« レインマンとサヴァン症候群 | トップページ | フライト »

2007年3月25日 (日)

天秤にかける

2007年3月25日 晴れ
医師は、目の前の患者さんに対して、治療を考える時に望ましい作用(効用)と望ましくない作用(副作用)を頭の中の天秤にかけて判断をしていきます。これは、クスリを処方する場合もそうですが、何らかの手術を行い場合もそうです。そして、現在は大規模な試験により得られるEvidenceにより、「この疾患に、この治療を施すことによって何%の確率で治癒します」といったデータが論じられ、治療の導入に役立っています。
また、治療の導入にはその他の因子も大きく影響します。その疾患で、死に至る可能性が非常に高いものであれば何とかして救ってほしいし、医師も何とかしたいと思うのではないでしょうか...。

さて、話は変わります。第1次大戦のころ、1918年、アメリカのシカゴより始まったスペイン風邪は実に感染者6億人、死者4000~5000万人という未曾有の大惨事となりました。このスペイン風邪ですが、高病原性鳥インフルエンザから人間への感染力を獲得した新型インフルエンザの一種であったと推定されています。インフルエンザは周期的に大きなウィルスの変異を来たし、人間への感染力を獲得すると、大流行(パンデミック)がおこり多数の人々が亡くなるといったことを起こすウィルスです。現在、アジアの各地(日本も含めて)で高病原性鳥インフルエンザが流行し、鳥→ヒトへの感染が報告されていますが、これが一旦ヒト→ヒトへの感染が確立されれば多くの死者を出すパンデミックとなることが予想されます。
鳥インフルエンザの鳥→ヒト感染では、約50%以上の死亡率とされていますが、ヒト→ヒト感染が確立されるまでに死亡率は若干下がるであろうとは予測されている様です。しかし、通常のインフルエンザとは異なり、死亡率は数%以上と非常に危険なものになるであろうと考えられています。
スペイン風邪の場合、その死因は「電撃性肺炎」「嗜眠性脳炎」と当時の言葉で表現される様な、「急速に進行し、呼吸不全を伴うような重症肺炎」「急性脳症、脳炎」といった状態が多くを占めていたようです。医療の世界では「サイトカインストーム」と呼ばれる状態が起こるとされている様です。そして、発症した場合は現在の医療をもってしても救命は難しい病態であるのではないかと....。

我々にできるのは、予防と感染拡大の阻止ではないかとも思います。新型インフルエンザに対するワクチンは、既に来シーズンからは使用できるかもしれません。しかし、その供給量は、はっきりしません。全ての方々にということは不可能であると思います。実際に、流行が起こった場合に、感染拡大を予防するため各都道府県はタミフルを備蓄していますが...ここにきて、厚生労働省はじめマスコミ各社のタミフルバッシングです。

10歳から19歳までの児には処方を控えるようにとの通達ですが...新型が流行した場合、予防のために服用するのも控えるのでしょうか???私なら、自分の子供には飲ませます。作用と副作用、天秤にかけてみると明らかに作用の方が重いと思えるからです。

本日、参照させていただいた記事です。

『インフルエンザ治療薬「タミフル」の10代患者への投与中止を受けて、新型インフルエンザ対策を話し合うため今月26日に開かれる厚生労働省の専門家会議でも、この問題が議論される見通しとなった。

 タミフルの備蓄は政府が進める新型インフルエンザ対策の柱の1つで、厚労省は「備蓄方針に変わりはない」としているが、専門家の間でこの問題で共通認識を得る必要があると判断した。ただ、今後の調査でタミフルと異常行動との因果関係がはっきりすれば、10代への投与見直しなど、国の新型対策が修正を迫られる可能性も出てくる。

 専門家会議で正式決定される見通しの新型インフルエンザ対策指針案は、タミフルを治療の第1選択薬と位置付けている。国は既に都道府県などとともに2500万人分を目標に備蓄を進めているほか、発生初期に患者周辺に予防投与するため300万人分の費用も確保した。

 厚労省の滝本浩司(たきもと・ひろし)・感染症情報管理室長は、新型の脅威の大きさを火事にたとえ「ぼやではなく大火事に備えての備蓄だ。備蓄の方針に変わりはない」と強調する。

 国はタミフルと同じノイラミニダーゼ阻害剤のリレンザも備蓄しているが、量はタミフルに比べ圧倒的に少ない。また、流通量が少なく、飲み薬のタミフルと違って吸入薬のため扱いにくいという指摘もあり「タミフルをリレンザに置き換えるのは不可能だ」(厚労省)という。

 新型対策の専門家会議議長の岡部信彦(おかべ・のぶひこ)・国立感染症研究所感染症情報センター長も、重症化する恐れが大きい新型インフルエンザの特殊性を強調する。「通常のインフルエンザではタミフルは歯を食いしばってでも飲まなければならない薬ではないが、新型は致死率が高くなる可能性があり、その場合はたとえ10代でも使うだろう」と岡部さんは話す。

 ただ、岡部さんは「もし仮にタミフルが悪いとなれば、10代に対しては予防投与はやめるとか、学校閉鎖を優先させるとか作戦を変えなければならない。因果関係を早く明らかにしてほしい」と話している。』

|

« レインマンとサヴァン症候群 | トップページ | フライト »

コメント

 このバッシングのため、リスクの高い子供へのタミフル処方も難しくなりました。はっきり申し上げ、10代の元気な子供達にタミフルなんて必要ないんです。リスクの高い家族と同居しているとか、本人がリスクのある児である場合でなければ、加湿をかけて寝ていれば済むのです。

 本当に必要な人は誰なのか、そういった議論をすべきです。そうしないと先生のおっしゃるとおり大変な疾患を前にして打つ手を失いかねません。

投稿: クーデルムーデル | 2007年3月26日 (月) 13時25分

こんばんは
クーデルムーデル さま

コメントをいただきありがとうございました。
また、返答が遅れ申し訳ありません。

>本当に必要な人は誰なのか、そういった議論をすべきです。そうしないと先生のおっしゃるとおり大変な疾患を前にして打つ手を失いかねません。

まったく仰る通りに思います。新型のインフルエンザに関しては、タミフルを予防として使用するという厚労省の方針は示された様です。スペイン風邪やアジア風邪のようなパンデミックが起これば、死亡率は10%程度ともいわれますので、異常行動云々とはいってられないでしょうね....。

投稿: 管理人 | 2007年3月29日 (木) 22時28分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/101068/14401987

この記事へのトラックバック一覧です: 天秤にかける:

« レインマンとサヴァン症候群 | トップページ | フライト »