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2009年6月21日 (日)

アメリカは日本を追いかける?

2009年6月21日 曇りのち雨
猛暑が続いています。

さて、日本はいわずと知れた、国民皆保険制度が定着している国です。健康保険に加入していないヒトはいないことになりますが、保険料を滞納すると一部で医療を受けられなくなります。アメリカは自由の国、現在のところは合衆国全体で皆保険制度に近い制度を導入しているのは、ここに紹介されている、マサチューセッツ州だけでしょうか?ヒラリー・クリントンが数年前から導入を提案している、国民皆保険制度。この面では米国は日本を手本にし追いかけている状況となります。

医療に関しては、とかく米国に追随する傾向がみられますが、その制度に関して、日本は非常に先進的であるのでは?と感じます。アメリカにならい、自由診療を拡大しようとしたりすることは、アメリカの医療保険会社に日本の医療を売り渡す行為に近いと国民そして政治家は強く認識しなければなりません。

MRICのメルマガにて流れていた記事です。

<以下、引用>
『2回目 全米初・マサチューセッツの州民皆保険(ヘルスケア改革法の舞台裏)

 前回は、全米で初の州民皆保険を定めたマサチューセッツ・ヘルスケア改革法の成立とその背景についてご紹介しました。今回はそれがどのように運用されていて、どのような評価を受けているのか、またこの改革法を推進した立役者についてご紹介したいと思います。


●無保険者へのペナルティ

 2007年にスタートしたヘルスケア改革法によって、マサチューセッツ州では44万2千人が新たに健康保険に加入することになりました。これで、2005年の時点で55万人いるといわれた州内の無保険は、約10万人へと劇的に減少し、全人口の3パーセントだけになりました。ちなみにこの3パーセントの保険を持たない層というのは、特に健康問題を持たない若年労働者たちだと言われています。

 このように短期間に無保険者が激減したのは驚きですが、その理由は低所得者向けに保険料の補助があることに加えて、保険料を払っていないと罰金が課される制度が設けられたからです。州税の申告をする際の用紙に、保険への加入を記す箇所があるので、州は誰が保険に入っていて誰が入っていないかを把握できるのです。

 罰金の金額は所得に応じていますが、初年度の2007年は最大で219ドル(2万円)でした。そして翌年の2008年に最大912ドル(9万円)に急上昇しました。912ドルというのは、一番安い保険プランのちょうど半額です。

 今後も順次、罰金の金額を上げてゆくとのことで、保険に入った方が罰金を払うよりどんどん有利になってきます。このことから、今後数年で無保険者は限りなくゼロに近くなることが見込まれています。』
<引用終わり>

ひょっとすると、日本における健康保険滞納者に対する施策としても参考になるかもしれませんね...。実際に制度を上手く運用するために、アメリカはlどのような手法をとるのか?国民性の違いはありますが、「上手い!」と感じてしまいます。

<以下、引用>
『●州民のヘルスケア改革法の受け止め方

 では、このヘルスケア改革法は州民たちにどのように受け止められているでしょうか。一般にアメリカ人は、自由に価値を求め、個人主義で自己責任を尊ぶ国民だといわれています。それゆえ、健康保険を持つことを義務としたり、保険料を払えない人に州が税金を配分して補助したりする公的保険システムは、「社会主義的Socialistic」とさえ言われ、嫌われたりすることがあります。ところがマサチューセッツでは、実際のところ、かなり好意的に受け入れられているようです。

 それは、2008年7月にハーバード公衆衛生大学院とブルークロス・ブルーシールド・マサチューセッツ財団によって実施された州民への調査から分かります。この調査では、ランダム・サンプリングされた18歳以上の州民1,015人を対象に、州民皆保険を定めたヘルスケア改革法の認知度や、改革法の賛否が質問されています。

 まず認知度ですが、「とてもよく知っている」から「少しだけ知っている」までを合わせると94%に上っていました。6%は「まったく知らない」と答えていたわけですが、改革法が成立したすぐ後の2006年9月の調査では、「まったく知らない」人が20%もいたことを鑑みれば、急速に認知度が上がっているといえるでしょう。

 そして改革法を知っていると答えた人のうち、改革法に賛成の人は69%に上り、改革法反対の22%を大きく上回っていました。また、連邦貧困レベル300%(4人家族で年収約600万円以下)の人々には州が保険料を補助することに賛成の人は77%で、やはり反対の18%を上回っていました。そして、改革法が州内の無保険者を減らすことに成功していると答えた人は71%でした。

 これらのことから多くの州民が改革法を支持しており、その成果を肯定的に評価していることが分かります。』
<引用終わり>

しっかりとした情報開示と、補助すべき人たちへの適切で理解度の得られやすい補助を行うことで、制度は急速に認知され、人々の間に広がっています。このヘルスケアがあれば、マサチューセッツ州は人口が増えるのではないでしょうか?

