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2006年6月

2006年6月30日 (金)

貴重なコメントをいただきました。

2006年6月24日 曇りのち晴れ
明日が地域の輪番のため、今日はフリーでした。

拙ブログの記事:それぞれの病院の役割に以下のような貴重なコメントをいただきました。書き込まれた方は、ハンドルネームやその内容から類推しますと非常に骨のある立派な小児科医であると思われます。現在の小児医療の問題に関して鋭く指摘されており、拙ブログを読まれた方にも一緒に考えていただきたく、コメントをここにコピーさせていただきました。

『Yosyan先生
兵庫県立こども病院は本当に最低の小児病院でしたね。阪神大震災で受診患者がまったくいなかったのみならず、すぐそばで起きた明石花火大会事故の心肺停止小児患者を一切受け入れなかったのですから。小児病院というのは三次医療をやるぞ、と言いながら実は自分の診たい患者を診ているだけなんですよ。
がんセンターと小児病院を同じレベルで扱うのは間違いです。がんセンターはがん診療に特化している病院で、もちろん小児もいますよね。小児病院は小児診療に特化しているだけで既に特別な病院なのです。決して「小児の難病」のみに特化すべきではないと思います。小児病院と名乗りながら子どもを分け隔てなく受け入れるわけでもなく、特殊中の特殊病院として存在し、それを周りの住民のみならず小児科医も受け入れている・・・笑止千万ですね。』

『behubehu先生
小児病院はすべての子どもに開かれるべきだと思いませんか?あなたのような小児科医が大多数を占めているために、日本の小児病院が腐ったままなのです。兵庫も、千葉も、私が知っている小児病院は、本当にお寒い小児病院です。自分の専門分野の診たい患者だけ一生懸命で、救急患者を毛嫌いする、「何のための小児病院なの?」と問いかけたくなる病院でしたよ。表面上は最後の砦を気取ってはいますがね。』

私は実は「小児病院」というところで働いた事がありません。そして、私のいる自治体には、公的な小児病院はなく、中央の病院の小児科が重症の患者さんを一手に引き受けてくれています。私はそこで働いた事はあるのですが、重症児を持つとほとんど1週間家に帰れないなどというのが当たり前の状態でした。その当時に比較すると、若干人員は増えており、少しゆとりができてきたものと思いますが....それでも、病院の小児科は青色吐息でやっているのが実情であると感じています。

日本の医療はfree accessですので、ちょっとした感冒などの発熱でも、ナショナルセンターといわれる国立の基幹病院に受診する事ができます。しかし、欧米ではそうでないところが多い様です。北米では、予約のない患者さんは基本的にERで診ることになっているようですが、そうするとトリアージの過程で軽症とみなされた患者さんはどんどん順番が下がり数時間待ちということもざらであるとも聞いています。

さて、小児病院ですべての子どもに開かれるべきであるという思想はすばらしいものと思います。私も、現在の小児病院が北米型のERの機能を備え(単に機能といいますが、人員や予算も必要以上に潤沢である必要があります)ており、受診される患者さんも「軽症ならば数時間待つ事もあります」という前提を理解していただければ、是非そうするべきであるとも考えています。

しかし、現状は「小児科医さま」が御指摘のごとく、『本当にお寒い小児病院です』の状況ですので、いきなり1次から3次まで小児病院でまかないなさいということは困難なことではないかと思います。

ただ、「小児科医さま」が仰る...
<阪神大震災で受診患者がまったくいなかったのみならず、すぐそばで起きた明石花火大会事故の心肺停止小児患者を一切受け入れなかったのですから。
というのは、実情を知りませんのでどういった事情であったのか?コメントする事はできませんが、小児病院側が納得できる理由なく受け入れを拒んだとすれば悲しいことであろうと感じます。

この記事はしばらくの間、拙ブログのトップに置いておこうと思っています。忌憚ない御意見をいただければ幸いです。

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離島医療

離島医療をはじめます:診療というブログを見つけました。 このブログの管理人さんは循環器の集中医療をされていた方ですが、都会から沖縄の離島の病院に就職された様です。地域では、専門領域のみではやっていけない、小児科も診るし、ちょっとした小外科も... 今の自分がやっていることにダブります。 がんばって!とエールを送ります。

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2006年6月29日 (木)

もう少し...

2006年6月29日 晴れのち雨
5年分の疾病分類、明日が締め切りですが...4年分は何とかできそうかな?と思います...
ここ数日は睡眠時間3時間程度...ちょっとキツくなってきました。

さて、今後の予定として...取り上げたいと思っているのは
「川崎病」です。かなり大物ですので...どうなることやら...(笑)

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2006年6月28日 (水)

小児科医の不足

2006年6月28日 晴れのち曇り
5年分の疾病分類でテンテコマイ状態です。トホホ...

さて、このような記事が...格差の現場:/6止 足りない 子供を守る医療さえ /宮崎(毎日新聞)

『西諸県地域2市2町(人口約8万4500人)で唯一、小児科の救急・入院に対応していた小林市立市民病院。同科の常勤医2人のうち1人は昨年、所属先の宮崎大医学部が派遣をやめた。もう1人も今年3月、開業のため退職した。以降、休診が続く。』
九州の小児科医局は医局員確保が難しいところが多いのではないか?と思っています。いままで、派遣できていたところを、派遣中止しなければ「回せない」という状況であると考えます。

『西諸県のように全国の地方で、小児科などの医師不足が深刻化している。2年前に導入された国の新臨床研修制度により新人医師の研修が義務づけられ、研修先が自由に選べるようになった。研修医たちは高収入で経験も積める都会の大病院を目指し、地方離れが進んだとされる。
 小林市の6月議会一般質問。九州各地の大学に医師派遣を要請した堀泰一郎市長は「異口同音に『小児科医自体が減っているから、ない袖は振れない』と断られた」と苦悩を明かした。』
新臨床研修制度は研修の効率はあがるものではないか?と思っていますが...医師の適正分布(地域まで幅広く医師が分布する)にはいささか悪影響があるようです。卒業したての若い医師たちは、症例数が多く充分に研修できる病院へと流れます。それは、給料の問題もあるとは思いますが、多くの方は「良い研修」を求めて都会の症例数の多い市中病院へ行くのだと思います。
「小児科医の数が減っているか?」ははっきりとした見解を持っていませんが、少なくとも医局に入り、病院勤務医として地方の病院を回る小児科医は減ってきている印象を受けます。「ない袖を振れない」医局は多いのではないか?と思います。

『「病院まで往復2時間もかかると『付き添いの合間に、ちょっと洗濯に自宅に帰る』ということもできない。母親が子供1人に付き切りになる」と母親の負担増を懸念する。』
厚生労働省は、国会の答弁でも述べていますが...「人口5万に一つの医療施設を維持できるとは言えなくなる。」としており、今後の医療施設のあり方の流れは「集約化ありき」です。産科の問題も大きいですが、小児科も今後、厳しい集約化を行わなければ、その地域全体の小児医療が立ち行かなくなってしまうということが起こるのかもしれません。

