板挟み...
2007年6月19日 雨
蒸し蒸しした天候が続いています。昨夜は、汗だくだくで寝ていました...。
さて、宗教団体「エホバの証人」はその教義から、信者に輸血を受けることを禁止することがあります。その信仰上の理由を無視して、輸血した場合、例えそれが救命のために必要不可欠なものであったとしても訴訟を起こされた場合、敗訴することがあります。(本日引用させていただいた記事の中にその判例のことも書かれています。)
この判例ののち、全国の医療機関では「エホバの証人」信者に対する輸血に関する取り扱いマニュアルができたはずです。そして、信仰上の理由から、本人そして家族を含めた「輸血をしないでほしい」という意思が明確であるならば、輸血を行わず代替手段でのぞむというのが一般的であろうと考えます。それほど、患者さんの意思は医療の現場において重要なものであるのです。
そして、その選択ゆえ、その患者さんが命を落とすことになったとしても、我々医療者は、その意思を尊重しなければならないのです。
<エホバの証人>手術中に大量出血、輸血受けず死亡 大阪 6月19日19時57分配信 毎日新聞
キャッシュ
この記事にも悪意が感じられます。
『信仰上の理由で輸血を拒否している宗教団体「エホバの証人」信者の妊婦が5月、大阪医科大病院(大阪府高槻市)で帝王切開の手術中に大量出血し、輸血を受けなかったため死亡したことが19日、分かった。病院は、死亡の可能性も説明したうえ、本人と同意書を交わしていた。』
妊婦さんが亡くなられたのは本当に残念なことです。心より御冥福を祈らせていただきます。しかし、死亡の可能性も説明した上、輸血しないことに同意しておられる以上、我々医療者は輸血を行うことはできません。そして、医療者は一般的な生命倫理と患者さんの希望の間に「板挟み」となります。
『一方、同病院の医師や看護師からは「瀕死(ひんし)の患者を見殺しにしてよかったのか」と疑問の声も上がっている。』
本当にそのようなことをマスメディアの方にお話しした医師や看護師の方がおられたのでしょうか??おられたのであれば、「では、自分でおやりなさい」と言うことになるでしょうし、記者お手製の「作られた報道」であれば、同新聞社の信憑性に関わる問題であろうと思います。術中大出血した患者さんに、輸血しないで、みつづけるということがどんなに惨いことか!!医師であれば、胸が潰れるぐらいに辛いことであろうと感じます。輸血しないでみつづけるコトで、その先には「死」が待っています。術中大出血しても、そして生命に危機が及んでも、輸血はしないでほしいという同意書がなければ、輸血は行っている。そして場合によっては、救命できたかもしれません。
この記事を書かれた記者の方には、どうかそのような究極の判断の場に、一度でいいから身を置いてほしい。そうすれば、この記事が大衆に与える影響を感じ取ることができるでしょう。
本日、引用させていただいた記事です。
『<エホバの証人>手術中に大量出血、輸血受けず死亡 大阪
6月19日19時57分配信 毎日新聞
信仰上の理由で輸血を拒否している宗教団体「エホバの証人」信者の妊婦が5月、大阪医科大病院(大阪府高槻市)で帝王切開の手術中に大量出血し、輸血を受けなかったため死亡したことが19日、分かった。病院は、死亡の可能性も説明したうえ、本人と同意書を交わしていた。エホバの証人信者への輸血を巡っては、緊急時に無断で輸血して救命した医師と病院が患者に訴えられ、意思決定権を侵害したとして最高裁で敗訴が確定している。一方、同病院の医師や看護師からは「瀕死(ひんし)の患者を見殺しにしてよかったのか」と疑問の声も上がっている。
同病院によると、女性は5月初旬、予定日を約1週間過ぎた妊娠41週で他の病院から移ってきた。42週で帝王切開手術が行われ、子供は無事に取り上げられたが、分娩(ぶんべん)後に子宮の収縮が十分でないため起こる弛緩(しかん)性出血などで大量出血。止血できたが輸血はせず、数日後に死亡した。
同病院は、信仰上の理由で輸血を拒否する患者に対するマニュアルを策定済みで、女性本人から「輸血しない場合に起きた事態については免責する」との同意書を得ていたという。容体が急変し家族にも輸血の許可を求めたが、家族も女性の意思を尊重したらしい。
病院は事故後、院内に事故調査委員会を設置。関係者らから聞き取り調査し、5月末に「医療行為に問題はなかった」と判断した。病院は、警察に届け出る義務がある異状死とは判断しておらず、家族の希望で警察には届けていない。