<以下、引用>
『●誰が公的保険に反対してきたか

 しかし、公的保険に反対している勢力があったのも確かです。それでは、どのような主体が反対してきたのでしょうか。公的保険が登場すると、それまで自由に価格を設定できた保険や薬剤の市場が侵されると考える保険会社や製薬会社までは容易に想像されます。しかし最も強い反対勢力のひとつだったのは、実は医師の団体でした。

 もちろん医師と一口に言ってもさまざまな立場があります。概して高度医療や専門的医療をする医師達はヘルスケア改革法に反対していて、プライマリ・ケアに従事している医師たちは賛成しているそうです。それでも大勢としては医師達もやはり、公的保険によって価格が一定程度制限されるようなシステムには、賛同しかねるという傾向にありました。このことから日本で1961年に国民皆保険が実施されたとき、医師の自由裁量権が制限される事への危惧から、日本医師会をはじめとする医師の団体が猛反対したことが想起されます。

 ただアメリカの医療においては、医師の裁量権が既に制限されていることも事実です。ポール・スターが1984年のピューリッツァー賞受賞作『アメリカ医療の社会的変容』で予言したように、アメリカにおいて医師は、もはや自律的な専門職として患者の必要性を判断して医療を行うことはなくなっています。保険会社に治療が保険でカバーされるかどうかとお伺いを立てて、カバーされる方法で医療を行っています。あるいは保険でカバーされない場合は、患者に自費で払えるかどうかを確認して治療内容を決めています。

 「アメリカの医師は、すでに保険会社に規制されているのだから、何をいまさら政府に規制されることに反対するのですか」と、元マサチューセッツ州保険局長で現ハーバード公衆衛生大学院講師の健康保険専門家ナンシー・タンブル氏に聞いてみました。すると、「行政にコントロールされるよりも、保険会社の方がましだと思っているのよ。医師はなにもしなくても高給取りだから、現状が変わらない方がいいと思っているのよ」。そう彼女は答えてくれました。』
<引用終わり>

医療をある程度平等に、一般の人たちに分け与えることは、医師の裁量権を抑圧することになる。現在でも、民間の医療保険会社に医療の限度を問い合わせながら、そのヒトにあった程度の医療を提供しているアメリカの医師たちも、公的保険に移行することは反対するのですね...。プライマリケアよりも高度専門医療を行っている医師の方が確かに影響は大きいでしょうね、しかし、米国の医療の現状はあまりに格差がありすぎて悲惨です。医師の裁量権はある程度ガマンしても、社会に寄与する方が理解をえられるのでは?

<以下、引用>
『●NPOの活躍

 ところで、そもそもこのヘルスケア改革法の骨子である、すべての州民が保険を持てるようにするという理念は、州の内外の多くのNPO(非営利組織)やNGO(非政府組織)が、20年来アドボカシー活動を続けて実現させてきたものです。そうしたNPOには「みんなのためのヘルスケア(Health Care For All)」や「コミュニティの触媒(Community Catalyst)」などがあります。

 「みんなのためのヘルスケア」は、医療サービスの受け手、特に弱者が中心のヘルスケア・システムを作り上げることを目標にしたNPOです。納得いく手頃な料金で、それぞれの文化を尊重した質の高いヘルスケア・システムの実現を目指し、マサチューセッツ州内で活動を展開してきました。「コミュニティの触媒」の方は、やはり同様の目標を持ち、全国規模のネットワークで活動する、1997年に設立されたNPOです。

 こうしたNPOは、州政府や連邦政府、消費者団体、政治家、保険財団、病院団体などと緊密なパートナーシップを結び、リーダーシップを与えたり、情報提供などの支援をしたりしながら、ヘルスケア・システムを改革してゆくための働きかけをしています。