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2006年6月27日 (火)

遷延性黄疸

2006年6月27日 晴れのち曇り
朝のうちはきれいに晴れて「梅雨の晴れ間」そのものでした...気持ちいい午前中でした。

さて、拙ブログ:新生児黄疸のはなしに生後1ヶ月の赤ちゃんの黄疸について御質問が寄せられました。そこで、今日は遷延性黄疸について教科書に載っている範囲でまとめてみようと思います。

参考にしたのは、ネルソン小児科学17版(和訳版)です。うちの病院の小児科外来に買っていただきました。看護師さんも見ていただくため、「和訳版を購入」です。

さて、「遷延性黄疸」の定義ですが、ネルソンのp.607に以下の記述があります。
『正期産児の間接型ビリルビン値は、生後10〜14日までに、成人値(1mg/dl)にまで低下する。』のが普通でそれを超えて黄疸がみられるのは異常となります。(因に、結膜(しろまなこ)が黄染するのはだいたい5mg/dlぐらいからとされています。)

そして、おさらいとなりますが...黄疸のもとのビリルビンはどうして生じてくるかは拙ブログ:新生児黄疸のはなしに示した通りで...
『このビリルビンという物質は、赤血球の中に含まれている、酸素を運ぶために重要なヘモグロビンという物質が分解され、更にヘムという物質が分解されてくる時に生じます。通常、赤血球の寿命は120日とされています。血液の中の赤血球の量が一定だとすると、だいたい1日に120分の1程度が壊れ、ビリルビンとなっていきますが、それは肝臓で適切に処理され(これを、「代謝する」といいます)黄疸にはなりません。
かたや、新生児ではお母さんのおなかの中では、このヘモグロビンが胎児型のタイプで成人型のタイプとは違うのです。よって、産まれてからはその胎児型のヘモグロビンを成人型に変化させていかないと外界には適応できないため、急速に赤血球を壊し、新たな赤血球を作っていきます。ですから、ビリルビンが生成されて新生児には黄疸がつきものということになります。』

更に、肝臓の中では血液の中に生じたビリルビンをグルクロン酸抱合という化学反応を使って、抱合型ビリルビンという比較的毒性の少ないそして水に溶けやすいものに変えていきます。この、抱合型ビリルビンはほぼ「直接型ビリルビン」といわれるものと同じ意味と考えてください。また、抱合する前のビリルビンは「間接型ビリルビン」というものとほぼ同じ意味と考えてください。

ネルソンの中では、引き続いて次の記述があります。
『2週間を超える遷延性間接型ビリルビン血症がある場合、溶血、遺伝性グルクロン酸転移酵素欠損症、母乳性黄疸、甲状腺機能低下症、腸閉塞の可能性が考えられる。』
溶血というのは、赤血球が異常に速いスピードで壊れる事です。これがあると、ヘム鉄が大量に出ますので代謝の結果、間接型ビリルビンが増加します。あとは、グルクロン酸抱合を行うところが異常となり、抱合ができないために間接型ビリルビンが貯まってしまう、あるいは一旦抱合された後の直接型ビリルビンが別の酵素でもとの間接型にもどってしまうというような機序で発生します。

そして、御質問の患者さんは恐らく、以下の記述にある「母乳黄疸」であるのでは?と思われますが、精査は必要です。
『母乳哺育の正期産児の推定2%において、非抱合型ビリルビンの顕著な上昇(母乳性黄疸)が生後7日目以後に生じ、2〜3週間で最大10〜30mg/dlまで上昇する。母乳哺育を続けると、高ビリルビン血症は徐々に軽快し、軽度のまま3〜10週間推移することがある。授乳を中止すると血清ビリルビンは急速に低下し、数日以内で正常値に達するのが普通である。母乳哺育を1〜2日中断して人工栄養に切り替えると血清ビリルビンが急速に低下するので、その後はビリルビン値が以前の高い値に戻ることなく、授乳を再開できる。もし、適応になったならば、光線療法が有効である。これらの乳児には、その他の疾病の徴候はないが、核黄疸の報告もある。』

まとめますと、遷延性黄疸を示す乳児には溶血やその他の原因があるかもしれない。母乳黄疸の場合は、余り処置を必要としないが、場合によっては光線療法の適応となる。ごく稀に、母乳黄疸から核黄疸を発症することがある。ということであると思います。

また、ここでは直接ビリルビンの上昇の場合は触れませんでしたが、直接型ビリルビンの上昇があって黄疸を示す場合は胆道閉鎖症などの「緊急事態」のことがあり、これは要注意です。

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2006年6月26日 (月)

少し忙しくなってきました。

2006年6月26日 雷雨

「6月30日までに過去5年間の入院患者さんの疾病分類を提出してください。」といわれています。病院経営上、かなり重要なデータですので、何とか頑張って提出しようと思っていますが....

コンピュータに入っているサマリーの病名がICD-10(注1)という国際疾患分類によって分類されたものでないことがちょっとコトをややこしくしています。

でも、データベースはファイルメーカーで作っていますので、その可塑性を生かして、「何とか乗り切ろう」などと考えています...

しばらくの間、コメントのレスが遅延する事があるかもしれませんが....何卒ご容赦を...

(注1)ICD-10: international classification of disease and related health problem, 10th revision 国際疾病及び関連する健康問題分類 第10版: WHOが作っていっている病気の国際分類。当初は死因分類であったが、現在は生きている方の疾病も分類できるようになってきている。おおよそ、10年に1回の割で改訂版が出る事になっており、初版は約100年前となる。この分類を用いる事により、国際的にその国の保健状態を比較する事ができるなど、有用性が高い分類方法である。

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2006年6月25日 (日)

医療現場の人員

2006年6月25日 雨時々雷雨
今日は、地域の輪番でした。私のいる病院も他にもれず医師不足で、日直当直もギリギリ回しているような状態です。そして、小児科の輪番の日は、小児科医が全館の日直をするという事になっています。

朝から、高齢者で「嘔吐下痢」との触れ込みで救急搬入がありましたが、ついた途端に心肺停止となり、心電図モニターにて心室細動を確認し電気的除細動にて心拍を取り戻しました。ついで呼吸が弱いため気管内挿管し、頭部CTなどが終わって病棟へ。循環器内科の先生に出勤していただいて、以後、お願いしました。(感謝!)

さて、こんな記事が...群大病院:「象牙の塔ではない」 報道関係者に院内見学会 /群馬(毎日新聞)

この中で、『見学会後、森下院長は「日本の医療現場は欧米に比べ15〜20%の人員で担われている。これでは医療事故はなくならない」と、実情を説明。「この厳しい状態を少しでも理解してもらいたい」と訴えた。』との記述がありますが...これはその通りかもしれません...

