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2006年9月14日 (木)

産科医のいない院内助産所

更に、本日第2稿目です。

産婦人科医のいなくなる病院に院内助産所ができるという話題です。助産所の概念は、助産師のみで運営する分娩施設とすることができます。助産師さんは通常の分娩を扱うことはできますが、「お産」は終わるまで通常の経過で終わるのか?突然異常分娩に移行し、緊急の処置を要するようになるのか?これがわかりません。そして、一旦異常分娩に移行した場合は、分単位で決断を要する事態となり、輸血や緊急帝王切開など医師でなければ施行できない手技を要求されます。間に合わない場合は、母児の命に直結します。

助産所における分娩は究極的には、院内に産婦人科医のいる状態で作るべきであると考えます。この記事は、時代に「やや逆行している」と感じざるを得ません。ソースは「毎日新聞」です。

南和歌山医療センター:「院内助産所」を開設、年内には妊婦受け入れへ /和歌山(毎日新聞)

『◇今月で産婦人科廃止
 今月で産婦人科がなくなる田辺市たきない町、南和歌山医療センター(中井國雄院長)が、新たに「院内助産所」の開設準備を進めている。授乳室を改修した和室の出産室も完成し、年内には妊婦の受け入れを始める。
 院内助産所ができるのは、4階西病棟の産婦人科の一角。現在、配置されている14人の助産師のうち、同科の診療停止に伴う異動や退職者を除く約半数が従事する。同センターは、同市内などにある4軒の個人経営の助産所に協力を要請し、担当の助産師を研修で派遣している。
 また、開設に先立ち、15日から妊娠、出産、産じょくなどの保健指導を目的とした「助産師外来」を立ち上げる。月〜金曜日、午前9時〜午後4時で完全予約制。費用はいずれも健康保険対象外。このほか、育児相談や産前産後の電話相談も行う。
 同センターでの出産件数は05年度、357人あった。このうち306人は正常出産で、異常出産は51人だった。
 同センターの産婦人科は、10月から同市新庄町の紀南病院に集約される。医師不足による厚生労働省の拠点化政策の一環で、担当医3人のうち2人が紀南病院へ、1人は高知県の病院に移る。』

異常分娩は年に51例あったようです。これに対する対応はどうするのでしょうか??

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コメント

befu先生
いつも興味深く拝見させていただいています。
今回の院内助産院については、詳細が不明ですので、なんともいえないですが、私個人の意見としては、現状の苦肉の策として(一時しのぎとしては)しかたないかもしれません。むしろ、最善の方法かもしれないと思っています。
確かに、私も助産院の分娩には、否定的な考えを持っていますが(助産師さんには申し訳ないのですが・・)、院内にたとえ内科や外科、小児科の医者しかいないとしても、それは、開業助産所とは大きな違いです。お分かりだと思いますが、緊急処置ができるという点です(点滴、呼吸管理、最悪手術など・・)。プライマリー処置を施しつつ、搬送あるいは、専門医師の到着を待つことができるからです。他科の先生方がそれに対して、同意していただいているのであれば、それは大きなメリットであると思います(他科の先生はいやだと思いますが・・)。また、大きな病院までどれくらいかかるかは不明ですが、近隣の妊婦さんにも通院の負担を軽減するという意味でも歓迎されるべきことかもしれません。特に子供をお持ちのお母さんなどは、1-2時間かけて、検診に通うのは至難の業ですから・・。

投稿: yuchan | 2006年9月15日 (金) 10時02分

胎児の異常についてはどうでしょうか?
これは、助産院ですから、せめて妊娠中4回は一番近くの産婦人科で、超音波および検診をすべきでしょう。そこで、リスクをピックアップしてもらうことができるでしょう。
分娩時の異常は・・?
もし、モニターで異常あれば、すでに帝王切開の準備をしつつ、早めに産婦人科医師の応援を依頼すること。超緊急の常位胎盤早期剥離は対応できないかも・・?ですが、遷延分娩、胎児仮死には対応できるのではないでしょうか?しかし、これはあくまでも助産師さんのモニターの読みを含めた、厳重なリスクマネージメントが必要です。それができれば、助産所よりは(というと助産所の方には失礼かもしれまんせんが・・)、はるかにすばやい緊急時の対応ができると考えます。
ただ、述べてきたように、緊急で帝切する場合、最寄の産婦人科医(依頼医)がどれくらいの時間で駆けつけられるか、協力してくれるかが大きなポイントとなるでしょう。でも同市内だから、そんなにかかるとは思えないので、こういう発想になりました。
いろいろ他科や他院の先生にご迷惑おかけすることになるのですが(なんでとばっちりうけるんだ・・・と他科の先生からはご批判もうけるでしょうが・・)、できるだけ近くでお産をしてあげたい(車中や自宅分娩を避けたい)とするのであれば、一時しのぎとしては、こういった対策もしかたないと思いますし、市内で通えるのであれば、妊婦さんの選択枝として、1時間以上かけて、検診、お産に通うのも“あり”なのかもしれません。
決してこの政策がベストといっているわけではありません。産婦人科医がいないところの一方策であればしかたないのでは?ということをご理解いただきたいのです。
長いコメントで申し訳ありません。

