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2006年9月

2006年9月30日 (土)

心のう穿刺

2006年9月30日 晴れ
今日も秋晴れでした。

今日はこのような記事が...
防衛医大病院・医療事故:主治医と指導医、不起訴処分に−−さいたま地検 /埼玉(毎日新聞)

『所沢市の防衛医大病院で01年、心臓付近に針を刺してたまった水を抜く心のう穿刺(せんし)の処置を受けた男性(当時48歳)が急死した医療事故で、さいたま地検は29日、業務上過失致死容疑で送検された当時の主治医(37)と指導医(41)を嫌疑不十分として不起訴処分にした。地検はさいたま検察審査会の不起訴不当の議決を受けて再捜査していた。
 審査会の議決書などによると、同病院血液内科にいた主治医と指導医は01年10月23日、白血病だった男性に心のう穿刺を施した。その際に男性がけいれんを起こし、主治医は誤って心臓に約1センチの傷をつけ、男性は循環不全で死亡した。審査会は心のう穿刺は「専門の循環器科医に依頼すべきだった」などと指摘したが、地検は「基本的な手技で高度な技術や経験は必要ない」としていた。
 事故を巡っては、県警が04年2月、主治医と指導医を業務上過失致死容疑などで書類送検。同地検は05年3月「刑事責任を問うほどの過失ではない」と不起訴処分にしたが、遺族の申し立てを受け、審査会は06年3月、不起訴不当を議決していた。
 不起訴処分について遺族は「残念です。言葉がみつかりません……」と震える声で話した。』

心臓はその外側に心膜といううすい膜で覆われた形となっています。そして、心臓と心膜の間に何らかの原因で液体(心嚢水という)がたまると、量にもよりますが心臓を圧迫して心タンポナーデという状態が発生することがあります。この状態は、心臓が充分に膨らむことができない状態となり心拍出量が減少し、頻脈となって、場合によっては心臓が止まってしまうこともある重症な状態です。

酷い場合は、分刻を争うような状態であり、素早く処置をしなければ救命できない場合もあります。処置はこの記事に出てくる「心のう穿刺」で、うまく吸引できない場合は、「心のう切開」を行うこともあります。「心のう穿刺」は胸の中心にある胸骨の先っちょに剣状突起という突起がありますが、その脇から心臓に向けて針を刺す手技です。心のう水が貯留していれば、心膜を破れば心のう水がひけてきます。余り深く刺すと、心臓に達してしまうので超音波や針につけた心電図モニターなどで確認しながら慎重に行うものです。

さて、記事からは当時48歳であった白血病の患者さんはどのような重症度であったかは判然としません。しかし、心のう穿刺という手技を選んだことは、やはりかなりの心のう水がたまっていたのだと思います。残念なことに、施行中、患者さんにけいれんが起き、きわめて慎重に行っているにも関わらず心臓を傷つけてしまった。そして、患者さんは出血によるショックで亡くなられたということであろうと感じます。

「心のう穿刺」は時として、今目の前にいる医師が施行しなければ、その患者さんが亡くなってしまうということもある手技であると思います。この場合は、専門の循環器の医師を呼んでいる余裕はありません。また、この患者さんが充分時間的余裕があり、循環器の医師に手技を委ねていたとしても、そのときに「けいれん」が起これば、結果は同じであったかもしれません。

患者さんが亡くなったことは本当に悲しいことです。我々は医療者としてこの事実を重く受け止めなければなりません。しかし、この事例に関しては、「避けることのできなかった医療事故」であろうと感じます。

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2006年9月29日 (金)

ネフローゼ症候群_疾患分類

2006年9月29日 晴れ
清々しい天候が続いています。

しばらく、お休みしていたネフローゼ症候群の記事ですが、今日から再開してみたいと思います。腎臓病の分類はいくつかのカテゴリーがあります。一つは組織の分類です。これは、腎臓の一部を採ってきて顕微鏡でのぞいて画像で診断するものです。腎臓の一部を採る方法は、腎生検といって現在では腎臓病の治療になくてはならない診断法となっています。
また、薬の効き具合から分類する方法もあります。発症する時期により分類する方法、腎臓自体に病気のもとがあるのか?体の方に問題があるのかなども分類する方法になります。以上の方法を用いて、小児のネフローゼも分類されてきました。

大きく分けて、小児期に発症するネフローゼ症候群は1.特発性(特発性とは体の方に原因となるような病気が見当たらず、ネフローゼ症候群が起こってくるもの。)、2.症候性(体の方に原因となる病気があるもの)、3.先天性(生後3ヶ月以内に発症するもの)などに分類されます。
小児期では、1.特発性が約90%を占めています。2.症候性はアレルギー性紫斑病(Schonlein-Henoch紫斑病)や全身性エリテマトーデスに伴う腎障害でネフローゼに至ったものが多く、それぞれ紫斑病性腎炎、ループス腎炎と呼ばれ約10%を占めます。3.先天性ネフローゼ症候群は非常に稀な疾患で、多くのものがフィンランド型と呼ばれる組織型を示します。

そして、一番多い特発性ネフローゼ症候群は組織によって、表のような分布を示します。

Classification

小児の中で一番多いのは、「微少変化群」で約83%を占めていますね。これは、光学顕微鏡(つまり通常の顕微鏡です)でみると、腎臓の組織の中にはほとんど変化を見いだせないということです。ただ、変化が全くないわけではなく、電子顕微鏡というもって小さな部分まで見える顕微鏡を使用すると、糸球体の尿腔側にある上皮細胞の足突起が癒合(くっついている)しているように見えることがあります。

薬に対する反応性で分類するものは、ステロイド感受性、ステロイド抵抗性などがあります。(もっと詳しく、頻回再発型やステロイド依存型などと分類することができますが、それはまた今度ということにします。)ステロイド感受性というものは、ネフローゼ症候群に対してプレドニゾロンという副腎皮質ステロイドという薬を2mg/kg/日で連日投与して4週間以内に寛解(尿蛋白が消えること)するものを指すとされています。

小児のネフローゼ症候群のうち90%はステロイド感受性とされています。そして、その組織は微少変化群が大半を占めるとされています。さらに、微少変化群でステロイドの効きがよいネフローゼは再発に苦しむことはありますが、年齢が上がるにつれ自然に再発も少なくなり、腎不全になって透析をしなければいけないということはほとんどありません。

今日はここまでとします。次回は微少変化型ネフローゼについてまとめたいと思います。

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2006年9月28日 (木)

難しい選択...レス

2006年9月28日 晴れ
今日も清々しい一日でした。

拙ブログ:難しい選択には活発なコメントをいただきありがとうございました。

各方面から、この院長さんの言葉に賛否両論の御意見をいただきました。いろいろな見方があってよいものと思います。^ ^

この問題を整理しますと、まず、和歌山県南部に南和歌山医療センターと紀南病院という病院が約3kmの距離を挟んで設置されていました。昨今の産婦人科医不足により南和歌山医療センターの産婦人科医は集約化目的にて引き揚げとなりました。南和歌山医療センターには助産師さんが14人在籍していましたが、その助産師さんたちを活用して南和歌山医療センターに院内助産所を開設する。といったものであると考えます。

医療においては、なんでもそうですが...100%というのはありません。特に、分娩においては状態が急変することもあり、その場合、数分を争うような迅速な処置により、母児ともに助かる可能性があります。最近の医事訴訟の和解例をみますと、常位胎盤早期剥離で帝王切開まで40分かかったというのが、致命的な「遅れ」として認識されています。院内に産婦人科医が常駐しない状態で、突然分娩前あるいは分娩中の母体に、このようなことが起こったならばどうなるか?院内に産婦人科医が常駐する場合に比較して、当然ながら対応が遅れるのではないかと危惧します。私も、経験は少ないながらも、異常分娩に立ち会ったことがあり、その恐ろしさは身に沁みています。

では、どうすればよいのか?院内の助産助を開設せずに、この助産師さんを看護師さんとして働き続けていただくのが良かったのか?旧国立と社保の病院という設立母体の垣根を越えて、紀南病院に異動していただいてホントの意味での集約化を進めるのが良かったのか?この異動はホント大変だと思います。でも、ある産婦人科医のひとりごとの中では、産婦人科医の集約化に際して、この設立母体の高い垣根を越えて助産師さんまでを雇用し集約化することができたという例も挙げられています。通常、公務員である公立病院職員の採用年齢は20ウン才までと決められていますが、50才のベテラン助産師さんも含めて、すべて「正規採用」して異動していただいたとのことです。

ココから先は私見ですが。ある程度のキャリアを積んだ助産師さんは、このような異動ではある程度のメリットがないと動かないはずです。設立母体の垣根を越えるために、何らかの踏み台が必要なのではないかと考えます。そして、それは「南和歌山医療センターの院長が一人でできるものではないであろう」とも感じます。

さて、話は変わりますが...りんご さま、よりいただいたコメントの中で...

>集約化によりハード面ばかりにとらわれていますが、お産は医師のものでも助産師のものでもありませせん。何より産婦さん達自身のものです。ただ産ませればいいと言うわけにはいきません。子育て(人を育てる)ということに通じるその大切なイベントを産婦さんの支えになることが大切なのではないかと思います。

というフレーズがありました。

その通りです。助産師さんがお産につくのは、お産の総合的なマネージメントのためではないでしょうか?そしてそれは、助産所であっても、病院産婦人科の助産師さんであっても同様にできることではないかと感じますが...
病院産婦人科の助産師さんではできないことなのでしょうか?(病院産婦人科に入った助産師さんでは思い通りにできないということがあるかもしれませんが...)

