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2006年8月

2006年8月31日 (木)

助産師さんは充足?

ロハスメディカルブログにて以下の記事が掲載されていました。

ロハスメディカルブログ:助産師は足りているか?

図表はコピーできませんでした。面白い記事です。
要約すると...
「分娩場所として、自宅、助産所は1965年頃を境に減少してきた。出生数の減少から考えると、現在の助産師数は足りている(というより、過剰である)(驚!!)。助産師の不足感は一つには他職種(例えば看護師、保健師)との兼業、一つの医療機関が大量に抱え込んでいることからの偏在によることもある。」
でも実際には市中の産科医療機関で、助産師さんを充分な数だけ抱え込んでいるところはほとんどありませんね...どこ、いっちゃうんでしょね〜

ただ、この部分は圧巻です。全くその通りと感じました。
「スキルを持っている者を、規制を盾に市場から排除しようという態度は、根本的には患者不在であり、既得権益にしがみついている者に特有の自己中心的な醜い姿に見える。政策決定者は反省すべきであろう。」

*********************************************************************

以下引用....長いですよ...
『まず、人口動態統計から、出生場所の推移をグラフ化した。

【グラフ1】
戦後一貫して自宅等での分娩は減少して既に極少数派となっているだけでなく、助産所での分娩も、1965年頃をピークに減少に転じ、以降、再び浮かび上がってくる気配がない。この時、日本のお母さん達は病院、診療所での分娩を選んだのである。自宅分娩や助産所は妊婦から見放され、分娩市場から事実上駆逐されてしまった。

 厚生労働省が一層の医療費削減のために助産所や自宅での分娩を進めるのであれば、妊婦が助産所を選ばなかった理由をきちんと分析する必要があるだろう。助産師自身も、1965年頃に何があったかを含めて、真摯に自分たち自身に問いかける必要があるのではないか。助産所での分娩には一定の条件下でならばたしかにコスト以外にも良いところはある。妊婦のニーズをほんとうに捉えることができれば、現状の10倍、100倍に伸びる可能性があると考える。

 しかし、妊婦のニーズと関係のないところでいくら争っても、効果は期待できない。また、助産師全体としての助産業務の市場独占には、供給量を担保するという社会的責任を伴う。自覚が必要であろう。

 助産師数の近年の推移はどうか、全国平均から見てみよう。

 平成8年から16年にかけて、人口動態調査から出生数を、衛生行政報告例から就業助産師(平成12年以前の数字は助産婦)数を見てみる。

【表1】
 出生数の減少にも関わらず助産師数が増え続けているため、助産師一人当たりの出生数は近年急速に減少しつつあるのが分かる。8年間で14%の減少である。1年間に日勤夜勤合わせておよそ200日出勤するとして、以前であれば4日に一度は赤ん坊を取り上げ、臍の緒を切っていたのが、今では5日に一度までに減少しつつあると言えばわかりやすいであろうか。

 全体としては余剰感が出ていることは確実であり、このまま出生数の減少と助産師の増加が続けば、どこで働いていても助産師の所得水準は速やかに低下するのが市場原理である。所得の適正水準は、この8年間で10%以上のマイナスとなっていると考える。所得水準をこれ以上下げたくなければ、助産師一人当の業務量、特に分娩数を維持する必要がある。それには助産師増に歯止めが必要である。

 助産師の養成数そのものはこの数年間、あまり変化がなかった。年齢階級別の助産師数の推移を見てみよう。

【グラフ2】
 増分は主として離職率の低下によるものであることがわかる。その点から見ると、給与水準の高い中堅層・高年齢層が増えることによって若年層の人件費が圧縮され、年齢階級間の所得水準に相当な格差が生じている可能性も否定できない。

 若年層の所得水準をも維持したければ、助産師の養成数はすぐにも削減しなければならないのが道理である。

 もちろん、増員の問題とは別に、助産師が全く関わらない分娩も少なくないと考えざるをえない。この急激な業務ボリュームの減少が実体を伴っているのかどうかについては、別途検討が必要であろう。

 もし、助産師の関与が少なくなっているのであれば、言うまでもなく、助産師一人当たりの年間取扱分娩数はさらに急激に減少していることになる。逆に、助産師の関与する割合が増えているのであれば、年間取扱分娩数の減少は見た目だけ、あるいは実態は増加に転じているということもありうる。ことは分配の問題であり、一概に助産師の所得水準が下がるとは言えない余地を残す。

 さらに言えば、平成12年を最後に統計では扱われなくなったが、これら就業助産師数の中で、相当数が看護師業務、保健師業務を兼務していることも問題である。平成12年で言えば、助産師総数24511人のうち、154人が保健師業務を、16821人が看護師業務を、128人が両方を兼務していた。実に7割の助産師が兼務の状況にある。助産師よりも、むしろ看護師数が現実に相当数不足しているがために起きている現象ではある。看護師数を一層増加させることによって、この兼務を解消し、助産師の労働力を分娩に集中させることができれば、病院助産師の増員は本来無用のこととなる。

 ある専門職が、他職種でもできる仕事に従事するのは、無駄遣い以外の何ものでもない。

 もう一つの問題は偏在である。都道府県別の助産師一人当たり出生数を示す。首都近県の困窮の度合いがよくわかる。

【グラフ3】
 施設によっては必要数以上に助産師を多数囲い込んでいる例がある。報道によれば、年間分娩数2000あまりの葛飾赤十字産院の助産師数は111人であるという(毎日新聞、2006年8月24日)。助産師一人当たり分娩数わずかに年間18人というのもスキルの維持向上の上で大きな問題だが、それだけでなく、どれほど良い分娩医療を提供しているにしても、そしてそれが妊婦から高く評価されているにしても、一つの医療機関が、ほぼ佐賀県一県と同じだけの助産師を雇用しているということになるのは如何か。ここには、ある意味で公共財である人材の無駄遣いはないのか、潜在的生産力の空費はないのか、あるいは分娩費用の無意味な上昇が発生していないのか、検討が必要であろう。

 この辺り、既に平均値で論じることにあまり意味のない領域に入りつつある。助産師一人一人につき、その年間取扱分娩数を調査・分析する必要があるだろう。

 一般的に言って、労働力の過不足は、一連の生産物を得るための生産ラインに、1)充分な労働者が投下されているか、2)稼働率はどれほどか、3)各作業に対してバランスよく配置されているかの少なくとも3点について検討を行う必要がある。

 1)は充分であるかも知れない。2)は甚だ心許ない状況であり、逆に言えば大いに改善の余地がある。
 日本の分娩についての医療政策の特徴は、3)の業務役割の分担に、全く計画性がないことであると言える。産科医、助産師、看護師等の法令上の役割分担について、データに基づいて業務の配分が為されたことはない。

 一般的な生産現場では、原価企画からまず投下できる人件費が定まり、実人員の採用計画、稼働率の維持(日本の製造業ではあまり問題にならない)、そして作業への人員配置計画が為される。稼働開始から計画の実現には一定の時間が見込まれるのが普通である。

 日本の医療現場では、多くはそれに近いことが行われてきている。まず患者さんが居て業務があり、しかる後、スタッフに対して仕事の分担が行われる。多くの医療機関では、スタッフは充分に流動性が高かった例しがなく、医療費抑制政策の下で追加投資の原資も乏しく、現有の人員で業務を何とか分担してこなすことに配置計画の力点が置かれてきた。そこには当然、非専門外の仕事に従事させられる専門職が多数出現するという無駄遣いも生じている。

 しかし、政策決定者は全く逆に手法に依存している。まず、あるべき論から各専門職種の業務と守備範囲を宣言して、しかる後に業務分担を考えるのである。

 業務は多彩な現実であるが、その守備範囲の宣言は現場の実態に基づかず、机上で考えられたものである。専門性を無視したムダな業務分担や、誰も担わない業務が出現し、患者に必要な処置を担う適切なスキルを持った医療者が割り当てられないという事態が出現する。あるいは逆に、誰でも行えるような業務を複数の職種が取り合いするという重複が起こる。これで専門職種の過不足を論じるのは無理である。いずれにせよ、患者の迷惑は甚だしい。

 助産師の教育コースはわずか1年間である。内診のスキルトレーニングなど、そのごく一部に過ぎない。助産師ではない看護師であっても、OJTによってすら内診のスキルトレーニングを行うことは充分に可能であろう。それによって助産師が分娩に専念できるのであれば、妊婦にとっても、より好ましいことである。

 スキルを持っている者を、規制を盾に市場から排除しようという態度は、根本的には患者不在であり、既得権益にしがみついている者に特有の自己中心的な醜い姿に見える。政策決定者は反省すべきであろう。
 市場はそんなものは認めない。マネジメントは真実に根ざしていなければならないと言われる。真摯な検討が必要である。』

続きを読む "助産師さんは充足?"

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blog紹介その2

つづいて、トラックバックを受けたブログの御紹介。

東京女子医大病院で心房中核欠損症の手術時にポンプのトラブルにより患者さんが亡くなった事件で、業務上過失致死罪に問われ第1審にて無罪を勝ち取った先生のブログです。

今回の記事は、留置場、拘置所の状況について、当時の状況を細かく紹介されています。非常にバイタリティーにあふれる心臓外科医である彼は、その留置場での生活をも客観的に振り返っています。
「必読」と感じます。

紫色の顔の友達を助けたい:獄中執筆記-傷害防止特殊ボールペンによる医学書院「医学大事典」の執筆-

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blog紹介

2006年8月31日 雨
堀病院事件について数回触れてきました。いろいろなブログを訪問して、いろいろな見方を勉強してきましたが....

このブログの記事は産婦人科を取り巻く現状を深い視点で洞察したものといえます。御一読を勧めます。

ターミナル:■[医療 my love] 妊婦さんを救おう! 〜産科医療をぶっこわせ2006〜

トラックバックしようとするのですが、どうもハテナダイアリーと相性が悪いようでできません....

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2006年8月30日 (水)

ある日のできごと

<実際の経験をもとにしたフィクションです。>
みんな寝静まっている午前4時。耳元の携帯電話が病院からの着信音をたてています。
私は、寝ぼけていて、奥さんが電話をとりました。「病院から」とのこと....

電話をかわると、切迫した看護師さんの声が聞こえてきました。
「◯時間前からけいれんしている。顔色不良で、酸素投与下でもSatO2が80台です。」
「当直医の先生がみていますが、このまま中央の病院に送ろうかと...」

目が覚めました。
「ちょっと、待って。処置してからでないと、搬送は危ない...今行きます。」

車で病院まで5分。到着時も、けいれんは持続しており、酸素5リットル/分マスクにてSatO2は90%程度。顔色は不良でした。体温は38.1℃、以前にもけいれん重積で気管内挿管の既往がある様です。特に、抗けいれん薬の内服はおこなわれていません。◯歳児。

まずは、セルシン0.5ml静注。これで、ほとんどけいれんは止まりかけましたが、呼吸が弱く、レサシバッグにて少し呼吸を補助します。このスキに、血ガス。pH 7.06, pO2 447, pCO2 84, BE -7.7、アシドーシスがありCO2も貯留。呼吸は弱く、意識は戻っていません。

「挿管します。」
チューブはちょっと迷ったのですが4.5mm。口は若干固く、何とかこじあけて、喉頭蓋とその先の声門を確認しながら挿入。左右の胸の呼吸音とチューブ内の蒸気の上下を確認。ブリッジを使用して固定。バイトブロック使用しました。

ここで、再び右上肢に間代性けいれんみられました。アレビアチン100mg静注、引き続き生食20mlにてフラッシュ。少し待ちましたが、けいれん止まらず、気管支喘息の既往のないことを確認し、イソゾール20mg静注。けいれんはとまりました。このスキに、胸部レントゲンと頭部CT。レントゲンでは、チューブの位置は適正でした。頭部CTでは明らかな頭蓋内出血や、著しい脳浮腫はみられませんでした。

意識はもどらず(というか鎮静されている)、呼吸も弱いので呼吸管理が必要と判断。後方病院に連絡、付き添いの上、搬送しました。(午前6時)

処置を手伝い、病院に帰ってきたのは午前8時15分...もう、始業時間です。(悲)
ある日の出来事でした...