投稿: yuchan | 2006年9月15日 (金) 10時15分

私は、この無産婦人科医の院内助産所には、反対です。もっと、医師側から、産婦人科医のいるところまでいってください、とか、いくための支援を行政がおこなうべきです。なまじ、病院の中だから、、と院内助産所がすごく安全なところだと誤解され、何かあった時に、外科医が、善意のサマリア人として、帝王切開なり、会陰切開、縫合・止血の処置を行っても、結果が悪ければ、医師が罰せられます。そして、病院内だから、産婦人科医がいる病院と同じレベルの医療レベルを要求されるに決まっているのです。
そもそも、胎児モニターは、助産師が診断に使用するのは、法律違反だ聞いています。
国が行おうとしているのは、胎児モニター、エコーを助産師に解放し、外科的な会陰切開や、縫合を外科医に押し付けて、産婦人科無医村をどうにかしようとしているのはないかと推測してしまいます。

異常というのは、帝王切開などと推測しますが、会陰切開や、縫合など、医療を必要としてお産は、どこくらいあったのでしょうか??
そういう産婦人科医の医療が必要だった「正常なお産」を、全部助産師ができないのを、まるで夢のように産婦人科医なしできるというのは、まさに羊頭狗肉だと思います。

投稿: 麻酔貝 | 2006年9月15日 (金) 10時46分

 最近の風潮からすればリスクマネージメントの点からも好ましくないと思います。

 他科の医師が協力するといっても、訴訟のリスクまで引き受けてくれるのでしょうか。現状でも助産院の丸投げで搬送先の産婦人科・小児科が訴えられることは多々あります。もしこの病院で他科に押し付けられれば他科も逃散してしまうのではないのでしょうか。

 助産院は論外だと思います。正常分娩か異常分娩かは終わるまでわからないし、そもそも最終的に責任をとれないのに助産師が単独で分娩を扱うことがそもそもおかしいのではないかと思います。

 最善を尽くした産婦人科医が逮捕されるような時代に、ニーズにあっていないと思います。

投稿: 医療って | 2006年9月15日 (金) 11時44分

どこでどういう勢力が蠢動しているか分かりませんが、お産は無条件に絶対安全、何かあれば医療訴訟乱発の時代に助産院礼賛が蔓延っています。

医療者なら少し考えればどれだけのリスクがあるか幾らでも指摘できるのですが、そういう声は意図的に封じ込められています。つまり「助産院=自然、善 vs 産科病院=不自然、悪」です。

先例はイギリスに求めれば良いと思います。イギリスではあまりの訴訟攻勢の前に産科医療が滅び、代わりに助産師量産で対処しようとしましたが、当然のように助産院も訴訟攻勢の前に消え去りました。

幸いイギリスには旧植民地があり、そこから医師を輸入する事により分娩は維持しています。日本はどこからこれを求めるのでしょうか。

日本で一番強い声は世論です。世論を操るのはマスコミであり、「助産院がお産を救う」キャンペインはしばらく続くでしょう。医療者が少々の声を上げたところで流れは変わりません。

次に流れが変わるのは助産院分娩で実際にトラブルが続出してからでしょう。そうなればマスコミは掌を返すように助産院叩きに励んでくれます。

しんどい時代です。せめて「そんなリスクは医者は説明していなかった」と叩かれないように精一杯リスクを叫んでおきましょう。

投稿: Yosyan | 2006年9月15日 (金) 13時35分

こんばんは
コメントをいただいた皆様。

活発な御意見ありがとうございます。

続き記事を立てて、「南和歌山医療センター」と「紀南病院」の距離はどうなのか?Yahoo mapで調べてみました。そちらの記事も御覧ください。

産科医のいない院内助産所2です。

投稿: befu | 2006年9月15日 (金) 22時57分

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助産院での出産にて子を亡くした者です。
ブログやコメントまで、興味深く拝見しました。
助産院の安全性を徹底して見直してもらいたいと願っています。

投稿: 琴子の母 | 2007年7月13日 (金) 10時07分

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