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2006年9月27日 (水)

イレッサという薬

2006年9月27日 晴れ
清々しい日が続いています。今日はこれから転院してくる予定の乳児に会うため、ある病院に行ってきました。重症の血友病Aで生後数日で頭蓋内出血し、生命の危険がありました。いまはずいぶんと落ち着かれていて、お家に帰るための最終チェックのため転院してくる予定です。

さて、抗がん剤の一つであるイレッサ(ゲフィニチブ)についての記事が目に止まりました。実は、私の叔母が肺がん(腺がん)で亡くなられました。叔母は、約6年前にレントゲンでの異常陰影から肺がんと診断され、肺葉切除を受けました。病理組織の検索で、がんは一部血管などに浸潤しており、予後は余り期待できないであろうとのことでした。しばらくして、肺に再発を認め、化学療法が始まりました。途中からこのイレッサを使用した様ですが、これが著しく効いて、肺の再発の部分は(レントゲン上)一度はきれいな状態にまで治りました。

結局は、その他の全身に転移が認められるようになり、それが原因で亡くなられました。肺の腺がんは化学療法(つまり抗がん剤)、放射線治療も効きにくく大変ながんの一種です。それに対して、明らかな効果をみせたイレッサは叔母にとって、まさに「救世主がごとき」薬であったのではないかと考えます。

イレッサの副作用発症率、他の抗がん剤に比べ3倍に(読売新聞)

『 肺がん治療薬イレッサ(一般名ゲフィチニブ)の副作用とみられる重い肺障害の発症率は、他の抗がん剤を使った患者に比べ約3倍に高まることが、イレッサを販売するアストラゼネカ社(本社・大阪市)が国内で実施した大規模な調査でわかった。
 今回の調査は2003年11月から06年2月まで行われ、全国の肺がん患者4473人を登録。イレッサの代表的な副作用とされる、急性肺障害と間質性肺炎の発症率などを調べた。
 その結果、イレッサを使用し3か月以内に発症したのは4%で、他の抗がん剤を使用した場合は2・1%だった。
 喫煙歴があるなど重い肺障害を発症しやすい人はイレッサの治療から外されることが多いため、こうした対象患者の違いを考慮に入れると、イレッサは他の抗がん剤に比べ、発症の危険性が3・2倍に高まることが判明した。イレッサは、投薬から1か月以内の発症率が高いこともわかった。』

この記事だけをみると、イレッサは副作用が強く、恐ろしい薬としか一般の方々には理解されないでしょう。全てとはいいませんが、叔母のように非常に優れた効果を発揮する可能性があるということも、誌上で明らかにしていただきたいと思います。

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2006年9月26日 (火)

難しい選択

2006年9月26日 晴れ
急速に季節は動いています。朝晩の冷え込みは、日を追うごとに進んでいきます。
おかげで、喉を少しヤラレました。

拙ブログにもトラックバックいただいているブログ、「ある産婦人科医のひとりごと」の中の記事に当事者からと思われるコメントが投稿されています。

この記事には、拙ブログから産科医のいない院内助産所産科医のいない院内助産所2という記事でトラックバックさせていただいております。

さて、「ある産婦人科医のひとりごと」に寄せられたコメントについてですが、南和歌山医療センター院長と思われる方からのものでした。その中で、『現実に立派な職業人である助産師個々人の意志を無視して施設とその雇用母体を超えてできるかどうか良くお考え下さい。』との言葉がありました。確かに難しいことですね、設立母体を超えての配置転換は...私でも、「いまから近くの公的病院にいってくれ」といわれれば、なかなか即座に「うん」とは言えないでしょう。
しかし、現在の日本の周産期医療を取り巻く状況は、一刻の猶予も許されない状況となってきているのではないかと考えます。地域での周産期医療を支える人材の集約化を進めなければ、共倒れとなってしまい、その地域に周産期医療を提供できる施設は皆無となってしまう可能性もあると思われます。集約化ができる地域は、ひょっとすると...まだ、幸せな方かもしれません。その地域に人材がいなくなってしまえば、集約化もできないわけですから....

今回の、南和歌山医療センターと紀南病院の件は、その施設間の距離は3kmと非常に近いものです。この地域の周産期医療を存続させるために、仕方がなく産婦人科医の集約化を進めたのであると考えます。いろいろと立ちはだかる壁は高く、乗り越えるのに大変な思いをすることと思いますが...地域の中で知恵を出し合い、「どうやって人的資源を有効に活用するか?」を考えるべきであるのではないかと考えてしまいます。

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2006年9月25日 (月)

悲鳴もなかった?

2006年9月25日 晴れ
痛ましい記事です。亡くなられた幼児や家族の皆様には、深甚なる哀悼の意を表させていただきます。

泣くなられた児は悲鳴を上げる暇もなかったのではないかと思います。一瞬にして、その児たちの未来が我々医療者の手の届く間もなくもぎ取られる。社会や運命というものの「残酷さ」を感じてしまいます。

埼玉の園児死亡事故、容疑者「テープ替えようと脇見」(読売新聞)

『埼玉県川口市の市道で25日、散歩途中の保育園児の列にワゴン車が突っ込んだ事故で、重体だった同市安行出羽、配管工小山内亮さん(27)の長女夢乃ちゃん(4)と、同市北原台、高校教諭盛山哲志さん(26)の長女陽南子(ひなこ)ちゃん(3)の2人が同日午後、死亡した。
 また、女児3人(4〜5歳)と男児(3)が重体のほか、園児9人と女性保育士2人も頭や足などに重軽傷を負い、負傷者は計15人となった。
 武南署は、業務上過失傷害の現行犯で逮捕した同県栗橋町南栗橋、運送業手伝い井沢英行容疑者(37)の容疑を同致死傷に切り替え調べている。
 調べに対し、井沢容疑者は「助手席に置いていたカセットプレーヤーのテープを替えようとして脇見をした。気付いてブレーキをかけたが、間に合わなかった」などと供述。前日、都内でパチンコなどをした後、朝まで車の中で仮眠を取り、帰宅する途中で、トイレを借りるためコンビニエンスストアを捜して脇道に入ったという。車は時速40〜50キロで走行していたとみられている。』

私も小児科医として15年以上仕事していますので、子供の死に立ち会うことが何度もありました。小児科医として、最も悲しい場面です。

統計上、子供はその死因の第1位は「不慮の事故」です。そして、事故から「死」までは、余り時間がありません。周りの人が「死」を受け入れる間もなく、「死」がやってきます。辛いことです。

亡くなられた子供たちが、天国では幸せであるように祈るのみです...。

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2006年9月23日 (土)

すすき

今日はこんなところに足を伸ばしました。
そう遠くない範囲です。
景色はいいですが、何にもありません...でも、気持ちいいところです。

Susuki

場所はココです。

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修学旅行での災難...

2006年9月23日 晴れ
清々しい天候でした。明日が、地域の輪番となっており、今日は午前中に入院患者さんの回診。その後は、少し足を伸ばしてきました。→次の記事で紹介します。

さて、修学旅行で中国に渡航した際にO157:H7による集団感染が発生しております。
唐津の高校食中毒:ノロウイルスやO157を検出 /佐賀(毎日新聞)

『中国に修学旅行に行った唐津保健福祉事務所管内の県立高校の生徒らに集団食中毒のような症状が出た問題で、県は22日、生徒らが病原性大腸菌O157やノロウイルスなどに感染していたと発表した。下痢などの発症者は73人になった。
 健康増進課によると、病原菌を検出したのは▽O157が12人▽ノロウイルス3人▽腸管毒素原性大腸菌1人。22日現在、8人が通院しているが、全員快方に向かっているという。』

全員症状は快方に向かっているとのことで、何よりであると思います。海外旅行中に下痢を伴う割合は、渡航先を特定しない場合は5割程度、渡航先を発展途上国に限った場合は7〜8割程度といわれています。これらの下痢症状を、特に旅行者下痢といいますが、そのうち2割程度をいわゆる感染症が占めているとされています。(参考資料1)

また、旅行者下痢を起こす原因菌は「帰国時に下痢をしていた例からの分離菌はETEC(毒素原性大腸菌)が約45%,次いでサルモネラ(11%),腸炎ビブリオ,キヤンピロバクタ一,プレジオモナス,赤痢菌などである。旅行者下痢症既往者ではサルモネラが約27%,次いで腸炎ビブリオ,キヤンピロバクタ一,プレジオモナス,ETECなどの順となっている。欧米の研究者の報告でも急性期患者ではETECが優位を占めている。」(参考資料2)とされています。

旅行中の注意としては...「発展途上国では不完全な上水設備,水道管の破損など水道水が衛生学的に保証できない。生水と氷は不可,必ず1分以上煮沸したものを飲む。高地では沸点が下がるが80度Cでも1分間加熱で下痢の起因微生物はすべて死ぬ。煮沸した水は自然に冷却し,歯磨きにも、その水を使う。」ということで、結構、水が問題となる様です。今回の事件で水や食物などのうち何が原因であったかは定かではありません。

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2006年9月22日 (金)

ちょっと前の患者さん

2006年9月22日 晴れ

朝晩は涼しくなり、いよいよ秋の様です。喘息の患者さんは悪くなり始めました。でも、以前にくらべ入院する患者さんは激減しています。やはり、「気管支喘息は気道炎症がベースにあって、そのため気道の過敏性が亢進している」という考え方が一般的になり、吸入ステロイド療法が広く受け入れられてきたためであると感じます。10月になると、いままで吸入ステロイド療法がかなり難しかった、乳児の重症喘息の患者さんにも使用しやすい滴下型の液体吸入ステロイドが販売開始となる予定です。

さて、ちょっと前の経験を脚色を加えてお話しします。
◯歳の女の子。約◯ヶ月前より、38℃から39℃の発熱が出たり引っ込んだりしているとのことで来院されました。ちょっと、「顔が赤いな」などと思って、「日焼けは酷い方ですか?」と聞くとそうでもないことのこと....

まずは、検査が必要ですとして、レントゲン、血液検査、検尿などを提出。まずは、血算(血液中の血球を数える検査)が返ってきました。白血球 4,400/μl , ヘモグロビン 11.3g/dl , 血小板 11.3万/μl。やや、血球減少あるか?と思い、「何かアヤシい」な...との感。ついでに、追加して免疫グロブリン、補体、抗核抗体、抗DNA抗体などを提出。

そうこうするうちに、検尿の結果が...尿蛋白 陰性、尿潜血 3+、沈渣(尿を遠心分離機にかけて尿中にある細胞を濃縮して顕微鏡でのぞく検査)で赤血球 20−30/HPF(強拡大での一視野あたりの数)、赤血球の形態はやや多形性ありとのことでした。月経(生理のこと)を尋ねると、「10日前に終わった」とのことで、月経血の影響はなさそうです。

ここで、手の指を観察。「白い」「冷たい」。朝はやや動かしにくいとのこと。

追加した検査がでました。IgG 2504mg/dl, 総蛋白は 8.3g/dlでした。補体はC3 30, C4 3.6。著しい低補体です。膠原病の中の全身性エリテマトーデスが強く疑われ、腎炎を合併している可能性が高いと診断。抗核抗体、抗DNA抗体は外注検査のため、しばらく返ってこない。治療のためには、腎生検は必須であろうし、長い入院も必要だろうと思いました。腎生検はできるが、このような患者さんを私一人で診るのは、恐らく患者さんのためにはならないだろうとも考えました。ということで、院内学級も併設されているような病院にお願いしようとのことで、ある病院に紹介させていただきました。

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2006年9月21日 (木)

2人体制に移行予定!