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助産師さんの問題...レス

2006年8月30日 雨
雷もなっていましたが、そうひどくはありませんでした。

助産師さんの問題については様々な方々からコメントをいただきありがとうございました。コメント欄で返答しようとも考えたのですが...やはり、読みづらいこともあり新たに記事を立てました。
尚、いままで医療関係者と法曹界の方々と思われる方々には敬称を「先生」としていましたが、区別がつきにくくなっていることもあり、今回から、すべての方々への敬称をまとめて「さま」とさせていただきたく存じます。

<医療って さま
毎日新聞は今回の報道に関して、かなり偏った報道を展開しているように感じます。私が医師だからでしょうか?
助産院の問題は、(医療界では)すでにかなり以前より指摘されているところですが、なかなか一般の方々には理解していただけない部分でもあります。一つには、やはりマスコミが「影」の部分を報道しないという態度にあるからかもしれません。

< yuchan さま
一つ前の記事で扱った新聞の社説は冷静な観点で報道しているように感じました。現在の法制度と現場との乖離をなくすように動くべきであると思います。

<小児がんと生きること管理人さま
現場の新生児科医より貴重なコメントをありがとうございました。助産婦さんの位置づけを考えることは必要と感じます。分娩において、100%安全はありません。(これは医療の全体にいえることですが...)日本の周産期医療が母体死亡率、乳児死亡率において世界一の状態なのは、周産期医療に従事する皆様のたゆまぬ努力の賜物であることは、おそらくその現場を知るもののほとんどが認識するところではないかと考えます。
そして、それを維持しつづけるには、助産師さんと産科医のあいだに隔絶があってはならないと考えます。

<流風 さま
産婆さんは、現在でいうと助産師さんであり、助産院であると言い換えることができます。確かに、妊娠分娩は正常な生物の再生産という捉え方もでき、できるだけ自然にするほうが良いと考えることもできます。しかし、妊娠や分娩には100%の安全はありません。現在、巷を賑わせています「堀病院」の件にしても、発端は数年前の母体死亡にあると考えられます。そして、分娩時における危急事態は実は分単位で対応しないと母児ともに、救命できない場合もあるような、非常にスピードの速い事象であります。対応としては、緊急で帝王切開を行う、輸血を行うなどの医師でなければ施行できないものが含まれます。助産師さんだけで運営している助産院では、こういった処置が分単位で行えないのはおわかりいただけることと思います。
ただ、ある程度のリスクを承知されて、「やはり自然のかたちがよい」と選択されるのであれば、昔ながらの産婆さん、助産師さん、助産院での分娩を選ばれるのはその妊婦さんの自由であるとも考えます。

<山口(産婦人科)さま
マスコミは助産院のリスクについても報道すべきであると思います。特に毎日新聞はかなり偏った報道姿勢ですね...冷静な報道をと望むところでありますが、期待することが罪なのでしょうか??(悲)

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2006年8月29日 (火)

助産師さんの問題...2

2006年8月29日 晴れ一時雨
比較的、公正公平な目で報道していると思われる社説です。

無資格助産 現実的な解決策が要る(中国新聞;社説)

『資格のない看護師らが助産行為をしていた疑いで、横浜市の産婦人科病院が警察の家宅捜索を受けた。背景には助産師の慢性的な人手不足があり、院長は「現状では必要悪だ」と言い切っている。
 どうすれば子どもが増えるか、みんなが知恵を絞っている時代である。違法行為の摘発に終わらせず、母子が安心できる出産環境づくりにつなげたい。
 看護師や准看護師が携わっていたのは「内診」。子宮口の開き具合などを触診して、出産の進行が正常かどうかを判断する。多くの病院は「診療の補助」として看護師に任せてきた。広島県内でも簡単な研修を経た「産科看護師」が内診をしている実態がある。
 しかし厚生労働省は保健師助産師看護師法で規定する「助産」にあたるとして、「助産師と医師以外は行ってはならない」と二〇〇二年と〇四年、各都道府県に通知している。異常があれば母子に大きな影響があり、対処には専門知識が必要だからだという。因果関係の有無は別として、無資格助産が絡む医療事故も起きている。
 捜索を受けた病院の院長は違法と知ったうえで、開業間もない一九六〇年ごろから看護師らに内診させていた。医師や助産師には限りがあるためという。厚労省の通知後、助産師を募集したが集まらなかったとし、「(無資格助産を)やめたら、明日から出産を断らなければならない。必要悪だ」と語っている。
 この問題では昨年の厚労省の検討会で、日本医師会や日本産婦人科医会の代表から「一定の条件で認めるべきだ」との意見が出た。「今回の事件で開業医が病院をやめてしまう恐れもある」と心配する声すら出ている。
 助産師として働く人は約二万六千人。資格を持ちながら働いていない人も二万六千人いる。結婚や子育てを機に辞めた人も多いだろう。医療機関は新たなコスト増を嫌う。どういう条件が整えば職場復帰を増やせるか研究してほしい。看護師が助産師免許を取りやすくする工夫もあっていい。
 厚労省も現状認識が実態とずれていたことを認め、全国の医療機関での助産の実態を調査する方針を明らかにした。
 子育て支援策をいくら施しても、出産現場が揺れていては元も子もない。助産師の発掘に加え、法の運用に再検討の余地はないか。母子の安全を第一に、現実に即した解決策を探りたい。』

助産師の資格を持っている方は5万2千人で、半分は資格をもちながら助産師として働いていない。これでは、現場での助産師さんは不足するでしょうね...やはり、助産師さんの養成数を増やすこと、助産師として働き続けやすい環境を作ることなどが必要となってくるでしょう...。

ただ、ここで気になることが...助産師さんがお産をとれば、看護師さんが助産をするよりもお産は安全となるのか?私は、数ヶ月程度新生児をやっていただけですが、胎児仮死や母体の危急事態では分単位の対応が求められるのを肌で感じていました。そして、それは緊急で帝王切開をするか?どうか?、輸血を行うかどうか?などの医師でないと決められない部分が絡みます。助産師さんが増えることは、それ自体よいことであるのは感覚的にわかるのですが....果たして、そのような緊急事態の対応まで助産師さんが増えることによって、良い面が表れるのでしょうか?

そう考えると、助産師だけでなく産科を支える方々全体の人員確保が必要になってくるのではないかと思われます。そして、助産師さんはやはり産科医の先生と緊密に連携して「安全なお産」を行うようにしないといけないのではないかと感じます。

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2006年8月28日 (月)

助産師さんの問題...

神奈川県の堀病院の件は多くの続報が出ている様です。

問われる「日本一」:堀病院・無資格助産事件 「特殊ケース」医師に問題 /神奈川(毎日新聞)

『産婦人科病院「堀病院」(横浜市瀬谷区、堀健一院長)の無資格助産事件を受け、安全なお産を目指す市民団体「陣痛促進剤による被害を考える会」代表の出元明美さん(53)=愛媛県今治市=が毎日新聞のインタビューに応じた。助産師不足が叫ばれる中、看護師や准看護師による無資格助産は「氷山の一角」とも言われるが、出元さんは今回の事件を「助産師がいても医師が使いたがらない特殊なケース」と指摘、医師の意識改革を求めた。【堀智行】
 ◇「助産は専門知識が必要」−−出元明美・陣痛促進剤による被害を考える会代表
 出元さんは県警による堀病院の家宅捜索前から、同病院における助産の実態について関係者から相談を受けていた。これまでに聞いた話では、同病院は助産師は内診も含めた分娩にほとんど関与させず、新生児室や出産後の相談を担当させられていたという。
 一般に無資格助産は、医師や助産師の手が足りない時に看護師らが行うケースが多いが、意図的に助産師を分娩から除外したケースは「特殊」と指摘する。その理由を「助産師に比べ医学的知識が乏しい看護師や准看護師は、医師が仮に危険な医療行為を指示しても正しいか判断できず、指示通りに動くしかない。助産師に比べて使いやすかったのでは」とみる。
 県警の家宅捜索を受けた堀院長は24日、「看護師でも(助産行為は)できる」と述べた。しかし、出元さんは陣痛から始まるお産の経過は医師または助産師が見守らなければならないと反論する。
 「元気な赤ちゃんが生まれてくるかは、分娩監視装置の波形や子宮の収縮状況など分娩経過を見守っていないと分からない。助産師なら専門的な知識を要する分娩経過を確認できるが、看護師や准看護師ではできない」
 今回の事件後、各地の助産師から、看護師による助産が公然と行われている実態を危ぶむ電子メールが届いている。「開業医のいい加減な助産現場の実態に失望して辞めていく助産師が少なくない。堀院長は助産師が集まらないと言うが、しっかりした体制であれば助産師は集まる」
 日本医師会など一部の団体は、助産師不足を理由に看護師による助産行為を認めるよう求めているが、「助産師が少ないなら助産師学校を増やすなどするべきでしょう? お産の安全性を落とす理由にならない」と真っ向から反対する。
 高級車での送迎など手厚いサービスで年3000人の妊婦を集めていた堀病院。出元さんは「確かにサービスや外観は素晴らしい。だから分娩も大丈夫、と思いこむのは危険。医師や助産師がきちんとお産に立ち会ってくれるかを事前に確認し、病院を選んでほしい」と訴えた。
 ◇サービス駆使し“独り勝ち”、「長い待ち時間でも飽きない」
 堀病院が少子化の中で順調に成長を遂げ「出産数日本一」となったのは、駅に近い立地の良さに加え、高級外車や救急車による個人送迎をはじめとするユニークなサービスにあった。少子化社会で周辺の産科医院が分娩(ぶんべん)から撤退する中で地域患者を一手に集め、「独り勝ち」とも言える状況だった。
 堀病院は1959年3月、当時31歳だった堀健一院長(78)が開業し一代で築き上げた。相模鉄道沿線を中心に患者を集め、入退院時の送迎や選べる食事などのサービスが妊婦に評判だった。ホームページは院内に美容室、エステルームまである様子を写真入りで紹介。数あるインターネットの出産情報サイトでも「待ち時間は長いが、子供を連れて行っても飽きない」などと利用者の高い評価を得た。
 相鉄沿線で開業する産婦人科医の一人は「出産数が多いこと自体が利点だ。1日に何件も出産があると、同じ日に出産した人同士、育児の相談相手になれる。友だちがほしいからと堀病院を選ぶ人もいる」と指摘。「昔は相鉄各駅に産科医院2カ所ずつぐらいあったが、今はほとんどない。沿線で多数のお産ができるのは堀病院くらい」と話す。この医師も約15年前に分娩をやめたという。
 日本産婦人科医会によると、いつ出産があるか分からない激務や、少なくない医療事故に伴う高額賠償を避ける傾向が、産科医不足に拍車をかけている。県が今年3月に実施した調査では、03年度に181あった分娩施設数は今年度は165まで減少する見通し。県産科婦人科医会は15年までに県内医療機関の分娩受け入れ可能数が現在より約1万人落ち込むと試算している。
 県立足柄上病院(松田町)が今年3月、分娩予約を一時休止するなど県西部で産科医不足が顕在化しているが、県医療課によると、今後は横浜、川崎の大都市部でも医師不足が本格化する可能性があるという。
 横浜市内の医療関係者は「事件の影響で分娩をやめる産科医がさらに増えるかもしれない。そうすれば、堀病院のような大きな病院への患者集中がさらに進む」とため息をつく。事件は産科医療の現場に重い課題を投げかけている。【伊藤直孝、野口由紀】
 ◇横浜の出産の10%担う
 横浜市によると、年間出産数約3000人の堀病院は同市内の出産の10%近くを担っている。「あそこが機能停止になったら、市の産科医療はパンクする」。ある市内の医療関係者は同病院の存在の大きさを語る。
 堀院長は無資格助産を続けていた理由に「助産師不足」を挙げていたが、同市内の病院の助産師数は増えている。市医療政策課によると▽03年度329人▽04年度330人▽05年度387人▽今年度は395人——となる見込み。今年3月、市内の産科・産婦人科のある医療機関に実施した「産科医療及び分娩に関する調査」によると、病院側が今年度に必要と考える助産師数は374人で、数としては足りていると言えそうだ。
 ただ、実際は助産師が不足している医療機関が市内にも少なくない。助産師が偏在しているとみられ、赤岡謙課長は「医師と助産師のパートナーシップがうまくいっていなかったり、助産師にとって働く魅力のない医療機関があるからではないか」と分析する。
 市の電話相談窓口には26日にも、堀病院に関する計38件の相談が寄せられた。このうち転院に関するものは21件で、12件に対して転院先の情報を案内した。過去に堀病院で出産した人が「出産時に出血が多かったのは無資格者の助産行為に関係があるのか」と相談してきたり、「転院希望者が相次いでいる」と訴える病院からの電話もあったという。【鈴木一生】
 ◇捜索後も待合室は混雑
 堀病院には県警の捜索後も連日、多くの親子連れや妊婦が来院している。土曜日の26日も駐車場はいっぱいになり、待合室も混雑した。
 「陣痛が来ると救急車で迎えにきてくれるサービスがいい」(27歳主婦)と言われる同病院。26日も数台の救急車が出入りした。ベビーカーを押して来院する父親も。受け付けに掲げられている今年の出生数は、捜索を受けた24日は「2036人」だったが、この日は「2062人」に変わっていた。
 訪れていた主婦(31)は「2年前、ここで出産したけど本当に良くしてもらった。法律より、多くの人が産めるようになるよう行政は考えてほしい」と病院を擁護。病院近くに住む主婦(35)は「許せないけど、(助産師や看護師が)プラカードをつけているわけじゃないから。近くはここしかないから、仕方なく通っている」と言う。
 一方、堀病院への通院をやめ、転院する妊婦も現れ始めた。転院するための紹介状を書いてもらったという旭区の主婦(22)は「お母さんに言われて不安になった。もう妊娠9カ月だから、新しい病院が見つかるか不安」と話した。【池田知広】
………………………………………………………………………………………………………
 ■人物略歴
 ◇でもと・あけみ
 元看護師。84年、陣痛促進剤による計画分娩で出産した3人目の子を亡くし、「陣痛促進剤による被害を考える会」を発足させる。安全なお産を求め、陣痛促進剤の副作用問題などを調査するとともに厚生労働省との交渉を続けている。04年に無資格助産による死産や子どもに障害が残る医療事故が全国で15件あったことを独自に調べ上げ、同省に是正を申し入れた。』

