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2008年8月21日 (木)

遺族からのコメント

2008年8月21日 晴れ
身の周りは騒々しくなっています。

さて、福島県立大野病院事件の1審無罪が出た直後ですが....この判決を受けて、お亡くなりになった褥婦さんのお父様がコメントを発せられています。御紹介させていただく前に、あらためてお亡くなりになられた褥婦さんと御遺族に深甚なる哀悼の意を表したいと思います。

コメントの全文を引用致します。

【遺族のコメント】(「記者会見用資料」より)

 2007年1月26日の初公判から、「真実の言葉を聞きたい」との一心で、裁判の傍聴を続けてきました。警察・検察が捜査して、裁判になったおかげで、初めて知ったことがたくさんありました。
 私の娘は手術を受けるまで1カ月入院していました。助産師さんが「大野病院より大きな病院に転送した方がいいのではないか」と助言したり、先輩医師が娘とおなじ帝王切開既往・前置胎盤の妊婦を帝王切開して、「大量出血を起こし、処置に困難を来たした」と教えるなど、娘が入院している間、加藤医師には様々なアドバイスがありました。みんな慎重だったのに、なぜ加藤医師だけ慎重さがなかったのか、とても疑問に思いました。  しかし、裁判は手術中の数分間、数時間のことを主要な争点として、進んでしまいました。弁護側の鑑定人として証言をした医師の方々も、加藤医師の医療行為を正当化する意見を述べました。その点をとても残念に思っています。
 加藤医師の逮捕後、私たち被害者が「警察に相談した」とか、「政治家に相談した」という噂が医療界に広がっていると聞いて、とても驚きました。病院から娘を引き取り、姿が残っている間、警察に相談するべきか幾度も自問自答しました。しかし、いろいろと考えて、私たちからは警察に相談しませんでした。娘のために動いてくださり、捜査に尽力された警察・検察の方々には深く感謝しています。この場を借りまして、御礼申し上げます。  一方、医療界からは警察・検察の介入に対する抗議の声があがっています。しかし、娘の事故について、他の機関で警察・検察と同等の調査ができたのでしょうか。助産師さんや先輩医師がアドバイスをしていたことについても、県の事故調査委員会は把握していたのでしょうか。現在も疑問をもっています。
 医療界からは「1万分の1という極めて稀なケース」とか、「現在の医療では救命に限界があった」という声もあがっています。しかし、娘と同様の帝王切開既往・前置胎盤のケースにともなう癒着胎盤の危険性については、厚生労働省の研究班をはじめ、以前からいくつもの報告があります。また、ネットには「医師から2人目は産めないと言われていた」といった事実無根の書き込みがありました。こうした娘の死を蔑ろにする意見や表現は、亡くなってしまったとはいえ、娘に対する人権無視の誹謗中傷と受け止めています。
 この事件を「医療崩壊」や「産科医療」と結びつける議論がありますが、間違っているのではないでしょうか。そういうことを言う前に、事故の原因を追究して、反省すべき点は反省し、再発防止に生かすべきでしょう。医療界に、そのような前向きな姿勢が見えないのがとても残念です。「判決によっては、産科医療から手を引く」といった声も聞こえますが、自分の身内や大切な人が患者だったら、そんなことが言えるでしょうか。
 医療崩壊と結び付ける議論を耳にするたび、「娘は何か悪いことをしただろうか」と怒りを覚えます。娘が亡くなる時点まで、医療には絶対的な信頼を持っている一人でしたが、死亡後は日を重ねるごとに医療に対して不信感を深めています。
 患者も医師も不幸にさせないためには、リスクの高い患者はしかるべき施設に送るなど、しっかりとルールをつくり、守ることが大切です。再発防止を願う一人として、県病院局長宛に要望書を提出するつもりです。

2008年8月20日
福島県立大野病院で最愛の娘を亡くした父

御遺族の方々が、真実を知りたいと望むのはよく理解できるところです。しかし、現在の日本では真実を知りたい、苦しみから解放してほしいと思う御遺族が頼る手段は法廷しかありません。法廷は、合法的な喧嘩の行われる場所であり、原告と被告、あるいは検察と被告双方は都合の悪いコトは隠蔽することになりますし、それが、許される場所でもあるのです。

真実を求めて、法廷に頼らざるを得ない現状は遺族にとっても非常に辛いことではないでしょうか?本当は真実を求めて起訴に至ったのでしょうし....それが、医療崩壊と結び付ける議論となってしまうのですから、「娘は何か悪いことをしただろうか」と感じられるのも共感できるところではあります。

御遺族の医療に対する不信感は法廷での争いを経験してドンドン増大したのではないでしょうか?