私の先輩で、現在アメリカのフィラデルフィアで臨床医をされている方がいます。この方の講演をうちの病院でしていただいたことがあるのですが...その時に「病院職員の人数を1ベッドあたりで比較すると恐らく5倍程度のひらきがある。」とのことをいわれていました。この記事の数字もだいたい、その程度をいっています。厚生労働省はこの数字をどうとらえるのでしょうか??

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2006年6月23日 (金)

遺族の感情

2006年6月23日 土砂降り
こんな記事が目に入りました。

県立安芸病院の医療死亡事故:原因は投薬ミス 県議会委で病院局答弁 /高知(毎日新聞)

『県立安芸病院(安芸市、森田英雄院長)で医療ミスが発生し、患者が死亡した問題で、県病院局は22日、県議会文化厚生委(樋口秀洋委員長)の答弁で、死亡事故は昨年初めに起き、原因は投薬ミスだったことを明らかにした。しかし、遺族からの強い要望があるとして、これまで通り事故の詳細は公表しなかった。
 同局によると、担当医師が薬剤投与を指示する際、パソコンに誤った薬剤名を入力。看護師も誤りに気付かず、薬剤をそのまま投与した。その後、患者の容体が急変し、死亡した。この担当医師は処分などは受けておらず、現在、県外の病院で勤務中という。
 この日の委員会では、委員から、「せめて事故の事実だけは公表すべきだった」「個人が特定されない形での公表方法もあったのでは」など一切公開してこなかった県の姿勢に批判が集中。これに対し、田中譲局長は「今後、同じような事故が発生した場合、速やかに委員会に報告する。報告の仕方については相談したい」と応えた。
 また、遺族の同意が得られない場合の対応を踏まえ、昨年4月に制定した「県立病院医療事故公表基準」の見直しを検討する考えを示した。』

遺族が希望しなければ公開する必要はないと思うし、個人情報保護の面でも、むやみに情報の公開を行うと、法的に罰せられる場合もあると思います。マスコミはここぞとばかりの書き方ですが....ホントにそうでしょうか??
この報道においてももマスコミの裏の意図を感じざるを得ません。

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2006年6月22日 (木)

Waterhouse-Friderichsen症候群

2006年6月22日 曇りのち雨
じめじめしています。ヘルパンギーナにアデノウィルス感染症、溶連菌感染症と感染症のオンパレードです。

今日は以前よりまとめておきたかったWaterhouse-Friderichsen症候群(ウォーターハウスフリードリッヒセン症候群)についてです。有名な病気ですが、教科書では記述が余りありません。

(Krugman's Infectious diseases of children : p.377)
The rapid development of multiple hemorrhagic eruptions in association with a shocklike state is almost pathognomonic of meningococcemia (Waterhouse-Friderichsen syndrome).
ショック様の状態を伴い、急激に出血斑が多発する状態は多くは髄膜炎菌血症が原因である。(ウォーターハウスフリドリッヒセン症候群)

(Nelson Textbook of Pediatrics 16th ed. : p.753)
The onset of acute meningitis has two predominant patterns. The more dramatic and, fortunately, less common presentation is sudden onset with rapidly progressive manufestations of shock, purpura, disseminated intravascular coagulation (DIC) and reduced levels of consciousness frequently resulting in death within 24 hr.
急性の髄膜炎の発症には2つの優勢なパターンがある。より劇的で、幸いなことに、より稀なパターンは急速に進行するショック症状、紫斑、播種性血管内凝固(DIC)と意識レベルの低下を伴って突然発症するもので、多くは24時間以内に死亡する。

(Nelson Textbook of Pediatrics 16th ed. : p.1727)
Another cause of hemorrhage into the adrenal glands is the Waterhouse-Friderichsen syndrome, the characteristic state of shock resulting from meningococcemia.
副腎内に出血するもう一つの原因はウォーターハウスフリドリッヒセン症候群で、髄膜炎菌血症により生じたショック状態の特徴的な状態である。

ウォーターハウスフリードリッヒセン症候群は非常に稀ですが、恐ろしい病気です。髄膜炎菌: Neisseria meningitidis, meningococcusの感染により化膿性髄膜炎を発症し、それにショック状態と紫斑、副腎出血、播種性血管内凝固を併発し、極めて速い進行を示す状態です。多くは救命できず、かつ発症を予想できません。

当然、一般の方にはこのような病気があることさえも知られていませんので...急激な経過でお子様が亡くなられた後、医療者側と遺族側との間でトラブルに発展する事があります。しかし、この病気の場合は残念ながら現在の医療技術を駆使し最善を尽くしても救う事は難しいでしょう。

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2006年6月21日 (水)

医師の放火未遂

2006年6月21日 曇りのち雨
何故?このようなことが?
知る由もありませんが....このような記事が目にとまりました。

放火未遂で医師逮捕 別の病院にサラダ油まく(共同通信)

『調べでは、青梅市で別の医院を開業している坂井容疑者は今月9日午前1時ごろ、同市内の病院玄関にサラダ油をまき、火を付けようとした疑い。
 110番で駆け付けた青梅署員が現場近くで坂井容疑者を発見、取り押さえた。
 調べに対し、坂井容疑者は「以前、自分の医院に通っていた女性患者がこの病院で治療を受け、容体が悪化しているのに腹が立った」などと供述しているという。』

背景にあることはわかりません。火をつけようとした医院に余程の恨みをもっていたのか?
でも、放火は重罪です。暴力によりものごとのカタを付けようとすると、厳しく罰せられます。

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2006年6月20日 (火)

呼び出し...

2006年6月20日 晴れ
今日はけいれん重積の児がきて、呼び出しでした。ちょっと、更新できなさそうです。

ということで、今後の予定など。

代理ミュンヒハウゼン症候群は一段落させていただき...
Waterhouse-Friedrichsen症候群をまとめてみたいと思います。

あくまで、成書にまとめてある一般的なお話です。

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2006年6月19日 (月)

豪州での医療

2006年6月19日 晴れ
徐々に暑くなってきています。ヘルパンギーナが流行し始めました。

毎日新聞の記事’06記者リポート:オーストラリアの医療を視察 「人間的」な体制充実 /富山を読みました。

『富山市の婦人科医、種部恭子さん(41)ら医療関係者を中心に有志10人が、家庭医(GP)を中心にした質の高い医療システムで知られるオーストラリアの医療事情を、このほど8日間にわたって視察した。』
オーストラリアは恐らくイギリス型の医療形態であると思います。しかし、イギリスでは「鉄の女」サッチャー首相の時に極めて厳しい医療改革を押し進め、現在ではほとんどの医療者が士気を殺いでしまい、いわゆる医療崩壊に近い状態であるといわれています。そして、その状態を憂えて医療費を増額するように動いていますが、一旦壊れた医療システムはなかなか戻らないという状態であると聞いています。「質の高い医療システム」とのことですので、オーストラリアでは幸いなことにイギリスのような医療崩壊は起こっていないとのことなのでしょうか。