出元明美さんは一躍、時の人となりました。安全なお産を求め、助産師や産婦人科医が分娩介助をおこなうのがよいのは至極当たり前な考え方ですし、共感できます。御自身のお子様を亡くされた経験がおありであることも、助産師以外のものが分娩の介助についている現状を更に許せなくしていることと思います。

この記事の中では、助産師数は充分な数がいるとの見解ですが...
<市医療政策課によると▽03年度329人▽04年度330人▽05年度387人▽今年度は395人——となる見込み。今年3月、市内の産科・産婦人科のある医療機関に実施した「産科医療及び分娩に関する調査」によると、病院側が今年度に必要と考える助産師数は374人で、数としては足りていると言えそうだ。
この見解には問題があると考えます。それは、少なくとも掘病院には助産師さんが6人しかいません。これだけの規模の病院で助産師さんはもう少しいてもいいはずです。そのような状況が、この統計に入っている他の病院にも生じていないでしょうか?病院側が今年度に必要と考える助産師数は、もしかすると「本当に必要な助産師数よりもかなり下回っている」のではないかと推測されます。

助産師さんの免許を取っていても、何らかの事由により助産師として働けないかたもいるはずです。それも含めて、更に多くの助産師さんを養成しないと現場は充足してきません。助産師さんの不足は以前より指摘されていたはずです。それに対して何らかの手を打つべきであったのは、どの部署でしょうか??その部分にマスコミは注目すべきです。

更に記事の中では....
<日本医師会など一部の団体は、助産師不足を理由に看護師による助産行為を認めるよう求めているが、「助産師が少ないなら助産師学校を増やすなどするべきでしょう? お産の安全性を落とす理由にならない」と真っ向から反対する。
との出元さんのコメントを紹介していますが....助産師学校を増やす場合の許認可はどちらの部署が握っているのでしょうか?厚生労働省ですか?文部科学省ですか??攻撃する場所を間違えていませんか?いままで、助産師不足を知りながら、何ら有効な手を打ってこなかったのはどの部署でしょうか?
よーく、吟味して記事を飲み込まないといけませんネ。

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復活しました。

2006年8月28日 晴れ
暑いです。

やんごとなき事由により、2日間ほど更新ができませんでしたが、復活しました。
また、通常のペースに戻りたいと思います。

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2006年8月25日 (金)

産科崩壊への火種

2006年8月25日 晴れときどき雷
雨は降らなくても、雷がすごかった一日でした。急性胃腸炎の患者さんが入院し、無熱性けいれんの児のMRIを撮影できました。(やっとこさ、眠ってくれました...)

さて、いささか荒れた印象を与えるタイトルの記事です。
助産行為 「法律には限界ある」堀病院長が開き直り(毎日新聞)

『「法律に基づいてやるには限界がある」。保健師助産師看護師法違反容疑で神奈川県警に家宅捜索された堀病院の堀健一院長(78)は、同県警の調べに、看護師らに助産行為をさせていたことを開き直って認めた。同病院の助産師数は同規模の病院より極端に少ない。厚生労働省は「助産行為は医師と助産師しかできない」との見解だが、公然と反旗を翻した格好だ。
 ◇院長「看護師の内診は必要悪」
 堀健一院長(78)は24日夜、横浜市瀬谷区の同病院で報道陣の質問に答え、「患者が来るのに助産師が足りない。看護師が内診をすることは必要悪だ」と強調した。今後の対応についても「(看護師らによる内診を)続けなければどうすればいいのか。看護師による内診をやめたら明日から患者を全部やめなければいけなくなる」と語気を強めた。
 堀院長によると、同病院では開院した1959年から40年以上にわたり、院長の指示で看護師による助産行為を続けていた。数年前、厚労省が看護師の助産行為を違法とする通知を出したため助産師を募集したが、集まらなかったため、看護師の助産を続けていたという。
 堀院長は看護師による助産の危険性について「分娩(ぶんべん)に入るまでを看護師にさせていたのであって、お産の取り上げは医者がやっていた。看護師が内診をしてもお産の安全性に影響はない」と主張。さらに「ウチだけが特殊なのではない。ほとんどの病院でもやっている。この機会に法律を見直さないと立ちゆかなくなる」と持論を展開した。【堀智行、池田知広】
 ◇看護師まかせの医療ミスは、全国で少なくとも14件
 「出産数日本一(年間約3000人)を誇るユニークな産婦人科を目指して頑張っています」。堀院長は、ホームページでそうアピールしている。堀病院の05年の分べん数は2953人。産婦人科医は院長含め7人、助産師が6人。ところが、分べん数が2074件の東京都葛飾区の産院は、産婦人科医6人、助産師111人▽約2000件の分べんがある東大阪市の産科病院は産婦人科医が8人、助産師が約35人いるなど、堀病院より多くの助産師を配置している。
 安全な出産を目指す市民団体「陣痛促進剤による被害を考える会」(愛媛県今治市)の出元明美代表は「(捜索を受けた堀病院は)助産師が一切助産行為をしていなかったという関係者の話も聞いている」と話す。84〜05年、助産師ではなく、看護師や准看護師らが助産行為を行い、胎児や母親が死亡するなどの医療ミスが、全国で少なくとも14件発生しているという。
 しかし、産婦人科医の間では、一部の診療所などで、看護師が医師の指示を受けて助産行為を行っていることは、公然の事実。厚生労働省は04年に「医師の指示下でも看護師の助産行為は違法」との見解を示しているにもかかわらず、医師の指示があれば、看護師の助産行為はできるという医師らが多くいることが、この問題の背景にある。
 出元代表は「(堀病院は)助産経験が豊富で、誤った行為を指摘できる助産師より、医師の言うことを素直に聞きやすい看護師の方が任せやすかったのではないか。安全な出産について医師が真剣に考え、適切に助産師を雇用する意識改革が不可欠だ」と批判。厚労省看護課は「助産行為は特別な技能と専門知識が必要で、医師の指示下でも助産師以外はできない。安全で安心なお産を実現するため、医療機関側は適当な人数を確保して運営してほしい」と話している。【工藤哲、玉木達也】』

現在の産婦人科を取り巻く状況は、「絶滅を待つ稀少動物」に例えられるかもしれません。私立の産科施設で、助産師さんを定数通り雇用できているところはどれだけあるでしょうか?実は私の家族も、看護師さんの内診ののち、産科医あるいは助産師さんの付き添いでお産を済ませています。
日本の産科医療を考えると、現実問題として24時間365日の拘束勤務が要求される現場において医師あるいは助産師が別の分娩に入っていて内診ができないことはよくあることと思われます。それでも、助産師さんが行うべきであることは、「法律から明らか」なのですが、それではそれだけの数の助産師さんを毎年養成できているのでしょうか?

助産師さんは看護師さんの免許を取得して、更に1年以上の勉強をして国家試験に合格してはじめてなることができます。少し前までは、3年で看護師さんになっていたのですが、最近の傾向として大学と同じ4年で看護師さんになるところが増えています。更に、助産師さんや保健師さんになるためには更に1年勉強が必要です。

助産師さんの毎年の養成数はどの程度であるか?これは、正確な数を把握していません。しかし、現場で不足が指摘されていることなどからも、充分な数の助産師さんはできていなかったのではないかと考えます。(あるいは、充分な数の養成はあっても現場に定着しないのか?これまた、問題であります。)不足はずいぶん前からいわれていたことであると思いますが、それに対し適切な方策を講じてこなかった厚生労働省のことはこの記事からは伝わってきません。マスコミはその使命として、中傷により報道される側を虐待するだけではなく、「何故、助産師が不足していたのか?」などの、もう少し深くえぐった報道をするべきです。

この「医師あるいは助産師さんしか内診することは許されない」という規定を遵守していくと、日本の産科施設のうち、かなりの割合で「お産ができなくなる」という事態が起こることが予想されます。「助産師さんでなくとも、ある一定の経験を積んだ看護師さんは内診できる。」などの抜け道を早急に作らなければ、絶滅危惧種である日本の産科医療は予想以上の早さで絶滅してしまうでしょう。

そうならないことを祈っております。

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2006年8月24日 (木)

1人で再開...