2006年9月21日 晴れ
生後2ヶ月前の児が発熱で入院しています。当初尿路感染症が疑われましたが、どうも何らかのウィルス感染症の様です。その他、急性腹症で精査の結果、腸炎と診断した児、無菌性髄膜炎の疑いの児などです。

さて、私の勤めている病院は小児科ができて20年以上となりますが、これまですべて一人医長でやってきました。私は6年前より勤務していますが、2年前に常勤医での枠ができましたが、この小児科日照りで、どなたも就職していただける先生はいませんでした。

しかし、ひょんなことで私と一緒に働いていただける医師を得ることができました。◯月より就任予定です。これまで一人で、「これをしたい」と思ってもできなかったことが、少しづつできるようになると思います。

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2006年9月20日 (水)

ある若い頃の経験

2006年9月20日 晴れ
ようやく秋晴れといった感じです。台風の被害に遭われた方々には心よりお見舞い申し上げます。

さて、今日は以前にも少し記事にしたことがあったかもしれない話です。でも、最近の新聞記事に触発されて、現場の話をしてみたいと思います。

いまから、10年以上前のコトです。私は、医師になって3年目、2年間の初期研修を終えて、何と一人で小児科医長として赴任です。今から考えると余りにも未熟で、新生児に対する気管内挿管の経験も余りありませんでした。その病院には、産婦人科が併設されており、当時年間60例ほどの出生がありました。出産時には必ず呼ばれ、出生後のフォローをするならわしとなっていました。

その病院の職員さんが妊娠しており、産休に入っていましたが、あるとき腹痛と胎児仮死徴候で緊急帝王切開の運びとなりました。何が起こったのか?とにかく胎児仮死徴候はひどく、児心拍は60台です。産婦人科医は前立ち(第一助手)に外科の先生を得て、30分程度で新生児は出生。

今でも憶えていますが、だらりとして真っ白の赤ん坊です。当然、啼泣は聴かれず、呼吸なし、心拍は僅かに100以下で聞こえる状態です。とにかく、換気ということで気管内挿管を試みますが、声門がピッチリしまっていて、チューブが入らない!細いチューブなら...ということで、3.5mmから3.0mm、2.5mmと挑戦して何とか挿入できました。少し漏れがありますが、何とか胸が上がるまで換気できる状態に....その後、ルートを何とかとって、10%ブドウ糖とメイロン(重炭酸ナトリウム:重曹)を点滴。クベース(保育器)で加温。何とか心拍は100以上になり、体色は良好になりました。

この時点で、呼んでいた新生児用のドクターカーが到着。その病院の新生児の部長が乗ってきてくれました。蘇生に手間取って大変だったのだけど、「うまく蘇生できている」「でも、このチューブは細いな...」とのことで、その場で3.5mmに交換してくれました。

児に障害が残らなければいいが...と心配していたのですが、特に障害は残らず通常の生活を送っています。ホントよかった....

術後に聞いた話では、胎盤早期剥離であったようです。比較的発見が早かったのか?お母さんの方も、全身状態は、そう悪化せずに済みました。

胎盤早期剥離は、全分娩の約1%に起こるとされる、赤ちゃんが産まれる前に子宮の壁から胎盤がはがれてしまう状態です。はがれる面積にもよりますが、その面積が大きければ、赤ちゃんに酸素が行かなくなり、胎児仮死(赤ちゃんが苦しくなる)や酷い場合には子宮内で胎児(赤ちゃん)が死亡してしまいます。子宮とはがれた胎盤の間には血液がたまって、それが再び(子宮から)血管内に入るようなことになると、血管内で血液が固まるような状態(播種性血管内凝固症候群:DIC)となることもあります。これは、非常に重症な状態で、細い血管が固まった血液でつまってしまい臓器の障害が出ます。また、血液が固まる時に使用する凝固因子が消費されてしまい、本来出血に対して機能する血液が固まる作用が障害されてしまいます。

以上、説明してきたとおり胎盤早期剥離は産科合併症の中でもかなり危ないものです。発症がわかったならば、30分以内に緊急帝王切開にて胎児を娩出することが必要です。(←この部分は追記にて訂正しています。)それに備える体制を作るためには、24時間365日産科医と新生児科医、麻酔科医、そして産科に携わるco-medical staffを調達する必要があります。

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2006年9月19日 (火)

0157:H7の集団感染

2006年9月19日 曇り
天気はすっきりしません。

アメリカでの話。ほうれん草の生食に起因する腸管出血性大腸菌O157:H7の集団感染が拡大しています。これまで、感染者は109人、うち16人がHUS:溶血性尿毒症症候群を発症し1人が死亡しているとのことです。

FDAニュースから抜粋します。

To date, 109 cases of illness due to E. coli infection have been reported to the Centers for Disease Control and Prevention (CDC), including 16 cases of Hemolytic Uremic Syndrome (HUS) and one death. Illnesses continue to be reported to CDC.

訳:これまで、CDC(疾病管理予防センター)に報告された(腸管出血性)大腸菌感染は109名で16名がHUS:溶血性尿毒症症候群を発症し1人が死亡した。疾病患者はCDCに報告され続けている。

States Affected
There are 19 confirmed states: California, Connecticut, Idaho, Indiana, Kentucky, Maine, Michigan, Minnesota, Nevada, New Mexico, New York, Ohio, Oregon, Pennsylvania, Utah, Virginia, Washington, Wisconsin, and Wyoming.

疾病が発生した州
19の州で患者発生が確認されている。カリフォルニア、コネチカット、アイダホ、インディアナ、ケンタッキー、メイン、ミシガン、ミネソタ、ネバダ、ニューメキシコ、ニューヨーク、オハイオ、オレゴン、ペンシルバニア、ユタ、バージニア、ワシントン、ウィスコンシン、ワイオミング。

その他、ほうれん草の生食を一定期間自粛する旨の通達と、もしほうれん草生食後に症状が発生していた場合には、診療を受けるようアドバイスが続いています。また、原因の食品と思われる2つの食品のリコールが出されています。

大阪堺市での集団感染ほどの規模ではなさそうですが、早期に終息する様、祈るばかりです。

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2006年9月18日 (月)

帝切についての記事

本日2稿目です。

朝日新聞の記事です。
帝王切開、なぜ増える 20年で1.6倍に(朝日新聞)

『秋篠宮妃紀子さまが6日、帝王切開で悠仁(ひさひと)さまを出産した。厚生労働省の抽出調査に基づく推計では、この20年あまりで国内の帝王切開件数は約1.6倍に増えた。全体のお産数は約2割減っており、帝王切開が占める割合は7%から15%に上がった。背景には、初産の高齢化でリスクの高いお産が増える一方、経膣(けいちつ)分娩(ぶんべん)(いわゆる自然分娩)での予期せぬ事態を避けたい医療者側の思惑があるようだ。
 千葉県の主婦細田恭子さん(41)は3人の女の子を帝王切開で産んだ。長女と次女のときはいずれも経膣分娩の予定だったが、陣痛が弱いなどの事情で急きょ切り替えられた。「事前に調べる時間もなく、準備も知識もなかった」という。
 帝王切開には、紀子さまのように母子の状態によって計画的に行う場合と、経膣分娩に時間がかかりすぎるなどして急きょ行われる場合がある。母親の意識を残す局所麻酔が多く、最近は術後の見た目を考えて、おなかを横に10センチほど切るケースが増えている。入院は10日から2週間程度。5日ほどで退院する経膣分娩よりは長くかかる。
 部分前置胎盤や骨盤位(逆子)、以前に帝王切開で出産している場合の判断は、医師によって異なる。
 聖路加国際病院(東京都中央区)では、入院が長くなる、出血が多ければ輸血が必要、次のお産も帝王切開になる率が高まるといったリスクを説明するが、それでも帝王切開を希望する母親が増えているという。
 厚労省のデータによると、02年は国内のお産の約15%が帝王切開だ。元愛育病院長で主婦会館クリニック(東京都千代田区)所長の堀口貞夫さんは「6〜7人に1人のお母さんはおなかに傷がある。ちょっと異常な事態」と心配する。
 高齢出産などリスクの高いお産が増えているのも事実だが、お産をめぐる医療訴訟の増加や、産科医やお産を扱う医療機関の減少で不確定要素が多い経膣分娩を避ける傾向が強くなっていることも原因だという。米国立保険統計センターの統計(03年)によると、訴訟社会米国での帝王切開率は27.5%に達している。
 麻酔など医療技術の進歩で帝王切開の安全性は確実に増した。帝王切開は「管理できるお産」という考えは、医師だけでなく、親の側でも増えている。「裁判で『帝王切開をしていれば事故は防げた』という判例が増えれば、経膣分娩を怖がる医師がいても一概に責められない」と堀口さん。
 日赤医療センター(東京都渋谷区)の杉本充弘産科部長は「逆子の経膣分娩などは医師に経験と技量が必要だ。お産が減り、熟達した医師が減って、お産の現場での医師教育も出来なくなっている」と指摘する。

 「増加は好ましくないが、必要なケースもある。その場合、お母さんの心に傷を残さないことが重要」と杉本さんはいう。同センターでは、母子に危険が無ければ、帝王切開で取り上げた赤ちゃんはすぐに母親に抱かせる。夫が手術に立ち会うこともできる。杉本さんが担当する帝王切開の8割は夫立ち会いという。「帝王切開は第二の産道。ただ安全なだけでなく、よりよい帝王切開をする責任が医療側にもある」
 冒頭の細田さんは、長女のお産後に「普通の女性ができること(経膣分娩)ができなかった」と涙がこぼれたという。知人に「産道を通っていない子は我慢強くないらしい」と言われたことをホームページ「くもといっしょに」に書き込むと、大きな反響があった。
 ホームページは、今ではお産の情報が飛び交う交流の場になっている。「帝王切開が増えて欲しいとは思わないけれど、帝王切開だからといって、お母さんが頑張り足りなかったなんて思わないでほしい」と細田さんはいう。』

最近はどうしてもマスコミから流れる情報に過敏となっている様です。
「初産の高齢化でリスクの高いお産が増える一方、経膣(けいちつ)分娩(ぶんべん)(いわゆる自然分娩)での予期せぬ事態を避けたい医療者側の思惑があるようだ。」という部分には朝日新聞の「悪意」を感じてしまいます。緊急での帝王切開が増えることにより、救われている母児は恐らく20年前よりも多いはずです。(私見ですが...)