エホバの証人の患者の輸血については、東京大医科学研究所付属病院で92年、他に救命手段がない場合には輸血するとの方針を女性信者に説明せずに手術が行われ、無断で輸血した病院と医師に損害賠償の支払いを命じる最高裁判決が00年に出ている。最高裁は「説明を怠り、輸血を伴う可能性のあった手術を受けるか否かについて意思決定する権利を奪った」としていた。【根本毅】
最終更新:6月19日19時57分』
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» 好き好んで「見殺し」にする医師がいるとでも言うのか! [うろうろドクター]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070619-00000097-mai-soci
{{{
<エホバの証人>手術中に大量出血、輸血受けず死亡 大阪
6月19日19時57分配信 毎日新聞
信仰上の理由で輸血を拒否している宗教団体「エホバの証人」信者の妊婦が5月、
大阪医科大病院(大阪府高槻市)で帝王切開の手術中に大量出血し、
輸血を受けなかったため死亡したことが19日、分かった。
病院は、死亡の可能性も説明したうえ、本人と同意書を交わし..... [続きを読む]
受信: 2007年6月20日 (水) 00時05分
» 医療報道を変えるヒント [五里夢中於札幌菊水 ]
先日このような報道があった。既に知っている方も多いと思う。 [続きを読む]
受信: 2007年6月21日 (木) 10時54分
» エホバの証人 [健康、病気なし、医者いらず]
「エホバの証人」って、医療関係者であれば、
ほとんどみんな知っているんですが。
一般の人達は、そんなに知らない人も多いと思います。
簡単に言うと、「輸血しない」って言っている宗教団体っすね。
その中でも、自己... [続きを読む]
受信: 2007年6月21日 (木) 21時43分
» エホバの証人と尊厳死 [天国へのビザ]
先日、エホバの証人の信者が輸血を受けずに死亡したという報道がありました。 エホバの証人:手術中に大量出血、輸血受けず死亡 大阪毎日新聞 2007年6月19日http://www.mainichi-ms... [続きを読む]
受信: 2007年6月22日 (金) 01時12分


コメント
これ、麻酔科医はたまらなかったろうな。
麻酔科医はモニター機器を通して、患者の体と会話が出来るのだ。心は輸血を拒否しても、体は輸血を欲している。体の叫び声を聞きながら、麻酔科医は何を思っただろうか。
投稿 bamboo | 2007年6月19日 (火) 22時52分
bambooさま
こんばんは
>体の叫び声を聞きながら、麻酔科医は何を思っただろうか。
つらいですね。想像するだけでも...。たまらんでしょう。
>>「瀕死(ひんし)の患者を見殺しにしてよかったのか」と疑問の声も上がっている。
と書くのは簡単ですが...余りに無慈悲です。
投稿 管理人 | 2007年6月19日 (火) 23時18分
「本当にそのようなことをマスメディアの方にお話しした医師や看護師の方がおられたのでしょうか?」
先生の仰るとおりで、毎日新聞ですから捏造した可能性は高そうですね。
そうでなければ、コメントした「同病院の医師や看護師」の名前を公表して欲しいものです。
「輸血すれば助けられたかもしれない患者を、見守る事しか出来なかった」医師や看護師などは、「胸が締め付けられる」心境ではなかったかと思います
トラックバックさせて頂きます。
投稿 うろうろドクター | 2007年6月20日 (水) 00時20分
こんばんは
気楽な立場から下界(外科医)を見下ろしている偉い方には患者を「見殺し」にしなければならなかった医療従事者のつらさなんてわからないのでしょうね。
投稿 ほっしー | 2007年6月20日 (水) 04時01分
このニュースは本当に辛いです。担当した医師の気持ちを想像するとたまりません。
毎日の記事には大変憤りを感じます。
『一方、同病院の医師や看護師からは「瀕死(ひんし)の患者を見殺しにしてよかったのか」と疑問の声も上がっている。』
何をねらってこういうことを書くのでしょうね。非常に悪意を感じます。
担当医に謝罪をして欲しいです。
投稿 春野ことり | 2007年6月20日 (水) 05時10分
こんにちわ
doraは「エホバの証人」の方の麻酔を何度となくかけてきましたが、幸いなことに輸血が必要なほど出血したことはありません。。ですが、もし、自分がその当事者だったらと考えると、恐ろしくなります。。
実際、麻酔科医として、「エホバの証人」の方の麻酔はすごくイヤなものです。できれば、避けて通りたいと思っています。。それを、『見殺しにしてよかったのかと疑問の声があがっている』なんて言われたら、誰が麻酔をかけようと思うでしょう?
