒトスジシマカなどは、空き缶にたまった水などでも繁殖するため、都会での流行も多いという。しかし、治療や対症療法だけで特効薬はなく、予防薬もないため、蚊に刺されないようにすることが唯一の予防法だという。』

蚊から刺されることを予防するのには、蚊の繁殖を抑えることも含まれます。なかなか、難しいでしょうが....。抗生物質が発明されて、感染症はずいぶん治る病気になってきました。しかし、一部の感染症は、まだまだ不治の病となっています。

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腎生検の適応

本日2稿目です。

横浜であった、日本小児腎臓病学会。休みがとれず行けませんでした。その抄録をながめていると...慢性腎炎の中の一つの病態であるIgA腎症について興味深い発表がありました。まずは、IgA腎症についてですが...

IgA腎症は慢性糸球体腎炎の病態の一つで、日本人においては慢性腎炎の約40%を占めるとされています。従来、予後良好の疾患とされてきましたが、約20年の観察で、実に約40%が末期腎不全に至り、透析導入や腎移植等の腎代替療法が必要となります。その診断は、腎生検という腎臓の組織を一部採取して、顕微鏡で観察する検査にて、特徴的なメサンギウムへのIgA沈着が観察されることによりなされます。症状は、血尿、蛋白尿で、初期には自覚症状はないため、学校検尿や職場の検尿等でチャンス血尿、チャンス蛋白尿として見つけられることがあります。また、上気道感染時などに、肉眼的血尿発作をおこすことがあり、これを契機に見つかることもあります。悪化が予測される因子は、持続的な高度の蛋白尿、高血圧、初診時において腎機能障害がみられることなどがあげあれますが、そのような場合に腎生検を行い診断の確定、重症度の確定を行い、治療の要否が決められることが多い様です。腎生検の適応となる基準は各施設でまちまちですが、一般的には持続的蛋白尿がその基準となることが多い様です。治療に関しては、ステロイドや抗血小板剤、抗凝固剤、免疫抑制剤などを組み合わせて行うカクテル療法や扁桃摘出術を組み合わせる施設もあります。

そして、腎生検という検査ですが....

腎生検は、腎臓の組織を実際に採取して鏡検することにより、腎疾患の確定、腎疾患の重症度確定、さらには予後の推定を行う腎疾患診療のためにはなくてはならない検査です。ただし、腎臓は体全体の約1/5程度が流れる血流の豊富な臓器で、組織を採取する場合に出血する事故が起こりえる臓器でもあります。以前は、silverman針という生検針で腎臓の位置を画像等で特定せず(あるいはX線造影下に)に生検を行っていましたが、現在では超音波ガイド下にバイオプティーガンという自動的に必要な組織を採取する生検針を使用して行うことが多くなってきました。出血事故の可能性の少ない場所を狙って、生検することができる様になったため、以前にくらべ格段に安全性は高まってきています。しかし、100%の安全はなく、100例から1000例に1例程の頻度で輸血が必要となる様な出血事故が起きる可能性があります。このリスクと、生検の必要性を天秤にかけてやはり利益が大きいであろうという場合に生検を勧めることになります。

抄録を読んでいて生検の適応の基準を見直す必要があるだろうと感じたのは....以下にあげる発表です。

軽度蛋白尿を呈するIgA腎症の予後

【目的】成人においてlgA臀症は軽度蛋白尿しか呈さずとも病理組織が必ずしも軽症ではないことが報告されている。小児でも腎生検の適応を含め議論され始めており、自験例での検討を報告する。
【対象と方法】1993年4月から2003年3月までの間に腎生検によりlgA腎症と確定され、生検後3年以上経過を観察し得た38例のうち、初回生検までに尿中蛋白/クレアチニン比(U-P/Cre)がO.5未満であった19例(男7例、女12例)につき後方視的に検討した。症例はU-P/CreがO.3未満のA群とO.3以上0.5未満のB群に分け、病理組織および治療とその予後について検討した。
【結果】A群は12例のうちminor abnormality 2例、 focal mesangial proliferation10例であった。 B群は7例のうちminor abnormality 1例、 focal mesangial proliferation 4例、diffuse mesangial proliferation 2例であった。半月体はA群1例B群3例、癒着はA群7例B群5例に認めた。治療は当時の考え方もあって多岐に渡り、ステロイドパルス療法やウロキナーゼパルス療法、免疫抑制剤を含むカクテル療法、ジピリダモール単独かACEIとの併用療法などがあったが、A群では怠薬によりnephrotic nephriticとなった1例を除き11例で蛋白尿が陰性化した。B群ではステロイド未使用の2例で蛋白尿が陰性化しなかった。
【考察】小児のlgA腎症でも成人と同様に軽度蛋白尿しか認めない症例に病理組織上予後の不良な例が含まれることが示唆された。治療としてはU-P/Creが0.3未満であればジピリダモールとACEIの併用、0.3以上O.5未満でactivityのより強いものにはステロイドを考慮する必要があると思われた。

示唆に富む演題ですね。軽度蛋白尿でもしっかり組織を確かめるべきであろうと...。今後の対応を少し変えて行こうと思います。

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天秤にかける

2007年3月25日 晴れ
医師は、目の前の患者さんに対して、治療を考える時に望ましい作用(効用)と望ましくない作用(副作用)を頭の中の天秤にかけて判断をしていきます。これは、クスリを処方する場合もそうですが、何らかの手術を行い場合もそうです。そして、現在は大規模な試験により得られるEvidenceにより、「この疾患に、この治療を施すことによって何%の確率で治癒します」といったデータが論じられ、治療の導入に役立っています。
また、治療の導入にはその他の因子も大きく影響します。その疾患で、死に至る可能性が非常に高いものであれば何とかして救ってほしいし、医師も何とかしたいと思うのではないでしょうか...。

