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2006年7月20日 (木)

恐ろしい手技

2006年7月20日 雨 雷を伴って激しく降る
豪雨の被害は更に拡大しています。現時点で14人の死亡が確認され、いまだ10人の方の行方がわかりません。亡くなられた方の御冥福を祈ります。

さて、残念な記事です。まずは、19歳という若さで、この世を去らなければならなかった、この専門学校生の患者さんに深甚なる哀悼の意を表します。

治療ミスで専門学校生死亡、東海大病院医師を書類送検(読売新聞)

『神奈川県警伊勢原署は19日、治療ミスで入院患者を死亡させたとして、東海大学医学部付属病院(伊勢原市下糟屋)の耳鼻咽喉(いんこう)科男性医師(30)を業務上過失致死の疑いで横浜地検に書類送検した。

 調べによると、医師は2002年5月11日、交通事故で入院していた同県平塚市の男子専門学校生(当時19歳)の気管にできた肉芽を取り除く際、薬品をつけた棒で患部を焼き切ろうとして、棒の先端部(約2センチ)を気管内に落とし、循環不全と心不全で、同月28日に死亡させた疑い。

 病院からの通報で、同署が治療行為と死亡の因果関係を調べていた。病院と遺族は同年8月に和解しているという。』

気道の手術や処置は非常に難度の高いものが多く、危険がつきまといます。小児では異物の誤嚥で気管支に異物がつまった場合に取り除くことが必要ですが、これは非常に難度が高く、ヒヤヒヤしながら行うものです。過去には、取り除く途中で気管に異物が落ちて閉塞し、窒息にて術中に亡くなってしまうような事故も起こっている様です。

記事には詳細が記されていませんので、これだけの情報ですべてを評価することはできませんが...「気管にできた肉芽を取り除く際」という記述から、何らかの原因で呼吸に影響を与えるほどの肉芽が気管にできて、それを取り除いて呼吸を楽にさせることを目的に手術したのではないか?と考えられます。(また、手術を行わない場合はそれにより、呼吸が障害されて死亡した可能性もあると思われます。)よって、手術の適応自体は問題なかったのではないか?と憶測します。

しかし、手術の結果は目標と反したものとなってしまいました。「棒の先端部(約2センチ)を気管内に落とし」というあってはならない出来事が起こり、(全ての情報がないのではっきりとはいえませんが)窒息した可能性があると思います。それが、遠因となって術後17日で残念ながら亡くなられた。ということかもしれないと考えます。

その後は、「病院と遺族は同年8月に和解しているという。」との記述から病院、そして執刀医は家族に対して誠意ある対応をしていたのではないか?と思われます。しかし、ここになり医師の刑事責任を追及する、書類送検になったとのことです。背景に何があるのか?わかりませんが、ここまでする必要があるのでしょうか?

気管に肉芽ができて場合によると肉芽により窒息したかもしれない患者さんに、それを取り除くために必要な手術を行って、残念なことに薬液のついた棒の先端を落としてしまい窒息させてしまった。それが遠因となり、患者さんは不幸にも亡くなってしまった。主治医は「何とかしてあげたい」と思い、この困難で恐ろしい手術にのぞんだのではないでしょうか?民事上の責任は生じると思いますが....業務上過失致死という罪状はふさわしくないような気がします。

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コメント

 医療事故・過誤を刑事事件として扱うことがいかに問題か、国民はいつになったら気がついてくれるのでしょうか。

 大体、刑事事件では被告は自分に不利な発言をしなくていいはずでは。
 それと真実を追究し再発防止に役立てるというのは全く両立しないものというのは考えなくてもわかることです。

 たまたま、東京女子医大事件の関係者のブログをみました。

http://kazu-dai.cocolog-nifty.com/blog/

 冤罪で社会的に抹殺されてしまっている一人の医師の姿に涙がでました。こんなにも簡単に熱意溢れる前途有望なこのあと何人も救えたはずの医師を失っていいのでしょうか。大きな社会的な損失ではないかと思います。

 昨今の事件は、臨床医にとって人事ではありません。

 司法関係者、マスコミは患者さんがかわいそうではないかとの感情論のみで動き、それが防衛医療→医療崩壊をきたしていることに全く危機感が無い。恐ろしいことです。

 

投稿: 医療って | 2006年7月21日 (金) 15時47分

東海大付属病院医師が医療ミス 男性死亡、書類送検
2006年07月20日02時10分朝日新聞
 神奈川県警伊勢原署は19日、東海大学医学部付属病院(伊勢原市下糟屋)耳鼻咽喉(いんこう)科の男性医師(30)を業務上過失致死容疑で横浜地検に書類送検した。
 調べでは、男性医師は02年5月、交通事故の被害に遭って病院に運ばれた専門学校生の男性(当時19)を治療中、医療器具の先端部分約2センチを過って気管に落とし、心不全で死亡させた疑い。器具が欠損していたのを事前に確認しなかったという。

器具の整備って医者がやるもんなの?看護婦がやるもんだと思ってたけど。

投稿: 非医療関係者 | 2006年7月21日 (金) 21時38分

こんばんは
医療って 先生

コメントありがとうございました。

遺族との間に和解が成立している事案で、今になって書類送検されるというのは....恐ろしいことです。
ミスを認め、今後の再発を抑制したら、今度は警察と検察が動く。これでは、再発抑制の努力をしたくなくなりますね....そして保身のための防衛医療に突き進んでいく....

崩壊への道筋です。

投稿: befu | 2006年7月21日 (金) 22時28分

こんばんは
非医療関係者 さま

コメントありがとうございました。

「器具の整備って医者がやるもんなの?看護婦がやるもんだと思ってたけど。」
日常の整備は看護師さんやその他のco-medical staffの方が行うかもしれません。しかし、こと重要な手技に使用するもの等は、直前に自分で確かめることをすると思いますが.....よほど緊急でない限り....

投稿: befu | 2006年7月21日 (金) 22時31分

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