« リケッチア感染症 | トップページ | ある日の患者さん »

2008年8月 5日 (火)

たまんねーな...

2008年8月5日 晴れのち雨

このごろは、夜間の呼び出しが多く...寝不足が続いています。朝晩冷え込んできているので、喘息の児が発作を起こして来院し、入院となることもあります。

さて、医師法21条は異状死体の届出について規定するものですが....現在はその範疇を超えた拡大解釈がなされ、医師は処罰されます。

【2008年7月30日】次のような記事が共同通信社から報道されました。見出しは”医師法違反で罰金30万円 特養ホームの転落死届けず ”でした。

 特別養護老人ホームでストレッチャーから転落した女性=当時(85)=の死亡を警察に届けなかったなどとして、医師法違反と虚偽診断書作成の容疑で書類送検されたさくら病院(福岡市城南区)の男性医師と副院長について、福岡区検は30日までに、医師を医師法違反の罪で略式起訴、福岡簡裁は罰金30万円の略式命令を出した。

 副院長は不起訴処分とし、医師も虚偽診断書作成罪については不起訴となった。検察側は不起訴処分の理由を明らかにしていない。

 福岡県警の調べでは、福岡市中央区の特養ホームで昨年8月、職員が介護の際に女性を誤ってストレッチャーから転落させ、さくら病院で死亡が確認されたが、医師は警察に届けなかったとされる。

 さくら病院の江頭啓介(えがしら・けいすけ)院長は「異状死の届け出については現在、広く論議されている問題であり、特にコメントすることはない」としている。

関連病院とはいえ、別の施設で生じた事故により亡くなられた患者さん。診断に関わったのみの医師が、略式起訴されるのは...納得がいくことではありません....。どのような状況であったか?詳細にわかる訳ではありませんので....これ以上は突っ込むことをしませんが、警察の横暴さを感じずにはいられません。

『ある特養で85歳寝たきりの方を介護師が入浴につれて行き、ストレッチャーの柵をおろしたまま反対側に回ろうとしたとき、入所者が転落し頭部を打撲、系列病院に搬送後死亡。病院は診断書に「病死又は自然死」と記載した。特養では10日後、規定により市に報告し、市は”警察に通報なし”の記載を気にして、警察に届け出るように施設に指導、特養から警察に届けが出された。警察は捜査により病院副院長および医師に診断書虚偽記載と届け出義務違反の容疑をかけた。結局簡易裁判所は担当医の届け出義務違反に罰金30万円の略式命令をだし、そのほかは不起訴になったというものでした。ネットIBというwebニュースで集中的に4回にわたって報道されています。』

なぜ、柵を下ろしたまま反対側に回る必要があったのでしょうか?そこには、現在の介護の現場に潜む人材不足がありそうです。それは、さておき....医師はこのようなときには....警察の手先になって、事件性があるのかどうか?判断する必要があるのでしょうね....。医者が医者してればいい時代は終わりを告げたようです。

『医師の届け出義務違反は21条の拡大解釈によるものです。現場では外傷があり死亡したところまではわかりますが、転落死の事実がわかっていても過失かどうかを判断することは不可能で、過失が犯罪かどうかもはっきりしない。見込みだけで人を訴えることはよほどのことでないと出来ないし、現場の医師一人ひとりで判断は異なる。普通は施設が警察に報告をすると思うが、介護保険法では届け出先は市町村と決まっていて、警察通報は明記されてはいない。細かい事情がわからないのでこれ以上は話を進めないほうがよいでしょう。ただ、救急には救命処置という重要な役割があり、警察や検察が救急の医者を手下だと思って届け出に注文をつけ、勝手な解釈で処罰までされるのはたまんねーなと思います。ともかく特養はこの事件をすみやかに市にとどけ、自らの手で原因究明を行えば、現在の介護現場の問題が浮き彫りになったのに残念な事件です。』

ほんとたまんねーなです。医師が医療の現場の中で、この死には事件性がある、こちらは事件性がないというような判断をつけなければ、刑事事件となる。ということであれば...とんでもないことですね...。医師法21条の解釈はこのままではいけないでしょう。

本日、参照させていただいたMRIC(Medical Research Imformation Center)のメルマガの記事です。

『【2008年7月30日】次のような記事が共同通信社から報道されました。見出しは”医師法違反で罰金30万円 特養ホームの転落死届けず ”でした。

 特別養護老人ホームでストレッチャーから転落した女性=当時(85)=の死亡を警察に届けなかったなどとして、医師法違反と虚偽診断書作成の容疑で書類送検されたさくら病院(福岡市城南区)の男性医師と副院長について、福岡区検は30日までに、医師を医師法違反の罪で略式起訴、福岡簡裁は罰金30万円の略式命令を出した。

 副院長は不起訴処分とし、医師も虚偽診断書作成罪については不起訴となった。検察側は不起訴処分の理由を明らかにしていない。

 福岡県警の調べでは、福岡市中央区の特養ホームで昨年8月、職員が介護の際に女性を誤ってストレッチャーから転落させ、さくら病院で死亡が確認されたが、医師は警察に届けなかったとされる。

 さくら病院の江頭啓介(えがしら・けいすけ)院長は「異状死の届け出については現在、広く論議されている問題であり、特にコメントすることはない」としている。
---------------------------------------------------------------------

