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2006年9月 7日 (木)

米国から見た日本の医療事情

2006年9月7日 晴れ
朝晩涼しくなってきました。

mariko先生のブログにあった記事です。

〔連載〕続 アメリカ医療の光と影  91回:「Tさんへ 9年目の詫び状」:李 啓充 医師/作家(在ボストン)

外から見ると、こんな風に見えるのでしょうね。鋭く、核心をえぐっています。絆創膏貼りたいです!
自分もこのままいくと、過労でそうなるのか?などとも思いました。

ただ、mariko先生のブログの記事に寄せられたコメントは悲しいものですね...相手に対する思いやりなど、一つも感じられません。

『Tさん,あなたが亡くなられてから9年が経ちました。あなたの死を無駄にしてはならないと,この間,私なりに一生懸命頑張ってまいりましたが,残念ながら力及ばず,日本の医療は,ますます悪い方向へと向かおうとしています。あなたの死が無駄になろうとしていることについて,友として,心から詫びなければなりません。

 思えば,中学時代の友人から,同級のあなたが倒れられたと知らせるメールが送られてきたのは,97年8月のことでした。小児科医として勤めておられた大学付属病院で,あなたは,当直明けの朝,当直室で倒れられたのでした。診断はクモ膜下出血,約20日後,あなたは意識が戻らないまま,43年の短い生涯を終えられました。

 海外に住む私にとって,親友の葬儀への出席がかなわなかったことは慚愧に堪えませんでしたが,数年後,同級生から葬儀の模様を聞くことができました。多数参列したあなたの患児の一人が,あなたが死んだという事実が了解できないまま,「T先生,ケロンパの絆創膏をつけたらすぐ元気になるよって,いつも言ってくれましたね。T先生も,これをつけて,早くよくなってください」と,遺影の前にカエルの絵がついた絆創膏を置いて会葬者の涙を誘ったと聞いたときは,私も涙が出て止まりませんでした。中学のときから心優しかったあなたは,患児たちに対しても,とりわけ心優しい医師であったに違いありません。

 驚いたことに,1年半後,あなたの死は,新聞で報じられる「ニュース」となりました。日本では,医師に過労死が認められることは非常に稀であるのに,あなたの死が労災と認定されたと,「ニュース」になったのでした。「倒れる前の最低12日間は休まず働き,この間に2回,当直に就いた。……毎日最低3時間の時間外労働をしていた」と,倒れる直前の数日間,ほとんど眠る時間がないほど働き続けた様子がそのときの記事に紹介されていましたが,日本の勤務医にとってはあまりにおなじみの過重労働の結果,あなたは「非業」の死を遂げたのでした。

 記事の中で,あなたが勤めていた病院の院長が「勤務態勢の見直しを検討しているが,投薬する薬が少なく診療報酬が低い小児科では,医師の人数を簡単に増やせない」と発言,(1)小児科医の過重労働が深刻化している実態と,(2)診療報酬の額・仕組みなど,日本の医療の制度・政策にかかわる構造上の問題が医師の就労環境の改善を阻んでいる事実を,いみじくも指摘したのでした(もっとも,私には,「制度が悪いからどうしようもない。働きすぎの小児科医が死んでも仕方がない」と言っているように聞こえて,腹が立ってなりませんでしたが……)。

 さらに,記事の末尾で,ある医大の教授が,「今回と同じような悲劇が,どこで起きても不思議ではない危機的な状況だ」と,日本の小児医療全体の危機であることを強調したのですが,あなたの死から9年,日本の勤務医の過重労働を巡る状況は,改善されるどころか,産科,麻酔科,内科……と,他科にも拡大するほど悪化したのでした。

 Tさん,過労死の犠牲となられたあなたにとって,なぜ,日本の医師の過重労働の問題が悪化する一方なのか,不思議でならないでしょう。実は,Tさん,あなたの死が労災と認定されたことが「ニュース」となった事実にその答えが隠されているので,ここで少し説明させてください。

 通常,過労死が労災と認定されるためには,月100時間を超える時間外労働をしていたことが条件となるのですが,厚労省は,医師の「当直」時間を就労時間とは認めていません(医師がほとんど眠る時間がないほど働いている現実があるというのに,「当直とは夜回り程度の軽い仕事だから労働とは言えない」と言うのです)。というわけで,医師が過労死を認定されるためには,当直以外に月100時間を超える時間外労働をしていなければならないのです(Tさんの場合も,当直以外に100時間を超える時間外労働をしていたからこそ労災が認定されたに違いありません)。

 それにしてもTさん,97年に亡くなられたあなたにとって「厚労省」とは耳慣れない言葉でしたね。あなたが亡くなられた後,厚生省と労働省が統合され,いまは,医療を管轄すべき省が,労働基準法の遵守を監督・徹底すべき省にもなったのですが,医療と労働の両方の「本丸」となったというのに,「当直時間は就労時間にカウントしない」という「トリック」を使うことで,日本中の医師が労働基準法違反の過重労働を強いられている現実から目を逸らし続けているのです。

 厚労省が目を逸らしているのは過重労働の問題だけではありません。過重労働の根本原因である医師不足の問題についても,「医師偏在の問題」と言い換えていることでもわかるように,不足がきわめて深刻な事態にある事実そのものを認めようとはしていないのです(「偏在」というのは,余っている地域と足りない地域とばらつきがある状態を言うのだと思うのですが,日本のどこに行ったら,産科・小児科の医師が余っているというのでしょうか?)