さて、話は変わります。第1次大戦のころ、1918年、アメリカのシカゴより始まったスペイン風邪は実に感染者6億人、死者4000~5000万人という未曾有の大惨事となりました。このスペイン風邪ですが、高病原性鳥インフルエンザから人間への感染力を獲得した新型インフルエンザの一種であったと推定されています。インフルエンザは周期的に大きなウィルスの変異を来たし、人間への感染力を獲得すると、大流行(パンデミック)がおこり多数の人々が亡くなるといったことを起こすウィルスです。現在、アジアの各地(日本も含めて)で高病原性鳥インフルエンザが流行し、鳥→ヒトへの感染が報告されていますが、これが一旦ヒト→ヒトへの感染が確立されれば多くの死者を出すパンデミックとなることが予想されます。
鳥インフルエンザの鳥→ヒト感染では、約50%以上の死亡率とされていますが、ヒト→ヒト感染が確立されるまでに死亡率は若干下がるであろうとは予測されている様です。しかし、通常のインフルエンザとは異なり、死亡率は数%以上と非常に危険なものになるであろうと考えられています。
スペイン風邪の場合、その死因は「電撃性肺炎」「嗜眠性脳炎」と当時の言葉で表現される様な、「急速に進行し、呼吸不全を伴うような重症肺炎」「急性脳症、脳炎」といった状態が多くを占めていたようです。医療の世界では「サイトカインストーム」と呼ばれる状態が起こるとされている様です。そして、発症した場合は現在の医療をもってしても救命は難しい病態であるのではないかと....。

我々にできるのは、予防と感染拡大の阻止ではないかとも思います。新型インフルエンザに対するワクチンは、既に来シーズンからは使用できるかもしれません。しかし、その供給量は、はっきりしません。全ての方々にということは不可能であると思います。実際に、流行が起こった場合に、感染拡大を予防するため各都道府県はタミフルを備蓄していますが...ここにきて、厚生労働省はじめマスコミ各社のタミフルバッシングです。

10歳から19歳までの児には処方を控えるようにとの通達ですが...新型が流行した場合、予防のために服用するのも控えるのでしょうか???私なら、自分の子供には飲ませます。作用と副作用、天秤にかけてみると明らかに作用の方が重いと思えるからです。

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レインマンとサヴァン症候群

2007年3月24日 雨
今日は、ちょっと暇があって自宅でビデオを...ちょっと古い映画「レインマン」(ダスティンホフマン、トムクルーズ)を観ていました。自閉症の兄(ダスティンホフマン)は何とか会話で相手に意思を伝えることができますが、とても一人では社会生活ができるような状態ではありません。しかし、こと記憶力、計算力等については天才的な能力を持っています。ラスベガスのカジノでは、カードを数え次に来るカードを予想し大もうけ。

自閉症をもっている方々のうち、一部の能力が著しく発達した方々がおり、その方々を「サヴァン症候群」と呼んでいるようです。

Wikipediaより。
『サヴァン症候群(-しょうこうぐん、savant(仏語で「賢人」の意) syndrome)とは、知的障害を伴う自閉症のうち、ごく特定の分野に限って、常人には及びもつかない能力を発揮する者を指す。サヴァン症候群の共通点として、知的障害と共に異常といえるほどの驚異的な記憶力・表現力を持つことが挙げられる。彼らには「忘れる能力」が無いとされ、かなり昔から知られてはいたがその原因は未だ論議されており、正確には掴めていない。現在では脳の器質因にその原因を求める論が有力だが、自閉症者が持つ特異な認知をその原因に求める説もまた有力である。』

この「レインマン」という映画は実話をもとにして作られたということを聞いたことがあります。そのモデルとなった方には、脳の先天的な奇形(脳梁欠損などの重篤なもの)があり、通常では発達遅滞が著明に表れると予想される患者さんです。しかし、記憶等の一部の能力で常人には及びもつかないものをもっている。あらためて、人間というのはスゴいチカラを秘めているんだなと感じ入りました。

因に、山下清やモーツァルトなども「サヴァン症候群」ではないか?とされている様です。

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死を選択する権利...

2007年3月20日 晴れ
我が国では、救命のために装着された人工呼吸器を外すことは、それを外したものに殺人罪として立件されるリスクを背負わせることになります。そして、世界をみわたすと、一部の国では「尊厳死」が認められているようです。「尊厳死」については、国内でもこれまでも議論されてはきているようですが、容認するグループと、絶対に容認できないグループがあり、なかなか一定した落としどころがないといった様相です。

さて、ALS: Amyotrophic lateral sclerosis, 筋萎縮性側索硬化症は筋肉を動かす指令を送る運動ニューロンという脊髄に分布する神経細胞が徐々に死滅し、自分の意志で筋肉を動かすことができなくなる病気です。発症や進行の仕方により病型が分かれますが、典型的には下肢より筋力低下が進行し、最終的には呼吸筋がおかされ人工呼吸がないと生命を維持できない状態となります。その一方で、知能や、精神、感覚に関しては、脳自体がおかされるわけではないので、最後まで維持され患者さんに大きな苦痛を与えます。
眼筋を含めた全随意筋が麻痺する状態を全随意筋麻痺(totally locked-in state = TLS)とも呼ばれていますが、まさしく死よりも辛い状態ではないのか?と感じます。

