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2006年6月27日 (火)

遷延性黄疸

2006年6月27日 晴れのち曇り
朝のうちはきれいに晴れて「梅雨の晴れ間」そのものでした...気持ちいい午前中でした。

さて、拙ブログ:新生児黄疸のはなしに生後1ヶ月の赤ちゃんの黄疸について御質問が寄せられました。そこで、今日は遷延性黄疸について教科書に載っている範囲でまとめてみようと思います。

参考にしたのは、ネルソン小児科学17版(和訳版)です。うちの病院の小児科外来に買っていただきました。看護師さんも見ていただくため、「和訳版を購入」です。

さて、「遷延性黄疸」の定義ですが、ネルソンのp.607に以下の記述があります。
『正期産児の間接型ビリルビン値は、生後10〜14日までに、成人値(1mg/dl)にまで低下する。』のが普通でそれを超えて黄疸がみられるのは異常となります。(因に、結膜(しろまなこ)が黄染するのはだいたい5mg/dlぐらいからとされています。)

そして、おさらいとなりますが...黄疸のもとのビリルビンはどうして生じてくるかは拙ブログ:新生児黄疸のはなしに示した通りで...
『このビリルビンという物質は、赤血球の中に含まれている、酸素を運ぶために重要なヘモグロビンという物質が分解され、更にヘムという物質が分解されてくる時に生じます。通常、赤血球の寿命は120日とされています。血液の中の赤血球の量が一定だとすると、だいたい1日に120分の1程度が壊れ、ビリルビンとなっていきますが、それは肝臓で適切に処理され(これを、「代謝する」といいます)黄疸にはなりません。
かたや、新生児ではお母さんのおなかの中では、このヘモグロビンが胎児型のタイプで成人型のタイプとは違うのです。よって、産まれてからはその胎児型のヘモグロビンを成人型に変化させていかないと外界には適応できないため、急速に赤血球を壊し、新たな赤血球を作っていきます。ですから、ビリルビンが生成されて新生児には黄疸がつきものということになります。』

更に、肝臓の中では血液の中に生じたビリルビンをグルクロン酸抱合という化学反応を使って、抱合型ビリルビンという比較的毒性の少ないそして水に溶けやすいものに変えていきます。この、抱合型ビリルビンはほぼ「直接型ビリルビン」といわれるものと同じ意味と考えてください。また、抱合する前のビリルビンは「間接型ビリルビン」というものとほぼ同じ意味と考えてください。

ネルソンの中では、引き続いて次の記述があります。
『2週間を超える遷延性間接型ビリルビン血症がある場合、溶血、遺伝性グルクロン酸転移酵素欠損症、母乳性黄疸、甲状腺機能低下症、腸閉塞の可能性が考えられる。』
溶血というのは、赤血球が異常に速いスピードで壊れる事です。これがあると、ヘム鉄が大量に出ますので代謝の結果、間接型ビリルビンが増加します。あとは、グルクロン酸抱合を行うところが異常となり、抱合ができないために間接型ビリルビンが貯まってしまう、あるいは一旦抱合された後の直接型ビリルビンが別の酵素でもとの間接型にもどってしまうというような機序で発生します。

そして、御質問の患者さんは恐らく、以下の記述にある「母乳黄疸」であるのでは?と思われますが、精査は必要です。
『母乳哺育の正期産児の推定2%において、非抱合型ビリルビンの顕著な上昇(母乳性黄疸)が生後7日目以後に生じ、2〜3週間で最大10〜30mg/dlまで上昇する。母乳哺育を続けると、高ビリルビン血症は徐々に軽快し、軽度のまま3〜10週間推移することがある。授乳を中止すると血清ビリルビンは急速に低下し、数日以内で正常値に達するのが普通である。母乳哺育を1〜2日中断して人工栄養に切り替えると血清ビリルビンが急速に低下するので、その後はビリルビン値が以前の高い値に戻ることなく、授乳を再開できる。もし、適応になったならば、光線療法が有効である。これらの乳児には、その他の疾病の徴候はないが、核黄疸の報告もある。』

まとめますと、遷延性黄疸を示す乳児には溶血やその他の原因があるかもしれない。母乳黄疸の場合は、余り処置を必要としないが、場合によっては光線療法の適応となる。ごく稀に、母乳黄疸から核黄疸を発症することがある。ということであると思います。

また、ここでは直接ビリルビンの上昇の場合は触れませんでしたが、直接型ビリルビンの上昇があって黄疸を示す場合は胆道閉鎖症などの「緊急事態」のことがあり、これは要注意です。

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コメント

ご丁寧な教授、迅速なご返答をいただけてとてもありがたいです。
どうもありがとうございました。
一度受診することをすすめます。
日々?がたくさんでてきます。
また相談にきてもいいでしょうか。

このページはしっかりプリントアウトして勉強させてもらいました。
これからもよろしくお願いします。

投稿: hiroro | 2006年6月28日 (水) 13時17分

こんばんは
hiroroさま

こちらこそ....
参考にしていただいてありがとうございました。

投稿: befu | 2006年6月28日 (水) 22時16分

こんにちは。同様の質問をさせてください。
現在生後40日の子がいます。いまだに黄疸が強くて心配しています。体重は1日40gづつ増えて順調とのこと。母乳で育てていますが、こんなに黄疸が強く現れたのは、初めてです。(3人目)白目はクリーム色で、皮膚は郵便の封筒のような黄色です。血液の検査をしてもらいましたが、あいまいな説明で不安になっています。血液検査の結果は、総TBが9.0、直接ビリルビンが1.2とのこと。特に治療はいらないのでしょうか。

投稿: miwa | 2007年9月10日 (月) 09時41分

こんばんは
miwaさま

コメントありがとうございました。また、返事が遅くなり申し訳ありません。

御質問の生後40日の黄疸の児ですが...
>血液検査の結果は、総TBが9.0、直接ビリルビンが1.2とのこと。特に治療はいらないのでしょうか。

この値であれば、白色便などがみられなければ...様子を観察するだけでよろしいかと思います。母乳で40g/日の体重増加ですので....成長も良すぎるぐらいです。恐らく、母乳黄疸でよろしいのでは?
通常は経過を観察するだけとなります。

投稿: 管理人 | 2007年9月12日 (水) 23時22分

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