« 不都合な真実 | トップページ | お詫び...(誤解) »

2007年1月18日 (木)

過労死

本日2稿目です。

日本の一部の地域では、ここまで周産期を支える医師が追いつめられています。産科ではその訴訟リスクの高さなどにより...なり手は減る一方です。そして、福島県立大野病院や奈良県大淀町立病院での事件などでの、「敵の首をとった」のごとくのマスコミによる医療バッシング。これでは、後進の医師を育てることはできません。

そして、その中で起こった産科医の過労自殺。河北新報から...。

(上)崩壊の瀬戸際/減る産科医 忙殺の連鎖

『「5日と2時間」。通知書類には直前の9カ月半に取ったわずかな休日数が記されていた。東北の公立病院に勤めていた産婦人科医。2004年、過労死の認定を受けた。亡くなったのは01年暮れ。自ら命を絶った。53歳だった。』

『亡くなる半年前、医師5人だった産婦人科で1人が辞めた。後任は見つからない。帰宅は連日、夜の10時すぎ。昼食のおにぎりに手を付けられない日が増えた。
 床に就いても電話が鳴る。「急変した。診てもらえないか」。地元の開業医や近隣の病院からだった。「患者さんのためだから」。嫌な顔一つせず、職場へ舞い戻った。
 心身の負担は限界に達しつつあった。ようやく取った遅い夏休み。1人の患者が亡くなった。「自分がいたら、助けられたかもしれない」。食は細り、笑顔も消えた。
 「つらいなら、辞めてもいいよ」。見かねた妻が言った。「自分しかできない手術がずっと先まで入っている」。そんな責任感の強い医師が死の前日、同僚に漏らした。
 「もう頑張れない」』

周産期の現場は日に日に深刻さを増していっているようです。産科医や新生児科医は、ほとんど不眠不休で働いています。医療に対する過度の期待。お産に100%の安全はありません。「母児ともに無事であたりまえ」...いつの頃からか、このような感覚が一般に浸透してきました。

一方、妊婦死亡に関して、「現状の医療制度やその現場での最善を尽くしても救うことのできなかったcaseに対しての刑事的起訴」が行なわれ、周産期の現場は冷え冷えとした空気に包まれ、日本の周産期医療はいまやほぼ「死に体」といっても過言ではないのか?とも感じます。

このように、決して充足していない医療現場に対して、厚生労働省は未だに「医師数は足りている。偏在の問題が大きい。」としています。それだけのものを要求するのであれば、現場を整えるのに必要なモノを国は供出するべきだと思います。

『会津若松市の病院で働く産婦人科医曽我賢次さん(57)は言う。「限られた体制で命を救おうとした医師が結果を問われ、刑事罰まで受けるのでは、産科のなり手は減るばかりだ」
 10年前から、曽我さんはお産の扱いをやめた。今は内科と婦人科で働く。きっかけは後輩の突然死。「熱心で優秀な医師だった。夜中に呼び出され、病院へ向かおうとして倒れたと聞いた。やりがいだけで長く続けられる仕事ではない」。大学の同期5人のうち3人は内科などに移った。』

これが、現場の本当の状況です。これで、「安心できるお産」を得ることができますか?

現在の状況を招いたのは、「国の無策」と「マスコミの無理解」であると感じています。このように、崩壊が始まってからでは既に遅いかもしれません。国の医療に対する現在の「なめきった」政策を転換しない限り、状況は進行性に悪化するでしょう。

『生命の誕生に立ち会う喜びと誇り。重圧と真正面から向き合う医師たちが今、瀬戸際で踏みとどまっている。』

踏みとどまった医師たちもギリギリなんですよ!

本日参照させていただいた記事です。

『(上)崩壊の瀬戸際/減る産科医 忙殺の連鎖

 「安心して産みたい」。妊産婦の叫びが聞こえる。東北各地で産婦人科を閉じる病院が相次ぐ。出生数がわずかながらも上向き、少子化にかすかな明かりが差す一方で、肝心の産む場が地域の中でなくなっている。「お産過疎」の進行は、全国的にも東北が特に深刻だ。医師不足、過酷な勤務、訴訟リスク…。産科医療を取り巻く厳しさは、都市も郡部も、大病院も開業医も変わりはない。さまよう妊産婦、悪条件の中で踏ん張る医師。東北に交錯する「SOS」の発信地をたどり、窮状打開の道を探る。(「お産SOS」取材班)