共同通信の記事

『2001年秋、神経内科外来の一室。中村久志(なかむら・ひさし)さん(仮名)は、病気が進行し、ほとんど動かせなくなった大柄な体をベッドに横たえ、思い詰めた顔で荻野医師に切り出した。首にあけた穴から人工呼吸器のチューブが伸びていた。
 「今からでも呼吸器を外したい」
 バス運転手だった久志さんを異変が襲ったのは前年、36歳の時。息苦しさが募り、別の大学病院で01年春に筋委縮性側索硬化症(ALS)と診断され、すぐに呼吸器をつけた。「つければ生きられる」と説明されたからだ。』

ALSは患者さんにも、そして、それを診療する医療者にも残酷な選択を突きつけます。人工呼吸を行うか?それとも死を選択するか?生命をながらえたとしても、徐々に進行する麻痺は、患者さんを脳の中に閉じ込めてしまうこともあります。

『荻野医師は何度も言い聞かせた。不自由な体でも前向きに生きる患者はたくさんいること。呼吸器を外せば外した人が殺人罪に問われかねないこと。「病気を嘆くより、生きることを考えよう」
 自宅で泰子さんの介護を受け、3カ月おきにショートステイ(短期入院)する生活が落ち着くと、久志さんは気力を取り戻した。パソコンを口で操作して友人とメールを交換。泰子さんらと温泉旅行にも行った。
 しかし、04年春には指も口もまったく動かなくなり、パソコンの楽しみも奪われた。「死にたい。呼吸器を外して」。残された目の動きで文字盤の文字を示し、再び訴えるようになった。』

現在では、自宅でもある程度までは管理できるようになってきています。しかし、時間ごとの吸引や、体位変換、その他諸々...介護力は必要です。パソコンはある程度までは使える様です。

『しかし、04年春には指も口もまったく動かなくなり、パソコンの楽しみも奪われた。「死にたい。呼吸器を外して」。残された目の動きで文字盤の文字を示し、再び訴えるようになった。
 泰子さんは診察のたび、荻野医師に手紙を渡した。「『おふくろ、もう限界だよ』と涙をぽろぽろ流します。私が連れていくしかないのでしょうか」。文面は深刻さを増していた。』

徐々に進行する病態。知能や感覚は保たれるだけに、辛いと思います。周りの方々も苦しい。特に介護する方は辛い...と思います。

『8月26日夜。泰子さんは自宅で久志さんの呼吸器を止め、包丁で自分の手首を切った。翌朝、荻野医師の携帯電話が鳴った。当直医からの緊急連絡。「久志さんが亡くなりました」
 「何で!」。全身の力が抜けた。自分にも3人の娘がいる。母が子の命を絶つなんて。「お母さんにやらせてしまった」。一命を取り留めた泰子さんは7日後、殺人容疑で逮捕された。』

日本には「尊厳死」という概念が法律上ありません。このような、治療法もない徐々に進行して閉じ込められてしまう疾患で、本人が「死」を希望しても、それを幇助するのは「殺人罪」としてのリスクを負うことになります。人工呼吸器で生きている患者さんは、まぎれもなく生きています。でも、その生命の質が非常に劣悪で堪え難いものであったならばどうでしょうか?

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因果関係?

2006年10月11日 晴れ
秋晴れが続いています。少し、空気は乾燥気味です。

さて、医療訴訟の関連の記事です。ソースは毎日新聞。
川口総合病院医療ミス訴訟:6800万円支払いで和解 /埼玉

『◇原告側「全面的に認められた」
 川口市の済生会川口総合病院で採血時、誤って注射針で右腕の神経を傷つけられ、後遺症が残ったなどとして、東京都内の元派遣社員の女性(31)が同病院を経営する「社会福祉法人恩賜財団済生会」などを相手取った損害賠償訴訟(請求額約7500万円)が10日、東京地裁(佐久間邦夫裁判長)であり、病院側が女性に6800万円を支払うことで和解した。女性の親族は「医療ミスが全面的に認められた」と和解を評価している。
 訴状などによると、女性は99年7月、交通事故のけがの治療で同病院に入院。採血の直後に、しびれや激痛で右腕が動かせなくなった。医師らは「痛みは気のせい」などと無理やり右腕を動かすなどしたが、約2カ月後、別の病院で関節が硬直する「右上肢反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)」と診断された。女性は現在も後遺症に苦しみ、仕事につけないでいるという。
 和解後、会見した女性の親族は「RSDは国の難病に指定されてないことや、後遺障害の認定基準が実態に合っていないなどの問題があり、解決に時間がかかった」と話した。同病院は「当院の採血に過失はないものと考えるが、患者さんにも過失がないことは明らかで、非常にお気の毒であると考えている」とコメントした。』

本当にお気の毒な患者さんです。後遺症がこれから少しづつでも軽快されていくことをのぞみます。
また、「医療ミス」という表現は問題があるのではないか?と考えます。

RSDは非常に診断の難しい病態であると考えます。
『4. 複合性局所疼痛症候群(CRPS)
 骨折、捻挫、打撲などによる組織損傷をきっかけとして、痛覚過敏、灼熱痛、浮腫、皮膚の変色と皮膚温の変化及び発汗異常などの症状を呈する難治性の慢性疼痛症候群。タイプ1と2があり、それぞれ反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)、カウザルギーとも呼ばれる。タイプ1は神経損傷を伴わないのに対し、タイプ2では明らかな神経損傷を伴う。年齢・性別に関わらず発症するが、特に若年女性に多い。』(日本臓器HPより)