『オーストラリアでは、日本のかかりつけ医にあたるGPと、大病院の専門医にきっちりと分業化。大病院にはGPの紹介がなければかかることができず、風邪や骨折で大病院を受診する人はいない。』
日本の医療はfree accessといわれる形態で、高度専門医療をやっているナショナルセンターにも近くの普通感冒の患者さんが受診できます。この功罪はありますが、ある程度の分業化を進める必要はあるものと考えています。

『また日本では軽く見られている「代替医療」も盛ん。アロマテラピー、音楽、アニマル、アート、カラー、はり・きゅうなど、170種類以上といわれ、一行が訪れたオースティン病院では、心臓疾患の集中治療室でアロマテラピーを導入。病気は技術で治すのが基本だが、治らない痛みや心の痛みを取るために、代替医療を積極的に取り入れているのだ。また「回想療法」では、認知症のお年寄りに自分の人生を回想してもらい、本人と介護者が尊厳ある人間同士として向き合う努力がなされている。』
日本でも、音楽療法などについては一定の資格が設けられるなど、代替療法も一部には認められてきているかもしれません。しかし、問題は「治癒する見込みのある悪性疾患に対して、現在の医療を否定して、代替療法を施し、病気が進行して手の施しようがなくなった時点で通常の医療機関に紹介する」というような例が少なからずみられることです。このような施設がみられるかぎり、日本では代替療法、代替医療が本当に認められることは難しいかもしれません。

『日本には、まだ患者側に大病院志向があり、死生観を持たない人も多いので、全部をすぐに取り入れるわけにはいかないけれど、代替医療などできるところから取り入れたい」と話している。』
先述の通り、代替療法は一部では認められてきていると思います。適応を充分に考えた上で、現在の医療とともに施行するのは患者さんのためになると考えます。

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2006年6月18日 (日)

医療崩壊

2006年6月18日 晴れ
気持ちのいい一日でした。昨日が地域の輪番でしたので、今日は一日フリーです。入院患者さんは2人です。

まだ、実は読んでいないのですが『医療崩壊』を著した小松秀樹先生の対談の内容がネット上に配信されています。その最後の1パラグラフは「なるほど!」とうなづける内容です。

『――これまた驚くような指摘ですが、その可能性を念頭に行動した方が良いのかもしれませんね。とはいえ医療が崩壊して困るのは患者なので、患者がこの状況に対して何かできることはないでしょうか。

 残念ながら個々の患者さんにできることは、それほどないように思います。ただ、状況を正しく認識してほしいと思います。冷静な認識が社会の常識になれば、現状を大きく変えることができます。

 実際に、攻撃的な患者さんばかりではありませんし、むしろ攻撃的な患者さんや家族は一部です。しかし、その一部の攻撃的な人をたしなめる人もシステムもないのが現状です。それどころか、医師は、メディア、司法が、このような攻撃に加担しているように感じています。このため、一部の人の攻撃だけでも医療従事者の士気を失わせるに充分なのです。

 本来は、メディアがこうした問題を指摘し、冷静な議論の場を提供すべきなんでしょうが、事実に基づくのではなく感情を前面に出した議論しかしないものが多いですよね。この本を読んだ記者たちは一様にメディア批判を重く受け止めてくれたようですが、メディア全体から見ると少数派でしょう。

 医療界だけでなく社会全体から相当の立場の人が集まって、しかもオープンに議論しないと、この流れは行くところまで行ってしまうような気がしています。』

日本の医療システムは危機に瀕していると感じています。それは、福島県立大野病院の事件でのような司法の態度や、マスコミの態度によるものが多いのではないか?以前より感じていたことが、この中で実際に述べられています。

社会全体がある程度変化していかなければ、この流れは止まらないでしょう....悲しいことですが....

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2006年6月17日 (土)

予防接種による感染

2006年6月17日 雨

今日は地域の輪番でした。午前中は外来です。

B型肝炎、国に責任 集団予防接種で感染 最高裁が賠償命令という記事が朝日新聞に出ていました。

いまでは考えられないことですが、その時代は集団接種の予防接種に注射針の使いまわしをしていました。B型肝炎はある程度年長になってからの感染は一過性のものとなり、新生児期や乳児期の比較的早い時期での感染は永続的な慢性感染となることが知られています。原告の方々は不幸なことに、注射針の使い回しにより、他の感染児より水平感染(注1)したのではないかと考えられます。今でこそ、慢性B型肝炎はインターフェロンや特殊な抗ウィルス剤などが開発され、ずいぶんと治療成績は上がってきましたがそれでも完治する(つまり、体からウィルスがいなくなること)患者さんはほとんどいません。

(注1)水平感染:同胞や他の人から病原体が感染すること。これに対し垂直感染は母児間の感染を指す。

予防接種は感染症の駆逐のため非常に重要な役割を演じてきました。特に、麻疹や百日咳、ジフテリア、ポリオなどについては目覚ましい効果をあげ、先進国ではほとんど患者さんがいなくなるような状態までになってきました。予防接種はこのように感染症に対して「善かれ」と思って行われていることですが....その方法において若干でも瑕疵があれば後になりこのような事象が起こってくる。非常に皮肉なものです...。この被害にあわれた方々には、「本当にお気の毒であった」という気持ちでしかありません。

ただ、時々思うのは...「世の中のものすべては完全であり得ない」ということです。言い換えると、「この世の中に完全なる善(或は悪)というのはない」という感覚でしょうか...。完全なる善は一神教の「神」のような観念的な部分でしか存在し得ないし、その反対の悪もいわゆる「悪魔」のような想像上のものにしか実現できないということです。

この考え方の極地はちょっと危ないものですが、「戦争」に関してもこれを完全な悪とすることができないということになります。戦争は当然、多くの人命を奪い、領土を荒廃させ、場合によってはその土地に長期間人間が住めない状態になったり、今後の世界戦争については「核」が使用された場合は人類のみならず、地球上の生命の滅亡が起こることが危惧されます。これを完全な「悪」とせずに何とするか?ですが....地球上に共存できる生命の数が決まっているとすれば、「効果的に人類の数を調整できる方法」としてみれば「戦争」の悪さは薄れてみえるかもしれません。(ここでは、例えとして戦争を使用していますが、私自身は戦争等にまきこまれたくもないし、起こってほしくないと思っている一小市民です。)

