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2007年7月

2007年7月26日 (木)

腎生検の適応

本日2稿目です。

横浜であった、日本小児腎臓病学会。休みがとれず行けませんでした。その抄録をながめていると...慢性腎炎の中の一つの病態であるIgA腎症について興味深い発表がありました。まずは、IgA腎症についてですが...

IgA腎症は慢性糸球体腎炎の病態の一つで、日本人においては慢性腎炎の約40%を占めるとされています。従来、予後良好の疾患とされてきましたが、約20年の観察で、実に約40%が末期腎不全に至り、透析導入や腎移植等の腎代替療法が必要となります。その診断は、腎生検という腎臓の組織を一部採取して、顕微鏡で観察する検査にて、特徴的なメサンギウムへのIgA沈着が観察されることによりなされます。症状は、血尿、蛋白尿で、初期には自覚症状はないため、学校検尿や職場の検尿等でチャンス血尿、チャンス蛋白尿として見つけられることがあります。また、上気道感染時などに、肉眼的血尿発作をおこすことがあり、これを契機に見つかることもあります。悪化が予測される因子は、持続的な高度の蛋白尿、高血圧、初診時において腎機能障害がみられることなどがあげあれますが、そのような場合に腎生検を行い診断の確定、重症度の確定を行い、治療の要否が決められることが多い様です。腎生検の適応となる基準は各施設でまちまちですが、一般的には持続的蛋白尿がその基準となることが多い様です。治療に関しては、ステロイドや抗血小板剤、抗凝固剤、免疫抑制剤などを組み合わせて行うカクテル療法や扁桃摘出術を組み合わせる施設もあります。

そして、腎生検という検査ですが....

腎生検は、腎臓の組織を実際に採取して鏡検することにより、腎疾患の確定、腎疾患の重症度確定、さらには予後の推定を行う腎疾患診療のためにはなくてはならない検査です。ただし、腎臓は体全体の約1/5程度が流れる血流の豊富な臓器で、組織を採取する場合に出血する事故が起こりえる臓器でもあります。以前は、silverman針という生検針で腎臓の位置を画像等で特定せず(あるいはX線造影下に)に生検を行っていましたが、現在では超音波ガイド下にバイオプティーガンという自動的に必要な組織を採取する生検針を使用して行うことが多くなってきました。出血事故の可能性の少ない場所を狙って、生検することができる様になったため、以前にくらべ格段に安全性は高まってきています。しかし、100%の安全はなく、100例から1000例に1例程の頻度で輸血が必要となる様な出血事故が起きる可能性があります。このリスクと、生検の必要性を天秤にかけてやはり利益が大きいであろうという場合に生検を勧めることになります。

抄録を読んでいて生検の適応の基準を見直す必要があるだろうと感じたのは....以下にあげる発表です。

軽度蛋白尿を呈するIgA腎症の予後

【目的】成人においてlgA臀症は軽度蛋白尿しか呈さずとも病理組織が必ずしも軽症ではないことが報告されている。小児でも腎生検の適応を含め議論され始めており、自験例での検討を報告する。
【対象と方法】1993年4月から2003年3月までの間に腎生検によりlgA腎症と確定され、生検後3年以上経過を観察し得た38例のうち、初回生検までに尿中蛋白/クレアチニン比(U-P/Cre)がO.5未満であった19例(男7例、女12例)につき後方視的に検討した。症例はU-P/CreがO.3未満のA群とO.3以上0.5未満のB群に分け、病理組織および治療とその予後について検討した。
【結果】A群は12例のうちminor abnormality 2例、 focal mesangial proliferation10例であった。 B群は7例のうちminor abnormality 1例、 focal mesangial proliferation 4例、diffuse mesangial proliferation 2例であった。半月体はA群1例B群3例、癒着はA群7例B群5例に認めた。治療は当時の考え方もあって多岐に渡り、ステロイドパルス療法やウロキナーゼパルス療法、免疫抑制剤を含むカクテル療法、ジピリダモール単独かACEIとの併用療法などがあったが、A群では怠薬によりnephrotic nephriticとなった1例を除き11例で蛋白尿が陰性化した。B群ではステロイド未使用の2例で蛋白尿が陰性化しなかった。
【考察】小児のlgA腎症でも成人と同様に軽度蛋白尿しか認めない症例に病理組織上予後の不良な例が含まれることが示唆された。治療としてはU-P/Creが0.3未満であればジピリダモールとACEIの併用、0.3以上O.5未満でactivityのより強いものにはステロイドを考慮する必要があると思われた。

示唆に富む演題ですね。軽度蛋白尿でもしっかり組織を確かめるべきであろうと...。今後の対応を少し変えて行こうと思います。

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