専門家ではありませんので...詳しくはありませんが...痛覚を伝える神経(感覚神経)と交感神経(自律神経の一つで血管の収縮に関与する)が異常なつながりをもってしまい、外傷により一定期間痛みを感じて治癒後は痛みと組織の血管収縮が治まってしまうというところが、長期にわたり痛み及び血管収縮が続くためその患部の萎縮まで発展する病態であると思われます。
この患者さんの場合、交通事故で入院されていたとのことですが、採血後に異常な痛みを感じていること等から採血との因果関係を認めたということだと思います。

しかし、この病態はいつ何時も起こりうるものです。採血しかり、交通事故により骨折や打撲でも...結果が重大なだけに何らかの救済が必要ですが、この患者さんが「交通事故の打撲により起こった」と判断されていれば、救済されていなかったことになります。

「医師らは「痛みは気のせい」などと無理やり右腕を動かすなどしたが、」との部分が本当であれば、医療側にも反省すべき点はあるかもしれませんが...救済のための訴訟、そして和解であれば...別な手段で行うべきであると考えます。→無過失補償制度など....
そうすれば、患者さん、そして、医療側双方とも非常に辛い法廷での闘争を経ることはなかったのではないか?と思います。

現実の世界には、「過失の存在しない」つまり誰にも責任を押し付けることのできない事故があります。そして、日本では残念ながら、そのような災禍を被った方々に充分な補償をしてあげれる制度は今のところ存在しません。

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副?作用

2006年10月5日 雨
何だかわからない、(注1)HPS(hemophagocytic syndrome:血球貪食症候群)を伴いやすいウィルス感染症が流行している様です。ここ最近で同様な患者さんが2例ほど入院しています。幸いにして、経過は良好です。

(注1)ウィルス感染症による同病をVAHS: virus associated hemophagocytic syndromeウイルス関連血球貪食症候群とも呼ぶ。

さて、薬は毒より産まれるもので、その扱いによっては副作用に苦しむことがあります。医師は「望む」作用と、副作用とのバランスをとりながら治療を進めます。そして、どんな薬にも副作用はあり、全く副作用のない薬はありません。
また、副作用と行っても普遍的にも望ましい「副作用」というものもあり得ます。関節リウマチ:RAで通常持続的に使用されるNsAIDs:非ステロイド系抗炎症薬(いわゆる鎮痛解熱剤;痛み止め)では、アルツハイマー型認知症に発症を予防する副?作用があるのでは?ともいわれています。

今日の記事では、フルバスタチンという高脂血症治療剤(コレステロールの薬といったほうがいいかもしれません)が、脳梗塞後の記憶障害に対して効くのでは?とのことです。ラットでの実験レベルでのはなしですが.....

脳梗塞の記憶障害に 高脂血症治療薬有効 阪大大学院チーム解明(産經新聞)

『高脂血症の治療薬として使用されているフルバスタチンに、脳梗塞(こうそく)に伴う記憶障害の症状を緩和させる働きがあることを、大阪大大学院医学系研究科の森下竜一教授(臨床遺伝子治療学)らのチームが解明した。ラットを使った実験では、脳の血管や神経の回復も確認された。日本人の死因の上位を占める脳梗塞の画期的な治療薬となる可能性が出てきた。
 森下教授らは脳梗塞の患者と同じ症状で実験するため、人工的に脳梗塞の状態にしたラットにフルバスタチンを3カ月間投与。その後、避難台を設置した水槽で泳がせ、避難台の場所を覚えさせる実験を実施した。
 避難台に到達するスピードを計測したところ、フルバスタチンを投与したラットは4日間で到達時間を約15秒短縮したが、投与しなかったラットはほとんど短縮できず、投与したラットが避難台の場所を記憶するなど、学習能力を回復していることが分かった。
 また、2種類のラットの脳を摘出して調べたところ、フルバスタチンを投与したラットは、脳梗塞で減少した脳の血管の数が正常に近い状態に戻ったほか、脳神経も再構築されたという。
 フルバスタチンは悪玉コレステロール値を下げる薬として広く使用されているが、森下教授らはその抗酸化作用の強さに注目。森下教授は「実用化までさらに臨床実験を進める必要はあるが、脳梗塞に有効な治療薬となるだろう。認知症の改善効果も期待される」と話している。6〜7日に広島市で開かれる「第25回日本認知症学会学術集会」で、今回の研究結果を紹介する。』

これで、フルバスタチンは売れ筋となるのでしょうか??