 Tさん,過労死の犠牲となられたあなたにいまさら言う必要もないことでしょうが,日本の医療が世界に冠たる「低コスト」で運営されてきた秘密は,実は,医療者たちが過重労働をいとわず,黙々と働き続けてきたことにあったのです。それが,いま,「もう体が持たない」と音をあげた医師たちが,勤務医を辞めて開業医に転向する事例が跡を絶たず,病院の医師不足はますます深刻化しているのです。日本の医療を支えてきた大本の柱が,いま,荷重に耐えかねて折れようとしているのですが,医療が崩壊の危機に瀕しているというのに,政府はさらなる医療費抑制を進めようとしているのですから,私としては背筋が寒くなるような恐怖感を覚えざるを得ません。

 Tさん,あなたの死が図らずも実証したように,医師不足についても,医師の過重労働についても,日本の医療は,すでに,少なくとも9年前には深刻な事態に陥っていました。それなのに,厚労省も政治家も,この9年間,当直時間は就労時間に含めないというトリックを使い続けたり,不足を「偏在」と言い換えたりすることで,問題の「存在」そのものさえ認めようとはしてこなかったのです。脳細胞の活動を「denial」のフェースで止めたままの人たちがこの国の医療政策を司ってきたのですから,いつまでたっても事態が改善するはずなどなかったのです。

 Tさん,あなたが生きている間に聞いておけばよかったと,いま,私が後悔していることが一つあります。あなたが,「よくなるよ」と,患児に使っていたケロンパの絆創膏,いったいどこに行ったら手に入るのですか? もし,手に入ったら,「早くよくなるといいね」と,厚労省の官僚や政治家たちの頭に貼ってやりたいのですが……。

(つづく)』

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コメント

befu先生、いつもありがとうございます。私はいつも小児科の先生たちの勤務状況を見て、心配でなりません・・・。
自分のブログの件については、私は気にしていないので、befu先生も気にしないで下さいね。

投稿: mariko | 2006年9月 8日 (金) 09時59分

marikoさま

こんばんは

先生の紹介された記事は私も非常に興味を持ちました。自分が小児科医であることもあるとは思いますが、この記事には人間としての何か「良さ」みたいなものが感じられたからではないかと思います。

御紹介ありがとうございました。久しぶりに、すごいいい記事にあったなと思いました.