「母親の意識を残す局所麻酔が多く、」という部分は、ちょっと新聞側の理解が足りていないかもしれません。全身麻酔で行えば、お母さんの意識はなくなり、ストレスは減るかもしれませんが...産まれた赤ちゃんはお母さんに使用された全身麻酔剤が胎盤を通して移行するためsleeping baby(眠ったように息をしない赤ちゃん)となる可能性があります。呼吸がなければ、即座に新生児科医が気管内挿管を赤ちゃんに行うことになります。ですから、帝王切開の時には局所麻酔や腰椎麻酔が多いのだと理解しています。(もちろん、母体の状況によっては全身麻酔に移行せざるを得ないことはあります。)

「帝王切開だからといって、お母さんが頑張り足りなかったなんて思わないでほしい」とのことですが、現在はそういうことは少ないのでは...私は30ウん年前に経膣分娩で出生しましたが、かなりの難産で吸引分娩でした。しばらく啼泣がなく、いわゆる新生児仮死であったとのことです。私の父は、難産であったことから出生前に選択的帝王切開をしてくれと申し入れしていたそうで、ちょっとトラブルとなった様です。結構、いなかで30ウん年前にそのような認識ですから....母児ともに健康であれば、それが一番であると感じます。今も一人、妻のお腹の中で赤ちゃんが育っていますが...何よりも、母児ともに無事であってほしいと思う日々です。

さて、この記事の中で問題となっている帝王切開率について、日本15%、訴訟社会のアメリカ27.5%、訴訟社会かどうかはわからない大韓民国は38.5%(2004年)だったようです。→朝鮮日報記事

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医療訴訟と鑑定医

2006年9月18日 曇りのち雨
台風は通り過ぎましたが、午後より雨になりました。今日は一日freeです。が、先ほど感染性腸炎と思われる患者さんが入院。診察と指示をしてきました。

さて、拙ブログ:大野事件の続きには多くのコメントを寄せていただき、ありがとうございますした。一部、私の言葉が足りなかった部分がありましたので、ここで補足させていただきます。

福島県立大野病院での産婦人科医逮捕事件は、これまでの報道及び種々の情報収集から考えると、業務上過失致死、及び医師法違反により、逮捕拘留されたことについては不当であったのではないかと考えています。そして、私が、このブログを書き始めようと考えたきっかけは、「この事件が起こったから」にほかなりません。

このブログの冒頭、2つ目の記事に医療の限界という拙文がありますが、この中で
『医療上のミスを隠蔽したり、功名心にとりつかれた末に起こった事故や現時点での医療のレベルに著しく遅れた処置によって起こったできごとは許すべきではなく、当事者に厳正な処分が必要と感じますが...臨床医が『患者さんのために精一杯がんばったのだけれども、結果として亡くなられてしまった』というような事象に対して、刑事罰をもってのぞむのは余りに慈悲のないことだと思います。』と述べました。
一定のレベルをもった医師が、「これはあんまりだ。」「この事故には医療側の過失がある。」と判断するものについては、法的に制裁が待っている。これは当たり前のことですし、そうすべきであると考えています。

鑑定医については、どういう経緯で選ばれるのか?については、余り詳しくはないのですが...鑑定医と協力医について考えたことがあり、拙ブログ:協力医について拙ブログ:医療崩壊に対する対策2にいろいろな議論があります。

その中のコメントの一つモトケンさま(元検事で現在弁護士をされています)のコメントを引用させていただきます....
『法律家というものは、他の専門分野についてはかなり権威に弱いです。
 というか権威を頼る傾向があると言ってもいいと思います。
 つまり、医療過誤問題については権威のある(ありそうな、または、あるように見える)医師の見解を重視することになります。
 医学または医療に無知な検察官としては権威しか判断基準がないとも言えます。
 また、これは本来客観義務を負っている検察官としてはとてもまずいことなのですが、被疑者寄りの意見は信用しない傾向があります。
 私も年を取ったせいか、最近の若い検事には特にその傾向が感じられます。
 臨床の場での過失の有無・程度は臨床の実情・実態を前提にして判断すべきであるのに、ご指摘のように臨床と乖離した「権威のある」判断を示された場合は、検察の判断が単に臨床の感覚とずれるだけでなく、誤った、つまり過失を否定すべきであるのに肯定する判断をしてしまう蓋然性が高くなってしまいます。
 とりあえずこれに対する対処としては、被疑者の立場に立たされた医師を応援するために、極めて多忙とは思いますが、多くの臨床医が意見書を作成して検察に提出することが考えられます。
 しかし多くの意見書が集まったとしても、上述の理由により1通の名誉教授の肩書きのある鑑定書には負けるかもしれません。

 元検の立場としては、現役の検察官が現場の声に耳を傾ける謙虚さと自らの判断の影響力を洞察する視野の広さを持つことを祈っております。』
というコメントから考えて、やはり大学教授等の社会的に権威がある医師に依頼することが多い様です。

また、東海地方の医事紛争を手がけている弁護士さんは、どうも上越地方の大学教授?に鑑定医を依頼することが多いのではとの情報もあります。

ここからは、私見でありますが....我々、一般臨床医が日常行っている診療レベルで「過失あり」「過失なし」の判断を下すべきであると思っています。クーデルムーデルさまの経験された一件は、まさに一般の診療レベルで判断する事例であると思っておりますが....鑑定となると、記名を行い裁判で有効となる文書を書く行為です。いろいろな影響を考えると、難しい決断を要すると考えます。
記名なしで、コメントを寄せる医師は鑑定医に対して協力医と呼ばれることが多い様ですが、これも相当不足している様です。一般臨床をしている医師が多くこれに参加して、一定のレベルの判定を下すことができるようになれば現状を打開できるかもしれません。

すいません、長文となりました。^ ^;

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2006年9月17日 (日)

暴風雨!

2006年9月18日 暴風雨

台風13号(サンサン)は現時点がもっとも接近した状態のようです。外は、ビュービューすごいです。
近くの県では、台風に伴うと思われる「突風」(一部では竜巻とも...)により、JRの特急が駅直前で脱線、転覆し数人のけが人が出ています。→記事また、その突風に伴った事故が...商店の商品だなが外からの突風にガラスの壁ごと倒れ、その下敷きになった方が一人、心肺停止状態であるとのことです。

自然は本当に恐ろしい。「人知ごときのもので押さえ込めるものではない」という思いを新たにしました。

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2006年9月16日 (土)

大野事件の続き...

2006年9月16日 雨
非常に強い台風が近づいてきています。現在のところ中心気圧は925ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は50m/sと勢力は保持したまま、九州に接近中。予想では「直撃」コースです。以前の台風で私の勤めている病院は病室のガラスが割れ、患者さんがケガをされたことがありました。今回はそういったことがなければ良いが...と案じています。

さて、大野事件の続報が...ソースは「毎日新聞」。

大野病院医療事故:裁判所が争点初提示 初公判12月に−−公判前整理手続き /福島(毎日新聞)

『◇第3回公判前整理手続き
 県立大野病院で帝王切開手術中に女性(当時29歳)が死亡した医療事故で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた同病院の産婦人科医、K被告(39)の第3回公判前整理手続きが15日、福島地裁であった。今回は裁判所から初めて争点についての考えが示された。手続き終了は11月となり、初公判は12月にずれ込む見通しだ。
 手続きでは、裁判所から「胎盤の癒着がわかった段階で、大量出血を予見して剥離(はくり)を中止し、子宮を摘出すべきだったか」が主たる争点との考えが初めて示された。これについて弁護側は手続き後の記者会見で、「止血をするために胎盤をはがすことは臨床では当然のことで、出血を放置して子宮を摘出することは危険だ」と主張した。これに対し検察側は、「大量出血をする前に子宮を摘出すべきだと主張しており、(止血することが重要だとする弁護側の主張は)前提となる事実が異なっているように思われる」と話した。
 次回は10月11日に行われ、弁護側が主張を記載した「予定主張等記載書面」を改めて提出する。11月10日に検察側が意見を述べて手続きを終了する見込みだ。』

記事は一部、加工しております。
「胎盤の癒着がわかった段階で、大量出血を予見して剥離(はくり)を中止し、子宮を摘出すべきだったか」とのことですが、癒着胎盤がはっきりしたのはどの時点であったのか?これは論点にならないのでしょうか?
私は、小児科医で専門外なのですが、子宮から胎盤が「はがれにくい」ことは本当に稀なことで、そのほとんどが癒着胎盤なのでしょうか?

若い、妊娠可能性のある女性の子宮を摘出するということは非常に高度な判断ではないのか?と思ってしまいます。検察側の「大量出血をする前に子宮を摘出すべきだ」という主張は、スジの通ったものですが...実際の臨床の現場ではどうでしょうか?自分であればいわば「身を切られるような」判断となると感じます。

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2006年9月15日 (金)

産科医のいない院内助産所2

本日2稿目です。

拙ブログ:産科医のいない院内助産所には活発なコメントをいただきました。ありがとうございます。

参照した記事の中で、「同センターの産婦人科は、10月から同市新庄町の紀南病院に集約される。医師不足による厚生労働省の拠点化政策の一環で、担当医3人のうち2人が紀南病院へ」という下りがありましたが、その二つの病院の距離をYahoo mapにてみてみると...約10km程度と思われました。

この距離をどう感じるか?ということになると思いますが...基本的には、やはり院内に産科医が常駐する状況の中で助産所を作るべきではないか?と考えてしまいます...。

しかし、病院に就職された助産師さんは、なかなか集約化....難しいようですね....。自分がその立場であれば...確かに簡単に決められることではないですね...。

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厚労省案

2006年9月15日 雨

アデノウィルス感染症とマイコプラズマ肺炎が流行中です。

拙ブログ:残念な処遇でも紹介した射水の尊厳死事件にも関連する報道です。

終末医療で初の指針案=延命治療、チームが決定−患者の意思尊重し文書化・厚労省(時事通信)

『厚生労働省は15日、終末期医療の指針原案をまとめた。延命治療の中止などは、患者の意思を踏まえ、医師の独断ではなく医療チームが決定し、患者と合意した内容を文書化。患者の意思が不明の場合、家族の話から本人の意思を推定するが、推定できない場合、家族の意思は参考にとどめ、医療チームが治療方針を決定するとしている。
 終末期医療をめぐっては、今年3月に富山県の射水市民病院で末期がん患者の人工呼吸器取り外し問題が発覚したのを受け、川崎二郎厚労相が指針を作成する方針を示していた。同省は近く、法曹関係者も交えた有識者で構成する検討会を設置し、年度内に正式な案をまとめる方針だ。』

さすがに動きが出てきた様です。ただ、「推定できない場合、家族の意思は参考にとどめ、医療チームが治療方針を決定するとしている。」という下りは、今後大きな議論を巻き起こしそうです...。

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2006年9月14日 (木)

産科医のいない院内助産所

更に、本日第2稿目です。

産婦人科医のいなくなる病院に院内助産所ができるという話題です。助産所の概念は、助産師のみで運営する分娩施設とすることができます。助産師さんは通常の分娩を扱うことはできますが、「お産」は終わるまで通常の経過で終わるのか?突然異常分娩に移行し、緊急の処置を要するようになるのか?これがわかりません。そして、一旦異常分娩に移行した場合は、分単位で決断を要する事態となり、輸血や緊急帝王切開など医師でなければ施行できない手技を要求されます。間に合わない場合は、母児の命に直結します。

助産所における分娩は究極的には、院内に産婦人科医のいる状態で作るべきであると考えます。この記事は、時代に「やや逆行している」と感じざるを得ません。ソースは「毎日新聞」です。

南和歌山医療センター:「院内助産所」を開設、年内には妊婦受け入れへ /和歌山(毎日新聞)

『◇今月で産婦人科廃止
 今月で産婦人科がなくなる田辺市たきない町、南和歌山医療センター(中井國雄院長)が、新たに「院内助産所」の開設準備を進めている。授乳室を改修した和室の出産室も完成し、年内には妊婦の受け入れを始める。
 院内助産所ができるのは、4階西病棟の産婦人科の一角。現在、配置されている14人の助産師のうち、同科の診療停止に伴う異動や退職者を除く約半数が従事する。同センターは、同市内などにある4軒の個人経営の助産所に協力を要請し、担当の助産師を研修で派遣している。
 また、開設に先立ち、15日から妊娠、出産、産じょくなどの保健指導を目的とした「助産師外来」を立ち上げる。月〜金曜日、午前9時〜午後4時で完全予約制。費用はいずれも健康保険対象外。このほか、育児相談や産前産後の電話相談も行う。
 同センターでの出産件数は05年度、357人あった。このうち306人は正常出産で、異常出産は51人だった。
 同センターの産婦人科は、10月から同市新庄町の紀南病院に集約される。医師不足による厚生労働省の拠点化政策の一環で、担当医3人のうち2人が紀南病院へ、1人は高知県の病院に移る。』

異常分娩は年に51例あったようです。これに対する対応はどうするのでしょうか??