2006年8月24日 晴れ
お盆の時期も過ぎ、帰省客の患者さんは遠のきました。マイコプラズマ肺炎と伝染性単核球症が流行中です。現在入院患者さんは3名。

産科医不足のため、休診となっていた隠岐の産科の話です。
隠岐病院に産婦人科医師1人着任(中国新聞)

『常勤の産婦人科医師が不在となっている島根県隠岐の島町の隠岐病院で、静岡県の産婦人科医師が常勤することになり二十三日、着任した。二十四日から週五日の外来診療を再開する。中止されている院内出産については、病院を運営している隠岐広域連合は「複数体制が望ましい」として再開は未定。
 着任したのは、静岡県御殿場市の病院に勤務していた船津雅幸さん(52)。報道などを通じて隠岐病院の状況を知り、今月一日、病院長に赴任を申し出た。十一月からは県立中央病院(出雲市)から複数の医師の派遣が決まっているため、任期は十月末まで。
 隠岐病院の産婦人科は常勤医の不在以降、県立中央病院の医師による週一日の外来診療としてきたが、週五日を通しての診療と、夜間の救急外来や入院に対応できるようになる。
 隠岐病院は常勤産婦人科医師が確保できなくなったため、四月中旬、院内出産への対応を断念。その後、県が新たに医師一人を確保し、十一月から複数の常勤医師の派遣を受けて再開するとしていた。妊婦は現在、本土に渡って出産している。
 隠岐広域連合は二十三日、医師派遣を前倒しし院内出産を早期に再開できるよう、県に要望した。』

出産(分娩)はいつ何時来るかわかりません。そのため、産科医師はいつでも病院に行ける様に拘束されます。胎児仮死徴候(注1)などの緊急帝王切開の適応の場合は、もうひとり産科医の先生が必要です。つまり、分娩を扱っている病院では実質2人が毎日拘束されている状態なのです。日本産科婦人科学会では、産科施設に最低限必要な産科医の数を3人と提言しています。これは、2人が拘束されて、やっと残りの一人が休めるといった状態だからであると聞いたことがあります。それほど、産科医の仕事は厳しいといえると思います。

(注1)お腹の中の赤ちゃんが何らかの原因で酸素不足に陥り、状態が悪くなった徴候。NSTという胎児心拍と母体の腹緊をモニターする方法で判断する。

さて、ここで52歳の産科医師の先生がひとりで着任されました。ひとりでは、分娩を扱うことは難しいでしょう。緊急時の対応を...とのことですが、これを突き詰めると24時間、365日病院のそばから離れられない、究極の拘束状態となります。
11月からは複数体制を組むとのことですが、前述のごとく、2人では不十分で、最低3人以上の規模でないと持続できる体制としては難しいのではないか?と考えてしまいます。

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2006年8月23日 (水)

第3者機関の話題

2006年8月23日 晴れ
医療行為中の死亡を医療過誤によるものか?どうかを判断する機関の設置を厚生労働省は前倒しして行う予定としたようです。

医療不審死、厚労省が08年度にも究明機関設置へ(読売新聞)

『医療行為中の不審死(医療関連死)について、第三者機関が原因を究明する仕組みを構築する作業が、来年度から本格化することになった。
 厚生労働省が、外部の専門家による検討会を来年度に設置することを決めたもので、早ければ2008年度にも新制度がスタートする。厚労省では昨年から、5年計画で第三者機関による死因究明のモデル事業を進めており、その実績をみて検討を始めることにしていたが、患者、医療機関双方からの要望の高まりに応え、検討作業を前倒しすることにした。
 厚労省では、医療関連死の数を年間1万件前後に上るとみている。しかし、公的に死因を究明する制度はなく、患者側が病院の説明に納得できない場合は、民事訴訟を起こすか、捜査機関が立件するのを待つしかないのが現状だ。』

患者さん側、そして医療側双方に公平な死因究明機関であれば、これはできるだけ早期に立ち上げていただきたいと切に願う次第です。しかし、どなたが鑑定するのでしょうか?一般臨床のレベルでものごとを判断できないと、偏った判断がくだされる可能性があるのではないかと....心配してしまいます。
また、民事訴訟や刑事事件となることで、医療事故の真の姿が見えてくるとはいえません。

<患者側が病院の説明に納得できない場合は、民事訴訟を起こすか、捜査機関が立件するのを待つしかないのが現状だ。

とありますが、裁判では事故の本当の姿は見えてこず、次に同様な事故が起こるのを防ぐ糧とすることはできません...それは、法廷での戦いでは「この事故を教訓にすること」よりも「自分たちが法的に勝つこと」が優先され、お互いに都合の悪い事実は公表できなくなるからです。そして、やもすると都合のわるい事実の中に、将来同様の事故を防ぐ手がかりが隠されていることが多いと思います。

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2006年8月22日 (火)

民営化へ....

2006年8月22日 晴れ
昨日は結局、6人当直帯に入院。午前4時ごろ寝たのですが、7時になり「急性腹症にて救急車入ります。」とのこと....その方も入院となりました。

さて、今日は福岡県での話題。近くということもあり、以前より気にしてみていました。

全県立の全病院を民営化へ 福岡、財政悪化が影響(産經新聞)

『福岡県は平成19年4月から県立病院すべてを民営化する。恒常的な赤字による財政悪化が理由で、同県によると全病院民営化は全国で初めて。ただ、自治体病院の在り方として疑問を指摘する関係者もいる。
 県立病院は柳川、嘉穂、朝倉、遠賀、太宰府の5病院あった。朝倉、遠賀、太宰府の3病院は17年4月にすでに地元医師会など民間に移譲しており、残る2病院の民営化に向け、移譲先の選定を進めている。
 同県は5年から県立病院の経営改革に取り組んでおり、非診療部門の民間委託や職員定数の削減などを実施したが、赤字体質から脱却できなかった。
 県担当者は、大学病院が拡充されるなど医療提供体制が充実し、県立病院の役割が希薄化しつつあることも民営化の要因だとしている。
 全国自治体病院協議会によると、10年から18年までに民間移譲された自治体病院は全国で16病院あり、検討中も4病院に上るという。
 同協議会長の小山田恵岩手県立病院名誉院長は「自治体病院は地域のニーズでできた病院。民営化すると経営が主となり、医療の質が保てるか確証はない」と懸念する。
 さらに「すべてを民間移譲する福岡県の例は残念だ。住民が求める医療を提供できていなかったのだろう。自治体病院は住民とコミュニケーションをとりながら運営する姿勢が必要だ」と指摘した。』

福岡県には、4つの医学部をもつ大学があり、ナショナルセンターもあり、そして麻生飯塚病院という麻生セメントが持つ病院もあります。このような状況の中で、「県立の病院は不要である。」と烙印を押されてしまったのでしょう....
公立病院が民営化されれば、それまでやってきた政策医療は捨てられていきます。住民のうち少なくとも一部は政策医療の恩恵を受けていたと思いますが、民営化の後には不採算医療は切り捨てられることになるのではないかと考えます。その時になって、県立病院の本当の意味の恩恵を知ることとなるのでしょうか?

考え過ぎとは思いますが....現外務大臣で今回自民党総裁に立候補した麻生太郎氏は麻生グループの社長であった時期がありました。→麻生の沿革
また、現福岡県知事の麻生渡氏は麻生太郎氏の血のつながりはないが、従兄弟にあたるとのこと。県立病院が民営化されるのは容認できたのかもしれないとも感じ取れます。考え過ぎですね...(笑)

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2006年8月21日 (月)

当直

2006年8月21日 晴れ

今日は当直。多忙です。

5時からひっきりなしで、3人入院。そして、4人目が...救急車でこちらに向かっています...

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2006年8月20日 (日)

矛盾する記事?

2006年8月20日 曇り時々雨
暑い日が続いています。

2つの記事が気になりました。
へき地の医師確保で中央組織=総合対策に明記へ−厚労など3省(時事通信)

『厚生労働、総務、文部科学の3省は19日、離島やへき地などで深刻化する医師不足に対し、国としても人材確保面で直接支援に乗り出す方針を固めた。全国各地に多数の病院を持つ国立病院機構などの中央組織でつくる協議会を設置し、医師を送り込める体制を整える方向だ。
 3省の連絡会議が8月中にもまとめる総合対策に盛り込み、2007年度予算の概算要求などに反映させる。』

産科施設、適齢期女性が多い大都市も不足(読売新聞)

『出産適齢期(20〜39歳)の女性が出産できる病院・診療所の数(人口1万人当たり)は、埼玉県や東京都など大都市圏ほど少ないことが、日本産婦人科医会の調査で明らかになった。
 これまで地方の産科医不足が叫ばれてきたが、適齢期の女性が多い大都市圏も深刻な状況にあると言えそうだ。
 調査は昨年12月から今年2月にかけて、産婦人科のある全国の医療機関6363施設を対象に実施。5861施設(回答率92・1%)から回答を得た。
 その結果、実際に出産を取り扱っている医療機関は、2905施設(病院が1247施設、診療所1658施設)に限られていた。出産適齢期の女性1万人当たりに換算した全国平均は、1・69施設だった。』

最初の記事では、「離島やへき地などで深刻化する医師不足に対し」とへき地での医師不足に焦点を当てていますが、「これまで地方の産科医不足が叫ばれてきたが、適齢期の女性が多い大都市圏も深刻な状況にあると言えそうだ。」とのことで、地方だけの問題ではない(少なくとも産婦人科領域では...)ということになり2つの記事には矛盾が感じられます。

現在、地方で医師不足が顕著なところには、暫定的にその地の医学部の定員を増大させるという苦肉の策がとられようとしていますが、都会でも医師不足は進行しているのではないかと....暫定的に医師を少し増やしたとしても、都会の病院も医師が不足しており「その部分が充足されるまで、地方には医師が回ってこない。」ということになるのではないかと危惧します。

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2006年8月19日 (土)

方針の転換

2006年8月19日 晴れ
台風一過の晴天でした。暑さは尋常でなく、外では日陰でもまさに「汗が吹き出る」状態でした.

さて、以下の記事を参照したブログの記事を見つけました。弁護士のため息:医学部の定員増大へ厚生労働省は方針を大きく転換しようとしている様です。医療者には福音となるかもしれません。

医師不足対策、当該都道府県で医学部定員を暫定増員(読売新聞)

『医師の不足や偏在の問題に対応するため、厚生労働、文部科学、総務の3省で検討していた「新医師確保総合対策」の原案が18日、明らかになった。
 医師不足が特に深刻となっている都道府県に限り、大学医学部の定員増を暫定措置として認めるほか、離島やへき地で勤務する医師を養成している自治医科大学の定員も増員する。
 また、都道府県の要請に基づき緊急避難的に医師を派遣・紹介するシステムを構築する。3省は近く最終的な対策をまとめ、可能な施策から実施に移す。
 医学部の定員は、1986年以降、削減傾向が続き、97年に「引き続き医学部定員の削減に取り組む」ことも閣議決定された。定員増が認められれば約20年ぶりの方針転換となる。』

厚生労働省は国会での答弁の場においても、「我が国の医師数は足りており、今後増員を考慮しない」とのスタンスであったと思われます。しかし、世論に押されてか?このような急転直下の展開です。さすがに、医師の偏在という医師不足の理由付けは難しくなったのでしょうね...

