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2006年7月14日 (金)

川崎病_治療

2006年7月14日 晴れ時々雷を伴う激しい雨
昨日の記事でも書きましたが、いろいろな感染症が蔓延しています。外来患者さんの数は徐々に増加中...。

しばらく、休んでいた「川崎病」ですが、今日は治療についてまとめてみます。

Nelson textbook of Pediatrics 16th ed. P.726

Treatment. Patients with acute Kawasaki disease should be treated with intravenous immune globuline (IVIG) and high-dose aspirin as soon as possible after diagnosis (Table 166-2). The mechanism of action of IVIG in Kawasaki disease is unknown, but treatment results in rapid defervescence and resolution of clinical signs of illness in most patients.

(訳)治療:川崎病急性期の患児は診断がつき次第、できるだけ速やかに免疫グロブリン静注(注1)と高用量のアスピリン(注2)による治療を受けるべきである。(表166−2)川崎病における免疫グロブリン静注療法の作用機序についてはわかっていないが、ほとんどの患児で素早い解熱と臨床症状の消退をもたらす。

(注1)免疫グロブリン静注:免疫グロブリンは血液中の血清という部分にある蛋白の一つで、外界から体に入ってきた病原体にくっついて免疫反応を起こし病原体を溶かしたりして駆逐するもの。ここで指すのは人間の血液から、免疫グロブリンのみを精製して薬としたもので、いわゆる血液製剤の一つ。表166-2で示されているのは、「免疫グロブリンを体重1kgあたり2gの量で10〜12時間かけて点滴する」という治療法。
(注2)高用量アスピリン:アスピリンは鎮痛解熱剤として古くから使われている薬剤。作用機序から、低用量では血小板の作用を低下させ、高用量では炎症を抑える作用が強く出る。表166-2では、川崎病急性期で使用する量として80〜100mg/kg/日を示されている。

IVIG reduces the prevalence of coronary disease from 20-25% in children with aspirin alone to 2-4% in those treated with IVIG and aspirin within the 1st 10 days of illness.

(訳)免疫グロブリン静注療法は冠状動脈病変の発生率を低下させる。10病日までで検討すると、アスピリン単独で治療した場合20から25%の患児に冠状動脈病変がみられたのに対し、アスピリンに免疫グロブリンを併用した場合は2から4%にしか冠状動脈病変がみられなかった。

Aspirin is decreased from anti-inflammatory to antithrombotic doses (3-5mg/kg/24 hr as a single dose) on the 14th illness day or when a patient has been afebrile for at least 3-4 days. Aspirin is continued for its antithrombotic effect until 6-8wk after onset, when the ESR has normalized, in patients who have not developed abnormalities detected by echocardiography.

(訳)アスピリンは14病日の時点か、3−4日無熱の状態が続いた時点で抗炎症作用の量から抗血小板作用の量(体重1kgあたり3から5mg/日)へ減量される。そして、その抗血小板作用を期待して心臓超音波で冠状動脈の異常が進行していないされた患児では、発症後6から8週まで使用される。

Occasional patients do not respond to an initial IVIG infusion or have only a partial response. Strong consideration should be given to re-treatment of these patients with an additional infusion of IVIG, although the effecacy of such treatment remains unproven. The use of corticosteroids in Kawasaki disease remains controversial and is not generally recommended at this time.

(訳)稀に、初回の免疫グロブリン静注で効果がない、あるいは効果が限定的であるといった患児がいる。そのような患児においては、追加の免疫グロブリン静注を強く考慮されるが、その効果についてはわかっていない。川崎病における副腎皮質ステロイドの使用については論争のある部分であり、現時点では一般的に勧められるものではない。

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川崎病の治療についてまとめると....
1.作用機序はわからないが、ほとんどの患児で免疫グロブリン静注の効果があり、冠状動脈病変の出現も抑制する。
2.同時に急性期ではアスピリンを高用量で用いて抗炎症作用を期待する。また、解熱後は低用量で発症後6から8週まで使用する。(冠状動脈病変を合併しない場合)
3.初回の免疫グロブリン静注で効果がない場合は、追加の免疫グロブリン静注を考慮する。
4.副腎皮質ステロイドは現時点では広く勧められるものではない。
ということになります。

これから先は、補足ですが....
免疫グロブリン静注(日本ではガンマグロブリンと呼ぶ方が一般的です。)を受けた川崎病の患児のうち約15%が不応例(つまり効果がない、あるいは効果が限定的)であるとされています。それらの患児に対しては、ガンマグロブリンの追加投与や抗炎症作用のあるウリナスタチン(商品名:ミラクリッド)という薬を使うことが多い様です。発熱が長期間持続すると有意に冠状動脈病変の合併割合が増加することがわかっており、何とかして病勢を抑える様、治療します。
また、ステロイドの投与については、これまで「冠状動脈病変の合併割合を増加させる」とされ、川崎病には「禁忌」とされてきましたが、ガンマグロブリンとステロイドパルス療法(注3)の併用などで治療効果がでる可能性を指摘した文献もあり、今後の検討が待たれるところです。
アスピリンについては、小児領域では川崎病や若年性リウマチなどの病気以外ではほとんど使用されなくなっています。それは、アスピリンとインフルエンザや水痘の罹患の組み合わせで「有意にReye症候群という脳症をひき起こす率が高くなる」という結果がでており、アスピリンとReye症候群との関連が考えられているからです。川崎病で冠状動脈に病変をのこした場合、アスピリンも長期投与となりますが、この場合もインフルエンザや水痘に対して慎重な対応が求められます。

(注3)ステロイドパルス療法:メチルプレドニゾロンという副作用の比較的少ないステロイド薬を用いて、限界に近い大量のステロイド薬を1日おきに点滴する治療法。1日おきに使用することにより、副腎に与える影響を小さくして治療できる。

とりあえず、川崎病に関しては本日の記事でおしまいにしたいと思います。

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