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2006年9月16日 (土)

大野事件の続き...

2006年9月16日 雨
非常に強い台風が近づいてきています。現在のところ中心気圧は925ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は50m/sと勢力は保持したまま、九州に接近中。予想では「直撃」コースです。以前の台風で私の勤めている病院は病室のガラスが割れ、患者さんがケガをされたことがありました。今回はそういったことがなければ良いが...と案じています。

さて、大野事件の続報が...ソースは「毎日新聞」。

大野病院医療事故:裁判所が争点初提示 初公判12月に−−公判前整理手続き /福島(毎日新聞)

『◇第3回公判前整理手続き
 県立大野病院で帝王切開手術中に女性(当時29歳)が死亡した医療事故で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた同病院の産婦人科医、K被告(39)の第3回公判前整理手続きが15日、福島地裁であった。今回は裁判所から初めて争点についての考えが示された。手続き終了は11月となり、初公判は12月にずれ込む見通しだ。
 手続きでは、裁判所から「胎盤の癒着がわかった段階で、大量出血を予見して剥離(はくり)を中止し、子宮を摘出すべきだったか」が主たる争点との考えが初めて示された。これについて弁護側は手続き後の記者会見で、「止血をするために胎盤をはがすことは臨床では当然のことで、出血を放置して子宮を摘出することは危険だ」と主張した。これに対し検察側は、「大量出血をする前に子宮を摘出すべきだと主張しており、(止血することが重要だとする弁護側の主張は)前提となる事実が異なっているように思われる」と話した。
 次回は10月11日に行われ、弁護側が主張を記載した「予定主張等記載書面」を改めて提出する。11月10日に検察側が意見を述べて手続きを終了する見込みだ。』

記事は一部、加工しております。
「胎盤の癒着がわかった段階で、大量出血を予見して剥離(はくり)を中止し、子宮を摘出すべきだったか」とのことですが、癒着胎盤がはっきりしたのはどの時点であったのか?これは論点にならないのでしょうか?
私は、小児科医で専門外なのですが、子宮から胎盤が「はがれにくい」ことは本当に稀なことで、そのほとんどが癒着胎盤なのでしょうか?

若い、妊娠可能性のある女性の子宮を摘出するということは非常に高度な判断ではないのか?と思ってしまいます。検察側の「大量出血をする前に子宮を摘出すべきだ」という主張は、スジの通ったものですが...実際の臨床の現場ではどうでしょうか?自分であればいわば「身を切られるような」判断となると感じます。

追記です。

ある産婦人科医のひとりごと:大野病院医療事故:裁判所が争点初提示 初公判12月に (毎日新聞)にも、この件に関し最前線に立つ産婦人科医の意見が述べられています。

今日手に入れたもの:大野事件、公判前整理手続きにも御意見があります。

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コメント

 いずれにしても

 民事ならいざ知らず
「胎盤の癒着がわかった段階で、大量出血を予見して剥離(はくり)を中止し、子宮を摘出すべきだったか」
 が刑事の争点になることに絶望と怒りを感じます。

 こんなこと裁判官と検察と弁護士がはんだんできるのでしょうか。

 瞬時の判断を要求される、常にプロスペクティブでしか考えられない臨床において、数年から数十年の膨大な時間をかけてレトロスペクティブに考察して過失認定することに何の意味があるのだと思います。


 この件が長引くほど、ほんの少しでもはがれにくい胎盤は子宮全摘?となって若い女性のこれからも子供を産める患者さんと産科医を苦しめるだけだと思います。

 司法の思い上がりに怒りで一杯です。

投稿: 医療って | 2006年9月16日 (土) 23時07分

こんにちは
医療って さま

コメントありがとうございます。

追記にも記しましたが、「ある産婦人科医のひとりごと」でもこの件についてエントリーされていました。
「癒着胎盤は基本的に病理学的検索により診断される。」とされていました。

そうすると、術中あるいは分娩中に「胎盤が剥離されにくかった」時点で「これは癒着胎盤である」という診断は非常に難しいし、危ういこととなりそうですね...

これからも、ホントの意味での「厳しい」判断を求められますね...産科医の先生方は....