しかし、ここで増員された医師は、すぐには特効薬として機能を果たしません。10年から15年後に効果が出るということを認識すべきです。

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2006年8月18日 (金)

小児における心肺蘇生_6

2006年8月18日 雨 風が強い
台風が九州を縦断したおかげで、風雨が強い状態でした。

小児の心肺蘇生に今日は戻ります。今日は第6弾で、心臓マッサージです。「循環の徴候」がみられなければ、また、心拍が60以下の時には心臓マッサージに進みます。乳児では心臓マッサージのかたちとして2つの形式があります。

2006a

左にお示ししたのは、片方の2本指にて胸を圧迫する方法で、一人でも人工呼吸をしながら行えます。胸を押す深さは胸の厚みの1/3程度、1秒に2回程度の速さで押します。


2006b_1

右にお示ししたのは、胸を両手で包み込むようにして、両方の親指で胸を押す形式です。胸郭包み込み法といわれていますが、2本指法に比べ、心臓マッサージにより到達される最高血圧(収縮期血圧)などが高い傾向があります。一人で、人工呼吸を行いながら施行するには難しいといえます。

2006c

更に左は、幼児に対する心臓マッサージです。片手の手のひらの付け根で胸を押します。同様に胸の厚みの1/3程度を押し下げます。回数は1秒に2回です。

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2006年8月17日 (木)

協力医について

2006年8月17日 雨
台風が接近しており、ずいぶんと激しい雨になりました。先ほど、病院に呼ばれた時はちょっとスゴい降りでした...
心肺蘇生の話題も記事にしたいのですが、ちょっと時事の話題や、法曹界の方々のブログに触発されて、なかなか進みません...^ ^;

さて、拙ブログ:医療崩壊に対する対策にも記述しましたが、「現在の医療訴訟に大きく影響するのは事故を鑑定する鑑定医や協力医である。」ということがわかってきました。(というより、ずっと前から指摘はされているのでしょうが...)第一線で働く、一般の臨床医が医療の現状と照らし合わせて鑑定を行うべきなのではないか?とも思っています。

コメントをいただいたYosyan先生からは...「一般の臨床医の協力医を増やすべきである。そして、鑑定の透明性を確保すべきである。」との主旨の御意見をいただきました。
また、モトケン先生からは...「(略)とりあえずこれに対する対処としては、被疑者の立場に立たされた医師を応援するために、極めて多忙とは思いますが、多くの臨床医が意見書を作成して検察に提出することが考えられます。(略)」との言葉をいただき、やはり協力医の中に一般臨床に携わっている医師が増えることが必要ではないかと受け取れる御意見です。

さて、一般臨床に携わる臨床医は非常に多忙です。これは、臨床家が協力医になることを妨げている大きな原因と思われますが、これ以外にも何か妨害するような原因はありそうです。また、どうすれば臨床医が参加できやすくなるのか?考えてみたいと思います。この記事を読まれた方で何か御意見を持っている方、どうぞコメントしていってください。私も前向きに考えを進めていきたいと思います。

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2006年8月16日 (水)

紀子さま入院の記事

2006年8月16日 曇り時々雨
台風が接近しています。

部分前置胎盤で秋篠宮紀子さまが愛育病院に入院されました。
紀子さま、出産に備え16日午後入院へ(読売新聞)

『宮内庁は15日、妊娠9か月の秋篠宮妃紀子さま(39)が16日午後から東京都内の民間病院に入院されると発表した。紀子さまは胎盤の一部が子宮口を覆う「部分前置胎盤」で、帝王切開での出産まで「入院して安静に過ごされるのが望ましい」と医師団が判断した。
 記者会見した金沢一郎・皇室医務主管によると、紀子さまの状態は安定しており、胎児の発育も順調という。医師団は、胎児が十分に発育する9月上旬(妊娠37週目)まで待って帝王切開手術を行いたい考えで、それまでに出血があった場合は投薬治療で抑える方針。
 天皇ご一家の出産で、宮内庁病院以外の病院が使われるのは初めてとなる。』

報道の内容について、2点ほど...部分前置胎盤は確か、福島県立大野病院での事件で亡くなられた患者さんと術前において同じ診断であると思います。大出血の原因となった癒着胎盤は非常に頻度の低いものでありますが、可能性はゼロではなく術前診断が難しいことから、担当の医師団の心中やいかに...?特に何らのトラブルもなく分娩が終わることを願って止みません。

<それまでに出血があった場合は投薬治療で抑える方針。

??これは、どんな薬を使うのでしょうか??専門外なので不勉強かもしれませんが、前置胎盤の出血は薬で止まるのか?どうか不明です。薬で止めることができないのであれば、この記事は誤った認識を読者に与えてしまいます。

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2006年8月15日 (火)

医療崩壊に対する対策2

2006年8月15日 晴れ
昨日に引き続き、このタイトルでの記事です。
元検弁護士のつぶやき:医療崩壊に対する制度論的対策についてでは、活発な論議が繰り広げられています。

昨日の記事の中で、検察の方々について少し苦言を呈させていただきました。内容は以下に示しますが....
『医療を勉強したことのない方、そして臨床の経験のない方には、恐らく「医療は100%でない」「医療の不確実性」ということは、頭ではわかっていても、心底理解されるということは難しいと考えます。今回の不当逮捕においても、本当に現場のことを理解して逮捕に踏み切ったのか?理解しがたいところがあります。』

考えてみれば、検察の方々は法律のプロであって、医療には当然、門外漢です。そして、臨床経験が豊富なヒトはほとんど皆無といっていいのではないかと思います。そこで、医療事故がおこったとき「これが果たして医療過誤なのかどうか?」を判断するには、しかるべきところに諮問すると思います。諮問する先は、鑑定医といわれる医師です。この鑑定医先生が「これは過誤であって、起訴すべきである」とすれば、検察の方々は準備を進めるのだと考えます。
そうすると、現在の状況の中で不当な扱いを受けている医師が増えているとすれば、その責任は鑑定医にあるのではないかといえます。恐らく鑑定を依頼される医師は、◯●大学の×◎科学教授や名誉教授などとそうそうたるメンバーであるのではないのか?とも考えていますが、一般の臨床たたき上げの医師とは明らかに意見の相違が生じそうです。大学は本来研究を主にやってきた組織であり、臨床をバリバリやっているというより、一般の臨床医がやらない最先端の医療を施すといったところではないか?と考えます。一般的な病気を数多く診ているのは大学にいる医師ではなく、一般の臨床医です。そして、一般的な臨床の感覚をもっているのは、一般の臨床医です。
鑑定が一般の臨床医でなされたときと、立派な大学教授でなされたときとの間に、自ずと違いが出るのではないか?これは、以上のことからすると容易に推察されることです。現在の日本では風土のせいもあるとは思いますが、鑑定医や匿名での意見を寄せる協力医が不足している様です。臨床をバリバリやっている、第一線の臨床医が多くこれらの鑑定医や協力医に参加することができれば、これらの問題は緩和できるでしょう。(もちろん、一般の臨床医のうち多くは協力医や鑑定医を受けるほどの時間的余裕がないものとは思いますが....)

将来的には現在の鑑定医や協力医を集めて、更に人数を拡大し、一つの科の一つの事件に対してその専門医の10人程度の意見を聞くことができるような組織になり、それを発展させて医療事故を検証する第3者機関となれば良いのではないかとも考えます。それを実現するには医療事故を検証する医師がもっともっと多く必要です。

話はちょっとそれますが、聞いた範囲での話では協力医はいろいろな形での参加ができる様です。法廷で有効となる鑑定には鑑定人の自署が必要ですが、その他の意見書には必要ない様です。そして、これら意見書には法的な拘束力はなく、弁護士などが訴訟を起こすかどうか?を見極めるツールとなるようです。ここで、中立な意見(医療者側にとっても公平なものです)を提出するといった地道な努力を積んでいけば、不当な逮捕や不当と感じられる判決、そして、医療訴訟自体を減らすことができるのではないか?とも考えます。

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2006年8月14日 (月)

医療崩壊に対する対策

2006年8月14日 晴れ
暑いです。

元検弁護士のつぶやき:医療崩壊に対する制度論的対策についてという、元検事で現在は弁護士をされている矢部先生のブログの記事からトラックバックを受けました。

制度論というとちょっと難しいですが、現在までに考えてきたことをまとめてみたいと思います。

まず、日本の医療をとりまく環境です。拙ブログでも、とりあげてきました。まず、医療費は対GNP比で7.6%程度。アメリカは12%以上で日本の約2倍、医療崩壊を来しているとされるイギリスでは6%代でした。また、人口1000人に占める医師の数はWHOが調査しており、OECD加盟国の中で最低のレベル。病院1ベッドあたりの職員数はアメリカの約1/5であるとされています。そして、医療のoutcomeを示す指標の一つ、平均寿命は御存知の通り世界1です。
まとめると、日本の医療は人員が制限され、そして安く仕上がっており、その成績はなかなかのものである。ということでしょうか?ただ、これには患者さんの満足度という指標は入っていません。恐らく、満足度という観点で行くとかなりレベルは低いのではないか?と思います。(私見です。)
でも、それはある程度は仕方のないことかもしれません。ギリギリの人員で病院を運営しているため、職員はテンテコマイです。看護師さんはいつも走っています。医師もベルトコンベアーのように流れてくる仕事をこなさなければなりません。そうまでしないと、食べていけないのです。日本の診療報酬体系では....

ここまで述べてきたように、日本の医療の現場はギリギリの状態です。しかし、厚生労働省は「もっと効率化せよ!」「医療費を減らしなさい」とのかけ声をかけつづけています。そして、先進国のなかでみると最低レベルの(人口あたり)医師数を、「医師は足りている」といってゆずりません。
政策医療を行ってきた公立病院は効率化を求められ「地方公営企業法全部適用」「独立法人化」ととにかく、収益をあげるに血ナマコになっています。
このような状態のなかで、モチベーションを保っている医師はどのくらいいるのでしょうか?