「神」でない「人間」である医師が行う医療も同じです。患者さんに対して「善かれ!」と思って行っている処置は現在ではevidenceに支えられているものがほとんどですが、全ての患者さんに100%を保証することはできません。つまり、処置は「完全なる善」ではあり得ないことになります。当然、医師の技量もありますし、患者さん側の要因、その時点ではまだ理解されていない「処置による副反応」などがあり、処置により起こることを100%予想することは残念ながらできないのです。

悲観的なことを書いてきましたが、医療の技術は日進月歩、数年前までは諦めざるを得なかった患者さんの状態でも改善させたり、完治させることができるような目覚ましい進歩もあります。徐々にではありますが、医療のレベルは向上してきています。これは、医療者の献身的な努力もありますが、貴重な患者さんの犠牲からも大切な情報を得て少しずつ少しずつ進歩させているものなのです。

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2006年6月16日 (金)

代理ミュンヒハウゼン症候群_症例、診断

2006年6月16日 晴れ
気持ちのいい一日でした。当直明けで外来は40人ほど、1人入院でした。5時ごろになり、『これでおわりだ...』などと思っていると、救急車の音とともに、コードブルー(注1)...CPAOA(注2)のお年寄りでした。蘇生を手伝い、一段落ついて何とか帰れました。

(注1)緊急時の医師招集放送。俗にハリーコールとも呼ばれる。
(注2)CPAOA: Cardio Pulmonary Arrest on Arrival, 来院時心肺停止状態

しばらく、脱線しておりましたMSBP: Munchausen syndrome by proxyですが...今日は、日本小児科学会雑誌に症例が掲載されていましたので、御紹介します。

複数菌の敗血症を反復した代理Munchausen症候群の1例

<要旨>
敗血症を反復した代理Munchausen症候群(MSBP)症例を報告した。患児は発症時7ヶ月の女児。下痢と発熱を主訴に入院した。入院後から複数菌による敗血症を反復した。腸管や免疫能に異常なく、同様の経過で死亡した姉の存在、後に判明した母親のMunchausen症候群の既往等からMSBPと診断した。母親による点滴回路の意図的汚染と考え母児分離した。母児分離後、患児の状態は著しく改善した。MSBPは医療機関への異常な依存であるが、その原因の一端に母親自身の不幸な成長過程や家庭環境が関与していると推察される。社会全体が育児をもっと高く評価し、家族機能を補完するような支援をしていくことが急務である。
(日本小児科学会雑誌 110巻5号 681〜686 2006年)

この患者さんにある症状は、いろいろなタイプの細菌による敗血症(注3)です。入院後も、点滴して抗生物質を使用しているのに、同様なことが繰り返されます。「免疫に異常があるのか?」「腸管の異常があるのか?」調べるけれども、異常は見つかりません。残るは、点滴ラインに意図的に細菌を混入されることですが...その証明は極めて難しいと思われます。(つまりMSBPの診断の難しさです)

(注3)敗血症:血液中に細菌が入り、その細菌や産生する毒素により、生命をおびやかすような重篤な症状を惹起する状態。Septicemiaあるいは単にSepsis。

<本文中から>
血液からは消化管由来菌をはじめとする複数菌の検出が続いたため、MSBPによるIVHカテーテル(注4)の意図的汚染が強く疑われた。しかし、外傷などのように外から見てわかるものではなくビデオカメラの設置も困難である状況から、明らかな証拠はなく、強制的に母子分離に踏み切ることは困難であった。

法的拘束力をもって、母児分離に踏み切るには確固たる「虐待」の証拠が必要と思われますが、傍証は得られるが、確証を得ることができないということになります。ビデオについては確証となりえますが、養育者にわからないように設置する必要があること、設置前に弁護士などと相談して証拠として採用できる要件を整えておく必要があるようです。(子ども虐待の臨床より)

(注4)IVHカテーテル:Intravenous hyperalimentationカテーテル;中心静脈栄養カテーテル。通常の末梢点滴では余り高いブドウ糖濃度の点滴を行うことができない。長期間の絶食で体を支えていくためには、心臓の近くまで(つまり中心静脈まで)カテーテル(管)を入れて高い濃度のブドウ糖を点滴する。感染を生じると敗血症に移行しやすい。

<本文中から>
本症例の母親の「こんな原因不明の病気の子供を持つ親の気持ちがわかりますか。」という母親の涙ながらの言葉や表情に惑わされ、虚偽申告を見抜くまでにかなりの時間を要した。

この患者さんでは、発症から母児分離まで3年以上を要したとされています。診断は非常に難しく、この病気を疑うこともなかなか難しい。そういう病気ですが、重篤な転帰を迎えることもあり、小児科医として脳裏の片隅に入れておかねばならないものと感じました。

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2006年6月15日 (木)

全館当直

2006年6月15日 曇り

今日は当直です。うちは弱小公的病院ですので、当直は小児科医でも病院に1人です。

18時すぎ、60代の女性が胸痛を訴え来院しました。冷汗や嘔気を伴っており心電図上、狭心症の可能性がありましたので入院。入院時には、胸痛は治まっていて、ニトロールという血管を拡張する薬を点滴して観察しておりました。しかし、20時ごろ再び胸痛みられ、循環器内科にコンサルト。ヘパリンという血液を固まりにくくする薬を点滴して、一旦症状は改善しました。しかし、その後嘔気とともに、心拍数と血圧が著しく低下し不安定狭心症と診断。緊急心臓カテーテル検査および経皮的冠状動脈形成術(PTCA: percutaneous transluminal coronary angioplasty)を施行していただきました。

久しぶりに一部始終を見ましたが、『これも経験とそれに裏打ちされた技術の必要な手技である。』と感じずにはおれませんでした。

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2006年6月14日 (水)

病院の懐具合(続き)

2006年6月14日 雨
昨日に引き続き脱線します。先の記事で出資法と利息制限法の上限金利の間に差があること(間の金利を俗にグレー金利というそうです。)に若干触れていますが、本日の共同通信の記事では、このグレー金利がなくなるそうです。

グレーゾーン金利を廃止(共同通信)

この中では、どの程度に上限金利が設定されるかは未知のようですが...ヤミ金や消費者金融はやりづらくなるでしょう...

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2006年6月13日 (火)

病院の懐具合

続けて、時事の話題をもう一つ....ちょっと脱線します。

55医療法人、廃業に追い込む=高金利で貸し付け、業者逮捕−警視庁

『門田容疑者らは78の医療法人に違法な貸し付けを行い、うち55法人が返済に困り、廃業に追い込まれたという。』
昨今の、診療報酬改正で診療収入は軒並ダウンという状態です。何とか食いつないでいくために、ヤミ金に手を染める病院があってもおかしくはないでしょう....開業医の先生方の悲哀が感じられます。

しかし、出資法違反(高金利)とはどの程度の金利か?ということですが...