 「5日と2時間」。通知書類には直前の9カ月半に取ったわずかな休日数が記されていた。
 東北の公立病院に勤めていた産婦人科医。2004年、過労死の認定を受けた。亡くなったのは01年暮れ。自ら命を絶った。53歳だった。「僕が地域のお産を支えているんだよ」。家族に誇らしげに語っていた。
 亡くなる半年前、医師5人だった産婦人科で1人が辞めた。後任は見つからない。帰宅は連日、夜の10時すぎ。昼食のおにぎりに手を付けられない日が増えた。
 床に就いても電話が鳴る。「急変した。診てもらえないか」。地元の開業医や近隣の病院からだった。「患者さんのためだから」。嫌な顔一つせず、職場へ舞い戻った。
 心身の負担は限界に達しつつあった。ようやく取った遅い夏休み。1人の患者が亡くなった。「自分がいたら、助けられたかもしれない」。食は細り、笑顔も消えた。
 「つらいなら、辞めてもいいよ」。見かねた妻が言った。「自分しかできない手術がずっと先まで入っている」。そんな責任感の強い医師が死の前日、同僚に漏らした。
 「もう頑張れない」
 家族あてとは別に、「市民の皆様へ」という遺書もあった。お別れの言葉をしたためていた。「仕事が大好きで、仕事に生きた人だった。そんな人が頑張りきれないところまで追いつめられた」。妻は先立った夫の心中をこう思いやる。

 本年度、東北の6大学医学部・医大で産婦人科医局の新人はたった8人。東北大と弘前大は1人もいない。学生が産婦人科医になりたがらない。
 この10年で全国の医師は約4万人増えた。それなのに、産婦人科医は約900人減った。24時間、365日の激務。母子2人の命を守るプレッシャーがのしかかる。
 出産をめぐるトラブルや訴訟の多さも、なり手をためらわせる。
 06年2月には福島県立大野病院(大熊町)の医師が、帝王切開手術で妊婦を失血死させたとして逮捕された。医師1人体制で、年間約200件の出産を扱っていた。
 会津若松市の病院で働く産婦人科医曽我賢次さん(57)は言う。「限られた体制で命を救おうとした医師が結果を問われ、刑事罰まで受けるのでは、産科のなり手は減るばかりだ」
 10年前から、曽我さんはお産の扱いをやめた。今は内科と婦人科で働く。きっかけは後輩の突然死。「熱心で優秀な医師だった。夜中に呼び出され、病院へ向かおうとして倒れたと聞いた。やりがいだけで長く続けられる仕事ではない」。大学の同期5人のうち3人は内科などに移った。

 鉄の街として栄えた釜石市。04年、釜石市民病院はお産をやめた。隣の遠野市の岩手県立遠野病院は5年前から休診中。分娩(ぶんべん)を扱う開業医はいない。
 地域でお産ができるのは県立釜石病院だけ。「1時間以上かけ、市外から山道を越えてくる妊婦さんも多い」。産婦人科の医師小笠原敏浩さん(46)は言う。
 04年春、医師は1人から2人になった。もっと忙しくなった。それ以上に患者が殺到したからだ。入院患者は以前に比べて倍増した。出産は本年度、約500件に達する見通し。2人が手術に掛かりきりのとき、診察室は空っぽになる。
 分娩の数を制限すれば楽にはなるが、「行き場を失う人は出したくない」と小笠原さん。「産婦人科は大変なだけじゃない。面白さを若手に伝えるのも、僕の使命」
 生命の誕生に立ち会う喜びと誇り。重圧と真正面から向き合う医師たちが今、瀬戸際で踏みとどまっている。』

|

医療」カテゴリの記事

経済・政治・国際」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/101068/13567166

この記事へのトラックバック一覧です: 過労死:

» 崩壊の瀬戸際 減る産科医  [サイバーキッズクリニック]
今年最初の、『医療問題』 の記事である。 『医師不足』 『産科医不足』 『小児科不足』 『お産難民』 などの 現状を伝える事は、昨年の大きなテーマの一つであった。 力不足で全然広められなかった・・・。 自分に出... [続きを読む]

受信: 2007年1月21日 (日) 09時16分

コメント

はじめまして。半分足抜けしつつある僻地勤務医です。

病院勤務医には以前にもまして過酷な状況が続いておりますが、世間は医者のことを依然として消耗品としか考えていないようです。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/mie/news001.htm
上記は「火曜の夜間救急休診 県立志摩病院」という記事ですが文中、
「同病院では半年前まで、管理職を除く内科医と外科医計22人が交代で1人ずつ夜間救急に当たってきたが、過労で亡くなるなどして減少、現在は17人となっている。」とさらっと流されてしまっております。
残念ながら勤務医が選択出来るのは「逃散する」「過労死する」「逮捕される」の内のいずれかでしかないのです。

投稿 ハーフドロッポ | 2007年1月19日 (金) 14時21分

こんばんは
ハーフドロッポさま

>「同病院では半年前まで、管理職を除く内科医と外科医計22人が交代で1人ずつ夜間救急に当たってきたが、過労で亡くなるなどして減少、現在は17人となっている。」

うーむ、人間として扱われていないのでしょうか?余りに淡白ですね...『過労により亡くなること』は他の職場でのはなしでなら、もっとセンセーショナルに伝えるような気がします。やはり、マスコミは医療崩壊の原因の一つですね....

投稿 管理人 | 2007年1月19日 (金) 21時53分

コメントを書く