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ネフローゼ症候群_疾患分類

2006年9月29日 晴れ
清々しい天候が続いています。

しばらく、お休みしていたネフローゼ症候群の記事ですが、今日から再開してみたいと思います。腎臓病の分類はいくつかのカテゴリーがあります。一つは組織の分類です。これは、腎臓の一部を採ってきて顕微鏡でのぞいて画像で診断するものです。腎臓の一部を採る方法は、腎生検といって現在では腎臓病の治療になくてはならない診断法となっています。
また、薬の効き具合から分類する方法もあります。発症する時期により分類する方法、腎臓自体に病気のもとがあるのか?体の方に問題があるのかなども分類する方法になります。以上の方法を用いて、小児のネフローゼも分類されてきました。

大きく分けて、小児期に発症するネフローゼ症候群は1.特発性(特発性とは体の方に原因となるような病気が見当たらず、ネフローゼ症候群が起こってくるもの。)、2.症候性(体の方に原因となる病気があるもの)、3.先天性(生後3ヶ月以内に発症するもの)などに分類されます。
小児期では、1.特発性が約90%を占めています。2.症候性はアレルギー性紫斑病(Schonlein-Henoch紫斑病)や全身性エリテマトーデスに伴う腎障害でネフローゼに至ったものが多く、それぞれ紫斑病性腎炎、ループス腎炎と呼ばれ約10%を占めます。3.先天性ネフローゼ症候群は非常に稀な疾患で、多くのものがフィンランド型と呼ばれる組織型を示します。

そして、一番多い特発性ネフローゼ症候群は組織によって、表のような分布を示します。

Classification

小児の中で一番多いのは、「微少変化群」で約83%を占めていますね。これは、光学顕微鏡(つまり通常の顕微鏡です)でみると、腎臓の組織の中にはほとんど変化を見いだせないということです。ただ、変化が全くないわけではなく、電子顕微鏡というもって小さな部分まで見える顕微鏡を使用すると、糸球体の尿腔側にある上皮細胞の足突起が癒合(くっついている)しているように見えることがあります。

薬に対する反応性で分類するものは、ステロイド感受性、ステロイド抵抗性などがあります。(もっと詳しく、頻回再発型やステロイド依存型などと分類することができますが、それはまた今度ということにします。)ステロイド感受性というものは、ネフローゼ症候群に対してプレドニゾロンという副腎皮質ステロイドという薬を2mg/kg/日で連日投与して4週間以内に寛解(尿蛋白が消えること)するものを指すとされています。

小児のネフローゼ症候群のうち90%はステロイド感受性とされています。そして、その組織は微少変化群が大半を占めるとされています。さらに、微少変化群でステロイドの効きがよいネフローゼは再発に苦しむことはありますが、年齢が上がるにつれ自然に再発も少なくなり、腎不全になって透析をしなければいけないということはほとんどありません。

今日はここまでとします。次回は微少変化型ネフローゼについてまとめたいと思います。

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イレッサという薬

2006年9月27日 晴れ
清々しい日が続いています。今日はこれから転院してくる予定の乳児に会うため、ある病院に行ってきました。重症の血友病Aで生後数日で頭蓋内出血し、生命の危険がありました。いまはずいぶんと落ち着かれていて、お家に帰るための最終チェックのため転院してくる予定です。

さて、抗がん剤の一つであるイレッサ(ゲフィニチブ)についての記事が目に止まりました。実は、私の叔母が肺がん(腺がん)で亡くなられました。叔母は、約6年前にレントゲンでの異常陰影から肺がんと診断され、肺葉切除を受けました。病理組織の検索で、がんは一部血管などに浸潤しており、予後は余り期待できないであろうとのことでした。しばらくして、肺に再発を認め、化学療法が始まりました。途中からこのイレッサを使用した様ですが、これが著しく効いて、肺の再発の部分は(レントゲン上)一度はきれいな状態にまで治りました。

結局は、その他の全身に転移が認められるようになり、それが原因で亡くなられました。肺の腺がんは化学療法(つまり抗がん剤)、放射線治療も効きにくく大変ながんの一種です。それに対して、明らかな効果をみせたイレッサは叔母にとって、まさに「救世主がごとき」薬であったのではないかと考えます。

イレッサの副作用発症率、他の抗がん剤に比べ3倍に(読売新聞)

『 肺がん治療薬イレッサ(一般名ゲフィチニブ)の副作用とみられる重い肺障害の発症率は、他の抗がん剤を使った患者に比べ約3倍に高まることが、イレッサを販売するアストラゼネカ社(本社・大阪市)が国内で実施した大規模な調査でわかった。
 今回の調査は2003年11月から06年2月まで行われ、全国の肺がん患者4473人を登録。イレッサの代表的な副作用とされる、急性肺障害と間質性肺炎の発症率などを調べた。
 その結果、イレッサを使用し3か月以内に発症したのは4%で、他の抗がん剤を使用した場合は2・1%だった。
 喫煙歴があるなど重い肺障害を発症しやすい人はイレッサの治療から外されることが多いため、こうした対象患者の違いを考慮に入れると、イレッサは他の抗がん剤に比べ、発症の危険性が3・2倍に高まることが判明した。イレッサは、投薬から1か月以内の発症率が高いこともわかった。』

この記事だけをみると、イレッサは副作用が強く、恐ろしい薬としか一般の方々には理解されないでしょう。全てとはいいませんが、叔母のように非常に優れた効果を発揮する可能性があるということも、誌上で明らかにしていただきたいと思います。

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修学旅行での災難...