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イソゾールという薬

2006年9月14日 晴れ
久しぶりに、「秋晴れ」でした。

小児のけいれん重積状態(注1)でも使用する可能性のあるくすり、イソゾール(サイアミラール)での事故です。全身麻酔の導入などに使用されることの多いくすりです。この薬の副作用として「気管支喘息の発作を悪化あるいは重症の発作を惹起する可能性がある」というものがあります。使用する場合は、その患者さんに「気管支喘息の既往がないか?」を聞く必要があります。

(注1)けいれん重積状態:けいれんが止まらない状態。呼吸や循環に悪影響を及ぼし、けいれんのコントロールができない場合は死に至る場合もある。

中絶手術で過失 院長を書類送検 福岡西署(西日本新聞)

『福岡西署は14日、人工中絶手術の際、適切な処置を怠って女性を死亡させたとして、業務上過失致死容疑で、福岡市西区の男の産婦人科医院長(83)を書類送検した。院長は過失を認めているという。
 調べでは、院長は昨年8月25日、人工中絶手術に訪れた同区内の女性=当時(22)=に気管支ぜんそくの既往症があったにもかかわらず確認を怠り、ぜんそくの発作を誘発する恐れのある麻酔薬「イソゾール」を投与、経過観察も怠り、死亡させた疑い。』

83歳という高齢の医師です。通常であれば、すでにリタイヤされているものと思われますが....。言葉がありません....。

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2006年9月13日 (水)

残念な処遇

2006年9月13日 雨
涼しいです。今日は終業時間間近に受診した腹痛の児。右下腹部に圧痛があり、反跳痛あり。筋性防御はみられず。嘔吐数回。虫垂炎を疑い、精査を進めたところ、WBC 11,400 , CRP 0.02。ちょいとアヤシいと思い、腹部CTしたところ、直腸を圧排するような形の腫瘤が...??場所からすると卵巣??
卵巣腫瘍の茎捻転の疑いで、婦人科と小児科のそろった病院に搬送でした。

さて、射水の外科部長先生。事務方に異動させられていたのですね...恐らく、臨床が非常にできる方であったのでは?と考えますが...そのような「閑職に」とは、ほとんど「拷問」です。

“安楽死”射水病院元部長、復帰求め市に不服申立書(読売新聞)

『富山県射水(いみず)市の射水市民病院で入院患者7人が延命措置の中止により死亡した問題で、関与したとされる伊藤雅之・元外科部長(51)が、同病院と市から受けた自宅待機命令や人事異動は問題だとして、同病院への復帰を求める不服申立書を市公平委員会に提出したことが9日、わかった。
 伊藤元外科部長は、院内で問題が発覚した昨年10月以降、病院長から自宅待機を命じられ、今年5月には市福祉保健部参事に異動した。
 伊藤元外科部長は「現場復帰を願ってくれている市民に応えたい」としている。』

この事件では、病院内部の不協和音の指摘や、この外科部長さんに対して家族は感謝こそすれ憎悪の念は持っていないというような報道もあり、外科部長さんの責任を追及しすぎるのはひょっとすると「筋違い」かも知れないと感じています。もちろん、尊厳死という概念が法的に擁護されるものではありませんし、いろいろな意見が存在するのもわかります。
しかし、将来的には「自分の最後の瞬間は自分で決めることができる」というような法整備も必要になってくるのではないか?とも感じます。

患者さんたちが待っているのであれば、この外科部長さんが復帰して患者さんのために働かれるのを望みます。

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2006年9月12日 (火)

人員の不足...

2006年9月12日 雨

新学期が始まり約2週間。そろそろ、疲れがたまってきている様です。「下肢に力が入らず歩けない。」などの症状を呈する児が入院したりしています。一通りの検査を終えて、特に大きな所見がないのを確認し、点滴をして数日観察すると何事もなかったかのようによくなって帰っていきました。

さて、私の卒業大学がある県での記事。毎日新聞から....
医師:小児・産婦人科医、1割超減る−−県内主要28病院 /栃木

『県議会地域医療・保健対策特別委員会が11日開かれ、県は04年8月から今年8月までの2年間で、県内の主な28病院の小児、産婦人科医師数がともに1割以上減っていることを明らかにした。
 県医事厚生課によると、小児科医は04年8月1日に49人だったのが、今年8月1日で43人になり12・2%の減少。産婦人科医は同51人から45人となり、11・8%減少した。医師数全体が5・5%減ったのに比べ、際立った減少率を見せた。
 しかし、8月に関係省庁がまとめた「新医師確保総合対策」で、国が医師の養成数増員を容認する「医師不足県」には選ばれなかったことも報告した。』

現在の状況では、なかなか病院の小児科や産婦人科には人が残っていかないと思います。
拙ブログ:小児科の不採算性に記述しましたが...
「良質の医療を効率的に提供しようと改革を断行した病院小児科が、病院内の収入の面では「肩身の狭い」思いをする事になっています。「小児科の不採算性」は日本の診療報酬体系に起因するものと考える事ができます。」

恐らく、病院の小児科の診療報酬評価には構造的な問題があり、「一つ一つの処置をとっても多くの人手を必要とする」という部分を積極的に評価した診療報酬体系としなければ、病院小児科は魅力ある職場とはなり得ないと考えます。

毎日新聞には「何故、病院小児科産婦人科の人員が減っているのか?」「それに対する対策」まで突っ込んだ報道を期待したいところです。

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2006年9月11日 (月)

当直です。

2006年9月11日 雨

今日は当直です。いまのところ、平凡な流れですが....

朝までこのままであって欲しいと願っています。

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2006年9月10日 (日)

ある日のできごと2

2006年9月10日 雷雨
激しい雷雨が早朝より続きました。

一日更新できませんでした。


<以下の物語は実際の経験をもとにしておりますが、脚色が大幅に入っております。>
ある日のことを思い出します。土曜日でした。まだ、地域の輪番当番が始まる前の時期で...volunteerで土曜日の午前中のみ外来をしていました。

救急隊から電話。「◯歳児、●の浴室にて溺れた。現場では心肺停止状態で、心マ、人工呼吸しながら数分で着きます。」

救急室の雰囲気は一変します。挿管の準備...サイズは4.0か4.5mm、ルートはT1で準備。

搬入時も呼吸停止を確認。モニターを付けながら、挿管。駆けつけてくれた他科の医師に心マを指示。体は冷たい。ルートが確保できるまで、気管内にボスミン投与。

換気と心マを続けるが、モニター上は心マを止めるとflat。ルートが確保できたので、ボスミン静注、メイロン(メイロン:重炭酸ナトリウム。現在では蘇生の場ではほとんど用いられない。)静注。加温。こういった処置を繰り返します。

20分以上経って、モニター上flat。親御さんを入れて、状況を説明。「これだけの処置をしているが、蘇生できない。」「救命は難しい。」親御さんからは「蘇生を止めないでくれ。」との強い希望がありました。

それから、20分程度経過して、自発の心拍が確認され、徐々に自発呼吸が出現しました。強い障害が残る可能性もありますが、低体温療法などの脳保護療法ができる施設に搬送しました。

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2006年9月 8日 (金)

ネフローゼ症候群_腎3

ネフローゼ症候群の続きです。

前回までで、腎の解剖、ネフロンの中の糸球体と糸球体の壁のところを勉強しました。ネフローゼ症候群では糸球体の壁の部分が病態に大きく関与しています。

Photo_3

左の図は、マウスの糸球体の壁を電子顕微鏡でのぞいたものです。糸球体の壁は、内側から血管腔→内皮細胞→基底膜→上皮細胞→尿腔の順に並んでいます。内皮細胞はあまり、蛋白が漏れるのを防止する力はないものと考えられている様です...(しかし、一部の学説では「さにあらず」とも)、基底膜はコラーゲンにより細かな網目を形成しており、網目より大きな分子をせき止めます。(これを分子のサイズにより保持することから「サイズバリア」ともいいます。)また、基底膜はそれ自体が陰性に荷電しており(つまりマイナスの電気を帯びていること)、血清蛋白質の中の重要な成分であるアルブミンなどの陰性に荷電した蛋白を電気的にせき止めます。これを、分子の大きさでせき止めるサイズバリアに対して、「チャージバリア」とも呼びます。
上皮細胞はその表面が陰性に荷電しており、チャージバリアの役目を果たします。また、上皮細胞の足の間に形成されるスリット膜はジッパーのような構造をしていて、非常に小さな穴が開いています。これがサイズバリアとしての役目を果たしているとされています。スリット膜の構成成分のうちの一つでネフリンという蛋白がありますが、これは生後すぐから多量の蛋白尿を示し、腎不全へと進行するフィンランド型先天性ネフローゼとの関連があるとされています。

Slit_1

ちょっと、専門的すぎる話となってきてしまいました。少し話を戻しますが、成人の1日の糸球体濾過量は180ℓです。いままで、説明してきた「蛋白をせき止める機構」がなければ、計算上1日に10,000g以上の蛋白が漏れ出ることとなります。3.5g/日以上がネフローゼの基準ですので、如何に糸球体の壁が頑張っているか?がわかると思います。この、蛋白をせき止める機構が様々な原因で破綻した場合にネフローゼ症候群が起こります。

次回からは、実際の病気について説明します。

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派遣制度

2006年9月8日 晴れ
不明熱の児が入院しました。精査を進めていきます。

さて、個人的に非常に気になる記事です。
医師派遣:へき地勤務医内定、都城市出身の中村さん−−県制度 /宮崎(毎日新聞)

『へき地の医師確保の目的で昨年度導入した医師派遣システムについて県は、都城市出身で東京北社会保険病院(東京都)に勤務する中村豪さん(38)=埼玉県在住=の採用を内定した。来年4月1日付で県職員として採用し、県内のへき地の公立病院・診療所に2年間派遣する。同システムでは2月に医師を募集したが、応募者がなく今年4月の採用は見送っていた。
 中村さんは宮崎西高を経て自治医科大(栃木県)卒。92〜02年に椎葉村など県北の公立病院で勤務経験がある。県は今年春に応募を依頼。安藤忠恕知事が直接会って要望し、中村さんも「古里の医療に携わりたい」と了承した。
 また、県は、卒業後に県内のへき地や小児科などでの勤務を条件に、修学資金を貸し出す制度に応募した医学生の男女8人全員に適用することを決めた。今年度は定員4人だったが「8人とも地域医療に貢献する熱意を感じた。総定員は24人なので前倒しした」(知事)という。』

中村先生の2年間のあとはどうなるのでしょうか?これは気になります。また、しばらくして、じっくり腰を据えてやれる病院に就職できるのでしょうか?