 長年「コミュニティの触媒」で皆保険制度の成立のための活動をしてきたディレクターのスーザン・シェリー氏は、改革のためには政治家や行政官などの政策決定者たちに「ヒーローになる機会Hero Opportunity」を与えることが重要だと主張していました。社会的不平等が顕著に現れる健康格差をなくすためにはヘルスケア・システムを改革することが緊要で、その改革に関わることで人々のヒーローになれる。こうしたことを関係者に納得いくように知らせて、実際にヒーローとして扱うことで、彼らの改革への意欲を鼓舞し、政策を大きく動かすことが可能になった、と言っていました。

 前回も記しましたが、当時の州知事ミット・ロムニーは、ヘルスケア改革法成立前夜のウォールストリート・ジャーナル誌の記事において、確かに紛れもなくヒーローの扱いでした。それは、彼をヒーローに仕立て上げたシャリー氏のような立役者達がいたからです。改革法が成立した裏舞台にこうした草の根的なNPOのアドボカシー活動があったことは、特筆に価すると思います。

 シェリー氏はまた、NPO同士の同盟関係も重要だと言っていました。健康格差をなくそう、質の高い手頃な医療を実現させようといった目標を持つNPOには、ヘルスケア・システムの改革を主たる目標とする団体のほかにも、消費者団体、コミュニティ団体、人種的不平等を解消しようとする団体、貧困者団体などさまざまな団体があります。社会的地位も人種・民族も異なる人々で構成されている諸団体は、通常ならば、それぞれの場所でばらばらに活動をしています。

 そこでシェリー氏らの「コミュニティの触媒」は、目標を同じくする諸団体が互いを知り結束できるように集会を設けたり、ニューズレターを発行したりという広報活動をして、NPOの同盟を作り上げていきました。それぞれは小さな団体ですが、それらがひとつにまとまると大きな力になります。政治家達は彼らが投票権を持っていることをよく知っているので、彼らの声に耳を貸さずにはいられません。こうしてヘルスケア・システムの改革は、重要な政治課題となってきたのです。

 マサチューセッツにおいて、このようなNPOの活動がいかにヘルスケア改革法の成立の推進のための役割を果たしてきたかを知ることは、日本で医療改革が展開される際の大きな示唆を与えてくれると思います。』
<引用終わり>

草の根の運動がもとのエネルギーとなり、政治家を上手く動かして、マサチューセッツ州は大きな事業を成し遂げました。そして、それは日本の制度を(おそらく)参考にしています。日本の医療制度は確かに問題点もあるでしょう。しかし、闇雲に米国を追随するのではなく、日本にあった医療制度改革が行われることを望みます。

日本は国民皆保険を導入していながら、GDPに占める医療費の割合は米国の約半分です。いたずらに医療費(社会保障費)を減じるだけの政策では、このアメリカが追いかける先進性をもった医療制度が崩壊してしまうでしょう。

本日参照させていただいた文章です。


『▽ 『ボストン便り』(2回目) ▽

 細田 満和子(ほそだ みわこ)

 2009年6月20日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行
 http://medg.jp


 紹介:ボストンは、アメリカの北東部に位置するマサチューセッツ州の州都です。アメリカ建国の地として古い伝統を持ちながらも、革新的でリベラルな気風を持つ独特なところで、周辺にはハーバードやMITなど100を超える大学があります。そんなボストンから医療・保健・暮らしなどについてご紹介してゆきます。

2回目 全米初・マサチューセッツの州民皆保険(ヘルスケア改革法の舞台裏)

 前回は、全米で初の州民皆保険を定めたマサチューセッツ・ヘルスケア改革法の成立とその背景についてご紹介しました。今回はそれがどのように運用されていて、どのような評価を受けているのか、またこの改革法を推進した立役者についてご紹介したいと思います。


●無保険者へのペナルティ

 2007年にスタートしたヘルスケア改革法によって、マサチューセッツ州では44万2千人が新たに健康保険に加入することになりました。これで、2005年の時点で55万人いるといわれた州内の無保険者は、約10万人へと劇的に減少し、全人口の3パーセントだけになりました。ちなみにこの3パーセントの保険を持たない層というのは、特に健康問題を持たない若年労働者たちだと言われています。

 このように短期間に無保険者が激減したのは驚きですが、その理由は低所得者向けに保険料の補助があることに加えて、保険料を払っていないと罰金が課される制度が設けられたからです。州税の申告をする際の用紙に、保険への加入を記す箇所があるので、州は誰が保険に入っていて誰が入っていないかを把握できるのです。