出資法第5条第2項
『前項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年二十九・二パーセント(二月二十九日を含む一年については年二十九・二八パーセントとし、一日当たりについては〇・〇八パーセントとする。)を超える割合による利息の契約をし、又はこれを超える割合による利息を受領したときは、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。』
つまり、貸し付けを生業としている業者が、年率29.2%の利率を超えた金利で貸し付けを行ってはいけないということでしょうか?住宅ローンが利率3%程度ですから、その10倍を超えて貸し付けていたのでしょうね....

更に、消費者金融での金利で問題となるのは....
利息制限法第1条
『金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約は、その利息が左の利率により計算した金額をこえるときは、その超過部分につき無効とする。
  元本が十万円未満の場合          年二割
  元本が十万円以上百万円未満の場合     年一割八分
  元本が百万円以上の場合          年一割五分
2  債務者は、前項の超過部分を任意に支払つたときは、同項の規定にかかわらず、その返還を請求することができない。』
ですが、消費者金融は平気でそれを超えて利息を要求してきていました...そのカラクリはちょっと難しくてわかりにくいです。アイフルの一件で少し変わってきたのでしょうか??

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医療制度改革法案

2006年6月13日 曇り
ジーコジャパンの敗戦から一夜あけました。大衆の注目をあつめ、視聴率は49%とか...
その裏で、静かに参院厚生労働委員会が開かれていました。→記事

『法案は与党の賛成多数で可決された。14日の参院本会議で可決、成立する見通し。野党は法案に反対する一方、医師不足対策の充実など21項目の付帯決議案を示し、決議案は全会一致で可決した。』

『法案には他にも高齢者の負担増が並び、今年10月以降、慢性病患者が長期入院する療養病床(医療型、25万床)で、70歳以上の入院患者の食住費(光熱費など)を全額自己負担に切り替えることも含まれている。』

重要な法案は、「大衆の目」の届きにくいタイミングで決まってしまうのだな...と思いました。でも、ちょっと21項目の付帯決議案には興味があります。

代理ミュンヒハウゼン症候群については、明日以降とします。

続きを読む "医療制度改革法案"

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2006年6月12日 (月)

代理ミュンヒハウゼン症候群_定義

2006年6月12日 晴れ
朝方から地震でした。当地域は震度5弱という激しい揺れで、5時より飛び起きたような状態でした...。

では、MSBP: Munchausen syndrome by proxyについて2回目です。MSBPの定義について...
参考にしている、「子ども虐待の臨床」の中にはMSBPの定義がまとまっていました。MSBPと診断するためには、以下に羅列するような状態を確認する事が必要となります。

<以下、引用です。>
1.子どもに生じる病像は養育者による虚偽(注1)や捏造により、長期に、秘密裏に作り上げられたものである。
2.その結果、子どもは不必要な医療上の検査や治療を繰り返し受けさせられる状態となる。
3.子どもの状態に対して原因を養育者に尋ねても、「わからない」や「自分は関係していない」などと否定される。
4.養育者と子どもを分離することにより、障害の影響は残ったとしても子どもにみられていた急性の症状や兆候は減少もしくは消失する。

(注1)虚偽:ここでいう虚偽には以下のものを含むとされる。1.実際にはなかった症状を繰り返し訴える場合。2.症状を作り出すための細工をするが、子どもには直接の被害がない場合。3.子どもへの直接の被害を伴う症状があり、かつ養育者によりつくられた症状である場合。

加害者である養育者の特徴としては、多重人格などの人格障害やMunchausen症候群の既往、虚言癖のような虚偽性障害などをもっていることが多い様です。また、発症率についてはかっちりとした報告は一つだけですが、「MSBP、不慮の中毒、不慮の窒息の発症率が1歳未満の児の中で10万あたり2.8人発症する」というものがある様です。かなり稀な疾患で、なおかつ診断に至りにくいものです。

<以下、引用です。>
「また、加害者の病理性の深さによっては、医療者の注意を十分引きつけることができないと、子どもの症状がどんどん重篤となり、致死的な手段もいとわなくなるので、長い病歴や養育者の訴えと子どもの状態が一致しないときは、医療者は常に本症の存在を念頭に置くほどの注意が必要である。」
MSBPは子どもが死亡してはじめて診断できることもあり、結果は重篤です。一般の小児科臨床医は(私も含めて)養育者からの訴えを「虚偽ではないか?」とみることに慣れていません。MSBPの報告例をみると、適切な介入(母子分離をも含む)に至るまでにかなり長期間を要しており、診断の難しさを感じさせます。

今日はここまでとします。次回は診断の実際についてで、明日以降にしたいと思います。

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2006年6月11日 (日)

代理ミュンヒハウゼン症候群_概念

2006年6月11日 晴れ
予報では曇りのち雨のようでしたが、一日もってくれました。久しぶりに一日freeでした。入院患者さんが2人ほどいましたが、病棟には一度顔を出しただけでした。

さて、代理ミュンヒハウゼン症候群(Munchausen syndrome by proxy: MSBP)について、まずはさわりの部分からです。参考にさせていただいたのは、「子ども虐待の臨床 医学的診断と対応」(南山堂)と、いつもながら参照するNelson Textbook of Pediatrics 16th ed.です。

ミュンヒハウゼン症候群(代理ミュンヒハウゼン症候群ではありません。)は全くの嘘であることを、もっともらしい劇的な病歴に仕立て上げて各地の医療機関を転々と訪れて必要のない検査や治療、あるいは手術までを繰り返す患者さんをもって、18世紀のドイツでの「ほらふき男爵」の逸話に出てくるMunchausen男爵にちなみ命名された症候群です。1951年イギリスのAsherという方が命名されています。
例えば、スゴい腹痛を繰り返して来院される患者さんで、いろいろと検査をするけれども原因が分からない。内視鏡や腹部のCTやその他の腹痛の原因となるものを調べてみるけれどもわからない。患者さんは『何とかしてくれ!』と懇願します。外からの検査ではわからない、何らかの小さな変化があるかもしれないと試験開腹に進む事があります。でも、開腹しても原因はわからない。→実は嘘。
更に、違う病院に行き、今度はもっとうまく病気を演じて更にもう一度開腹。そのうちにお腹にはいくつもの手術痕が残ります。そして、『これが虚言である』ということが気付かれない限りこうした事が続く。というような経過をとることがあります。

そして、本題の代理ミュンヒハウゼン症候群(以下MSBPと略します)は症状が病気の本人(ほとんどは養育者である母親)には表れず、養育者の嘘や捏造されたデータにより、もっぱら代理である子どもに表れるものです。そして、この状態を1977年イギリスの小児科医Roy Meadowが「子ども虐待の奥地: The hinterland of child abuse」と題した原著の中でMSBP: Munchausen syndrome by proxyと報告しています。