2006年9月23日 晴れ
清々しい天候でした。明日が、地域の輪番となっており、今日は午前中に入院患者さんの回診。その後は、少し足を伸ばしてきました。→次の記事で紹介します。

さて、修学旅行で中国に渡航した際にO157:H7による集団感染が発生しております。
唐津の高校食中毒:ノロウイルスやO157を検出 /佐賀(毎日新聞)

『中国に修学旅行に行った唐津保健福祉事務所管内の県立高校の生徒らに集団食中毒のような症状が出た問題で、県は22日、生徒らが病原性大腸菌O157やノロウイルスなどに感染していたと発表した。下痢などの発症者は73人になった。
 健康増進課によると、病原菌を検出したのは▽O157が12人▽ノロウイルス3人▽腸管毒素原性大腸菌1人。22日現在、8人が通院しているが、全員快方に向かっているという。』

全員症状は快方に向かっているとのことで、何よりであると思います。海外旅行中に下痢を伴う割合は、渡航先を特定しない場合は5割程度、渡航先を発展途上国に限った場合は7〜8割程度といわれています。これらの下痢症状を、特に旅行者下痢といいますが、そのうち2割程度をいわゆる感染症が占めているとされています。(参考資料1)

また、旅行者下痢を起こす原因菌は「帰国時に下痢をしていた例からの分離菌はETEC(毒素原性大腸菌)が約45%,次いでサルモネラ(11%),腸炎ビブリオ,キヤンピロバクタ一,プレジオモナス,赤痢菌などである。旅行者下痢症既往者ではサルモネラが約27%,次いで腸炎ビブリオ,キヤンピロバクタ一,プレジオモナス,ETECなどの順となっている。欧米の研究者の報告でも急性期患者ではETECが優位を占めている。」(参考資料2)とされています。

旅行中の注意としては...「発展途上国では不完全な上水設備,水道管の破損など水道水が衛生学的に保証できない。生水と氷は不可,必ず1分以上煮沸したものを飲む。高地では沸点が下がるが80度Cでも1分間加熱で下痢の起因微生物はすべて死ぬ。煮沸した水は自然に冷却し,歯磨きにも、その水を使う。」ということで、結構、水が問題となる様です。今回の事件で水や食物などのうち何が原因であったかは定かではありません。

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ちょっと前の患者さん

2006年9月22日 晴れ

朝晩は涼しくなり、いよいよ秋の様です。喘息の患者さんは悪くなり始めました。でも、以前にくらべ入院する患者さんは激減しています。やはり、「気管支喘息は気道炎症がベースにあって、そのため気道の過敏性が亢進している」という考え方が一般的になり、吸入ステロイド療法が広く受け入れられてきたためであると感じます。10月になると、いままで吸入ステロイド療法がかなり難しかった、乳児の重症喘息の患者さんにも使用しやすい滴下型の液体吸入ステロイドが販売開始となる予定です。

さて、ちょっと前の経験を脚色を加えてお話しします。
◯歳の女の子。約◯ヶ月前より、38℃から39℃の発熱が出たり引っ込んだりしているとのことで来院されました。ちょっと、「顔が赤いな」などと思って、「日焼けは酷い方ですか?」と聞くとそうでもないことのこと....

まずは、検査が必要ですとして、レントゲン、血液検査、検尿などを提出。まずは、血算(血液中の血球を数える検査)が返ってきました。白血球 4,400/μl , ヘモグロビン 11.3g/dl , 血小板 11.3万/μl。やや、血球減少あるか?と思い、「何かアヤシい」な...との感。ついでに、追加して免疫グロブリン、補体、抗核抗体、抗DNA抗体などを提出。

そうこうするうちに、検尿の結果が...尿蛋白 陰性、尿潜血 3+、沈渣(尿を遠心分離機にかけて尿中にある細胞を濃縮して顕微鏡でのぞく検査)で赤血球 20−30/HPF(強拡大での一視野あたりの数)、赤血球の形態はやや多形性ありとのことでした。月経(生理のこと)を尋ねると、「10日前に終わった」とのことで、月経血の影響はなさそうです。

ここで、手の指を観察。「白い」「冷たい」。朝はやや動かしにくいとのこと。

追加した検査がでました。IgG 2504mg/dl, 総蛋白は 8.3g/dlでした。補体はC3 30, C4 3.6。著しい低補体です。膠原病の中の全身性エリテマトーデスが強く疑われ、腎炎を合併している可能性が高いと診断。抗核抗体、抗DNA抗体は外注検査のため、しばらく返ってこない。治療のためには、腎生検は必須であろうし、長い入院も必要だろうと思いました。腎生検はできるが、このような患者さんを私一人で診るのは、恐らく患者さんのためにはならないだろうとも考えました。ということで、院内学級も併設されているような病院にお願いしようとのことで、ある病院に紹介させていただきました。

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ある若い頃の経験

2006年9月20日 晴れ
ようやく秋晴れといった感じです。台風の被害に遭われた方々には心よりお見舞い申し上げます。

さて、今日は以前にも少し記事にしたことがあったかもしれない話です。でも、最近の新聞記事に触発されて、現場の話をしてみたいと思います。

いまから、10年以上前のコトです。私は、医師になって3年目、2年間の初期研修を終えて、何と一人で小児科医長として赴任です。今から考えると余りにも未熟で、新生児に対する気管内挿管の経験も余りありませんでした。その病院には、産婦人科が併設されており、当時年間60例ほどの出生がありました。出産時には必ず呼ばれ、出生後のフォローをするならわしとなっていました。

その病院の職員さんが妊娠しており、産休に入っていましたが、あるとき腹痛と胎児仮死徴候で緊急帝王切開の運びとなりました。何が起こったのか?とにかく胎児仮死徴候はひどく、児心拍は60台です。産婦人科医は前立ち(第一助手)に外科の先生を得て、30分程度で新生児は出生。

今でも憶えていますが、だらりとして真っ白の赤ん坊です。当然、啼泣は聴かれず、呼吸なし、心拍は僅かに100以下で聞こえる状態です。とにかく、換気ということで気管内挿管を試みますが、声門がピッチリしまっていて、チューブが入らない!細いチューブなら...ということで、3.5mmから3.0mm、2.5mmと挑戦して何とか挿入できました。少し漏れがありますが、何とか胸が上がるまで換気できる状態に....その後、ルートを何とかとって、10%ブドウ糖とメイロン(重炭酸ナトリウム:重曹)を点滴。クベース(保育器)で加温。何とか心拍は100以上になり、体色は良好になりました。

この時点で、呼んでいた新生児用のドクターカーが到着。その病院の新生児の部長が乗ってきてくれました。蘇生に手間取って大変だったのだけど、「うまく蘇生できている」「でも、このチューブは細いな...」とのことで、その場で3.5mmに交換してくれました。

児に障害が残らなければいいが...と心配していたのですが、特に障害は残らず通常の生活を送っています。ホントよかった....