 罰金の金額は所得に応じていますが、初年度の2007年は最大で219ドル(2万円)でした。そして翌年の2008年に最大912ドル(9万円)に急上昇しました。912ドルというのは、一番安い保険プランのちょうど半額です。

 今後も順次、罰金の金額を上げてゆくとのことで、保険に入った方が罰金を払うよりどんどん有利になってきます。このことから、今後数年で無保険者は限りなくゼロに近くなることが見込まれています。


●州民のヘルスケア改革法の受け止め方

 では、このヘルスケア改革法は州民たちにどのように受け止められているでしょうか。一般にアメリカ人は、自由に価値を求め、個人主義で自己責任を尊ぶ国民だといわれています。それゆえ、健康保険を持つことを義務としたり、保険料を払えない人に州が税金を配分して補助したりする公的保険システムは、「社会主義的Socialistic」とさえ言われ、嫌われたりすることがあります。ところがマサチューセッツでは、実際のところ、かなり好意的に受け入れられているようです。

 それは、2008年7月にハーバード公衆衛生大学院とブルークロス・ブルーシールド・マサチューセッツ財団によって実施された州民への調査から分かります。この調査では、ランダム・サンプリングされた18歳以上の州民1,015人を対象に、州民皆保険を定めたヘルスケア改革法の認知度や、改革法の賛否が質問されています。

 まず認知度ですが、「とてもよく知っている」から「少しだけ知っている」までを合わせると94%に上っていました。6%は「まったく知らない」と答えていたわけですが、改革法が成立したすぐ後の2006年9月の調査では、「まったく知らない」人が20%もいたことを鑑みれば、急速に認知度が上がっているといえるでしょう。

 そして改革法を知っていると答えた人のうち、改革法に賛成の人は69%に上り、改革法反対の22%を大きく上回っていました。また、連邦貧困レベル300%(4人家族で年収約600万円以下)の人々には州が保険料を補助することに賛成の人は77%で、やはり反対の18%を上回っていました。そして、改革法が州内の無保険者を減らすことに成功していると答えた人は71%でした。

 これらのことから多くの州民が改革法を支持しており、その成果を肯定的に評価していることが分かります。


●誰が公的保険に反対してきたか

 しかし、公的保険に反対している勢力があったのも確かです。それでは、どのような主体が反対してきたのでしょうか。公的保険が登場すると、それまで自由に価格を設定できた保険や薬剤の市場が侵されると考える保険会社や製薬会社までは容易に想像されます。しかし最も強い反対勢力のひとつだったのは、実は医師の団体でした。

 もちろん医師と一口に言ってもさまざまな立場があります。概して高度医療や専門的医療をする医師達はヘルスケア改革法に反対していて、プライマリ・ケアに従事している医師たちは賛成しているそうです。それでも大勢としては医師達もやはり、公的保険によって価格が一定程度制限されるようなシステムには、賛同しかねるという傾向にありました。このことから日本で1961年に国民皆保険が実施されたとき、医師の自由裁量権が制限される事への危惧から、日本医師会をはじめとする医師の団体が猛反対したことが想起されます。

 ただアメリカの医療においては、医師の裁量権が既に制限されていることも事実です。ポール・スターが1984年のピューリッツァー賞受賞作『アメリカ医療の社会的変容』で予言したように、アメリカにおいて医師は、もはや自律的な専門職として患者の必要性を判断して医療を行うことはなくなっています。保険会社に治療が保険でカバーされるかどうかとお伺いを立てて、カバーされる方法で医療を行っています。あるいは保険でカバーされない場合は、患者に自費で払えるかどうかを確認して治療内容を決めています。

 「アメリカの医師は、すでに保険会社に規制されているのだから、何をいまさら政府に規制されることに反対するのですか」と、元マサチューセッツ州保険局長で現ハーバード公衆衛生大学院講師の健康保険専門家ナンシー・タンブル氏に聞いてみました。すると、「行政にコントロールされるよりも、保険会社の方がましだと思っているのよ。医師はなにもしなくても高給取りだから、現状が変わらない方がいいと思っているのよ」。そう彼女は答えてくれました。


