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2008年3月10日 (月)

腎生検という手技

2008年3月10日 晴れ
あたたかな一日でした。徐々に春へと季節は移り変わります。

でも、こちらではちょいと遅れたインフルエンザの大流行。また、ロタウィルスにによると思われる急性胃腸炎がちらほら....。午前中は結構な忙しさでした。

昼休みに時間を見つけて、同僚の先生から依頼された腎生検を施行、ほとんどの施設で行われている超音波ガイド下でのバイオプティーガン(生検用の針)を使用して行います。エコーである程度の腎臓位置決めを行った後、広範囲に背部(腰部を中心に...)を消毒。ドレープにて術野を確保した後、消毒された生検用プローブ(プローブ:超音波エコーで臓器を見るための探触子)を取り出します。超音波装置の本体につないで、更に詳細な位置決めを行います。狙う部分は腎臓の下の端:下極です。

位置が決まれば、皮下から腎皮膜に近い部分まで局所麻酔を行います。これも超音波でみながら行っています。以上の処置が終われば、いよいよ生検にうつります。腎臓の中心部に近い部分には大きな血管があり、その部分を穿刺すると大出血の危険性が高まります。この部分を避けるため腎臓の長軸を超音波で描出したのち、やや外側にプローブを動かし腎臓の中心部を避けるようにします。生検用の針(バイオプティーガン)は太い針なので皮膚を穿刺する時に、なかなか入らず勢いがついて深く入ることもありますので、事前にメスで皮膚を切開します。

腎臓は呼吸により上下の動きをしますので行う際には息止めをしていただき腎臓の動きを止めた上で行います。必要な材料は2から3回程度の採取でとれることが多いです。助手の先生に局所の圧迫を依頼して、私は材料とともに検査室に....。光顕、蛍光顕微鏡、電顕用のそれぞれの材料を準備して病理に送付します。

以前にも言及しましたが。→拙ブログ:腎生検の適応

以前に比べて出血等のリスクは減少しています。しかし、100%安全ではない手技で、やはり100例から1000例に1例程度輸血が必要となる様な出血性合併症が起こりえます。ただ、腎臓病の治療方針の決定や疾病の診断、予後の推定等において必要不可欠な手技でもあります。血液検査や尿検査ではある程度の病型が解っても、確実な診断に至らないのが腎臓病でもあるのです。

小児の特発性ネフローゼに関しては微小変化型以外を思わせる様な、低補体、持続性血尿などがみられない場合は通常ステロイドによる治療を優先し、ステロイド抵抗性が疑われた場合に腎生検を施行しますが....その他の成人のネフローゼや、その他の腎疾患の多くは治療を行う前に腎生検を行うことが多いといえます。

医療の常として、100%の安全はないということがありますが、腎臓病の患者さんのうち、この手技が必要な方は、腎生検によりかなりの利益を得ることができます。そして、必要でない患者さんにはそもそもこのような手技は勧めていません。最近の研究では、『腎生検の症例数が多い施設ほど合併症が少ない』というものもある様です。

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コメント

『腎生検の症例数が多い施設ほど合併症が少ない』

というのはどうなんですかね?合併症をどこまでそう言うのか定義から考えないといけませんが、腎生検を無茶苦茶やっている施設には当然研修にやってくる医者も多く、もちろん彼らが直接手を下しますし、そうやって経験した医者が各地に散らばるわけで・・・

ちなみに清瀬小児病院は14G針というものすごく太いものを使用していたため、結構激しい血腫をつくっていました。私は今18Gで刺していますが、やはり比べものになりません。

投稿: クーデルムーデル | 2008年3月11日 (火) 09時09分

クーデルムーデルさま

コメントありがとうございます。
うろ覚えの記憶で書いたので、ちょっと調べてみようと思い、探したのですが文献が見つかりません....(悲)

ただ、読んだ当時の感覚では、確か、小児腎か日腎の調査で、生検を年間何例以上する群とそれ未満の群に分けて、輸血を伴う様な出血性合併症の数を比較していたように思えます。

そして、年間何例以上行っている施設とそれ未満の施設の間で、件の出血性合併症の比率で差があったというものであったような気がします。

そして、それを読んだ時には、私のところのような年間数例の施設では....合併症が多いんだな??なんて悲しく思った記憶があります。

でも、クーデルムーデルさまの言う通り、術者の技量によるものと思うし、それまでにどれだけ経験して技術を自分のものにしているか?これが重要だと感じます。

14Gはスゴいですね....。経験がありませんね。私も18Gでやってます。

投稿: いなか小児科医 | 2008年3月11日 (火) 21時29分

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