実は、私はこの症例を直接もったことはありません....一例をあげると、こういった感じになると思います。「数人の兄弟で、原因不明の激しい下痢が繰り返されます。そして、いろいろな手を尽くすのですが、そのうち一人は下痢に伴う電解質異常で亡くなってしまいます。兄弟の別の児も同様の症状で入院してくるのですが、母が付き添っている時は症状が酷く、母がいないと症状が改善される事がしばらくすると確認されました。そして、ある日、ベッドの脇の台に主治医が何か『白い粉』のようなものを見つけます。『何だろ?』と思って成分分析にまわすと...ビサコジルという下剤の一種で一般の方でも比較的入手しやすい薬剤が検出された。母が(入院中も医療関係者の目を盗んでは)下剤を飲ませていた可能性がある。とのことで診断を進め、最終的にMSBPとされた。」
この例は、実際の事例をもとにして少し脚色をくわえたものですが、代理である「子ども」が亡くなってはじめてMSBPであることに気付かれることも少なくありません。それは、次のような背景も影響しているのだと思われます。

<以下、引用です。>
「MSBPの加害者は通常、実母が多く、男性はまれである。加害者の訴える病歴は巧妙で説得力があり、最初に出会った医療関係者は重篤な疾患を思わず想定してしまい、子どもに不必要な検査や治療をしてしまうというMSBPの病態にすぐ取り込まれてしまうことが多くなる。通常の小児科の臨床では、詳細な病歴聴取が重要で、それをもとに次の検査や治療を考えるようにトレーニングされているため、普通は病歴を伝えてくれる養育者が虚偽の病歴を訴えているなど考えもしない。」つまり、容易にだまされてしまうという事です。しかし、結果が重大なこともあり、我々小児科医も認知して頭の片隅においておかなければなりません。また、社会的にも認知が必要と感じています。

今日は、ここまでとします。頻度や、診断の実際、治療に関しては明日以降とします。

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2006年6月10日 (土)

戻ってきました。

2006年6月10日 曇り
実家より戻ってきました。

現在、代理ミュンヒハウゼン症候群について勉強中です。まとまりましたら、upするようにします。

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2006年6月 9日 (金)

実家に帰ります

実家に帰り(インターネット接続環境がない...)ますので、今日から明日にかけて更新できないかもしれません...。

今後、興味をもって特集したいと考えているのは

1.Munchausen syndrome by proxy(代理ミュンヒハウゼン症候群)

2.Waterhouse - Friedrich 症候群(ウォーターハウスフリードリッヒ症候群)

などを考えています。どちらも、稀な疾患ではありますが、その転帰は重大です。実家から帰りましたら、はじめたいと思います。

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2006年6月 8日 (木)

少子化への対策

2006年6月8日 曇りのち雨
最近、少し多忙となってきました。若干疲れ気味です。

さて、今日は少子化シリーズの第3弾として、政府与党の少子化対策案の記事です。

子供数に応じ税額控除、少子化対策で政府・与党案:読売新聞

『焦点となっていた税制改正では、子育て家庭を経済的に支援するため子供の数に応じた税額控除の導入を検討する。
そのための財源は現行の扶養控除を縮小の方向で見直して充てる。事業所内に保育所を設置するなど子育て支援に積極的に取り組んでいる企業への支援税制も検討する。さらに、社会の意識改革を進めるため、「家族の日」や「家族の週間」を制定するとした。』

要約すると、1.扶養控除を切り崩して子供の数に応じた税額控除にあてる。2.事業所内保育所など子育て支援にとりくんでいる企業などに支援税制をしく。とのことです。若干の支援にはなると思います。

ただ、多分一番の問題であると思われる(私は少なくとも一番の問題と思っている)『社会の認識』については、どうでしょうか?「家族の日」も重要だとは思いますが、子供のいる女性社員が子供の病気で休む時に何らかの補助をするぐらいの方策まで必要なのでは??などと思ってしまいます。

政府には実効性のある対策を願うだけです。

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2006年6月 6日 (火)

尊厳死の研修会(富山)

2006年6月6日 晴れ
最近は病気ネタを投下していません...そろそろ、病気ネタを...と思っていますがなかなかできません(悲)。

さて、このブログで取り上げているカテゴリーの一つ尊厳死に関して、射水市民病院のある富山で研修会が開かれた様です。→富山新聞:射水の「安楽死」疑惑は「容認しうるケース」 県と医師会の研修会で岡山大教授が見解

その中で『粟屋教授は、東海大医学部附属病院、川崎協同病院事件の判例などを説明。射水市民病 院の犯罪性について、過去の判例を基準にした場合、家族から得た延命治療中止の同意が 単なる希望なら、違法性は退けられないとし、家族の同意の中に患者の真意が推定できる 必要性を指摘した。

 その上で倫理的に見た場合「無駄な延命を避けるのは正当ではない。しかし家族の同意 を得ており、医師の目的や動機は容認しうるものではないか」と述べた。』

少し、誤解を招きそうな表現です。「無駄な延命を避ける」ということは、人工呼吸器を止めると亡くなる可能性のある患者さんに対して人工呼吸を止めるというレベルのことか?ガン末期で、人工呼吸を行ってもある程度の期間延命できるのみと考えられる患者さんに対して気管内挿管し人工呼吸器につなぐのを止め、見守るだけにすることまで入るのか?この文章からは、どちらも当てはまるととられかねません。正確な表現が必要です。

今回の尊厳死事件は、報道の様子からみて恐らく家族との間に意思の疎通が十分とれていたと感じています。本人の意思はどうか?ということになりますが、一部には十分伝わっていたと思われるものもある様です。

自分がガン末期でもう助からない状態のときを考えると、気管内にチューブを入れられるのは、ちょっとゴメンこうむりたいものです。すこし早めに楽にしてくれてもいいのかな?と今はそう感じています。

医療の現場では、現行の法律上はマズいことではあるが、患者さんのためにしてあげたいと思う事が、いくつもあります。

『「医療の倫理」をテーマにした藤野教授は、インフォームド・コンセント(十分な説明 と同意)の考え方などを話し「終末期医療では、治療で健康を目指す視点から、より良く 生きるための医学にシフトすることが求められる」と指摘した。』

こういった、観点でものを見れるようになるとよいのですが.....