そうです。医療紛争を解決する手段として法廷は余りに稚拙すぎます。医師を処罰しても満足は得られないでしょう...。ましてや、処罰してほしいとの思いで臨んだ刑事裁判で相手が無罪になればなおさらのことでしょう...。

これからは、医療過誤を含む医療事故の解決のために法廷ではない別の手段を考えるべきです。そして、その中には、御遺族、あるいは被害にあわれた患者さんに対するサポートが必要です。福島県立大野病院事件においてもそうです。決して、その患者さんを悪くしようと思って治療を行うことはないはずです、そのような思いから医療を行っているのに、このような結果になり御遺族や患者さんとの間に大きな溝ができる....。悲しいことです....。

法廷では解決できないし真実も明らかにならない。

事故が起こったときの患者さんへのサポートが法廷よりももっともっと必要であると感じます。

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コメント

遺族に対する精神的なサポートが必要であることはその通りです。しかし、そこで発生した事象を、遺族が客観的に理解できる信頼できる何かが必要なのでしょう。
 私自身は、父を医療事故で失っておりますが、事情を説明されても理解せず、お墓の前で土下座させるという行動をとられた方の感情は理解できません。不都合な現実について、受け入れることをせず、誰か生け贄を必要とする心情が正当化されては、法治国家として成立しないのではないかとも思います。

投稿: タカ派の麻酔科医 | 2008年8月22日 (金) 13時51分

こんばんは
タカ派の麻酔科医さま

>不都合な現実について、受け入れることをせず、誰か生け贄を必要とする心情が正当化されては、法治国家として成立しないのではないかとも思います。

これにはマスコミの罪が大きく影響していることでしょうね...。こういった行動には、社会的な制裁があってしかるべきと思いますが....現状ではマスコミは追随しているだけですからね...。

投稿: いなか小児科医 | 2008年8月22日 (金) 21時49分

施設が変わっても「結果=不都合な現実」が同じ可能性は確かに多分にあります。調べるほどに、ご家族もそこは少なからず理解されていたのではないでしょうか。
前回帝切+前置胎盤...小児科医としてコメントが何とも言いづらい病態ですが、ご家族が「経過」に納得がいかない点があったか、あるいは元々難しい病態だということが(説明があったにせよ)ご家族までには十分伝わっていなかった、ということだろうと思います。
行われた処置そのものに過ちはないと思いますし、これで有罪は困ります。しかし、このご家族の心境は「生け贄を必要とする心情」とはまったく違うと思いますし、そう捉えたら我々の進歩もなくなるかと。

投稿: Kazu | 2008年8月23日 (土) 04時40分

Kazu様
相手に土下座を強要し、裁判過程を通じて、過失ありきの考えを変えず、報道の前でもおなじ言葉でものを言われています。どうにもならなかった部分を理解せず、娘の死を誰かのせいにせずにはおれず、術者をせめつづける心情は生け贄を求める心情ではないでしょうか?我々の進歩と、この様な感情は関係はないでしょう。我々は目の前の患者が治らないことに、常に触発され技術を研鑽し続けているはずです。

投稿: タカ派の麻酔科医 | 2008年8月23日 (土) 09時21分

タカ派の麻酔科医様
おっしゃりたいことはよくわかります。同業ですので。
単純に、このケースが自分の娘だと考えてみます。かわいい孫が生まれて幸せなイメージが膨らんでいるところから、想定外の術中死亡でどん底へ。後から考えれば、「過失」(=我々医療者からすれば過失ではない範囲の「ターニングポイント」)がいくつか存在している。適正な判断をしていれば娘はなくならなかったはずだ、判断を誤って娘が死んだのだから当然謝るべきである、と考える。
この家族として当然の心理を「生け贄を求めている」と評されれば誰でも不愉快になる可能性があります。おそらく私でもそうでしょう。実際「生け贄」(代わり?)という単純なものではありません。有罪は困りますが、心理の理解は必要だと思います。
この心理を理解し、タカ派の麻酔科医様様がおっしゃるように日々ターニングポイントを反省して次に生かしていくことが肝要と思います。

投稿: Kazu | 2008年8月25日 (月) 08時35分

疑問に思うのは、コメントされているのがいつもお父様、ってとこです。手術前の説明・同意書作成時には夫が同席し、お父様は同席してないんじゃないかと思うのですが?なぜこの女性の夫からのコメントは載らないのでしょうか?

投稿: REX | 2008年8月29日 (金) 16時55分

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