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2006年11月13日 (月)

腎摘について

2006年11月13日 晴れ

臓器売買が絡んだ非血縁間生体腎移植からはじまり、現在ではガンを含む疾患腎移植が話題になっています。
まず、断っておきます。渦中にある医師を擁護する意見ではなく、医療に対するマスコミの報道について少し、もの申したいと思っているだけです。

さて、11月8日の記事。
万波医師、治療中の両腎摘出し2患者に移植(読売新聞)

この中で、『両腎の摘出は、前例のない実験的な治療で、医療倫理上、新たな議論を呼びそうだ。』との記述がみられますが、これは正しくないと考えます。これを読んだ一般の方々は誤解を生じると思います。

特に、コントロールのできない蛋白尿のあるネフローゼ症候群の患者さんや血圧のコントロールができない状態の腎不全患者さんなどは、片側あるいは両側の腎臓を摘出することを行うことがあります。もちろん、このような処置をしたい訳ではなく、代替手段があればそちらを行うのが当然ですし、移植に用いる腎臓を得るためであれば倫理上許されることではありません。

しかし、前例のない実験的治療ではなく、透析療法が発達した現在では症例数は少ないのですが、最後の手段として行われてきている治療法です。また、乳児ネフローゼ症候群では蛋白尿をコントロールし、成長や免疫不全を改善させ、最終的に腎移植につなげるため片側(が多い。)の腎摘を行うことがあります。体重がせめて8kg程度なければ移植もできませんので....


再び申し上げますが、騒動の渦中の医師を擁護するものではありません。病気をもった腎臓を移植に用いるのは倫理的に許されないことと考えます。しかし、両側の腎摘は「前例のない実験的治療」ではありません。

本日参照させていただいた記事です。

『宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の病気腎移植問題で、万波(まんなみ)誠医師(66)は7日会見し、ネフローゼ症候群を患った男性の両方の腎臓を2004年9月に摘出して2人の患者に移植したことを明らかにした。
 関係者によると、4〜5年ほど前、市立宇和島病院でも、同様にネフローゼの患者から両方の腎臓を摘出して移植に使ったケースがあったという。

 両腎の摘出は、前例のない実験的な治療で、医療倫理上、新たな議論を呼びそうだ。

 この日、会見した万波医師によると、両腎摘出を受けたのは愛媛県内の50歳代の男性。腎臓病を約30年前から患い、薬物治療を続けていたが、大量のたんぱくが尿中に出てむくみがひどかった。万波医師は、腎臓を左右とも取って治療を続けることを提案。男性は摘出して他人に移植することに同意したという。 』

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» 腎臓移植と患者の欲望 [出もの腫れもの処嫌わず]
 奈良の事件でまーた医者叩きをしようとしたメディアは思わぬ反発をくらったよーで、はじめの威勢はどこへやら、ついこないだまで「どーだ、オレがスクープしたんじゃ〜!」とどっかのボクシング小僧みたいにシャチ誇っていた毎日新聞も、「いやあれは医師個人を攻撃したものではないので…」なんて言い訳タラタラでやんの。うぷぷぷぷぷ。さーてどーなるかなと楽しみにしていたところがぎっちょん、腎臓移植騒ぎでそんな話題はどっかにふっとんじゃったじゃないですか。  しかーし、いちおーガン患者である最凶的には、実はこっちのほーが... [続きを読む]

受信: 2006年11月17日 (金) 14時09分

コメント

おっしゃるとおり前例のない両腎摘なんてよくもそんなことが言えたものですね。不勉強すぎます。ただ小児腎をやっている我々としては先天性ネフローゼなどは片腎摘の成績もよいのでなぜ最初から両腎摘だったかという疑問と、ネフローゼの原因によっては両腎摘して後々腎移植をその人に施すなら、最初から大量の免疫抑制剤を使ったらネフローゼそのものがよくなった可能性はないのかという疑問が湧いてきます。成人の腎疾患まで完全に把握しているわけではないので、そこを教えて欲しいと思っているところです。