さらに、マスコミが追い打ちをかけます。医療の現場は、非常に高度な判断を求められ続ける場所です。各々の患者さんにおいて、疾患が同じでも100%同じ状態はありません。一つ一つが違うのです。経験の豊富な臨床医でも、その医療事故の現場にいなければどのような状態がおこったのか?なぜ、このような結果になったのか?類推することはできても、決めることはできません。それを、医療について決して詳しいとはいえないマスコミの記者が記事にします。そして、時代は「医師をたたく」流れです、医師に対して温情的な報道は寡聞であるといえますし、「マスコミから虐待をうけた多くの医師」たちがいるといえます。
そして、医師のモチベーションは更に下がります。

最後に、医療過誤の場合の法曹界の対応です。福島県立大野病院産婦人科医不当逮捕事件を例としてあげざるを得ません。この事件は、癒着胎盤という非常に稀なそして救命しがたい、さらに予見しがたい状態において、新生児を救命することはできたが、残念ながらお母様を救うことができなかったという事例において、事件から実に1年以上経過した時期に、業務上過失致死、医師法違反(異状死体届出義務違反)という通常では考えられない、医師であればほぼ全員が不当であると声をあげるような罪状で、しかも通常診療中にマスコミの目の前で手錠をかけて連行するというようなものでありました。そして、逮捕の理由、その罪状についても、医療サイドからすれば到底納得のできるようなものではありませんでした。
検察の方々は、法律については一生懸命勉強され、その道のプロであるといえます。しかし、こと医療に関しては臨床の経験のある方はほとんどいらっしゃらないであろうと考えます。医療を勉強したことのない方、そして臨床の経験のない方には、恐らく「医療は100%でない」「医療の不確実性」ということは、頭ではわかっていても、心底理解されるということは難しいと考えます。今回の不当逮捕においても、本当に現場のことを理解して逮捕に踏み切ったのか?理解しがたいところがあります。

以上、現状での問題点を列挙したつもりですが...その、解決法としては...
1.医療の効率化を進めることも重要かもしれないが、良質な医療にはある程度のお金がかかることを理解し、必要な部分には潤沢な医療費を費やすべきである。
2.医師や病院職員は不足しているとの認識を厚生労働省は持つべきであり、その確保のために医師、看護師養成数を増やすことも考慮に入れて検討すべきである。
3.マスコミには感情的な医師バッシングではなく、冷静に事件とその裏側にある問題を探り出し報道につなげていただきたい。
4.法曹界の方々(特に検察の方々)には、もう少し医療の現場を知っていただきたい。医療には不確実性があり、100%でないことを特に認識していただきたい。その上で、明らかな医療過誤とそうでないものを見極めていただきたい。それができないのであれば、医療事故を専門に検討する部門を作り、そこに臨床経験豊富な医師などを集めて判断させるべきである。
などが挙げられると思います。

更に、最近の話題からですが....
日本の法制度の問題点として、「過失の存在しない医療事故」については補償されないというものがあります。特に、児に高度の障害が残る、「脳性麻痺」については現在までの研究で、出産時におけるトラブルが影響しておこったものは非常に少ないとの結果がでています。そのように、誰の過失も存在しないものについては、公的に補償するという制度→無過失補償制度を早急に導入すべきであると考えます。これに対しては、医師のモラルハザードがおこるという意見などが根強くあり、導入までまだイバラの道とも考えますが、私の考え方からいうと、「まずは後遺症をもった児に対して補償をしてあげることが最優先である」と思っています。この制度の第一義的な意味は患者さんのためであって、医師の云々は二の次であるということです。

以上、なんだかちょっとわかりにくいまとめとなりましたが、『医療崩壊に対する制度論的対策』についての考察です。

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2006年8月13日 (日)

実家に帰ります

2006年8月13日 晴れ

ちょうど、地域の輪番が終わったところです。

いまから、ネットに接続環境にない実家に帰ります。今日は、更新できないかもしれません。

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2006年8月12日 (土)

勧めません

本日2回目の投稿です。

chisato inuo:小児救急というブログの記事の中から....

『今年3月、長崎県内の病院小児科医を対象にアンケートを行った長崎大小児科医局長(当時)の宮副初司医師は言葉をなくした。「子どもが医師になるとして小児科医を勧めますか」という質問に、「はい」と答えた医師が、58人中1人もいなかったのだ。』

実をいうと、私も勧めません。自分の子供には...どんな仕事でもそうかもしれませんが....
「私は何とか耐えてきているが、子供は耐えれないかもしれない」程度のキツさがある仕事であると思います。
余程、「自分は小児科医になりたい」という希望がなければ勧めることはしないでしょう。それどころか、医師になることも勧めません。

そんなに甘い仕事ではないと思います。別の方面で、もう少し楽に暮らしていける仕事があれば、そちらを選択するように誘導するかもしれません...

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無過失補償制度

2006年8月12日 晴れ一時雷雨
今日も来ました、夕立。雷を伴って、バケツをひっくり返したような雨でした。

「無過失補償制度」は、「医療行為自体に過失がない場合で、医療事故が生じてしまった場合、公的にその患者さんに対して補償する制度」と理解しています。今回紹介する記事は、脳性麻痺に対する補償制度の確立を厚生労働省に提言したというものです。脳性麻痺は出産時の仮死状態などでも生じる可能性はありますが、現在の進歩した産科医療のなかでは、そのうちの多くが「出産時の原因で生じるものではない」ということです。

日本の法制度の中では、医療側に過失がない場合、患者さん側が大きな後遺症を持つことになったとしても、補償されません。特に、脳性麻痺の場合、障害をもって産まれた児を養育するには、多額の費用が必要ですし、両親の大きなエネルギーも必要です。医療側に過失のない場合はこういった患者さんの場合も補償の対象にはならないのです。当然、辛い、苦しい生活が待っています。場合によっては、「この児を産まなければよかった」などと考えてしまうこともあるでしょう...。

脳性麻痺はある一定の確率で生じてくることがわかってきています。その患者さんに対して、「医療側の過失の有無にかかわらず、一定額の補償をしましょう」という制度の提言です。

出産時事故で障害、公的補償制度要望(読売新聞)

「医師会、原案公表
 日本医師会は、出産時の事故で脳性マヒとなった重度の障害者に、医師の過失の有無にかかわらず補償金を支払う公的な「無過失補償制度」の原案をまとめ、8日公表した。
 厚生労働省に同案を提出し、法制化を要望している。
 生後5年までに一時金2000万円を支払い、6年目以降は介護料や逸失利益を年金形式で支払う内容。基金の財源は、国から年間60億円の支出を受けることを想定し、妊産婦からの負担も検討している。しかし産科医の自己負担については「国民の同意が得にくい場合は、1分娩(ぶんべん)1000円を集める」と触れるにとどまり、厚労省は「当事者同士の負担が当然で、国費負担はなじまない」としている。
 この制度は、訴訟による負担を敬遠し、産科医のなり手が減っていることなどから同医師会が導入を検討している。」

個人的に、こういった制度は必要であると考えますし、実現すべきと考えています。しかし、この記事からは読者に少し誤ったイメージを伝える可能性があります。

<出産時の事故で脳性マヒとなった重度の障害者に、>という部分がありますが、脳性麻痺の原因の多くは出産時の事故とは関係ない様です。

<厚労省は「当事者同士の負担が当然で、国費負担はなじまない」としている。>という部分がありますが、この制度自体は「過失の無い事故により生じた脳性麻痺の児を救済するための制度」であるのではないかと考えます。この目的のどこが、国費負担がなじまないのでしょうか?首を傾げたくなります。

<この制度は、訴訟による負担を敬遠し、産科医のなり手が減っていることなどから同医師会が導入を検討している。>という部分も、この制度の目的は「過失の無い事故により生じた脳性麻痺の児を救済するため」ではないかと思います。明らかに産科医の救済とは違う目的であるものなのに、この記事では産科医の救済のためにこの制度を提言したようなイメージを読者に与えます。

マスコミから流れる情報は色が付けられていると感じます。

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2006年8月11日 (金)

厚生労働省の大なた

2006年8月11日 晴れのち激しい雷雨
今日の雷さんにはほんと、ヤラレました。まずは、日中の外来時間内の15分以上にわたる停電。瞬間的に停電が数回。そして、病院の避雷針と思われる部分への落雷...おかげで、院内の電話が故障。オーダリングシステムという医師が検査や投薬を指示するコンピュータシステムと医事会計のシステムとの間の連携が壊れ、5時以降にそれぞれサーバーの再起動を行わなければなりませんでした...。
でも、決定的にダメージを受けたのが、電話だけだったというのが救いかもしれません...。コンピュータがやられていたらと思うと「ぞっ」とします。

さて、今日は沖縄タイムスの社説から。「介護難民」を危ぐする

『「介護難民」という言葉が、にわかに現実味を帯びてきた。
 医療費削減のため政府が、療養病床の再編に大なたを振るおうとしているからだ。すでに七月から、これら病床の診療報酬が引き下げられ、閉院を余儀なくされる病院や退院を迫られる患者が出始めている。
 療養病床は、慢性の病気を抱えて長期に入院する高齢者のための病床だ。
現在、医療保険を使う医療型が二十五万床、介護保険を使う介護型が十三万床ある。
 厚生労働省は二〇一一年度末までに介護型を全廃し、医療型を十五万床に削減する方針を決定した。療養病床に入院できるのは、治療の必要性の高い患者に限られ、必要性の低い人たちは、自宅や介護保険の老人保健施設などに移ることになる。

 治療が終わった後も、家庭の事情などで入院し続ける「社会的入院」の解消に異論はない。しかし受け皿を用意しないままの再編は、患者や家族に負担を強いるもので、社会的入院の本質的解決にならない。
 県医師会の調査によると、県内の療養病床に入院している高齢者の半数が、介護施設や在宅への移行の対象という。
 共働き家庭が多く家族の介護力が低い、介護保険施設もいっぱいで受け入れ先が少ない、常時ヘルパーを利用する余裕がない、という現状を考えると不安が広がる。
 今回の療養病床の急激な削減は、財政を優先するあまり、拙速にみえる。地域の対応も追いついていない。
 もともと家庭の事情から入院している患者が多いのだから、在宅へ移すのは容易ではない。地域の中で、療養病床が果たした役割も見極めなければなるまい。

 少子化でますます弱まる家族の介護力を誰が、どう補うのか。「支援診療所」の充実など、在宅療養を応援する体制を整えなければ、行き場のないお年寄りが増えるだけだ。
 家族頼みでは解決しない。』

本当に「大なた」です。厚生労働省は医療費を削減するため、まずは介護保険で介護にかかる費用を切り分けました。介護で使える病床を認めました。しかし、最終的には医療の必要な療養病床を残し、介護目的の療養病床を全廃するという方針です。あぶれた方々は、在宅へという導きです。
記事の中でも触れていますが、共働きも増え、在宅の介護力は国が期待したほどのものではないかもしれません。昔のように、大家族の中でおじいちゃん、おばあちゃんがいるといった風景が理想的ではあると思いますが、現在は核家族化が進行し、各々の家族の事情というものも生じてきている様です。悲しいことですが、血縁の方々からも受け入れられないお年寄りも現実にはいるし、高齢者二人、あるいは独居で生活する方も増えています。そういった方々へのサポートはどうするのでしょうか?机上の論理だけでは、real worldは動いていかないと思います。

今日は、小児科とはちょっとかけ離れた話となってしまいました。

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2006年8月10日 (木)

小児における心肺蘇生_5

2006年8月10日 晴れ時々雨 雷を伴い激しく降る
さて、昨日に引き続き小児のBLS:一次救命処置です。呼気吹き込みによる人工呼吸のあと、「循環の徴候」が認められなければすかさず心臓マッサージへと移行します。

ここで、「循環の徴候」とは「心臓が動いていて血液が体を巡っている」ということで、脈拍はその一つといえますが、こと乳児ではそれを見いだすのは至難の業です。勤務している病院で実際に使用している教材です。

2006_2

写真左は乳児、右は幼児以上の小児です。乳児は頚部がずんぐりしており、頸動脈で脈拍を触れることは非常に難しいです。上腕動脈は触れることが比較的容易です。でも、それでも状態の悪い患者さんは脈拍を触れるのが難しいといえます。では、何をもって「循環している」と確認しましょう?それは、人工呼吸後の体動や自発呼吸です。そういったサインが確認できなければ、心臓マッサージに進みます。

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2006年8月 9日 (水)

小児における心肺蘇生_4

2006年8月9日 晴れ
梅雨明けから、凄まじい猛暑です。現在、入院の患者さんは5人。肺炎、乳児の鉄欠乏性貧血、急性副鼻腔炎、ちょっと社会的入院臭い血友病Aの兄弟などです。

