気管カニューレの交換
2008年6月5日 曇り時々雨
何らかの原因で人工呼吸が長期間にわたり必要となる患者さんには気管切開を行うことになります。気管切開は気管の中に直接管を留置する手技です。通常、第2~3気管軟骨輪上に実施されます。これは、第1気管軟骨輪の損傷は肉芽形成が起こりやすく第5気管軟骨以下では気管腕頭動脈瘻のような合併症の危険性があるためで、その位置が一番合併症が少ないからです。さて、気管に前から孔をあけて、そこにカニューレという管を留置することになりますが....。これを定期的に交換しなければなりません。その、交換時には結構、気を使うことになります。
気管の後ろ側は薄い皮の様になっており、これを突き破った場合は縦隔、食道に達します。気管切開孔に用いる気管カニューラはその形がカーブしており、こういった合併症を起こしにくくなってはいますが...気管切開孔にも肉芽が形成されるので、徐々に狭くなってきます。カニューラを気管切開孔に通す時に、チカラが必要になってきます...。鈍い感覚で、その部分を通っていくので...嫌な感じなのです。
新聞報道を引用するにあたり、お亡くなりになった85歳女性の患者さん及び御遺族の皆様に深甚なる弔意を表します。
『富山市民病院(泉良平院長)で昨年五月、二十代の男性医師が同市内の女性患者=当時 (85)=に対し、呼吸を確保するための「気管カニューレ」を使用する際に誤って気管 を破るなどして装着したため、女性が窒息死していたことが二日、分かった。同病院から 届け出を受けた富山中央署は、業務上過失致死の疑いもあるとみて慎重に捜査している。』
残念な事故です。お亡くなりになられた患者さんに、哀悼の意を捧げます。
『富山市民病院によると、女性は昨年四月、急性硬膜下血腫のため入院し、血腫の除去手 術を受けた後、集中治療室を経て一般病棟に移った。五月下旬、男性医師が気管カニュー レを交換したが、約三十分後に心肺停止状態になっているのを女性看護師が見つけた。病 院側は心臓マッサージを施すとともに、強心剤の投与などを行ったが、女性は約二時間後 に死亡した。』
急性硬膜下血腫の手術のあと、少なくとも1ヶ月以上に渡り気管切開が必要な状態であるというのは、人工呼吸器が手放せない状態であったのか?それとも、舌根が沈下するため気道確保の方法として気管切開を維持し続けたのか?いずれにしても重症です。気管切開がなければ生きれない状態であったのでしょう...。
『病院側によると、気管カニューレは気管の奥を突き破る不完全な状態で装着され、気道 が十分確保されていなかった。さらに、男性医師は気管カニューレの交換後、正常に呼吸 しているかについて十分な確認を怠った。』
少し悪意を感じてしまうのは仕方がないのでしょうか?「十分な確認を怠った」という表現は、側にいなければ書けないことではないでしょうか?過失はあったかもしれないが、少なくとも悪意をもって、この処置を行った訳ではないでしょう。このような事故は頻度は少ないかもしれませんが、100%起こりえないというものではありません。医療に完全はないのです。結果は悪かったが、最大限の努力をしたと感じる表現はなかったのか?いぶかしみます。
『今回の医療事故は、発生から一年以上を経過しての公表となった。富山市民病院は昨年 二月に医療事故等公表基準を設けおり、患者の死亡時には半年をめどに速やかに公表する ことになっている。同病院は、示談が成立するまで遺族の同意が得られず、公表が遅れた としている。』
これは当たり前のことでしょう!遺族が公開への同意を示さなければ、報道陣に公開することはできません。遺族の同意を得られたならば、半年以内に公開していたと考えます。報道の「医療側を悪者にいしよう」という悪しき意図が見え隠れします。
本日、参照させていただいた記事です。
『◎富山市民病院 気管挿入ミスで窒息死
富山市民病院(泉良平院長)で昨年五月、二十代の男性医師が同市内の女性患者=当時 (85)=に対し、呼吸を確保するための「気管カニューレ」を使用する際に誤って気管 を破るなどして装着したため、女性が窒息死していたことが二日、分かった。同病院から 届け出を受けた富山中央署は、業務上過失致死の疑いもあるとみて慎重に捜査している。
二日の市議会厚生常任委員会(南俊正委員長)で、泉院長が明らかにした。
富山市民病院によると、女性は昨年四月、急性硬膜下血腫のため入院し、血腫の除去手 術を受けた後、集中治療室を経て一般病棟に移った。五月下旬、男性医師が気管カニュー レを交換したが、約三十分後に心肺停止状態になっているのを女性看護師が見つけた。病 院側は心臓マッサージを施すとともに、強心剤の投与などを行ったが、女性は約二時間後 に死亡した。
病院側によると、気管カニューレは気管の奥を突き破る不完全な状態で装着され、気道 が十分確保されていなかった。さらに、男性医師は気管カニューレの交換後、正常に呼吸 しているかについて十分な確認を怠った。
男性医師は当時、医師免許取得後三年目の後期研修中で、気管カニューレの交換は先輩 医師と七回あり、単独では事故のケースが三回目だった。医師は今年三月、県外の病院に 転勤している。
病院側は、事故直後に女性の家族に謝罪、今年五月下旬に示談が成立した。泉院長は厚 生常任委員会と、その後の会見で「大変申し訳ない。今後は安全な医療に努める」と謝罪 した。
今回の医療事故は、発生から一年以上を経過しての公表となった。富山市民病院は昨年 二月に医療事故等公表基準を設けおり、患者の死亡時には半年をめどに速やかに公表する ことになっている。同病院は、示談が成立するまで遺族の同意が得られず、公表が遅れた としている。』
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