私のいる県でも、これと似た制度を作り医師を募集しましたが...応募者はゼロでした。もっとも、1年間県立病院か、私のいる病院で研修し、その後の2年間は診療所あるいはへき地の病院、この3年間をずっと繰り返すというもので...この制度にのっている限り、定住の可能性はありませんが....

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2006年9月 7日 (木)

米国から見た日本の医療事情

2006年9月7日 晴れ
朝晩涼しくなってきました。

mariko先生のブログにあった記事です。

〔連載〕続 アメリカ医療の光と影  91回:「Tさんへ 9年目の詫び状」:李 啓充 医師/作家(在ボストン)

外から見ると、こんな風に見えるのでしょうね。鋭く、核心をえぐっています。絆創膏貼りたいです!
自分もこのままいくと、過労でそうなるのか?などとも思いました。

ただ、mariko先生のブログの記事に寄せられたコメントは悲しいものですね...相手に対する思いやりなど、一つも感じられません。

『Tさん,あなたが亡くなられてから9年が経ちました。あなたの死を無駄にしてはならないと,この間,私なりに一生懸命頑張ってまいりましたが,残念ながら力及ばず,日本の医療は,ますます悪い方向へと向かおうとしています。あなたの死が無駄になろうとしていることについて,友として,心から詫びなければなりません。

 思えば,中学時代の友人から,同級のあなたが倒れられたと知らせるメールが送られてきたのは,97年8月のことでした。小児科医として勤めておられた大学付属病院で,あなたは,当直明けの朝,当直室で倒れられたのでした。診断はクモ膜下出血,約20日後,あなたは意識が戻らないまま,43年の短い生涯を終えられました。

 海外に住む私にとって,親友の葬儀への出席がかなわなかったことは慚愧に堪えませんでしたが,数年後,同級生から葬儀の模様を聞くことができました。多数参列したあなたの患児の一人が,あなたが死んだという事実が了解できないまま,「T先生,ケロンパの絆創膏をつけたらすぐ元気になるよって,いつも言ってくれましたね。T先生も,これをつけて,早くよくなってください」と,遺影の前にカエルの絵がついた絆創膏を置いて会葬者の涙を誘ったと聞いたときは,私も涙が出て止まりませんでした。中学のときから心優しかったあなたは,患児たちに対しても,とりわけ心優しい医師であったに違いありません。

 驚いたことに,1年半後,あなたの死は,新聞で報じられる「ニュース」となりました。日本では,医師に過労死が認められることは非常に稀であるのに,あなたの死が労災と認定されたと,「ニュース」になったのでした。「倒れる前の最低12日間は休まず働き,この間に2回,当直に就いた。……毎日最低3時間の時間外労働をしていた」と,倒れる直前の数日間,ほとんど眠る時間がないほど働き続けた様子がそのときの記事に紹介されていましたが,日本の勤務医にとってはあまりにおなじみの過重労働の結果,あなたは「非業」の死を遂げたのでした。

 記事の中で,あなたが勤めていた病院の院長が「勤務態勢の見直しを検討しているが,投薬する薬が少なく診療報酬が低い小児科では,医師の人数を簡単に増やせない」と発言,(1)小児科医の過重労働が深刻化している実態と,(2)診療報酬の額・仕組みなど,日本の医療の制度・政策にかかわる構造上の問題が医師の就労環境の改善を阻んでいる事実を,いみじくも指摘したのでした(もっとも,私には,「制度が悪いからどうしようもない。働きすぎの小児科医が死んでも仕方がない」と言っているように聞こえて,腹が立ってなりませんでしたが……)。

 さらに,記事の末尾で,ある医大の教授が,「今回と同じような悲劇が,どこで起きても不思議ではない危機的な状況だ」と,日本の小児医療全体の危機であることを強調したのですが,あなたの死から9年,日本の勤務医の過重労働を巡る状況は,改善されるどころか,産科,麻酔科,内科……と,他科にも拡大するほど悪化したのでした。

 Tさん,過労死の犠牲となられたあなたにとって,なぜ,日本の医師の過重労働の問題が悪化する一方なのか,不思議でならないでしょう。実は,Tさん,あなたの死が労災と認定されたことが「ニュース」となった事実にその答えが隠されているので,ここで少し説明させてください。

 通常,過労死が労災と認定されるためには,月100時間を超える時間外労働をしていたことが条件となるのですが,厚労省は,医師の「当直」時間を就労時間とは認めていません(医師がほとんど眠る時間がないほど働いている現実があるというのに,「当直とは夜回り程度の軽い仕事だから労働とは言えない」と言うのです)。というわけで,医師が過労死を認定されるためには,当直以外に月100時間を超える時間外労働をしていなければならないのです(Tさんの場合も,当直以外に100時間を超える時間外労働をしていたからこそ労災が認定されたに違いありません)。

 それにしてもTさん,97年に亡くなられたあなたにとって「厚労省」とは耳慣れない言葉でしたね。あなたが亡くなられた後,厚生省と労働省が統合され,いまは,医療を管轄すべき省が,労働基準法の遵守を監督・徹底すべき省にもなったのですが,医療と労働の両方の「本丸」となったというのに,「当直時間は就労時間にカウントしない」という「トリック」を使うことで,日本中の医師が労働基準法違反の過重労働を強いられている現実から目を逸らし続けているのです。

 厚労省が目を逸らしているのは過重労働の問題だけではありません。過重労働の根本原因である医師不足の問題についても,「医師偏在の問題」と言い換えていることでもわかるように,不足がきわめて深刻な事態にある事実そのものを認めようとはしていないのです(「偏在」というのは,余っている地域と足りない地域とばらつきがある状態を言うのだと思うのですが,日本のどこに行ったら,産科・小児科の医師が余っているというのでしょうか?)

 Tさん,過労死の犠牲となられたあなたにいまさら言う必要もないことでしょうが,日本の医療が世界に冠たる「低コスト」で運営されてきた秘密は,実は,医療者たちが過重労働をいとわず,黙々と働き続けてきたことにあったのです。それが,いま,「もう体が持たない」と音をあげた医師たちが,勤務医を辞めて開業医に転向する事例が跡を絶たず,病院の医師不足はますます深刻化しているのです。日本の医療を支えてきた大本の柱が,いま,荷重に耐えかねて折れようとしているのですが,医療が崩壊の危機に瀕しているというのに,政府はさらなる医療費抑制を進めようとしているのですから,私としては背筋が寒くなるような恐怖感を覚えざるを得ません。

 Tさん,あなたの死が図らずも実証したように,医師不足についても,医師の過重労働についても,日本の医療は,すでに,少なくとも9年前には深刻な事態に陥っていました。それなのに,厚労省も政治家も,この9年間,当直時間は就労時間に含めないというトリックを使い続けたり,不足を「偏在」と言い換えたりすることで,問題の「存在」そのものさえ認めようとはしてこなかったのです。脳細胞の活動を「denial」のフェースで止めたままの人たちがこの国の医療政策を司ってきたのですから,いつまでたっても事態が改善するはずなどなかったのです。

 Tさん,あなたが生きている間に聞いておけばよかったと,いま,私が後悔していることが一つあります。あなたが,「よくなるよ」と,患児に使っていたケロンパの絆創膏,いったいどこに行ったら手に入るのですか? もし,手に入ったら,「早くよくなるといいね」と,厚労省の官僚や政治家たちの頭に貼ってやりたいのですが……。

(つづく)』

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2006年9月 6日 (水)

ネフローゼ症候群_腎2

ネフローゼ症候群の続きです。

前回は腎臓の大きな目で見た解剖と機能について説明しました。一つの腎臓に尿を生成する単位→ネフロンが約100万個あるということでした。そして、一つのネフロンに一つの糸球体(尿のもと原尿を血液から濾過する装置)があります。そして、ネフローゼ症候群は、その糸球体が病変の首座となります。

Kidney2

左の図は、その糸球体を模式図で示したものです。輸入再動脈から濾過される血液は糸球体(血管のかたまり)に入り、輸出再動脈より出て行きます。糸球体からは絶えず、原尿が濾過されています。そのスピードは前の記事でも示しましたが、成人の腎臓では実に180ℓ/日=125ml/分という大きなものです。
そして、矢印の先の写真は「電子顕微鏡」という、通常の「光学顕微鏡」よりも、もっともっと細かい部分まで見える顕微鏡によって撮られた、糸球体の表面(走査電子顕微鏡)、糸球体の壁の切片の写真です。糸球体の表面には、凸凹がありますが、これは上皮細胞という特殊な細胞の「足」が複雑に絡み合っている状態を表しています。切片の写真では、US:尿腔(つまり原尿が濾し出される空間)、GBM:糸球体基底膜(尿腔と血管腔を分けている膜)、E:上皮細胞、End:内皮細胞(血管腔をうらうちする細胞)、Cap:血管腔という略語で表されています。

そして、原尿が血管腔から尿腔に濾し出されるわけですが、通常は血液中のタンパク質は、ほとんど尿腔へ濾し出されることはないのです。(ほとんどという意味は、一部の小さな分子量のタンパク質は通ってしまうからです。)そして、ネフローゼ症候群の児は、この写真のうちE:上皮細胞の足のあいだに形成される「スリット膜」やGBM:糸球体基底膜に障害があり、尿腔へ血液の大事なタンパク質が漏れ出てしまうというのが病態の基本です。

どうして、そんなことが起こるのか?全てが解っているわけではありませんが、次回には、そのお話をしたいと思います。

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blogの紹介_Dr.rijinのギモン

ブログを御紹介します。

Dr.rijin先生は統計学的手法を使って非常に興味深い記事を書かれています。

Dr.rijinのギモン:診療所での分娩は危険なのか?
Dr.rijinのギモン:小児科医の負担

目からウロコが落ちるような説得力があります。医療者のリンクにも加えました。

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堀病院事件への声明

2006年9月5日 雨
少し涼しくなってきました。秋の気配を感じます。

神奈川県産科婦人科医会から堀病院事件に対する声明が出されています。

『堀病院に対する警察の家宅捜査に関する見解

 今般の横浜市瀬谷区堀病院における神奈川県警生活経済課による保健師助産師看護師法違反容疑での、警察官60名にもおよぶ異常な家宅捜査および大々的報道は、現在、すでに分娩受け入れ状況が許容限界を超えて破綻状態にある神奈川県内の分娩医療機関ならびに妊婦に深刻かつ多大な影響を及ぼしております。
 当神奈川県産科婦人科医会は、神奈川県の産科救急システムの創設・充実等、神奈川県における母子の健康と安全のため最大限の努力をしてまいりました。この立場から、今般の事態により、きわめて深刻な県内の産科診療環境の悪化が加速することを憂慮しております。
 当会は、堀病院での診療内容が、分娩経過の全体を産科医師が把握しつつ、担当医の監督責任のもとで十分な経験・技量を身につけた看護師による産婦の正常経過の観察を担当医が補助情報として利用する範囲内であることを確認しており、現行の法令に背反するものではないと確信しております。
 神奈川県産科婦人科医会は、神奈川県警の家宅捜査に強い遺憾の意を表明するとともに、今後の堀病院への全面的支援を表明いたします。今後想定される事態に対しても、全国の皆様にご支援を賜りたく、お願い申し上げます。