『疑問』と言っていますが、患者さんを意図的に見殺しにしようと思っている医師なんてこの世にいません。。
患者さんのご冥福をお祈りするとともに、当該麻酔科医の先生にも、その苦悩と苦労を労いたいと思います。
投稿 doradora | 2007年6月20日 (水) 09時34分
毎日新聞に質問を送りました。
返事がありましたら、ご報告します。
ほっしーさんの文章を無断で借用しました。
事後承諾ですが許して下さいね。
ーーーーーー
記事の中で、『同病院の医師や看護師からは「瀕死(ひんし)の患者を見殺しにしてよかったのか」と疑問の声も上がっている。』とありましたが、
本当にこんな心無い発言をした関係者が、同じ病院に居たのでしょうか?
それも複数?
もし本当に居たのなら、年齢・性別だけでも教えていただきたい。
気楽な立場から下界(外科医)を見下ろしている、あなた方マスコミには
患者を「見殺し」にしなければならなかった、担当医の辛さなんてわからないのでしょうね。
お返事お待ちしています。
ーーーーーーー
投稿 うろうろドクター | 2007年6月20日 (水) 10時53分
『何よりも保証されなければならない患者の権利とは、その自己決定権である。たとえ治療を拒否することが、死を招くなど「不利益」な結果を招来することがわかっていたとしても、患者が自ら選んだ選択に対して、医療の側がそれを拒むことはできないのである。」
↓
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2007dir/n2728dir/n2728_05.htm
投稿 雪の夜道 | 2007年6月20日 (水) 13時11分
この報道だけでもわかりますね。
患者の命を患者の叫びを受け止めているのは現場の医療者であって、マスコミではないということです。バカにするのもほどがあります。
ひとつ教えてください。
エホバの証人信者の子供に輸血が必要な場合、子供自身が信者でないならば輸血をしてよいのでしょうか。そこのあたりが法的にどうなのか、不勉強なので教えて頂ければ幸いです。
投稿 クーデルムーデル | 2007年6月20日 (水) 14時54分
こんにちは
みなさま
コメントありがとうございます。
クーデルムーデルさまのコメントには非常に重要な御質問が含まれていますので...先にレスをさせていただきます。
http://www.yabelab.net/blog/2007/06/20-101839.php
に議論があります。少なくともアメリカでは親が件の宗教に入信していても、子どもは輸血可です。お咎めはありません。
そして、モトケンさんの認識も、日本であっても輸血可である。との認識です。我々の目の前にそのような症例が現れた場合は、「躊躇せず」...でよいのかもしれません。
投稿 管理人 | 2007年6月20日 (水) 15時59分
はじめまして
この報道で、今後エホバの証人の患者さんの手術を受ける麻酔科医や外科医がいなくなってしまうのではないかと心配してしまいます。
恐らくご遺族の次に辛い思いをしてるのに・・・
投稿 HDsurgery | 2007年6月20日 (水) 16時33分
「見殺し」という言葉は、医療関係者は使っていないと思うんですけどねー。
誘導尋問はされたかもしれませんが。
毎日新聞だけが、こういう表現を使っているのが、気になります。
投稿 Dr. I | 2007年6月21日 (木) 21時41分
こんばんは
みなさま 多くのコメントをいただきありがとうございました。
うろうろドクターさま
>「輸血すれば助けられたかもしれない患者を、見守る事しか出来なかった」医師や看護師などは、「胸が締め付けられる」心境ではなかったかと思います
同感です。この気持ちを一回は味わってほしいと思います。この記事を書かれた記者の方には...。
また、質問状を送付されたのですね...どのような返事が返ってくるか?これは楽しみですね...。
ほっしーさま
>患者を「見殺し」にしなければならなかった医療従事者のつらさなんてわからないのでしょうね。
まったくもって『その通り』です。
春野ことりさま
>何をねらってこういうことを書くのでしょうね。非常に悪意を感じます。
そうなんです。これは、大衆受けする記事であるのでしょうけどね...あんまりバカにしてますよね...。
doradoraさま
>doraは「エホバの証人」の方の麻酔を何度となくかけてきましたが、幸いなことに輸血が必要なほど出血したことはありません。。
そうなんですか。このようなことがあると心が痛みますよね...。
>患者さんのご冥福をお祈りするとともに、当該麻酔科医の先生にも、その苦悩と苦労を労いたいと思います。
ホントにそう思います。関わった方たち、みんな心に傷を負ったことでしょう...。
雪の夜道さま
>何よりも保証されなければならない患者の権利とは、その自己決定権である。
現在は全てがコレですよね。充分な説明と患者さんの承諾。患者さんが、『死ぬことになっても輸血はしないで欲しい』という意思をはっきりさせていたのであれば...それに従うしかないでしょうし、その主治医がやはり輸血するということであれば、別の医療機関に紹介しなければなりません。(といっても、どこにも紹介できないかもしれません、大学で行っている所考えるとですね...)
