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2006年8月 2日 (水)

脳死判定基準の国際比較

2006年8月2日 晴れ一時雨
熱帯の気候の様です。午後になり、雷を伴う激しい夕立...
今日は、久しぶりに自分のsub-specialityの範囲の検査...腎生検をしていました。いなかの病院ですので、「どうしてもここでしてほしい」という方以外は受け付けておりませんので、約1年ぶりです。特に大きな出血もなく終了。でも、汗はかきました...。

さて、こんな記事を見逃していました...

<脳死>米国・カナダで判定の3人、日本帰国後に意識回復(毎日新聞)

『米国やカナダ滞在中に脳血管の病気で意識不明になった日本人で、家族らが現地の医師から「脳死」と説明されたにもかかわらず、帰国後に意識を回復した人が3人いたことが中堅損害保険会社の調査で明らかになった。東京都内で開かれた日本渡航医学会で、損保の担当者が報告した。海外での脳死診断は日本ほど厳格でなく、治療を打ち切る場合があることを浮き彫りにする事例で、報告した担当者は「医療文化が違う国にいることをはっきり認識すべきだ」と警告する。
 報告によると、02〜05年度に、旅行や仕事で米国、カナダに滞在中の旅行保険契約者9人が脳血管障害で入院。主治医は家族や損保の現地スタッフに「脳死」と説明した。うち3人の家族は「治療中止は納得できない」などと訴え、チャーター機で帰国。日本で治療を受け、意識が回復した。搬送費用の約2000万円は保険で支払われた。残り6人は、チャーター機手配に必要な額の保険に加入していなかったことなどから帰国を断念。現地で死亡したという。
 意識が戻った60代男性の場合、カナダで脳梗塞(こうそく)となり、入院した。人工呼吸器をつけなくても呼吸できる自発呼吸はあったが、医師は家族に「脳死」と説明したという。しかし、男性は帰国後1カ月で意識が戻り、記憶も回復した。』

脳死とは人間の生命を支える脳幹部の機能がなくなった状態をいうものと認識しています。脳幹部は呼吸の中枢がありますので、脳死では当然自発呼吸が消失し、人工呼吸を行わなければ「心臓死」に至ります。自発呼吸があるのに「脳死」を診断するとは、恐ろしい医療施設です...。

『日本、米国、カナダとも自発呼吸があれば脳死とは判定されない。回復した3例は病院の診断書に「脳死」との記述はなかった。病院側は損保に「保険会社で死の解釈が違う。治療費を保険で確実に出してもらうため、(病院としては)脳死かどうかは書かない」などと返答したという。
 日本医科大の横田裕行助教授(救命救急医学)は「海外の基準でも脳死なら意識は回復しない。米やカナダなどの一般医療現場では、回復は難しいなどの意味で脳死を使うことがある」と言う。』

回復は難しいなどの意味で「脳死」を安易に使用してはいけないと思うのですが....。

『脳死判定 日本では、臓器移植法に基づき、臓器提供の場合に限って、脳死が法律上の死とみなされる。脳死と判定するためには、(1)深いこん睡(2)瞳孔の散大と固定(3)脳幹反射の消失(4)平たん脳波(5)自発呼吸の消失——のすべてを満たし、6時間たっても状態が変わらないことを確認する必要がある。米国では、州法などで「脳死」を「脳幹を含む全脳の不可逆的停止」などと定義している。どちらの国でも、自発呼吸があれば、脳死とは判定されない。』

自発呼吸がないことを確認するテストがありますが、これは人工呼吸器を外してしばらくの間、自発呼吸が起こらないことを確認する検査です。また、脳波は大脳の活動を主に表し、これが平坦であると大脳の「考える」機能は停止していると考えられます。脳幹反射は呼吸や循環などの調節をしている生命維持装置の脳幹が機能しているかどうか?を確認するものです。実際にはABR: 聴性脳幹反射(耳に音を入れてそれが脳波上に反映されるかどうかを検査する検査法)などが使用されます。これらの検査を少なくとも6時間以上の間隔をあけて2回施行して、同じく「反応がない」と判定する必要があります。

『◇病院間で脳死判定基準に相違…米国
 米国は脳死者からの臓器移植先進国で、年間6000例前後が実施される。脳死は人の死という考え方が広く受け入れられているためだ。松本歯科大の倉持武教授(哲学)は「日本よりも臓器移植を強く推進するというムードが強く、医療現場に影響しているのかもしれない」と指摘する。
 実際、米麻酔学会誌(1999年7月号)によると、頭部外傷で脳死と判定された男性が、臓器摘出直前に自発呼吸をしていることが分かったが、そのまま摘出された例などが紹介されている。
 日本とは医療制度、保険制度が異なり、医療も「営利産業」とされる。患者死亡の場合、保険会社が死亡直前の治療を「無駄」と判断するケースもある。病院側は保険会社からの支払いを受けるため、早めに治療を打ち切る傾向もあるようだ。
 日本では臓器移植法が施行された97年以降、脳死移植は47例。杏林大学病院の島崎修次救命救急センター長は「米国、カナダの脳死判定では脳波は取らず、日本ほど厳格ではない。カナダでは病院ごとに判定基準を定めている」と説明する。』

脳死の判定については、各国でかなりの差があることを知りました。(呆然)
日本はアメリカ型の医療を踏襲していこうと動いているように思えますが、医療にも「営利企業」という考え方が浸透していくと、いままでの日本の医療の良い面は全てかき消されてしまい、とんでもない、そして、日本人には受け入れがたい医療の形が残ると思います。少なくとも、脳死の判定基準はこのまま手を付けずに残していてほしい...と考えます。

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コメント

こんにちは。
時々覗かせていただいています。

脳死判定、難しいことだと思います。
心臓死なら誰が見ても明白ですが、脳のみの死を診察、検査によって判定するというところにそもそもの問題があると思います。
どんな検査にも疑陽性があるように、脳死判定の疑陽性率を0にすることは科学的に無理です。ですから脳死判定されても意識回復という話は米国はおろか「厳格」とされる日本でもよく報告されていますね。まして小児ではそうです。

ではなぜ脳死を判定する必要があるのかというと、それはずばり臓器移植をしたいからです。
臓器移植をしないなら何もこんな無理をしなくても心停止を待てばいいわけですから。

脳死臓器移植をするかどうかはその国の文化にも拠るわけで、明らかに肉親の脳死を受け入れがたい日本では脳死臓器移植は進まないです。

それはそれで文化の違いなのだから良いと思いますが、一方で、移植が必要な患者には莫大な募金が集まって海外で外国人の臓器を貰えてしまう現状を見ると、、、日本人って、、、とつくづく思います。

自分の子供が脳死になっても臓器提供する気などないのによその子が移植が必要な病気になったらお金は出すから海外で貰って来な、というのはとても恥ずかしい行為だと思います。

長々とすみません。なかなか答えのでない問題ですね。

投稿: Funky-U | 2006年8月10日 (木) 07時38分

こんばんは
Funky-Uさま

コメントありがとうございました。
脳死に関して、冷静沈着にものごとをみておられますね。脳死や移植は日本人の死生観にはそぐわないものかもしれませんね...私も、難しい問題であると考えます。

移植を推進するのか?それとも、このままで良いのか?考える時にきているのかもしれません。

貴重なコメントありがとうございました。

投稿: befu | 2006年8月10日 (木) 23時34分

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