2006年9月4日

         神奈川県産科婦人科医会
         会長 八十島 唯一』

みなさま御存知の堀病院事件は、妊婦への内診を経験が深い看護師であっても、助産師の資格を持っていなければ許さないという検察の決意を表明したものです。私がいままで勉強してきた範囲では、助産師さんの数はほぼ足りている、しかし、助産師さんの資格を持っていても助産師として働いていない方や、ある特定の病院にスゴく多数の助産師が雇用されており、凄まじい偏在が生じている。そのため、一般の産科診療所には助産師さんは回ってこない(つまり、不足している)ということです。

日本のお産の恐らく半分以上は、産科診療所で行われていると考えますが、そのほとんどが、助産師不足です。神奈川県警とそれに引き続く各県の警察検察が同様の基準で捜査を行えば、大方の産科診療所は「お産が不可能」の状態となります。そのお産は一部の産科センターに集中し、あぶれた妊婦さんはいわゆる「お産難民」となってしまいます。

「お産難民」は助産院に誘導するような新聞の風潮もありますが、現状の助産院は緊急時の処置に迅速に対応できるものではないことがほとんどで、小児科医としてはオススメしません。現状にあった、フレキシブルな対応が必要です。

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2006年9月 5日 (火)

円より子さん の ブログ

本日、第2弾です。よくお邪魔しているブログから、たどったブログです。
民主党の参議院議員である円さんは、民主党「次の内閣」国家公安委員長などに抜擢されています。

さて、その記事の中の一つです。
●助産院開業を阻む医療法19条は大問題

一部は、医療者の声を反映している様ですが...
「「嘱託医」を「医師及び病院又は診療所」と一律に決めるよりも、妊婦さんの容態・リスクに応じて、必要な医療機関に迅速に搬送できる連携システムをこそ構築すべきで、「嘱託料」といった金銭の対価を助産師が支払わなければいけないような制度を温存させることが適当だとは思えません。」
このような「嘱託料」が発生している状況は知りませんでした。ただ、嘱託を受けるということはそれだけのリスクを抱えることであり、ある程度の対価を得なければ契約の成立は難しいでしょうね....特に昨今の産科に関する訴訟を考えれば...。
必要な医療機関に搬送する連携システムについてですが、分娩時に危急自体となったときには、恐らく分単位での素早い対応が求められます。輸血や緊急帝王切開など、医師でなければ決断し施行することのできない処置です。可及的に速やかに対応するならば、やはり院内に産科医がいる場所で、助産院を開業することであろうと思いますし、様々な産婦人科医の先生も同様の発言をなさっています。

「病院における不必要な陣痛促進剤の使用や、帝王切開が問題となるケースも多く報告されています。」ということですが、今の時勢で陣痛促進剤を不必要に使用するようなことは、恐らく産科医の先生方はなさらないであろうと感じます。(あくまで私見です。)

因に、この記事は2006年6月9日に記されていますが、最近ではこの医療法19条について若干の改訂があった様です。
ある産婦人科医のひとりごと:定着しない助産師 長時間勤務、残業 (東京新聞)より情報を拝借しました。

「今年成立した改正医療法(2007年施行)で、助産所の嘱託医は産婦人科医に限定され、緊急時に搬送できる連携医療機関も義務化されたとのことです。連携医療機関が分娩の取り扱いを中止すれば、その施設は連携医療機関としての要件を満たさなくなります。」

つまり、嘱託医は以前ならば皮膚科の先生や内科の先生で分娩を取り扱った経験のない方でもよかったのです。しかし、助産院で緊急帝王切開などの緊急処置が必要となった場合にそれでは役に立たないということで、嘱託医は産婦人科医に限定し、連携医療機関も義務化されてきたということですね。

円議員のいわれることは、一部は分娩の理想です。しかし、現実として産科を取り巻く現状では受け入れがたい部分もあるのではないでしょうか?

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脳梗塞という言葉

2006年9月5日 晴れのち雨
なにかジメジメしています。徐々に気管支喘息の児が増えてきています。秋口はシーズンです。

さて、用語の問題?と思われる記事です。医療過誤の報道に長けている毎日新聞から...
医療過誤訴訟:金沢大病院「過失ない」争う姿勢−−地裁で口頭弁論 /石川(毎日新聞)

『金沢大付属病院(金沢市)に入院していた小松市の女性(59)が、脳こうそくを発症して神経に障害が残ったのは病院側の治療後の措置に過失のためとして、同大相手に1億円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が4日、金沢地裁(倉田慎也裁判長)であった。金沢大側は「過失はなかった」として争う姿勢を見せた。
 訴状によると、女性は01年12月10日に心不全で同大に入院。心臓検査のため、頸(けい)静脈にカテーテルを挿入した。同13日にカテーテルを抜いた後、ベッド交換のために移動したところ、挿入口から多量の空気が静脈に入り、脳こうそくを発症。付き添い介護が必要な後遺症が残った。
 病院側はこれに対し、▽発症したのは脳こうそくではなく、脳塞栓(そくせん)▽カテーテルを抜去後の処置は医学水準に合致した手法で、挿入口から空気混入は考えられない▽ベッド交換が直接の原因とは断定できない——などと反論した。』

脳梗塞という言葉を調べてみると...「脳血栓と脳塞栓の総称。脳に酸素と栄養を供給している動脈が細くなったり詰まったりして、その先に血液が流れにくくなる疾患。」とあり、脳梗塞の範疇の中に脳塞栓は入ることとなります。
「▽発症したのは脳こうそくではなく、脳塞栓(そくせん)」と病院側が説明したとありますが、これは「発症したのは脳梗塞の中の脳塞栓」といったのではないかと思います。

また、患者さんには心不全があり、心臓の中での血流が低下している可能性があります。そうすると、心臓の中で血栓が形成され、それがとんで脳の血管の太い部分に詰まり心原性脳塞栓という重症の脳梗塞を起こすことがあります。

そして、なにより頚静脈から空気が入った場合、まずは上大静脈から右心房に入り、右心室を経由して肺動脈から肺に空気塞栓が起こるのが普通のような気がするのですが...これは、専門の循環器の先生に聞かないとはっきりしませんね...

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2006年9月 4日 (月)

ネフローゼ症候群_腎1

2006年9月4日 晴れ
ネフローゼ症候群を語る上で、腎臓の解剖や機能の説明は不可欠です。今日から、腎臓の説明をしていきます。

腎臓はそら豆のような形をした臓器です。ちょうど腰のあたりの、後腹膜というおなかの臓器を包んでいる膜の後ろの部分に脊椎を挟んで左右一対で位置しています。Kidney1

右の図は、腎臓の模式図ですが、その皮質と髄質と記載されている部分で尿をつくり、腎杯、腎盂の中に排泄します。そして尿は尿管の方へ流れ、更に膀胱に入り、尿道を通って体外に出て行きます。ここで、尿とは何でしょうか?尿は一言でいうと、体の中で発生したゴミということになります。体の中の発生したいらないもの(老廃物)を尿の中に濃縮して捨てているのです。これが、腎臓の大きな役割の一つです。

Kidney3そして、更に続けます。尿を作る小さな単位を専門的な用語で「ネフロン」といいますが、これが一つの腎臓につき約100万個あるとされています。左の図は、そのネフロンの模式図です。模式図ですから縮尺はあてにならないと考えてください。この中で、糸球体から近位曲尿細管、近位直尿細管、ヘンレのわな(ループ)、遠位曲尿細管、結合尿細管までがネフロンと呼ばれる単位です。

糸球体からは、原尿といって尿になる前のもとの液体が作られます。(糸球体濾過といいます。)この量は成人では実に180ℓに及びます。成人の血漿の量(血液のうち液体の成分:血漿)は約3ℓですので、一日に約60回血液は腎臓で濾過されていることになります。それだけ、血液を洗っているんですね...そして、尿細管やヘンレのわな、集合管などで、そのうちの99%までが吸収され、約1.8ℓが一日で尿として(原尿ではありません)捨てられるのです。

そして、それだけの血液を洗っているということは、それだけ血液の流れる量も多いということです。腎臓の血液流量は成人で約1.1ℓ/分で心臓が1分間に送り出す血液量(心拍出量)が約5ℓ/分とされていることから、約5分の1の血液が流れていることになります。かなり、血液の流れの速い臓器です。

ネフローゼ症候群の病気の座はネフロンのうち、糸球体といわれる濾過器にあります。その詳しい内容は次回にしたいと思います。

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2006年9月 3日 (日)

診断ミス?

この記事が目にとまりました。心筋梗塞は診断が非常に難しいことがあります。

まずは、この件で亡くなられた50歳の会社役員の男性とその遺族の方々深甚なる哀悼の意を表します。

医療過誤損賠訴訟:鹿嶋の医療法人と遺族、1億円支払いで和解 /茨城(毎日新聞)

『潮来市潮来の会社役員の男性(当時50歳)が急性心筋こうそくで死亡したのは、病院の診断ミスが原因として、男性の遺族3人が、医療法人「善仁会」(鹿嶋市宮中4、小山善朗理事長)に約1億円の損害賠償を求めた訴訟の和解協議が1日、水戸地裁(志田博文裁判長)であった。協議の結果、病院側が原告に1億円支払うことで合意し、原告の主張がほぼ認められる形となった。
 訴状などによると、男性は99年4月19日午前1時ごろ、のどや背中などに痛みを訴え、救急車で同法人が経営する「小山病院」に運ばれた。レントゲン検査などで異常がなく、のどの炎症である「上気道炎」と診断され帰宅。男性は数時間後に再び痛みを訴え、同病院に運ばれたが、同日午前7時ごろ、急性心筋こうそくのため死亡した。
 遺族は「明らかな診断ミス。男性の症状から心筋こうそくを疑うべきだった」と主張。病院側は「男性は心筋こうそくを疑わせる症状を伝えていない」などと反論していた。
 和解では、病院側は原告の主張する「診断ミス」は認めず、和解金の支払いと謝罪に応じた。病院側は「不適切な対応により男性を死に至らしめたことを深く謝罪し、今後、同様の医療事故が生じないよう防止策を講じる」と述べた。
 原告である男性の妻(57)は「ほっとした。(亡夫に)見守っていてくれてありがとうと伝えたい」と話した。』