投稿: 管理人 | 2006年9月17日 (日) 10時22分

今回の事件の構図を単純化すると、産婦人科医が胎盤剥離をしてみたら癒着胎盤だった。その直後から、猛烈な出血が起こり産婦を救命できなかった。

検察は剥離後の大量出血に対する準備処置を争点にするかと思いましたが、その前段階の剥離すれば大量出血を起す癒着胎盤の診断見落としに焦点をあてたようです。

噂では北越地方の医学部教授が、剥離前に確実に間違い無く診断できる鑑定書を用意しているようですが、検察の思惑通り進むかどうかは疑問です。

医療訴訟では「鑑定医の選出に困る」というのはbefu先生もエントリーに書かれていたかと思いますが、今度ばかりは被告側の鑑定医の選出は選り取り見取りです。

また裁判官は医学の素人であり、裁判官自身では医学上の正誤は判定する能力はありません。

鑑定書の優劣は、鑑定医の肩書きの重さに左右されるともありました。そういう意味で北越地方の医学部教授より、重々しい肩書きの鑑定医の鑑定書を束で並べるのも容易です。

後はトンデモ裁判官に当たりませんように。

投稿: Yosyan | 2006年9月17日 (日) 13時56分

こんにちは
Yosyanさま

コメントありがとうございます。

実は先日、ある大学の産婦人科教授と話す機会があったのですが、以下のようにいわれていました。

「まずい鑑定を書く医師がいる」と...
「そして彼らは、周囲に対して恨みをもっている。」と...

北越の方がどうであるかは知りませんが、これからはそのような鑑定は表に出した上、評価されるべきであると感じます。

投稿: 管理人 | 2006年9月17日 (日) 15時17分

befu先生

鑑定医ってどういう基準で選ばれるのでしょうか。実は訴訟を起こしている患者さんの担当医になって、事実関係を聞き、患児の状態から訴えられた医師というより臍帯クリップがはずれてしまい大出血したという事実が争点となるべき訴訟であるのに、問題をすり替えようとする産科開業医の姿勢に自分自身疑問を感じ、親御さんから鑑定医になってほしいと頼まれたことがあります。当時役職もなにももっていなかった私は、私の鑑定をそのまま受け入れてもらえるはずがないと断りましたが、どういう基準で選ばれるのでしょうか?
そしてまずい鑑定というのは、医者側に不利になるという意味でしょうが、それが正鵠を得ていてもまずいということであれば、医療不信を今後取り除くことはできないと思います。青いと言われそうですが、それが医療不信を取り除く方法の一つだと感じます。

投稿: クーデルムーデル | 2006年9月18日 (月) 08時44分

>これからはそのような鑑定は表に出した上、評価されるべきであると感じます。

この先生のコメントからモチーフを頂き、エントリーを書かせて頂きました。

謹んでTBさせて頂きます。

投稿: Yosyan | 2006年9月18日 (月) 12時00分

こんにちは
クーデルムーデルさま

コメントありがとうございます。
<そしてまずい鑑定というのは、医者側に不利になるという意味でしょうが、それが正鵠を得ていてもまずいということであれば、医療不信を今後取り除くことはできないと思います。

少し、言葉が足りませんでした。この教授の言われたのは、今回の大野事件のみを指していわれていました。恐らく、鑑定に関する考え方、医療訴訟に関する考え方については大きな隔たりはないものと考えております。

また、医療訴訟に関する私見や鑑定医についての意見などを次の記事にまとめたいと思います。^ ^

投稿: 管理人 | 2006年9月18日 (月) 14時05分

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コメント(私見) 胎盤を剥離する際に、突然、大出血が始まって、その時点で初めて、 [続きを読む]

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» 大野事件、公判前整理手続き [今日手に入れたもの]
大野病院での医療事故の公判前整理手続きで、裁判所から「胎盤の癒着がわかった段階で、大量出血を予見して剥離(はくり)を中止し、子宮を摘出すべきだったか」が主たる争点との考えが初めて示されたそうです。 むむむ、、、。 何か変だと思いませんか? なぜ、医学知識の乏しい、臨床経験ゼロの人たちが、このことについて論じ合えるのでしょう? 私も医者の端くれですが、専門外の、自分が手を出したこともない、しかも極めてまれな症例についての、ベストな医療なんて、とてもじゃないけど言えません。 もちろん、文献的にはこういう... [続きを読む]

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