 具体例があると事故報告制度の問題が明らかになります。良いチャンスなので、ネットにある情報をしらべ、以下のような事件を知りました。

 ある特養で85歳寝たきりの方を介護師が入浴につれて行き、ストレッチャーの柵をおろしたまま反対側に回ろうとしたとき、入所者が転落し頭部を打撲、系列病院に搬送後死亡。病院は診断書に「病死又は自然死」と記載した。特養では10日後、規定により市に報告し、市は”警察に通報なし”の記載を気にして、警察に届け出るように施設に指導、特養から警察に届けが出された。警察は捜査により病院副院長および医師に診断書虚偽記載と届け出義務違反の容疑をかけた。結局簡易裁判所は担当医の届け出義務違反に罰金30万円の略式命令をだし、そのほかは不起訴になったというものでした。ネットIBというwebニュースで集中的に4回にわたって報道されています。

 医師の届け出義務違反は21条の拡大解釈によるものです。現場では外傷があり死亡したところまではわかりますが、転落死の事実がわかっていても過失かどうかを判断することは不可能で、過失が犯罪かどうかもはっきりしない。見込みだけで人を訴えることはよほどのことでないと出来ないし、現場の医師一人ひとりで判断は異なる。普通は施設が警察に報告をすると思うが、介護保険法では届け出先は市町村と決まっていて、警察通報は明記されてはいない。細かい事情がわからないのでこれ以上は話を進めないほうがよいでしょう。ただ、救急には救命処置という重要な役割があり、警察や検察が救急の医者を手下だと思って届け出に注文をつけ、勝手な解釈で処罰までされるのはたまんねーなと思います。ともかく特養はこの事件をすみやかに市にとどけ、自らの手で原因究明を行えば、現在の介護現場の問題が浮き彫りになったのに残念な事件です。

 第三次試案は介護施設の事故は想定しておらず行政や警察の役割ははっきりしていません。もし病院で同じことがおきたとしたら、地方委員会が調査に入り、たちの悪さを判定することになるでしょう。当然重大な過失として警察に通報し刑事事件の取調べとなります。中央委員会の対応は、“命を預かるという自覚が無い”と常識的に糾弾し、行政指導を県や市を通じて行なうことになります。処罰はしっかり行なわれても事故が減るのは労働条件の改善だったりするので効果があるかは疑問です。現場の状況は無視され、また事故は繰返されるという図式です。

 ニュースでは介護師のことは書かれていないので、肝心なところが判りませんが、そのうちに業務上過失致死の量刑の発表があるのかもしれません。家族ももてないくらい安い給与で、人手の足りない現場で働き、寝たきり要介護度5の人のケアの中で事故を起こし、業務上過失致死の罪科を着て、「重症の人の命を軽くみた」とメディアに糾弾される、これでは介護に身を投じる人はいなくなります。

 介護師の弁護は誰がやるのでしょうか、労働条件の調査を行い、立場を弁護してくれる人はいないように感じます。第三次試案が出来ると、同じ事故でも起きた場所が医療か介護かにより21条の適応が異なるのが気になります。また介護施設で起きたほうが厳しく詮索されることが予想され、司法本位の届け出法のいい加減さを感じます。

 医療や介護の団体の理想的な関わりを考えて見ました。普段から法令順守の指導を行い、事故が起きたら、真相究明、過失の検討と賠償の支払い、報告書の作成、遺族への説明、労働条件のチェック、再発防止策を練って実行する。職能を代表する団体は、こういった一連の作業を指導し、現場がしっかり家族への対応が出来るように支援する、事例を蓄積し問題の根本を尽きとめ、改善を国や保険者にも要求できるというプロの団体がイメージされます。厚労省にまかせてやってもらったのではこういう効果は発揮できません。

 介護の現場にも急性期の医療が関係しています。経済的な理由で医療と介護は分断されていますが、人のお世話という意味では一緒で、事故も似通ったものが生じ、急性期のつけが介護に回ることも少なくありません。医師の職能団体は、介護師の現場にも責任があることを認識し、彼らの労働環境を確保することに注意を払い、政府に働きかける力を持つ必要があると思います。(完)』

|

« リケッチア感染症 | トップページ | ある日の患者さん »

コメント

 同業(小児科医)です。先日久しぶりに覗いてみたら、こちらのブログが復活しており、喜んでおります。
 この件に関しては事故や経過の詳細がわかりませんが、事件性の有無の話ではなく、まずは単純に異常死体を見た医師の判断が問われているように思います。
 問題になってしまったところからすると、少なくとも24時間以内に搬送先の病院を受診していたということはないのでしょう。「搬送後死亡」がCPAかそれに準じるような状況であれば、診断書(検案書)を書く前にやはり警察に連絡して検死を仰ぐところだと思います。また外因死ですので確かに虚偽の記載です。
 介護師の大変さの話が混じっていますが、また別の話です。むしろ適切なタイミングで警察への連絡が入らなかったために、介護師さんの立場がかえって悪くなったかもしれません。
 我々は異常死体を見たら通報するだけで、事件性の有無は警察の判断に任せれば良いと思うのですが、いかがでしょうか。
 よろしければまたおじゃまさせてください。今後ともよろしくお願いします。

投稿: Kazu | 2008年8月 6日 (水) 00時01分

こんばんは
Kazuさま

コメントありがとうございます。

>「搬送後死亡」がCPAかそれに準じるような状況であれば、診断書(検案書)を書く前にやはり警察に連絡して検死を仰ぐところだと思います。また外因死ですので確かに虚偽の記載です。

そうですね....私だったら、このケースはまず検屍をすると思いますが...何故でしょうね?『診断書』を書いてしまったのは?

>関連病院とはいえ、別の施設で生じた事故により亡くなられた患者さん。診断に関わったのみの医師が、略式起訴されるのは...納得がいくことではありません....。

と記しましたが....この医師がスケープゴートにされていないことを祈ります。

投稿: いなか小児科医 | 2008年8月 6日 (水) 20時51分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/101068/42075363

この記事へのトラックバック一覧です: たまんねーな...:

« リケッチア感染症 | トップページ | ある日の患者さん »