投稿 クーデルムーデル | 2006年11月14日 (火) 08時30分

私は父をネフローゼで亡くしているので、このニュースを興味深く見ています。
先週、この医師からネフローゼ腎の移植を受けた患者会の代表という方がラジオでインタビューに答えていました。
たしかネフローゼ腎の移植を受けて5年ほどたったようなことを言ってましたが、経過は順調のようです。
ある人では機能しなかった腎臓が移植をしたことで機能するようになるものか、と本当に驚きました。

投稿 傍観者 | 2006年11月14日 (火) 13時13分

こんばんは
クーデルムーデルさま
コメントありがとうございました。

>ただ小児腎をやっている我々としては先天性ネフローゼなどは片腎摘の成績もよいのでなぜ最初から両腎摘だったかという疑問

これはありますよね。『はじめに移植ありき』であったのではと受け取られても仕方がないと思います。

>最初から大量の免疫抑制剤を使ったらネフローゼそのものがよくなった可能性はないのかという疑問

『FSGSで大量の蛋白がコントロールできない患者さんに大量のCyAをやってコントロールできた。』というような演題を聞いたことがありますが...

こういった方法も検討していないとすれば、やはり目的は移植腎の確保であろうと感じられます。

投稿 管理人 | 2006年11月14日 (火) 21時32分

こんばんは
傍観者さま

コメントありがとうございました。

>ある人では機能しなかった腎臓が移植をしたことで機能するようになるものか、と本当に驚きました。

不思議ですね...。
腎臓の機能は、尿を作ることです。この機能が失われると腎不全となり、透析や腎移植をしなければ生きていくことができません。ネフローゼは、その尿を作る過程で、尿中に体に必要な蛋白が漏れでていく病態と考えられます。

ネフローゼの原因は多岐にわたりますが、中には体液性因子といって血液中の何らかの因子が発症に関与していると考えられているものもあります。そして、そのような患者さんがネフローゼから腎不全にいたり移植を受けると、移植後に原病が再発することがあります。

腎臓に本当の原因があるわけでなく血液の方に原因があるためにこのようなことがおこるのであると思われます。

さて、これからは私の空想上の話です。例えば、血液に原因が隠れているネフローゼの患者さんが蛋白尿のコントロールができず、腎不全には至っていませんが腎摘をうけたとします。そして、その腎臓を、腎臓自体に問題があって腎不全にいたってしまった患者さんに移植すると、どうなるでしょうか?ひょっとすると、立派に機能するかもしれません。

ただあくまで、今の話は私の頭の中で組み立てた話です。そして、疾患をもった腎を移植することは、確立された治療法ではありませんし、今後移植を受けた患者さんがどのようになっていくのか?もはっきりしません。倫理上は問題があり、許されることではないと感じます。

投稿 管理人 | 2006年11月14日 (火) 21時53分

 ネフローゼの患者さんの腎臓を移植したら移植を受けた人がネフローゼになるか・・・これは前例はないでしょうね。少なくとも特発性の場合は足突起を含め基底膜や上皮細胞近辺の変化がミクロで存在しているはずですから、移植後免疫抑制剤の働きがないと蛋白尿の大量漏出は防げないでしょう。つまり移植後免疫抑制剤を施しているからその移植腎臓が働けているわけで、確かに移植は成功するかもしれませんが、それならば腎摘せず元の患者さんに大量の免疫抑制剤を投与するという選択も考えるべきだと思うのです。その他の慢性腎炎由来の二次性ネフローゼであれば、腎臓が糸球体硬化などで痛んでいる可能性が高く、早晩移植腎がダメになるのではないでしょうか。
 いずれにおいても通常治療でネフローゼがコントロール出来ない場合、蛋白の漏出を抑える意味で片腎摘するという選択肢はありでしょうし、それを大量の免疫抑制剤下なら数年なら使えるかもしれないという話しの上で移植するという選択肢もあり得るとは思います。しかしいきなり両方取って他の人に与えるというのは始めに移植ありきとしか思えないのです。しかも両腎摘した人に更に他の腎臓を移植して免疫抑制剤を大量投与するとなると・・・先を見越した治療ではなく目の前の移植を片っ端からやりたかったとしか思えないのです。

投稿 クーデルムーデル | 2006年11月15日 (水) 09時00分

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