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2006年7月18日 (火)

溶血性尿毒症症候群

2006年7月18日 曇りときどき晴れ
このような記事が目に止まりました。

<O157>4歳女児が死亡 京都(毎日新聞)

『京都府山城北保健所は18日、管内の4歳女児が、病原性大腸菌O157のため死亡したと発表した。府によると8日に39.5度の高熱と下痢が伴ったため12日に入院、14日にO157が検出された。溶血性尿毒症症候群を発症し17日夜に死亡した。保健所は「集団感染の可能性は低い。感染ルートは調査中」としている。』

溶血性尿毒症症候群:HUS; Hemolytic-Uremic syndromeはO-157:H7等の腸管出血性大腸菌感染やその他の感染症、放射線治療や薬剤、また原因がなく自身の体質により起こる、1.破砕赤血球を伴う溶血性貧血、2.血小板減少、3.腎機能障害を主徴とする疾患で、小児の急性腎不全のうち最も多い原因とされています。

その原因は、腸管出血性大腸菌による腸炎が多く、下痢を伴うことからD(+)HUSと表現されることもあります。腸管出血性大腸菌感染によるHUS(D(+)HUSのことが多い)は、そのほとんど(90%)が1.貧血に対する補助(輸血が必要ならば行う)、2.腎機能障害に対する補助。つまり、体液量の管理、電解質の管理を行い、必要ならば透析を行う。ことで自然に軽快していくことが多いとされています。

以前より、血漿交換という治療法がHUSの治療法として知られていますが、D(+)HUSでは「効果的である」という証左に乏しく、腎機能障害の進行した児に施行する際には透析等の体液量の管理が必要となるため、現在では積極的に用いることはなくなりつつあります。腸管出血性大腸菌感染以外の原因によると思われるD(-)HUSでは、血漿輸注や血漿交換が効果的である群があるとされています。抗血小板剤やガンマグロブリンの効果も評価されましたが、どれも著効するものではなさそうです。

しかし、病気の過程で、脳症を起こしたものについては著しく予後不良で、数十%の死亡率であるとされています。また、合併症として怖いのが、突然の呼吸障害と腸管の穿孔で、これも著しく予後が不良となります。これらの原因ははっきりとはわかっていませんが、血管内に血栓が形成され血液の循環が止まるのが原因では?とする先生もおられます。

参照した記事の患者さんは、本当に残念なことながら、脳症などの致死的となる合併症に見舞われたのだと思います。今後、検証が進み、HUSの予防と脳症についても救命につながるような治療法が開発されることを望みます。

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コメント

O157は苦い思い出があります。堺の集団発生のほんの数ヶ月前に、O157腸炎の入院症例を担当したのです。HUSには進行しかけましたが、幸い透析まで至らず軽快し、めでたし、めでたしの結果にはなりました。

ところがその後の堺の騒ぎの影響で、O157症例は急に注目されて研究されました。私の症例も研究対象として資料や治療経過の情報を提供したのですが、ここで一つの問題が発生しました。

もちろん堺の騒ぎの前でしたから、下痢治療に止痢剤をたっぷり投与していました。ロペラミドまで投与していましたから、それはもう何回も「なぜロペミンを投与したのですか?」の質問が繰り返される羽目になりました。

堺の騒ぎの後に感染性腸炎には止痢剤は好ましくないとの常識が出来ましたが、それ以前はとくに常識化していたとは思えないのです。

どうにも時期が悪かったみたいで、常識化する直前にロペミンを投与したおかげで、「なぜ」が繰り返されるのには閉口しました。

「あんただって、あの時期に受け持ったら、ロペミンやらなかったと言えるのか」との反問を押し殺しつつ、研究会までこの症例を発表させられ、「なぜ」の質問の嵐に耐えた日を思い出します。

投稿: Yosyan | 2006年7月19日 (水) 16時03分

こんばんは
Yosyan先生

コメントありがとうございました。
辛い思い出ですね...ロペミンは今でこそ使いませんが、乳児の遷延性下痢などに、それはもう特効薬のように効いていました。

堺の事件の前には、ちょっとした教科書的な書物にもロペミンの使用量が載っていたと思います。状況が変わり、それが悪かったとなると、みんな手の平を返したように、攻撃対象とするのですね...

私も同じ状況ならば使っていたと思います。

投稿: befu | 2006年7月19日 (水) 21時28分

そうそうあの時期は情報が錯綜してまして、FOM投与の是非も一時否定的な見解が流れ、当然投与していた私は非難の対象になりかけたことがあります。

FOMについては二転三転して投与する方が良いとの結論に落ち着き、非難はやみましたが、ああいう旬のものの渦中に放り込まれると、毀誉褒貶が短期間にクルクル変わるので怖ろしい経験だったと思います。

投稿: Yosyan | 2006年7月20日 (木) 09時02分

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