投稿 管理人 | 2007年6月21日 (木) 23時29分
こんばんは
HDsurgeryさま
>この報道で、今後エホバの証人の患者さんの手術を受ける麻酔科医や外科医がいなくなってしまうのではないかと心配してしまいます。
影響は確実にあると思います。受ける麻酔科医や外科医は減少するでしょうね....。
Dr.Iさま
>毎日新聞だけが、こういう表現を使っているのが、気になります
過激ですよね...毎日新聞。
投稿 管理人 | 2007年6月21日 (木) 23時41分
クーデルムーデルさんへ
>エホバの証人信者の子供に輸血が必要な場合、子供自身が信者でないならば輸血をしてよいのでしょうか
日本医師会の生命倫理委員会?懇親会?の答申では『親とは別人格であるので輸血してよい』という趣旨です。
しかし私の知る限り、国内の裁判の判例はありません。
したがって法的にはどうなるか分かりません。
個人的には、こどもの輸血を拒否したために生命に危険が及ぶことになれば、虐待の一種といってよいと考えます。
一時的に親権を停めて輸血することが可能かもしれません。
投稿 小児科開業医41才 | 2007年6月22日 (金) 11時19分
>クーデルムーデル様、小児科開業医41歳様
児童精神科医のafcpと申します。
こどもの事例に関してですが、現在日本には親権の一時停止という制度はありません。このためもし行うとすれば、親権喪失宣告の申し立てと保全処分の申請を行い、手術終了後に申し立てを取り下げるというアクロバットをやることになるようです。
以下の弁護士さんのブログに、同様の事例についての詳細な記事があります。ご参考まで。
satosholog: 親権停止のニュース
http://www.satosho.org/satosholog/2006/10/post_e63d.html
投稿 afcp | 2007年6月22日 (金) 14時41分
こんばんは
カルトと医師をいっぺんに叩ける!。メディアにとって、こんな美味しい事件は無いでしょうね。
誤解を承知で1ガン患者として言わせてもらえば、少なくともエホバの信者は、たとえ偏ってはいても確たる死生観を持っていると思います。医療は万能であるべきで死んだら訴えてやると考えている患者よりは、シンパシーを感じます。死生観をコントロールしたい国家やメディアにとっては、それが脅威なんじゃないでしょうか。
投稿 最凶 | 2007年6月22日 (金) 22時33分
こんばんは
小児科開業医41才さま
afcpさま
一部、コメントの宛先が違っていましたのでこちらで訂正させていただきました。また、afcpさまの示されたリンクをHTMLタグにて直接飛ぶ様に修正させていただきました。
投稿 管理人 | 2007年6月23日 (土) 00時23分
最凶さま
>少なくともエホバの信者は、たとえ偏ってはいても確たる死生観を持っていると思います。医療は万能であるべきで死んだら訴えてやると考えている患者よりは、シンパシーを感じます。
これ共感するものがあります。入信されておられる方は結構みなまじめで、攻撃性がないような方たちが多いように感じます。医療に要求するものはチト、キツいですが...。『嫌悪感』をいだく方たちではありません...。
投稿 管理人 | 2007年6月23日 (土) 00時31分