術後に聞いた話では、胎盤早期剥離であったようです。比較的発見が早かったのか?お母さんの方も、全身状態は、そう悪化せずに済みました。

胎盤早期剥離は、全分娩の約1%に起こるとされる、赤ちゃんが産まれる前に子宮の壁から胎盤がはがれてしまう状態です。はがれる面積にもよりますが、その面積が大きければ、赤ちゃんに酸素が行かなくなり、胎児仮死(赤ちゃんが苦しくなる)や酷い場合には子宮内で胎児(赤ちゃん)が死亡してしまいます。子宮とはがれた胎盤の間には血液がたまって、それが再び(子宮から)血管内に入るようなことになると、血管内で血液が固まるような状態(播種性血管内凝固症候群:DIC)となることもあります。これは、非常に重症な状態で、細い血管が固まった血液でつまってしまい臓器の障害が出ます。また、血液が固まる時に使用する凝固因子が消費されてしまい、本来出血に対して機能する血液が固まる作用が障害されてしまいます。

以上、説明してきたとおり胎盤早期剥離は産科合併症の中でもかなり危ないものです。発症がわかったならば、30分以内に緊急帝王切開にて胎児を娩出することが必要です。(←この部分は追記にて訂正しています。)それに備える体制を作るためには、24時間365日産科医と新生児科医、麻酔科医、そして産科に携わるco-medical staffを調達する必要があります。

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0157:H7の集団感染

2006年9月19日 曇り
天気はすっきりしません。

アメリカでの話。ほうれん草の生食に起因する腸管出血性大腸菌O157:H7の集団感染が拡大しています。これまで、感染者は109人、うち16人がHUS:溶血性尿毒症症候群を発症し1人が死亡しているとのことです。

FDAニュースから抜粋します。

To date, 109 cases of illness due to E. coli infection have been reported to the Centers for Disease Control and Prevention (CDC), including 16 cases of Hemolytic Uremic Syndrome (HUS) and one death. Illnesses continue to be reported to CDC.

訳:これまで、CDC(疾病管理予防センター)に報告された(腸管出血性)大腸菌感染は109名で16名がHUS:溶血性尿毒症症候群を発症し1人が死亡した。疾病患者はCDCに報告され続けている。

States Affected
There are 19 confirmed states: California, Connecticut, Idaho, Indiana, Kentucky, Maine, Michigan, Minnesota, Nevada, New Mexico, New York, Ohio, Oregon, Pennsylvania, Utah, Virginia, Washington, Wisconsin, and Wyoming.

疾病が発生した州
19の州で患者発生が確認されている。カリフォルニア、コネチカット、アイダホ、インディアナ、ケンタッキー、メイン、ミシガン、ミネソタ、ネバダ、ニューメキシコ、ニューヨーク、オハイオ、オレゴン、ペンシルバニア、ユタ、バージニア、ワシントン、ウィスコンシン、ワイオミング。

その他、ほうれん草の生食を一定期間自粛する旨の通達と、もしほうれん草生食後に症状が発生していた場合には、診療を受けるようアドバイスが続いています。また、原因の食品と思われる2つの食品のリコールが出されています。

大阪堺市での集団感染ほどの規模ではなさそうですが、早期に終息する様、祈るばかりです。

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ネフローゼ症候群_腎3

ネフローゼ症候群の続きです。

前回までで、腎の解剖、ネフロンの中の糸球体と糸球体の壁のところを勉強しました。ネフローゼ症候群では糸球体の壁の部分が病態に大きく関与しています。

Photo_3

左の図は、マウスの糸球体の壁を電子顕微鏡でのぞいたものです。糸球体の壁は、内側から血管腔→内皮細胞→基底膜→上皮細胞→尿腔の順に並んでいます。内皮細胞はあまり、蛋白が漏れるのを防止する力はないものと考えられている様です...(しかし、一部の学説では「さにあらず」とも)、基底膜はコラーゲンにより細かな網目を形成しており、網目より大きな分子をせき止めます。(これを分子のサイズにより保持することから「サイズバリア」ともいいます。)また、基底膜はそれ自体が陰性に荷電しており(つまりマイナスの電気を帯びていること)、血清蛋白質の中の重要な成分であるアルブミンなどの陰性に荷電した蛋白を電気的にせき止めます。これを、分子の大きさでせき止めるサイズバリアに対して、「チャージバリア」とも呼びます。
上皮細胞はその表面が陰性に荷電しており、チャージバリアの役目を果たします。また、上皮細胞の足の間に形成されるスリット膜はジッパーのような構造をしていて、非常に小さな穴が開いています。これがサイズバリアとしての役目を果たしているとされています。スリット膜の構成成分のうちの一つでネフリンという蛋白がありますが、これは生後すぐから多量の蛋白尿を示し、腎不全へと進行するフィンランド型先天性ネフローゼとの関連があるとされています。