●NPOの活躍

 ところで、そもそもこのヘルスケア改革法の骨子である、すべての州民が保険を持てるようにするという理念は、州の内外の多くのNPO(非営利組織)やNGO(非政府組織)が、20年来アドボカシー活動を続けて実現させてきたものです。そうしたNPOには「みんなのためのヘルスケア(Health Care For All)」や「コミュニティの触媒(Community Catalyst)」などがあります。

 「みんなのためのヘルスケア」は、医療サービスの受け手、特に弱者が中心のヘルスケア・システムを作り上げることを目標にしたNPOです。納得いく手頃な料金で、それぞれの文化を尊重した質の高いヘルスケア・システムの実現を目指し、マサチューセッツ州内で活動を展開してきました。「コミュニティの触媒」の方は、やはり同様の目標を持ち、全国規模のネットワークで活動する、1997年に設立されたNPOです。

 こうしたNPOは、州政府や連邦政府、消費者団体、政治家、保険財団、病院団体などと緊密なパートナーシップを結び、リーダーシップを与えたり、情報提供などの支援をしたりしながら、ヘルスケア・システムを改革してゆくための働きかけをしています。

 長年「コミュニティの触媒」で皆保険制度の成立のための活動をしてきたディレクターのスーザン・シェリー氏は、改革のためには政治家や行政官などの政策決定者たちに「ヒーローになる機会Hero Opportunity」を与えることが重要だと主張していました。社会的不平等が顕著に現れる健康格差をなくすためにはヘルスケア・システムを改革することが緊要で、その改革に関わることで人々のヒーローになれる。こうしたことを関係者に納得いくように知らせて、実際にヒーローとして扱うことで、彼らの改革への意欲を鼓舞し、政策を大きく動かすことが可能になった、と言っていました。

 前回も記しましたが、当時の州知事ミット・ロムニーは、ヘルスケア改革法成立前夜のウォールストリート・ジャーナル誌の記事において、確かに紛れもなくヒーローの扱いでした。それは、彼をヒーローに仕立て上げたシャリー氏のような立役者達がいたからです。改革法が成立した裏舞台にこうした草の根的なNPOのアドボカシー活動があったことは、特筆に価すると思います。

 シェリー氏はまた、NPO同士の同盟関係も重要だと言っていました。健康格差をなくそう、質の高い手頃な医療を実現させようといった目標を持つNPOには、ヘルスケア・システムの改革を主たる目標とする団体のほかにも、消費者団体、コミュニティ団体、人種的不平等を解消しようとする団体、貧困者団体などさまざまな団体があります。社会的地位も人種・民族も異なる人々で構成されている諸団体は、通常ならば、それぞれの場所でばらばらに活動をしています。

 そこでシェリー氏らの「コミュニティの触媒」は、目標を同じくする諸団体が互いを知り結束できるように集会を設けたり、ニューズレターを発行したりという広報活動をして、NPOの同盟を作り上げていきました。それぞれは小さな団体ですが、それらがひとつにまとまると大きな力になります。政治家達は彼らが投票権を持っていることをよく知っているので、彼らの声に耳を貸さずにはいられません。こうしてヘルスケア・システムの改革は、重要な政治課題となってきたのです。

 マサチューセッツにおいて、このようなNPOの活動がいかにヘルスケア改革法の成立の推進のための役割を果たしてきたかを知ることは、日本で医療改革が展開される際の大きな示唆を与えてくれると思います。

略歴:細田満和子(ほそだ みわこ)
 ハーバード公衆衛生大学院リサーチ・フェロー。博士(社会学)。1992年東京大学文学部社会学科卒業。同大学大学院修士・博士課程を経て、02年から05年まで日本学術振興会特別研究員。05年から08年までコロンビア大学メイルマン公衆衛生校アソシエイト。08年9月より現職。主著として『「チーム医療」の理念と現実』(日本看護協会出版会)、『脳卒中を生きる意味-病いと障害の社会学』
(青海社)


<参考文献>
・Harvard School of Public Health/Blue Cross Blue Shield of Massachusetts Foundation, Massachusetts Health Reform Survey, June 2008.
・Health Care for All, Homepage, http://www.hcfama.org/
・Community Catalyst, Homepage, http://www.communitycatalyst.org/
・李啓充、アメリカ医療の光と影、医学書院、2000。
・李啓充、市場原理が医療を滅ぼす、医学書院、2004。
・Starr, Paul, The Social Transformation of American Medicine, Basic Books, 1982.』

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