いろいろと社会がにぎやかしかったのもあり、止まっていました心肺蘇生シリーズですが本日再開します。

今日は人工呼吸についてです。医療機関ならば、Ambu-bagやResusi-bagなどの蘇生具がありそれを利用するところですが、何もない時には口対口の人工呼吸をしなければなりません。1歳未満の乳児ならば、口で患者さんの口と鼻を覆って息を吹き込みます。このとき、どのくらい吹き込めば良いのかですが、「胸が1センチ程度上がればよい」ということです。それ以上吹き込もうとすると、食道の方に空気が逃げて胃を膨らませてしまいます。1歳以上の幼児には、成人と同じ「鼻をつまんで、口で患者さんの口を覆って息を吹き込む」方法で胸が1センチ程度上がる様にします。

吹き込む頻度は、2005年の改訂から成人と同列となり、1人で行う場合は後で説明する心臓マッサージ30回に対して2回の吹き込み、2人で行う場合は心臓マッサージ15回対して2回の吹き込みとなります。(以前は5:1でした。)

口対口、口対口鼻の人工呼吸だけは院内の資料に図をもっていませんので、TERU先生のブログを参照していただけると幸いです。小児科Dr.TERUのブツブツ診察室:小児BLSブログ講座2←非常に参考になります。

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2006年8月 8日 (火)

情報の不足2

2006年8月8日 晴れ
台風が3つ近づいている様です。そのうち一つが上陸しそうです。
小児の心肺蘇生については第3話まで進んでいますが、最近の報道を読むとどうしてもそちらについて意見を書かざるを得ません。

今回も情報の不足、そしてマスコミの論理誘導の感を否めません。
まずは、今回の報道に出てくる、亡くなられた新生児の患者さん、及び、その御遺族の方々に深い哀悼の意を表しますとともに、医療がこの限界を超え進歩し続けることを望みます。
分娩で頭蓋骨骨折、新生児死亡=愛育病院、医療ミスか−警視庁(時事通信)

『東京都港区の愛育病院(中林正雄院長)で、器具を使って分娩(ぶんべん)したところ、新生児が頭蓋(ずがい)骨骨折の仮死状態で生まれ、翌日に死亡していたことが8日、分かった。同病院が警察に適切な届け出をしていなかった可能性もあり、警視庁麻布署は医療ミスの疑いもあるとみて、業務上過失致死容疑で病院側から事情を聴いている。
 調べでは、6日午後5時すぎ、病院内で港区の女性(38)が女児の出産を開始。同9時ごろ、出産が長時間になり、母子に負担が掛かると判断した男性医師(31)が、鉗子(かんし)を使い新生児を挟んで取り出す方法を選択したが、約30分後に頭蓋骨が骨折した状態で生まれ、7日午前9時20分に死亡が確認された。』

鉗子分娩は文字通り、赤ちゃんの頭を鉗子でつかんで外に引っ張り出す手技です。吸引分娩という方法は陰圧をかけたカップで頭を引っ張って分娩する方法です。(因に私自身も吸引分娩で産まれたとのことです。)この記事からは情報不足のため伺えませんが、鉗子分娩で分娩させなかった時にはこの新生児はどうなっていたのか?これが問題です。明らかな胎児仮死徴候があって、児頭がかなり下りてきている場合は、鉗子分娩で引っ張り出すこともあるのでは?と考えます。そして、分娩が成功しない場合はどうなるのか?この場合も「死」が待っているのではないかと思います。

また、もう一つ決定的な情報不足は頭蓋骨の骨折と新生児の死亡との間に因果関係があるのかということです。周産期仮死が原因で亡くなったのであれば、この記事は誤ったイメージを読者に与えることになると思います。

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2006年8月 7日 (月)

都会での小児医療の崩壊

2006年8月7日 晴れ
結構な猛暑です。盆が近づき、県外の帰省客の受診が増加しています。

さて、都市部でも小児医療は崩壊してきているようです。
山口大、小児科医派遣打ち切り(中国新聞)

『山口大医学部(宇部市)は、山口県厚生農協連合会が経営する柳井市の周東総合病院への小児科医の派遣を来春で打ち切る方針を固めた。大学の医局で小児科医を確保するのが難しいため。病院側は小児科医を公募すると同時に、周辺に小児科の二十四時間態勢の診療機関がなくなるとして、地元の医師会や行政に協力を求め、夜間診療施設の開設を早急に検討する。
 山口大医学部付属病院には小児科医九人が所属。八年前に比べて六人減った。特に、この三年間で新たに迎えたのは一人だけ。小児科は三十九床あり、小児科長の古川漸教授は「付属病院の患者を診療するだけでも大変。派遣は続けたいが、対応できない状態」と強調する。
 今年五月、三十年間続けてきた小児科医の派遣を打ち切ると病院側に連絡した。
 同病院によると、小児科には現在、山口大からの医師二人が常勤している。うち一人は来年三月に退職し、下関市で開業する予定。一人では夜間救急の対応はできなくなる。
 柳井市と山口県周防大島町、熊毛郡内のエリアで、二十四時間態勢の小児科は同病院だけ。圏域人口は約九万人。小児科への休日や夜間外来は月に二百四十人前後で、うち二十人前後が入院している、という。二〇〇五年度の入院患者数は五百二十七人。地域別では柳井市二百五人、同県田布施町百十一人、同県平生町八十四人、周防大島町五十人などだった。
 夜間救急対応ができなくなれば、圏域住民は車で一時間程度かかる岩国市か周南市に向かわざるを得なくなる。周東総合病院の守田知明病院長は「地域医療を守るため、小児科の夜間救急は続けたい。そのためには医師会や開業医、行政の協力が欠かせない」と訴えている。』

小児救急を担当する病院の小児科が閉鎖されるという記事です。527人/年の入院患者さんを診ているので、これは大変な損失であると思いますが、「よくも2人という人数でこれだけの数を診ていたな...」というのが率直な感想です。恐らく、寝る暇もなくて...仕方なく、辞める道を選んでいったのではないかと....
特に、病院での仕事を続ける小児科医は減少している様です。小児科医の仕事がもう少し魅力的になるような政策を厚生労働省には期待するのみです...(悲)

こちらは、県立こども病院の独立法人化が決まった、静岡からです。
静岡市:平日夜間の小児2次救急医療、2病院から1病院に−−来月から /静岡(毎日新聞)

『 静岡市は来月1日から、平日夜間の重症の子どもの治療を行う「小児2次救急医療」体制を現在の2病院から1病院に縮小する。小児科医不足により小児科医の過酷な労働実態が背景にあり、市保健衛生総務課では「小児医療救急体制を維持するためのやむを得ない措置」と話している。
 現在の体制は旧静岡市で5病院、旧清水市で3病院がそれぞれ当番制をとる2病院体制だった。しかし、8病院の常勤小児科医の人数は03年度の43人から05年度の40人に減少。人数不足により、昼間の診療から夜間の救急当番まで最長36時間連続勤務になるなど過酷な労働状況が生じ、「このままでは医師が倒れてしまう」(同課)と縮小を決めた。対象は平日のみで、土・日・祝日、年末年始の2次救急は従来通りの2病院体制を継続するという。』

「人数不足により、最長36時間連続勤務になる」ということですが..恐らく、人数不足になる以前から多分、36時間勤務ではないかと思います。都市部もギリギリの状態でやってます。小児医療の体制を整備したいのであれば、小児科医を増やすことが必要です。繰り返しになるかもしれませんが、若い医師たちが小児科を志しやすい環境を整えることが必要と思います。厚生労働省には重ねて環境の整備をお願いする次第です...。

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2006年8月 6日 (日)

情報の不足

2006年8月6日 晴れ
昨日が地域の輪番だったため、今日はoffです。

マスコミに流れる記事は、意図的に情報を不足した状態で流されているのでしょうか?
まずは、この一件の中で尊い命を失われた、女性とその遺族の方々に対して哀悼の意を表します。

記事は病院で点滴後死亡 「医療ミス」と高砂市を提訴(神戸新聞)です。

『高砂市民病院で点滴治療を受けた同市内の主婦(59)が死亡したのは同病院が健康状態の把握を怠ったためとして、遺族が五日までに、病院を運営する高砂市に対し、総額約二千四百万円の損害賠償を求める訴えを神戸地裁姫路支部に起こした。
 訴状によると、主婦は今年二月十日、右足の人さし指が紫色にはれたため高砂市民病院に入院。点滴治療を受けたが、頭痛を訴えたため治療を中断した。その後、病院は健康状態を把握する検査をしないまま別の薬で点滴を再開したが、容体が急変し、検査でくも膜下出血が判明。加古川市の病院に移り手術を受けたが、同二十四日に死亡したとしている。
 原告側は「病院は副作用などを防ぐ措置を怠った。健康状態を把握する検査をせずに、薬を変えただけで点滴を再開したのは重大な過失がある」と主張。病院側は「弁護士と対応を協議しておらず、現段階ではコメントできない」としている。』

情報として足りないのは、1.どういう病気で右足の人差し指が腫れたのか?、2.それに対しどういう治療をおこなったのか?(具体的には点滴の内容)、3.頭痛はどういったものであったのか?(くも膜下出血を疑わなければならないような危険な頭痛であったのか?)、4.変更した治療薬は何であったか?(くも膜下出血を助長させるようなものであったか?)、5.容体が急変するまでの時間は?(頭痛と容体急変との間の因果関係はあるのか?)、6.この治療を受けなかった場合、右足の人差し指はどうなっていたと考えられるのか?、7.患者さんには何らかの基礎疾患がなかったのか?などが裁判では争点となると思いますが、記事には、これらの情報は含まれていません。

意図して省いているのでしょうか?この記事だけを読むと、医療側の過失だけが強調されているように感じます...。(被害妄想かもしれません...)