心筋梗塞の典型的症状は胸部絞約感(胸を締め付けられるような感じ)を伴う胸痛が持続することです。しかし、非典型例は多く、「歯が痛い」「左肩がこる」「背中がいたい」、ただ「吐くだけ」の場合もあり、診断に難渋したり見逃されてしまうなどのことが起こりうる、そんな病気です。もちろん、診断技術を高め、こういった不幸な患者さんを減らす努力が必要ですが、今回の状況で、どれだけの一般臨床医が正確に心筋梗塞を診断できたか?ははっきりしません。

<明らかな診断ミス。男性の症状から心筋こうそくを疑うべきだった との主張ですが....
診断はできるかもしれませんが、一般の臨床医のうちこのような非典型例を診断できるのは、ごく一部であると考えます。(因に私も見逃すかもしれません。)これで、和解金は1億円とは...日本も厳しくなってきました。
ただ、和解の条件の「診断ミスは認めず」というところは、最低限これだけは...というギリギリの条件だったのでしょうね。

拙ブログ:貴重なコメントをいただきましたのコメント欄で私の経験を紹介していますが...このようなこともあり、心筋梗塞の非典型例の診断は非常に難しいこともある。と認識していただければ幸いです。
「コメントに対する返答とは少し離れますが....今日の私の仕事は....
朝8時30分から午後5時まで小児科の外来をしながら、病棟の患者さんもみて、成人を含む患者さんの救急車の対応までをこなします。ちょうど、前日の当直との切り替わりの時間に高齢者の「嘔吐下痢症」という触れ込みの患者さんが救急搬送されてきました。私は救急室に向かっている途中でしたが、病院のストレッチャーに移した途端に意識消失し心拍が触れない状態となり、看護師さんからPHSに連絡がありました。モニター上、心室細動でDC200J一発で戻りましたが、呼吸が不安定のため気管内挿管し12誘導心電図で前壁の心筋梗塞が疑われ循環器内科の先生を呼び出して診ていただきました。いなかの病院ですので、このような事も小児科医ですが診ています。」

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ネフローゼ症候群_概念

以前より取り上げてみたかったネフローゼ症候群について、しばらく書いていくこととします。

ネフローゼ症候群は腎臓から血液の重要な成分である血清蛋白質が尿中に漏れ出して、結果として血液中の蛋白が減少して浮腫(むくみ)などの様々な症状が出現する一群の病気です。

そのメカニズムについては、腎臓の解剖などの理解が必要ですので続きのエントリーに回しますが、小児ではおおよそ、年間10万人の小児に対して5から6人程度の発症率の様です。

Photo_2 左に示したのは、小児のネフローゼ症候群の診断基準です。 尿中に蛋白が漏れ出して、血液中の蛋白が減る状態です。血液中の蛋白が減少すると、血管内に水分を保持している力(これを膠質浸透圧といいます)が減少して、血管内の水が血管外に漏れ出して浮腫(むくみ)が生じます。更に、これが進行すると血管の中に必要な水分を保持できない状態となり、血圧の低下、腹痛、顔色不良などを呈するネフローゼ急症を起こすことがあります。 次回は、腎臓のついてその解剖、機能等を説明したいと思います。

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医療のことを考える方々

2006年9月3日 晴れ

今日は日直です。午前中はまあまあの受診数でした。

さて、このような記事が...

医療・保障、格差社会を考える 京で「議員フォーラム」 (京都新聞)

『 「小泉構造改革」後の医療・社会保障や、格差社会について考える「議員フォーラム」が2日、京都会館(京都市左京区)で開かれた。坂口力・元厚生労働大臣ら、医療に詳しい与野党の国会議員6人が、高齢者への医療制度改革の問題や、国民皆保険制度の危機について話し合った。 京都府保険医協会と府歯科保険医協会の主催で、医師や障害者ら約600人が参加。京都市の病院経営者が「医療制度改革で減収が見込まれ、療養病床を廃止した。看護師も不足し、地域医療が崩壊する」と訴えた。 京都府精華町の福祉担当の職員は、高齢者福祉が切りつめられている現状を「窓口に来たお年寄りに、『国で決まったことですので』といわざるをえず、はがゆい」と苦悩を語り、全身の筋肉が動かなくなる最重度障害者の橋本操・日本ALS協会会長は、意思伝達装置を通じ「家族は365日24時間患者に拘束されている。医療依存度の高い障害者を地域社会がどう受け入れるのか」とコメントした。 丹羽雄哉議員(自民)は「財政諮問会議で医療費の総額抑制が話し合われ、率直に言ってつらい。療養病床削減は大きな問題と認識している」と答えた。また仙石由人議員(民主)は「厚労省の政策は現場を知らず、検証もない。保険局の財政的な発想では、介護難民を生む恐れがあり心配」と述べた。』

仙石議員は先の「福島県立大野病院事件」の折にも、「この事件は後になり、検察が起こした事件と認識されるようになるだろう」との言葉を国会の場で言ってのけた方です。厚生労働省の役人さんたちは、現場を知らず、検証もなく、机上の論理を推し進めている。という認識は現在の医療者の心情に近いのではないかと思います。

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2006年9月 2日 (土)

コメント、トラックバックについて

2006年9月2日 晴れ
暑い一日でした。

お知らせです。

9月1日より、コメント、トラックバックにつきましては、管理人のbefuが承認するまで公開されない設定といたしました。これまでの比較して、公開までに時間がかかるようになりますが、ご了承いただきましたら幸いです。
因に、コメントにつきましては原則全て公開いたします。(同じ内容のものは、一つだけ公開します。)

トラックバックに関しては、営利目的のものであると判断した場合は非公開とさせていただく予定です。

コメントの内容が挑戦的と感じられても、原則すべて貴重な御意見として公開させていただきますので、これまで通り活発な御意見をお寄せいただければ幸いです。

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2006年9月 1日 (金)

小児における心肺蘇生_7

休んでいた、小児の心肺蘇生です。

一次救命処置については、だいたい終わりました。本当は、異物除去を取り上げたいのですが...これは先に送りたいと思います。

人工呼吸や心臓マッサージについては、ちょっと特殊なのでときどき開催される地域での救命法講習などで、実際に人形を使用して練習するといざという時に役に立つと思います。

最後に、拙ブログ:ある日のできごとで小児の気管内挿管のシーンがでましたので...ちょっと医療者向けとなりますが、気管チューブのサイズの選択について触れておきます。


2006a_1

気管チューブを選択する時には時間がありませんので、この式を頭にいつも入れています。2歳で4.5mm、4歳で5.0mm程度と計算します。後は体の大きさをみて±0.5mm程度です。

2006b


表にすると、こんな感じです。→


2006c_1

うちの病院では、固定具としてこのブリッジと呼ばれるものを使用しています。

とりあえず、小児における心肺蘇生についてはこれで一旦終了とします。異物除去については後ほど別エントリを立てて紹介したいと思います。

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死は避けられたか?

2006年9月1日 晴れ
今日から新学期。そのためか、外来はスキスキでした。

神戸新聞に以下の記事が載っていました。

県立淡路病院 患者死亡、4100万円賠償(神戸新聞)

『兵庫県立淡路病院(洲本市)で抗生物質の投与を受け、直後に死亡した淡路島内の男性=当時(62)=の遺族らが「病院が適切な措置を怠った」として、県を相手に約六千百万円の損害賠償を求めた訴訟で、神戸地裁の橋詰均裁判長は三十一日までに、県に約四千百万円の支払いを命じる判決を言い渡した。県は控訴せず、判決が確定した。
 判決によると、男性は二〇〇四年三月、前立腺がんの疑いで同病院に入院。患部の組織の一部を採取する検査に備え、抗生物質の点滴を受けたところ、直後にアレルギー反応による「アナフィラキシーショック」に陥り、三日後に死亡した。
 橋詰裁判長は「看護師がすぐに点滴を中止し、医師が処置すれば、患者の死は避けられた。看護師はアナフィラキシーの危険性の認識が十分ではなく、医師も容体の異変を知りながら病室に駆けつけなかった」として、原告側の訴えを認めた。
 中島英三・県病院局長は「裁判において県の主張が認められず、大変残念。判決内容を真(しん)摯(し)に受け止め、今後いっそう医療安全対策の強化に努めたい」とコメントした。
 男性の妻は「同じような不幸が起きないよう、病院職員は緊張感をもって従事してほしい。そうでなければ、本当の勝訴にならない」と話している。判決確定を受け、遺族側は、県に謝罪や再発防止策の徹底を求める申し入れ書を提出した。県は「対応を検討中」としている。』

アナフィラキシーショックは即時型アレルギー反応の最重症型で、全身の血管壁の透過性亢進が起こり、じんましん、喉頭浮腫、循環不全(ショック)などが起こる、臨床的に最も恐ろしい状態の一つとされています。その原因は多岐にわたり、食物や動物、昆虫の毒、薬などあらゆるもので起こる可能性があります。
抗生物質とアナフィラキシーショックとの関連は古くから指摘されており、以前は「皮内反応」という、ごく少量の(これから使用予定の)抗生物質を皮内に注射して、赤く腫れてこないか?をみていました。しかし、この方法では「これからアナフィラキシーショックが起こること」を予測することができないことが多く、また、赤く腫れたとしても本当にアナフィラキシーショックが起こるのは、ごく一部であることもわかってきました。
そして以前のことですが、抗生物質使用前にこの皮内反応をせずに投与したことが、患者さんの死につながったとのことで争われた訴訟もあった様です。(今は、皮内反応をしなかったということで争われることはなくなったと思われます。日本感染症学会が抗生剤使用についてガイドラインを呈示したからです。)

さて、この記事からは充分な情報がありませんので、どういった状況であったか?は、はっきりとはわかりません。ただ、裁判長のことばに「看護師がすぐに点滴を中止し、医師が処置すれば、患者の死は避けられた。看護師はアナフィラキシーの危険性の認識が十分ではなく、医師も容体の異変を知りながら病室に駆けつけなかった」とありますが...医療に100%はありません。「患者さんの死は避けられた。」というのははっきりいって嘘です。医療に絶対はないのですから....「患者さんの死を避けることができた可能性が高い」というのであれば納得できます。

コメントの最初の段に申し上げましたが、アナフィラキシーショックは臨床上、最も恐ろしい状態の一つです。あらゆる手を尽くしても、最終的に死の転帰をとることも充分にありえる状態です。そして、抗生物質を投与した時にアナフィラキシーショックが起こるのを予見する方法は現時点ではありません。(ただ、可能性が高いことを予測する方法はあります。それは充分な病歴聴取です。)そして、一旦起これば、迅速かつ適切な処置で患者さんを救えることもあれば、残念ながら救命不可能な場合もあります。

「医師も容体の異変を知りながら病室に駆けつけなかった」何か別の駆けつけれなかった事情があったのでしょうか?それがなくて、駆けつけなかったのであれば充分に責任はあるものと考えます。

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