« 正しく恐れる必要性 | トップページ | アメリカ版国民皆保険制度 »

2009年6月15日 (月)

魅かれるもの

2009年6月15日 晴れ
梅雨前線は太平洋高気圧の勢力の弱さのため日本列島にかからず、南の太平洋上に停滞しているようです。あいかわらず暑い...。

物語、漫画、映画...なぜだか知らないけど、『潜水艦』にまつわるものに興味をひかれやすい。自身を秘匿することで任務を遂行するため、その全容が見えることがないのが、その原因でしょうか?映画でいうと、『U-571』、『ローレライ』、漫画は『沈黙の艦隊』などなど...。比較的実際に近い作りのものから、『そりゃないでしょ』というストーリーまで。

しかし、サブマリナーはそんなに悠長なものではない。ディーゼル潜では、基本的に蓄電池に充電して水中を航行することになるでしょうが...。充電放電の過程で、水素が発生し爆発事故につながることや、潜水中に爆雷、魚雷などで攻撃を受ければ、外殻が破損し海水が流入。浮力を得るまで排水できなければ、沈没を免れることはありません。そのストレスに慣れながら乗って行かなければならないでしょう。


鳶色の襟章(堀 元美 著)より
<以下、引用>
『天気のよい日だった。有明湾の沖の波は低く、舷側を後ろ後ろへと流れさる波が、わずかばかりの高低の変化を繰返し、青く深く透き通って、時々光の屈折で潜水艦の丸くふくれた舷側の赤い色が上甲板からも眺められる。
 艦橋では海図の上に刻々と移って行く艦位を次々と書き込んでいる航海長の傍で、艦長が時々話し掛けながら後方の景色を眺めていたが、やがて「合戦準備」と大声で言った。たった一人しかいない信号兵がラッパを吹奏し、航海当番は信号旗嚢を引きくくって昇降口から投げ下ろす。
 上甲板の丸い昇降口から、汚れた事業服の上半身を見せ、バタンと蓋を締めて艦内へと姿を消す。丸い蓋の中央にあるハンドルが中からクルクルと回って締まる。
 信号マストがスルスルと下がり、代わりに潜望鏡がニューッと司令塔の上に頭を出す。兵員が鏡頂のガラスを拭く。艦橋の窓ガラスは水の抵抗のないように開け放たれる。
 艦内では全員がそれぞれの配置につき、潜航、戦闘の準備をする。全区画から伝声管でそれぞれ整備を届けてくるのを、発令所ではチェック•ボードの駒を入れかえてチェックしている。
 「合戦準備宜し」が届けられると、艦長は「潜航準備」と命令する。航海当番は艦橋に残った品物を一切抱えて昇降口を下りる。
 艦長は「機械停止、電動機前進原速、ベント開け!」と命令して、最後に艦内に飛び込む。艦橋の蓋が閉まる。
 ザザザーーという水音が、艦内にいるわれわれには頭の上で聞こえる。艦は前方に傾いて、グーッと下がり始める。電動機がかすかに唸る。
 発令所の潜舵手と横舵手の前にある大きな深度計の針がグングン回る。八メートル、九メートル、一○メートル。盤面に描かれた艦の断面図の上を針がドンドン過ぎて、みるみる二五メートルになる。排水ポンプが高い音を出して動き出し、艦の自重を調節する。
 大勢の兵員が身動きできぬくらいいるのに、室内は静かである。総員七〇人も乗っているが、潜望鏡で外を見られるのは艦長一人だけだ。
 何ともいえない緊張、しかも皆平気な顔をしている。電灯が静かに照らしている室内は、水上も水中も変わりがない。
 深度一五メートル。
 「浮き上がれ!」「メーン•タンク•ブロー!」
 高圧空気で、タンクの中の海水を吹き出す。深度計の針が回る。
 「ハッチ開け」
 昇降口蓋が開けられると、海水のしぶきが外の風と一緒に吹き込む。
 艦橋に飛び出す。あらゆるものが水を滴らせている。ビショ濡れの艦橋から見ると、上甲板はいまようやく水面まで出てきたところで、一面に白い泡に覆われている。船体がグラグラと揺れる。』
<引用終わり>

太平洋戦争直前の日本海軍潜水艦:伊号第七〇号潜水艦内での潜水訓練の様子です。この書物には、夜間浮上中の潜水艦に洋上艦が衝突し、潜水艦がまっぷたつに折れて沈没、乗員全員が死亡した事例や、潜水訓練中に、昇降口蓋を閉鎖するのが遅れ、流入した海水を排水できず沈没した事例などが取り上げられ、その当時のサブマリナーの危険性を思い知らされます。

そのような乗り物に乗ることはコワくて仕方がないけれど、恐いもの見たさというか、ついつい魅かれてしまうのでしょう...。

|

« 正しく恐れる必要性 | トップページ | アメリカ版国民皆保険制度 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/101068/45351766

この記事へのトラックバック一覧です: 魅かれるもの:

« 正しく恐れる必要性 | トップページ | アメリカ版国民皆保険制度 »