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2009年7月 3日 (金)

慢性活動性EBウイルス感染症

2009年7月3日 雨
梅雨らしい天候です。農家の方々はこの恵みの雨に感謝されていることでしょう。

さて、慢性活動性EBウイルス感染症:CAEBVは恐ろしい疾患です。通常、EBウィルス(Epstein-Barr Virus)は幼少期に感染し、日本人では成人の実に90%以上が感染既往を有するウィルスです。初感染は伝染性単核球症という、発熱、リンパ節腫脹、肝脾腫、咽頭扁桃炎などの症状を伴う急性発熱性疾患を呈し、約1ヶ月程度で完治することが多く、その後は持続的感染がみられることはないものと理解されています。(もちろん、細胞性免疫に異常を持った方などはこの限りではありません。)

しかし、感染後もこのウィルスはリンパ球の中のB細胞という細胞に静かに潜み続け、時として悪性リンパ腫のBurkittリンパ腫との関連がみられます。また、感染の経過中にHPS:血球貪食症候群という、骨髄内で貪食細胞が正常に形成されてきている血球をドンドン食べてしまい、著しい貧血や血小板減少、白血球減少などを呈して場合によっては死亡するような病態を引き起こすこともあります。

そして、その通常は一過性の症状で治癒してしまうEBウィルスが体内に潜み続け、伝染性単核球症症状を繰り返したり、一部では蚊アレルギー(蚊にさされたのち、局所の腫脹、アナフィラキシー症状や血球貪食症候群を伴う反応)がみられることがあり、よくよく調べてみると、このような患者さんは有効な治療を施さない限り数年から10数年の経過の中で、ほとんどの方(9割以上)が亡くなってしまうとわかりました。これを、慢性活動性EBウィルス感染症:CAEBVと呼んでいますが、最近になりいろいろとこの病気のことがわかってきました。

EBウィルスはリンパ球のうちB細胞に感染しやすいのですが、このCAEBVの患者さんでは、T細胞あるいはNK細胞というリンパ球に持続的に感染し、感染した細胞がドンドン増えてしまっています。この感染したT細胞、NK細胞が悪さをするのですが、実際にどのように悪さをするのかははっきりとは解っていないようです。

ただ、治療法はずいぶんと進化しました。以前は、感染症の治療(つまり何とかして、EBウィルスをやっつけてしまう)が主流となっていましたが、これではあまり予後を改善することができませんでした。T細胞やNK細胞がEBウィルスに感染してドンドン増えているのが病気の根本にあるとすれば、悪性の白血病やリンパ腫とその病態は似ています。病気を治すために、この感染したT細胞、NK細胞を根絶するような方法。つまり、抗がん剤などでT細胞、NK細胞を殺してしまう治療(白血病の治療と近いものです。)を行い、血液中のEBウィルスの量が減るのを観察します。それで、血中からEBウィルスが見つけられなくなれば治癒です。しかし、ほとんどの例では、かなり強い抗がん化学療法を行っても、完全にはEBウィルスを排除できません。そこで、骨髄移植などの血液幹細胞移植を併用することで、非常に強い(つまり、ほぼ完全に骨髄が死んでしまうまでの)治療を行い、移植後に入ってくる正常の免疫状態でEBウィルスを抑え込むことで予後が大きく改善しました。

大阪府立母子医療センターの河 敬世先生らのグループでは上の治療を行うことで、実に70%以上の生存率を確保しています。

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