投稿: befu | 2006年9月 8日 (金) 21時50分

矛盾した世の中に私達は生きていますよね。
私が一般人目線でものを言うなら、急な怪我・病気の時には、たとえ真夜中早朝でも、医師が診てくれるといいなと思います。
コンビニやスーパーには、無い物など無いというほど豊富に品が揃っていればいいなと思います。
今日発送した荷物は、明日大事な人に届けばいいなと思います。
夜遅くまで美容室が開いていればいいなとか、色々都合のいい事を考えて、やがて、そんな需要を察知した企業が出てきて、供給を始めれば、次第にそれが当たり前のようになっていく・・・。
当たり前という感覚に慣れてしまうと、人は、その影では、自分と同じ人間の労力があることなどまるで気にしなくなる。
ある病院の医師が「このところ休みなく働いているので、今日は診てあげられない」などと言ったりしたら、世間やマスコミはその医師を悪人扱いするだろうし、明日届くはずの荷物が、トラックの運転手の労働時間が基準を超えるからと、途中で休憩させていた為に届かなかったなんていう事があれば、二度とその会社に荷物を運ばせない=経営不振=倒産=従業員解雇=家族ごと路頭に迷う・・・
巷では、過労死認定が急激に増えてきているようですが、あまりにも認定ばかりしていたら、やがて日本中で一所懸命に働く人間がいなくなるんじゃないでしょうか。
外国人は、終業時間がきたらパッと仕事をやめるという話を聞いた事がありますが、日本人は尾を引くような働き方をするというか・・・サービス残業というのですか? だからこそ戦後、急速に経済を復興させたとか・・・
この所、仕事以外でも感じますが、週休二日制、月曜祝日、サマータイム、ゆとり教育と・・・何だか緩め過ぎというか、甘過ぎなのじゃないかと。
そもそも、自分は何をしたいのか、自分はどんな立場にいるのか、自分は何故今そうしているのか、それは自分が考えて自分が責任を持って判断すべきなのに、雇用される身ならば、病気になれば会社のせい。死んだら会社のせい。責任はすべて会社にあるみたいにして責め立てる。
入社する時、履歴書に「健康」と書き、「・・・なので貴社を選びました」と書き、採用された事を喜び、昇給を期待し頑張る中でやりがいを見出したり夢を見たり・・・例えば上司が「大丈夫か」「やれるか」「むりするなよ」と本心から言っても、「大丈夫です、やります」 と快く引き受ける。
頼りにしていいなら頼りにするものです、上司じゃなくても部下でも。
体が悲鳴をあげているかどうか、それは自分が日頃から気をつけなきゃならないことだし、休みもくれないような会社なら、さっさと見切りつければいい。
いつまでもしがみついてる内に死んでしまったら、遺族達がとたんに騒ぎ出す。
今や猫も杓子も過労死過労死って叫んでます。
でも経営陣だって、日々時間外労働に追われてます。
遊んでいるように見える人もいるけど、大半は、社員を抱える責任をズッシリ感じながら暮らしています。
悪徳業者もいるでしょうが、大半は多くの税金を払い、福祉施設に寄付をし、明日の事業展開の構想を練ったりしてます。
ハッキリ言って、経営者がいるからこそ、会社を興す勇気のない人が働けるんです。
文句を言いたければ自由に言えるはずだし、そのために労基などが設けられているんですから。
ただ、私個人としては、職種によってもっと細かく労働時間・時間外労働を設定すべきだと思います。
例えば運送業は、道路状況や天候次第で拘束時間が不規則になるし、予測つかないし、でも時間厳守じゃないと荷主に迷惑がかかります。

医師もいまは資格だとか免許だとかいろいろ騒がれますが、需要と供給のバランスが本当に悪くなってますよね。
文句ばっかり言ってると医師を目指す人すらいなくなっちゃいますよね。
教師もそう・・・教師も家に帰ってからやる事が山ほどあります。
警察も、消防士も・・・
どんな仕事だって、精神・肉体疲れます。
疲れを吹き飛ばすほどのやりがいを感じるように、自らが努力できるようにするのは偏りのない『世論』だと思います。

すみません、初めてなのに長々と・・・
大切な友人を亡くされたのですね。
あなたやその方を責めているわけではないのです。
実は、夫の会社の従業員が、交通事故を起こして亡くなったのですが、その遺族が、過労死だと訴えてきたのをすごく不合理に感じている者です。
本人とはとてもいい関係だったのに、遺族とこんな争いをしなくてはならないなんてとても残念です。
提示すべきものは、全くそのままの形で提示します。本人の要望に極力応えながら、過労にならないように改善してきた証でもありますから。

仕事を重複させてでも働く理由がある人がいることも念頭に入れて世の中の人は『過労死』を考えて欲しいです。
頑張ってくれたらそれなりに給料を支払い、労をねぎらっても、運転ミスをしたら会社のせいだなんて・・・。彼が亡くなったショックで、食事もまともにとれなかった夫ですが、今は他の社員の生活を守るために会社を守りにはいりました。
小さい会社ですから、万一過労死認定なんて事になれば、たぶん潰れてしまいます。
我が家もまた、二人の子供を抱えて路頭に迷うでしょう。
会社側の立場があまりにも弱すぎます。
ネットで検索しても、そうです。
ここで愚痴ってしまって本当にすみません・・・。
しかも、医師じゃないのに。

投稿: GA | 2006年9月 8日 (金) 23時47分

こんばんは
GAさま

あなたの心の中を察する努力をしたいと思います。これからが心配なのですね...

日本はあらゆるものが便利になりました。コンビニなどは24時間営業でその裏にどれだけの努力があるのか?そんなことはみんなおかまいなしの様です。荷物が時間通り着くのは当たりまえ、鉄道の時刻も然りです。

そこには、経営陣とそれを支える縁の下の力持ちがいて、たゆまない努力を続けている。これは、医療の世界も一般の世界も一緒な様です。

医療の世界は、死と隣り合わせですので、患者さんが亡くなると、入院中は見たこともない親族のかたが出てきて、「何故亡くなったのか?ミスはなかったのか?」と詮索されるようなことが、稀にですがあります。

今回のGAさまが抱えておられる問題は、少し状況が似ているのかもしれません。どうか、この問題がスムーズに解決する様、祈っております。

投稿: befu | 2006年9月 9日 (土) 00時42分

吐き出せて少し楽になったところですが、優しく受け止めて下さり、ありがとうございました。

投稿: GA | 2006年9月 9日 (土) 08時42分

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