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2009年9月19日 (土)

タミフル早期投与の是非?

2009年9月19日 晴れ

すごく長い間、休みました。これからはある程度、書けそうです。

まずは、今回の新型インフルエンザにより亡くなられた12歳男児とその御家族に深甚なる哀悼の意を表します。

さて、新型インフルエンザ騒動。このほど、横浜の12歳男児(基礎疾患:気管支喘息)が亡くなられたことで、タミフル早期投与の是非?がとりざたされているようです。

『「感染疑い」でも治療薬投与を…厚労省通知

9月18日20時10分配信 読売新聞

新型インフルエンザに感染して死亡した横浜市の小学6年の男子児童(12)がタミフルなどの治療薬を投与されていなかったことを受け、厚生労働省は18日、感染の疑いがある患者については、感染が確定していなくても医師の判断でタミフル等の治療薬を投与できることを改めて周知する通知を都道府県などに出した。

 横浜市などによると、男児は2日午前、高熱を出して医療機関を受診、簡易検査を受けたが陰性だった。この医療機関ではタミフルなどの投与を受けず、翌日に容体が悪化して入院した。

最終更新:9月18日20時10分』

高熱がでれば、インフルエンザ抗原陰性であってもタミフルを投与するべきだという論調に流れていってますね...。どうでしょうか?タミフルを投与することにより、タミフル耐性のインフルエンザウィルスを誘導する可能性、以前問題になった、タミフル投与と異常行動の関連などは考慮に入れなくてもいいのでしょうか?

報道で手に入れることのできる範囲で、この患児の経過について調べてみると...。

『新型インフル未成年初の死者、横浜の小6

9月17日21時35分配信 読売新聞

 横浜市は17日、新型インフルエンザに感染した同市都筑区の小学6年の男子児童(12)が死亡したと発表した。

 男児は、気管支ぜんそくだった。死因は脳内出血とみられるが、新型インフルエンザとの因果関係は不明という。厚生労働省によると、国内の死者は疑い例を含めて15人目で、未成年は初めて。

 市によると、男児は2日午前、39度台の熱が出て、医療機関を受診。一時、37度台に下がったが、3日未明、40度に上がり、意識がもうろうとしたため、市内の病院の集中治療室(ICU)で治療を受け、心筋炎と診断された。

 簡易検査では陰性だったが、14日の遺伝子検査で感染が確認された。男児は意識不明だったため、タミフルなどの治療薬の投与は受けていなかったという。

          ◇

 厚労省によると、今月15日までに新型インフルエンザで入院した892人のうち14歳以下は68%で、重症例の多くを小児が占めている。これまでは比較的高齢の人が亡くなるケースが多かったが、感染の広がりとともに、小児の死亡例が増える恐れが高い。

 死亡した横浜市の男児(12)は気管支ぜんそくの基礎疾患があった。新型インフルの入院患者のうち、42%は持病があり、最も多いのは、ぜんそくなどの慢性呼吸器疾患だ。これまでの死亡例のほとんども、糖尿病などの持病がある。

 また、小児のインフル患者は大人に比べ、インフルエンザ脳症に陥りやすく、意識障害を起こして死亡する恐れもある。

 こうした状況から厚労省は、新型インフルエンザのワクチンの接種対象者として、持病のある人や1歳~就学前の小児などを最優先グループとし、次いで小中高校生や高齢者を入れる案をまとめている。

最終更新:9月17日21時35分』

インフルエンザ感染により発熱していたようであるが、当初の迅速検査ではインフルエンザAは陰性。外来でフォローしたが、翌日に高熱が再びみられ意識障害が出現。重症のためICU管理となった。その際の診断は心筋炎であった。集中治療を続けたが、意識は回復せず亡くなられた。死因は脳内出血であった。

少なくとも、基礎疾患である気管支喘息と今回の経過とは関連がなさそうに感じられます。また、インフルエンザに限らず、急性心筋炎は、それ自体が重症であることが多く、突然の心停止から死亡する可能性があります。そして、どの患者さんに心筋炎が発症しやすいか?などの予見因子はみつかっていません。

心筋炎でICU管理されていたのであれば、循環補助としてPCPS:経皮的心肺補助やIABP:大動脈内バルーンパンピングなどを受けていた可能性はあると思います。ひょっとすると経過途中で心停止した可能性もあるのでは?(これはあくまで私見です)そして、こういった集中治療をするために、血液が固まりにくくするような処置を行うことがあります...。

このような患児に早期にタミフルを投与すれば心筋炎を起こさずにすんだか?これには結論が出ていないでしょう。そして、現在は10歳から19歳の範囲で、タミフルの投与は原則禁忌(異常行動との関連から)となっており、初期の段階で『迅速検査でインフルエンザA抗原が陰性である12歳男児にタミフルを処方するのは難しかった』といわざるを得ません。

厚生労働省はタミフル使用に関して、そのような縛りを撤廃する旨の通達を出す必要があるのではないでしょうか?

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コメント

タミフル問題も複雑で、感染症学会の緊急提言では、
http://www.kansensho.or.jp/news/090914soiv_teigen2.html#n06

『タミフルに関しては、10歳代の患者の異常行動等に対する厚生労働省からの使用注意制限がまだ解除されていません。ただし、厚生労働省自身の見解として、副作用を説明し保護者が投与後最低2日間監視できるなら新型インフルエンザに対してタミフルを投与することは可能である、としています。』

探したのですが厚労省の見解のソースが残念ながら探し出せませんでした。参考になるかどうかわかりませんが、平成21年8月28日付事務連絡「新型インフルエンザ患者数の増加に向けた医療提供体制の確保等について」では、
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/hourei/2009/08/dl/info0828-01.pdf

『とくに重症化のリスクがある者に対しては積極的に抗インフルエンザウイルス薬を使用するのが望ましい』

こうした上で、

『妊婦や小児など投与に注意を要する患者については、それぞれの専門医と連携して判断する』

どうもなんですが、10歳代に対してタミフルの早期投与を厚労省は勧めるが、あくまでも原則は禁止のままで、医師の全責任の下で投与をせよに読めます。

誰も責任を取りたくないのはわかりますが、前線にいるものとして苦慮させられそうです。

投稿: Yosyan | 2009年9月24日 (木) 08時43分

Yosyanさま

お久しぶりです。

>どうもなんですが、10歳代に対してタミフルの早期投与を厚労省は勧めるが、あくまでも原則は禁止のままで、医師の全責任の下で投与をせよに読めます。

こういう心理が透けて見えるため、どうも好かんのですね....。そして、タミフルを早期に使わなくてはならないのか?ということ自体が大きな問題点といえそうです。

投稿: いなか小児科医 | 2009年9月24日 (木) 23時02分

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