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2008年6月19日 (木)

論点のズレ...

2008年6月19日 雨
ほとんど熱帯のスコールといってよいような激しい雨でした。

三重県の整形外科診療所で、点滴を受けた患者さんが体調不良となり、うち一人が亡くなった事件で、患者さんの血液からセラチア菌が検出されましたが、そのセラチア菌が点滴針を穿刺する際に使用する消毒用綿に検出されました。

点滴を調製する際に、ボトルの下面を消毒綿で消毒しますが、その際にセラチア菌がボトル内に混入し、それが調製されてから時間が経過するとともに増殖。患者さんに点滴された際に、敗血症を生じたものと推定されます。

記事は時事通信から...
薄い消毒液使う=脱脂綿取り扱いは素手−点滴患者死亡・三重 6月19日18時1分配信 時事通信
魚拓

『三重県伊賀市の診療所「谷本整形」で点滴を受けた患者らが腹痛などを訴え、女性1人が死亡した事件で、同診療所が点滴室の脱脂綿を消毒する際、メーカーの基準より20倍以上も薄い消毒液を使っていたことが19日、県の調べで分かった。看護師らが脱脂綿を素手で取り扱っていたことも判明。県はずさんな衛生管理が感染の原因になったとみて、さらに詳しく調べている。』

20倍以上も薄い消毒液を使えば、恐らく消毒効果はほとんど期待できないでしょう。ただ、脱脂綿を素手で取り扱っていたのは....どうでしょうか?この事件との因果関係は...難しい。

『県健康福祉部によると、谷本整形では点滴室と中待合室の2カ所で点滴液を調合。注射針の消毒に使う脱脂綿を消毒する際、中待合室では消毒用アルコールを、点滴室では殺菌薬を使っていた。セラチア菌が検出されたのは点滴室の綿だけだった。』

恐らく、殺菌薬もアルコールもともに素手で扱っていたはずです。でも、アルコールの方は検出されていないのですね....。つまり素手で扱うことは直接的に、これらの綿球にセラチア菌を生やす原因にはならないと思われます。ココにちょっとした論点のズレがみられます。マスコミの恐ろしさですね。

『点滴室の殺菌薬は「グルコン酸クロルヘキシジン」5%液。メーカーの使用基準は「10〜50倍希釈」とされていたが、看護師らは1000倍に薄めて使っていた。同部は「この濃度ではほとんど消毒効果がない」としている。』

なぜ、1000倍に薄めて使用する必要があったのでしょうか?単純に考えて、19本分消毒液を節約することが出来るからでしょうね....。それは、この診療所全体の支出を減らすことになり、ひいては自分たちの給料にもヒビクからでしょう。医療費の切り詰めはこのようなところにもひびきます。

『脱脂綿は消毒液容器に入れ、滅菌した水5リットルと殺菌薬5ccを混ぜて作り置きし、綿が少なくなるたびに綿と殺菌薬を補充していた。この際、看護師らは手袋やピンセットを使わずに素手で扱っていたという。』

この作り置きで、消毒綿の中にセラチアが増殖したのでしょうね....。せめて、毎日1回は新しく作り直せば、このようなことは起こらなかった可能性があります。

また、注射針穿刺時に使用する消毒用綿球は現在ではディスポーサブルとなり、一つ一つが袋に封入されています。これを採用しなかったのは、現在の開業医に科せられた「経営の厳しさ」があるものと考えます。こういった裏の部分を丁寧に取り上げてほしいと思います....マスコミの皆様方には。

本日、参照させていただいた記事です。

『薄い消毒液使う=脱脂綿取り扱いは素手−点滴患者死亡・三重
6月19日18時1分配信 時事通信

 三重県伊賀市の診療所「谷本整形」で点滴を受けた患者らが腹痛などを訴え、女性1人が死亡した事件で、同診療所が点滴室の脱脂綿を消毒する際、メーカーの基準より20倍以上も薄い消毒液を使っていたことが19日、県の調べで分かった。看護師らが脱脂綿を素手で取り扱っていたことも判明。県はずさんな衛生管理が感染の原因になったとみて、さらに詳しく調べている。
 県健康福祉部によると、谷本整形では点滴室と中待合室の2カ所で点滴液を調合。注射針の消毒に使う脱脂綿を消毒する際、中待合室では消毒用アルコールを、点滴室では殺菌薬を使っていた。セラチア菌が検出されたのは点滴室の綿だけだった。
 点滴室の殺菌薬は「グルコン酸クロルヘキシジン」5%液。メーカーの使用基準は「10〜50倍希釈」とされていたが、看護師らは1000倍に薄めて使っていた。同部は「この濃度ではほとんど消毒効果がない」としている。
 県の調査に対し、看護師は「中待合室では、患者の出入りが多く、アルコールを使っていた」「アルコールだと皮膚が荒れることもあるため、点滴室では(殺菌薬に)変えた」と証言。県は、看護師らがアルコールの方が消毒効果が高いことを認識しながら、殺菌薬を使ったとみている。
 脱脂綿は消毒液容器に入れ、滅菌した水5リットルと殺菌薬5ccを混ぜて作り置きし、綿が少なくなるたびに綿と殺菌薬を補充していた。この際、看護師らは手袋やピンセットを使わずに素手で扱っていたという。
 これまでの調査で、県は脱脂綿のセラチア菌が注射針を通して点滴液に混入し、作り置きにより増殖したとみている。』

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コメント

いつも読ませていただいています。事故が起こるのは1つだけが原因ということは稀で、複合しておこるといわれています。
(1)混注の際、アルコール性の消毒剤を使わなかった。ボトルのキャップはアルコールで荒れたと文句をいうはずがないですよね。(2)消毒剤の希釈濃度が不適切。取扱説明書の5%グルコン酸クロルヘキシジンの希釈倍数は最大100倍で、それも損傷した皮膚や手術室、病室の消毒など汚染を考慮していない場合です。(3)作成したボトルを不必要に保存した。作り置きも当日使い切っていれば菌の増殖は少なかった。どれかがなければここまでのことは起こらなかったのにと思います。消毒剤を節約することで、どれだけお金が浮いたのでしょう。遺伝子操作した大腸菌を滅菌せず廃棄して、停職となった教授もいましたが。この辺りの節約感覚は異常と思います。

投稿: 666AKS | 2008年6月20日 (金) 11時41分

>(1)混注の際、アルコール性の消毒剤を使わなかった。ボトルのキャップはアルコールで荒れたと文句をいうはずがないですよね

これは点滴を作っていた看護師さんの手に対してのことでしょう.

>消毒剤を節約することで、どれだけお金が浮いたのでしょう。

国の政策による「医療費削減」はいろいろなところに歪みを生じさせています.この病院の所行に問題がなかったとは言いませんが,社会的な背景にも注意しておく必要があるでしょう.これでもまだ国は社会保障費を減額しようとしています.このままではこれから先,もっとあちこちに歪みが生じて問題が噴出するでしょう.その時に「医療者だけ」を責めるようなことはしないで頂きたい.問題の根はもっと深いのです.

投稿: Level3 | 2008年6月20日 (金) 13時00分

こんばんは

666AKSさま
Level3さま

貴重なコメントをいただきありがとうございます。新たなエントリーをたててレスしたいと思います。

投稿: いなか小児科医 | 2008年6月20日 (金) 23時19分

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