Slit_1

ちょっと、専門的すぎる話となってきてしまいました。少し話を戻しますが、成人の1日の糸球体濾過量は180ℓです。いままで、説明してきた「蛋白をせき止める機構」がなければ、計算上1日に10,000g以上の蛋白が漏れ出ることとなります。3.5g/日以上がネフローゼの基準ですので、如何に糸球体の壁が頑張っているか?がわかると思います。この、蛋白をせき止める機構が様々な原因で破綻した場合にネフローゼ症候群が起こります。

次回からは、実際の病気について説明します。

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ネフローゼ症候群_腎2

ネフローゼ症候群の続きです。

前回は腎臓の大きな目で見た解剖と機能について説明しました。一つの腎臓に尿を生成する単位→ネフロンが約100万個あるということでした。そして、一つのネフロンに一つの糸球体(尿のもと原尿を血液から濾過する装置)があります。そして、ネフローゼ症候群は、その糸球体が病変の首座となります。

Kidney2

左の図は、その糸球体を模式図で示したものです。輸入再動脈から濾過される血液は糸球体(血管のかたまり)に入り、輸出再動脈より出て行きます。糸球体からは絶えず、原尿が濾過されています。そのスピードは前の記事でも示しましたが、成人の腎臓では実に180ℓ/日=125ml/分という大きなものです。
そして、矢印の先の写真は「電子顕微鏡」という、通常の「光学顕微鏡」よりも、もっともっと細かい部分まで見える顕微鏡によって撮られた、糸球体の表面(走査電子顕微鏡)、糸球体の壁の切片の写真です。糸球体の表面には、凸凹がありますが、これは上皮細胞という特殊な細胞の「足」が複雑に絡み合っている状態を表しています。切片の写真では、US:尿腔(つまり原尿が濾し出される空間)、GBM:糸球体基底膜(尿腔と血管腔を分けている膜)、E:上皮細胞、End:内皮細胞(血管腔をうらうちする細胞)、Cap:血管腔という略語で表されています。

そして、原尿が血管腔から尿腔に濾し出されるわけですが、通常は血液中のタンパク質は、ほとんど尿腔へ濾し出されることはないのです。(ほとんどという意味は、一部の小さな分子量のタンパク質は通ってしまうからです。)そして、ネフローゼ症候群の児は、この写真のうちE:上皮細胞の足のあいだに形成される「スリット膜」やGBM:糸球体基底膜に障害があり、尿腔へ血液の大事なタンパク質が漏れ出てしまうというのが病態の基本です。

どうして、そんなことが起こるのか?全てが解っているわけではありませんが、次回には、そのお話をしたいと思います。

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脳梗塞という言葉

2006年9月5日 晴れのち雨
なにかジメジメしています。徐々に気管支喘息の児が増えてきています。秋口はシーズンです。

さて、用語の問題?と思われる記事です。医療過誤の報道に長けている毎日新聞から...
医療過誤訴訟:金沢大病院「過失ない」争う姿勢−−地裁で口頭弁論 /石川(毎日新聞)

『金沢大付属病院(金沢市)に入院していた小松市の女性(59)が、脳こうそくを発症して神経に障害が残ったのは病院側の治療後の措置に過失のためとして、同大相手に1億円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が4日、金沢地裁(倉田慎也裁判長)であった。金沢大側は「過失はなかった」として争う姿勢を見せた。
 訴状によると、女性は01年12月10日に心不全で同大に入院。心臓検査のため、頸(けい)静脈にカテーテルを挿入した。同13日にカテーテルを抜いた後、ベッド交換のために移動したところ、挿入口から多量の空気が静脈に入り、脳こうそくを発症。付き添い介護が必要な後遺症が残った。
 病院側はこれに対し、▽発症したのは脳こうそくではなく、脳塞栓(そくせん)▽カテーテルを抜去後の処置は医学水準に合致した手法で、挿入口から空気混入は考えられない▽ベッド交換が直接の原因とは断定できない——などと反論した。』

脳梗塞という言葉を調べてみると...「脳血栓と脳塞栓の総称。脳に酸素と栄養を供給している動脈が細くなったり詰まったりして、その先に血液が流れにくくなる疾患。」とあり、脳梗塞の範疇の中に脳塞栓は入ることとなります。
「▽発症したのは脳こうそくではなく、脳塞栓(そくせん)」と病院側が説明したとありますが、これは「発症したのは脳梗塞の中の脳塞栓」といったのではないかと思います。

また、患者さんには心不全があり、心臓の中での血流が低下している可能性があります。そうすると、心臓の中で血栓が形成され、それがとんで脳の血管の太い部分に詰まり心原性脳塞栓という重症の脳梗塞を起こすことがあります。

そして、なにより頚静脈から空気が入った場合、まずは上大静脈から右心房に入り、右心室を経由して肺動脈から肺に空気塞栓が起こるのが普通のような気がするのですが...これは、専門の循環器の先生に聞かないとはっきりしませんね...

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ネフローゼ症候群_腎1

2006年9月4日 晴れ
ネフローゼ症候群を語る上で、腎臓の解剖や機能の説明は不可欠です。今日から、腎臓の説明をしていきます。

腎臓はそら豆のような形をした臓器です。ちょうど腰のあたりの、後腹膜というおなかの臓器を包んでいる膜の後ろの部分に脊椎を挟んで左右一対で位置しています。