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2006年8月 5日 (土)

小児における心肺蘇生_3

2006年8月5日 晴れ時々激しい雨
今日はBLSの流れの一つである、気道確保についてです。意識のない患者さんは、本来開いている気道が開けない状態となっていることがあります。一つは舌根の沈下というもので、これは舌根部(舌の根元の部分)を支える筋肉の緊張がなくなり、舌根部が気道の方に落ちて塞いでしまうことが影響します。また、特に小児においては気道に異物が入っていて、それが気道を塞いでいることもあります。2005年のガイドラインでは一般向けの指導方法が若干変更になっていますが、ここで、実際の気道確保の方法を図にしてあげておきます。(これは、実際に私のいる病院での教材として使用しているものです。)

2006_1

頭部後屈・あご先挙上と下顎挙上の二つの方法が紹介されていますが、頭やくびに外傷がある場合、脊髄を通している頸椎という背骨の一部が損傷していることがあり、頭部後屈をすると脊髄の一部(頚部の脊髄を頸髄と呼びます)が更に損傷して永続的な障害を残したり、呼吸が止まってしまったりすることがあるとされています。そこで、「頭やくびに外傷がある場合は、下顎挙上で気道確保してください」ということになっていました。でも、下顎挙上での気道確保は頭部後屈に比較して手技が難しく、一般の方ではうまくいかない場合があり、2005年のガイドラインからは、一般の方々には頭部後屈・あご先挙上だけを教えるように改訂されました。

気道確保を行い、呼吸の有無を確認しますが、これは患者さんの口鼻に顔を近づけ「見て、聞いて、感じて」行います。そして、10秒以内に確認します。

呼吸がない場合は、呼気吹き込み(口対口、口対口鼻の人工呼吸)を開始します。
以後は次回以降とします。

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2006年8月 4日 (金)

小児における心肺蘇生_2

2006年8月4日 晴れ
2006
今日はBLS:一次救命処置の流れについてまとめます。左の図は、実際に教材として使用したものです。まずは、意識の確認です。体を軽くたたきながら話しかけ、反応をみます。反応がなければ、気道を確保し呼吸を確認します。呼吸がなければ、口対口(+鼻)の人工呼吸(呼気吹き込み)を2回行い、循環の徴候が確認できない、あるいは心拍が60/分以下の場合は心臓マッサージに進みます。

気道確保、循環のサインなど細かい項目が出てきます。これらは、次回以降、少しづつ説明していきます。

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2006年8月 3日 (木)

小児における心肺蘇生_1

2006年8月3日 晴れ
猛暑です。昨日施行した腎生検の患者さんは特に大きな合併症なく経過しています。

さて、以前より触れてみたかった、「小児の心肺蘇生」について少しづつ書き留めていこうと思います。AHA: American Heart Association, アメリカ心臓学会がガイドラインを出しています。最近では2000年と2005年にガイドラインの改訂があり、この中にも小児の心肺蘇生について触れられています。

日本ACLS協会HPより...
「BLSはBasic Life Supportの略で、一次救命処置と訳されるのに対して、ACLSはAdvanced Cardiovascular Life Supportの略で、日本語では二次救命処置と翻訳されます。BLSは人工呼吸、心臓マッサージによる心肺蘇生法からはじまりましたが近年は除細動までもその範疇に入るようになりました。ACLSは気管挿管、薬剤投与といった高度な心肺蘇生法を示しますが、心停止時のみならず重症不整脈、急性冠症候群、急性虚血性脳卒中の初期治療までを網羅したものへと進歩してきています。」

AED: Automated external defibrillater自動体外式除細動器という言葉を聞いたことがあると思います。成人のCPA: Cardiopulmonary arrest心肺停止はその多くが心臓由来で、かなりの割合がVF: Ventricular fibrillation心室細動という心臓の筋肉がバラバラに収縮して血液を送り出せなくなる致死的な不整脈によるとされています。これには、一刻も早く電気的除細動といって心臓に直流の電気を一瞬だけ流して(いわゆるDC-shockというやつです。)心臓の筋肉を正常な動きに戻してやることが必要です。そして、それも素早く行わないと蘇生できる率が急激に低下するため、一般の方々でも使いやすい、電極を指定の位置に貼って、スイッチを押せば器械が自動的に「これはVFだ。」と判断して電気を流してくれるAEDが普及してきたのです。北米ではこのAEDの普及により、心臓由来のCPAの蘇生率が非常に高くなったところもある様です。AEDの使用は、既にBLS: Basic life support一時救命処置の流れの中に組み込まれてきており、いろいろなところに備え付けられるようになりました。

ここまでは、成人の話ですが....今度は小児の場合です。以下は私が実際に心肺蘇生の講義を看護師さんなどにする場合に使っている資料の中の一文です。

「一方、小児における心肺停止は心臓以外の原因によることが多い。(SIDS、溺水、窒息、中毒、外傷、重度の喘息、肺炎などが主な原因となる。)」
「低酸素血症、高CO2血症が進行し徐脈や呼吸停止となり心停止に至るメカニズム。除細動は効果的でないことが多い。かわりに、人工呼吸、心マで蘇生できる可能性あり」

ということで、成人とは違ったアプローチが必要です。

まとめますと、成人の心肺停止では心臓由来のものが多く、VF:心室細動の絡んだものが多い。これには除細動が有効で、一時救命処置にもAEDの使用が組み込まれている。これに対し、小児では心臓由来は少なく除細動が効果的でないことが多い。そのため、気道確保や人工呼吸、心臓マッサージなどの必要性が高い。ということになると思います。

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2006年8月 2日 (水)

脳死判定基準の国際比較

2006年8月2日 晴れ一時雨
熱帯の気候の様です。午後になり、雷を伴う激しい夕立...
今日は、久しぶりに自分のsub-specialityの範囲の検査...腎生検をしていました。いなかの病院ですので、「どうしてもここでしてほしい」という方以外は受け付けておりませんので、約1年ぶりです。特に大きな出血もなく終了。でも、汗はかきました...。

さて、こんな記事を見逃していました...

<脳死>米国・カナダで判定の3人、日本帰国後に意識回復(毎日新聞)

『米国やカナダ滞在中に脳血管の病気で意識不明になった日本人で、家族らが現地の医師から「脳死」と説明されたにもかかわらず、帰国後に意識を回復した人が3人いたことが中堅損害保険会社の調査で明らかになった。東京都内で開かれた日本渡航医学会で、損保の担当者が報告した。海外での脳死診断は日本ほど厳格でなく、治療を打ち切る場合があることを浮き彫りにする事例で、報告した担当者は「医療文化が違う国にいることをはっきり認識すべきだ」と警告する。
 報告によると、02〜05年度に、旅行や仕事で米国、カナダに滞在中の旅行保険契約者9人が脳血管障害で入院。主治医は家族や損保の現地スタッフに「脳死」と説明した。うち3人の家族は「治療中止は納得できない」などと訴え、チャーター機で帰国。日本で治療を受け、意識が回復した。搬送費用の約2000万円は保険で支払われた。残り6人は、チャーター機手配に必要な額の保険に加入していなかったことなどから帰国を断念。現地で死亡したという。
 意識が戻った60代男性の場合、カナダで脳梗塞(こうそく)となり、入院した。人工呼吸器をつけなくても呼吸できる自発呼吸はあったが、医師は家族に「脳死」と説明したという。しかし、男性は帰国後1カ月で意識が戻り、記憶も回復した。』

脳死とは人間の生命を支える脳幹部の機能がなくなった状態をいうものと認識しています。脳幹部は呼吸の中枢がありますので、脳死では当然自発呼吸が消失し、人工呼吸を行わなければ「心臓死」に至ります。自発呼吸があるのに「脳死」を診断するとは、恐ろしい医療施設です...。

『日本、米国、カナダとも自発呼吸があれば脳死とは判定されない。回復した3例は病院の診断書に「脳死」との記述はなかった。病院側は損保に「保険会社で死の解釈が違う。治療費を保険で確実に出してもらうため、(病院としては)脳死かどうかは書かない」などと返答したという。
 日本医科大の横田裕行助教授(救命救急医学)は「海外の基準でも脳死なら意識は回復しない。米やカナダなどの一般医療現場では、回復は難しいなどの意味で脳死を使うことがある」と言う。』

回復は難しいなどの意味で「脳死」を安易に使用してはいけないと思うのですが....。

『脳死判定 日本では、臓器移植法に基づき、臓器提供の場合に限って、脳死が法律上の死とみなされる。脳死と判定するためには、(1)深いこん睡(2)瞳孔の散大と固定(3)脳幹反射の消失(4)平たん脳波(5)自発呼吸の消失——のすべてを満たし、6時間たっても状態が変わらないことを確認する必要がある。米国では、州法などで「脳死」を「脳幹を含む全脳の不可逆的停止」などと定義している。どちらの国でも、自発呼吸があれば、脳死とは判定されない。』

自発呼吸がないことを確認するテストがありますが、これは人工呼吸器を外してしばらくの間、自発呼吸が起こらないことを確認する検査です。また、脳波は大脳の活動を主に表し、これが平坦であると大脳の「考える」機能は停止していると考えられます。脳幹反射は呼吸や循環などの調節をしている生命維持装置の脳幹が機能しているかどうか?を確認するものです。実際にはABR: 聴性脳幹反射(耳に音を入れてそれが脳波上に反映されるかどうかを検査する検査法)などが使用されます。これらの検査を少なくとも6時間以上の間隔をあけて2回施行して、同じく「反応がない」と判定する必要があります。

『◇病院間で脳死判定基準に相違…米国
 米国は脳死者からの臓器移植先進国で、年間6000例前後が実施される。脳死は人の死という考え方が広く受け入れられているためだ。松本歯科大の倉持武教授(哲学)は「日本よりも臓器移植を強く推進するというムードが強く、医療現場に影響しているのかもしれない」と指摘する。
 実際、米麻酔学会誌(1999年7月号)によると、頭部外傷で脳死と判定された男性が、臓器摘出直前に自発呼吸をしていることが分かったが、そのまま摘出された例などが紹介されている。
 日本とは医療制度、保険制度が異なり、医療も「営利産業」とされる。患者死亡の場合、保険会社が死亡直前の治療を「無駄」と判断するケースもある。病院側は保険会社からの支払いを受けるため、早めに治療を打ち切る傾向もあるようだ。
 日本では臓器移植法が施行された97年以降、脳死移植は47例。杏林大学病院の島崎修次救命救急センター長は「米国、カナダの脳死判定では脳波は取らず、日本ほど厳格ではない。カナダでは病院ごとに判定基準を定めている」と説明する。』

脳死の判定については、各国でかなりの差があることを知りました。(呆然)
日本はアメリカ型の医療を踏襲していこうと動いているように思えますが、医療にも「営利企業」という考え方が浸透していくと、いままでの日本の医療の良い面は全てかき消されてしまい、とんでもない、そして、日本人には受け入れがたい医療の形が残ると思います。少なくとも、脳死の判定基準はこのまま手を付けずに残していてほしい...と考えます。

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2006年8月 1日 (火)

小児の時間外受診

2006年8月1日 晴れ
いよいよ8月、暑さは本番です。

小児の時間外受診について、沖縄タイムスから...
6割「緊急性なし」/子どもの救急センター利用

『小児救急外来を訪れた子どもの症状の約六割は「緊急性なし」—。こんな実態が、二十九日に那覇市で開かれた第三回こども救急フォーラムで紹介された。採算の厳しさや人手不足もあり、各医療機関の小児救急部門はパンク寸前。医師らは「救急機関に行くかどうか、親も症状を冷静に見極めて」と呼び掛けた。
 フォーラムは、県立南部医療センター・こども医療センター小児科の主催。保育士や父母ら約二百人が参加。医師や看護師が、小児医療を取り巻く問題について語った。
 那覇市立病院小児科の屋良朝雄医師は、同院急病センター小児科の受診患者の保護者を対象に昨年実施したアンケートで、32%が「夜間にセンターを利用することにあまり抵抗がない」を選んだことを紹介。「コンビニ感覚で、安易に夜間の救急を利用する傾向がある」と述べた。一方で「核家族化が進み、孤立した親が不安感を募らせることも背景にある」とも指摘した。
 同医療センター小児科の安慶田英樹医師は、厚労省が全国の医療機関を対象に実施したアンケートで、小児救急患者のうち緊急性のない軽症は61%、「受診不要」も28%いた例を紹介した。
 安慶田医師は「同じ三八度の発熱でも、救急診療が必要な症状も、そうでない症状もある。判断材料を、われわれ医療の側からも発信していきたい」といい、日本小児科学会の作成した冊子「こどもの救急」から主な症状の判断基準を紹介した。
「こどもの救急」はインターネットでも見ることができる。アドレスはhttp://kodomo-qq.jp

小児の救急をやっている施設では、小児救急よりも「小児の時間外受診」をメインに処理しなくてはならない状態となるところがあります。みんな青色吐息でやっているのが実情ではないか?とも思います。何とか、時間外受診の数を減らし本来の救急に力を注ぐことができるようになれば...と考えます。

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