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2006年6月 5日 (月)

麻酔科医も減少

2006年6月5日 晴れ
地域における、麻酔科医も減少してきている様です。

岩手日報 麻酔科常勤医が不在に 県立久慈病院

岩手県北部の救急医療を担っている、県立久慈病院の麻酔科常勤医が医局の医師不足のため、引き揚げられたようです。幸いな事に、同病院では麻酔をかける事のできる医師は院内に10人以上いるとのことで、今のところ問題は起こっていないそうです。
しかし、麻酔(特に全身麻酔は...)はそれにまつわる医療事故の多い部分であり、また、訴訟にもなりやすい部分です。なるべく早く、麻酔科の専門医を招聘できるようにしなければなりません。

見方を変えてみると、いろいろな制度の変革から、地域医療に従事する医師が少なくなっていることが、今回の事例の遠因になっているのではないか?と考えます。私は新臨床研修制度を否定するものではありませんが、同制度により研修医は地元の大学に残らず、大都市の第一線の病院にシフトしたとは感じています。『新臨床研修制度は医師の分布を地域から大都市にシフトさせ、地域医療の人手不足を招いた』と現時点では考えられます。

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2006年6月 4日 (日)

少子化の進行2

2006年6月4日 曇り
昨日に引き続き少子化についてです。

拙ブログ:少子化の進行のコメント

『・女性が多くの子供を産むと、必然的に育児の負担が増大するため、仕事との両立が難しい。
・仮に育児に専念したいと思っても、男性の収入だけでは経済的に厳しく、仕事せざるを得ない。』
という御意見が寄せられました。これは、まったくその通りであると思います。そして、その根底にある問題としては、

  日本の仕事社会では「子供のことで仕事を休むなんて...」という暗黙の無理解がある。

ということなのではないか?と、あくまで私見ですが感じています。そして、その無理解が改善されない限り、本当の意味での「子育てがしやすい社会」には変化していかないのではないか?と考えます。

さて、今日の毎日新聞の記事...猪口少子化担当相:「子育てと仕事、両立を」−−松戸で講演 /千葉では...

『猪口担当相は日本の少子化の現状と政府の少子化対策を説明した後、「最初の子供が生まれると、働く女性の7割が退職している。子育てと仕事の両立が困難だからだ。現在の働き方は、労働の中断が全くないことを前提にしたもので、これからは子育て支援型の会社が認められるようになってほしい」と語った。』

少なくとも、この問題は猪口少子化担当相は理解しているとおもいます。今後はそれをどうやって、国策に反映するかですね...。

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2006年6月 3日 (土)

少子化の進行

2006年6月3日 曇りのち晴れ
今日は地域の輪番で午前中が外来でした。季節が良くなってきたためか、外来はいつもの忙しさではありませんでした。

さて、6月1日の記事。出生率1・25、最低更新 人口動態統計共同通信では...

『出生数から死亡数を引いた「自然増加数」は、統計を取り始めた1899(明治32)年以来、初の減少となるマイナス2万1000人(データのない1944−46年を除く)。厚労省が昨年12月に発表した推計を裏付け、05年が「人口減少元年」となった。』とのことです。ついに、日本の人口は減少に転じました。

ここでいう、「出生率」ですが、これは合計特殊出生率(注1)といって、一人の女性が一生のうち何人のこどもを産むのかを推計した数値です。よって、理論的にはこれが2以上にないと人口は将来的に減少する事となります。

(注1)合計特殊出生率:女子の年齢別の出生率を合計したもの。女性一人当たりの平均子供数を表す。「広辞苑」

小泉政権は猪口大臣を据えて少子化に対する対応を行っていますが、「財源不足」もあり対策を打ち出せないでいるようです。しかし、この問題はややもすると将来の「国の存亡」にも影響してくる問題であるということを認識しなければならないと考えます。少子化が進行すれば、人口の高齢化が進みます。高齢で働けない方が増え、それを支える就労人口は虚弱となり、国の社会保障は破綻する可能性がでてきます。今の若い世代には恐らくここまでの認識はないのでは?と思います。自分が年老いて、介護を必要とするような状態となった時、誰が面倒を見るのでしょう...。そして、その財源は?誰が負担するのでしょう...。その感覚で考えていくと、自ずとある一定数の「次の日本を担う世代」が必要ということを理解できると思います。

繰り返しますが、日本の人口は減少に転じました。今後は、早急に日本の次の世代を担う者たちを作っていかなければいけません。そのためには、国の政策、社会が「子供を育てやすい」環境に変化していく事が必要と考えます。(といっても、抜本的な解決策はうかばないのですが....)

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2006年6月 2日 (金)

医療界と法曹界の間の深い溝2

2006年6月2日 雨のち晴れ
当直明けです。年齢が進んでくると、当直の36時間勤務が少し体にこたえるようになります。

さて、いつもお邪魔させていただいている弁護士さんのブログ弁護士のため息で白熱した意見の交換が行われています。実際にあったと思われる医療訴訟事例をモディファイして呈示し、読者に答えを求めています。この中で、医師の方々からはかなり厳しい意見も書き込まれています。耳が痛くなる事もありますが、一つ一つが臨床医の真意から出てきているものであると感じられます。また、ブログの管理人さんは一つ一つのコメントに対し誠実に返答されており、その人柄がしのばれます。

しかし、この中で「医療界と法曹界との間には決定的な深い溝があり、お互いに理解しえないものである。」と感じました。医療者は法曹界の方々の法律的な考え方をよく理解できません。また、法曹界の方々は、臨床の経験に基づいた医師の意見をどうしても理解できない様です。お互いに、その世界のプロフェッショナルであり、お互いの世界の物事を評価する尺度が違うためであるのではないかと考えます。

「このような医療界と法曹界の間の深い溝を放置していてはいけない。草の根の運動でもいいから、お互いに少しでも理解しあえるように努力していかなくてはならない。」と、強く感じました。弁護士さんのブログには医療者が多く集まっています。これも、一つの草の根の運動です。弁護士のため息の管理人さんは「協力医がいない」と訴えていますが、『どちらかに与するものではなく、あくまで中立で、なおかつ臨床経験から医療の経過を洞察し、参考となる意見を寄せる』(でも、臨床経験豊かであればあるほど、医療側に意見が傾くと思いますが...)ような「参考医」が増える事も大事なのではないか?と考えます。

こういった、サイバースペースだけでなく、面と向かって参考となる意見を言える事も必要なのではないか?とも考えています。

尚、拙ブログ:医療界と法曹界の間の深い溝も時間が余りましたら御参照ください。

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2006年6月 1日 (木)

産科施設の減少

2006年6月1日 晴れ

兵庫県内の産科施設減少の報道です。

県内の産科、10年で3割減:神戸新聞

『県によると、産科・産婦人科病院は一九九六年は九十七カ所だったが、今春の調査では六十九。この中にはお産を一時休止している病院も含まれ、実際に子どもを産める病院はさらに少ない。』

『福島県の病院で帝王切開を受けた女性が死亡した事故では今年二月、業務上過失致死容疑などで一人勤務の担当医が逮捕された。日本産科婦人科学会は四月、リスクの高いお産を扱う公立、公的病院は三人以上の産科医を常勤させるべき、と提言。今回休診する三病院はいずれも二人勤務で、丸尾教授は「休診の代わりに、近隣の拠点病院に医師を集約したい」とする。』

産科医療は小児科に比較しても更に厳しい状況です。集約化を進めなければ、その地域の産科医療は絶滅してしまう危機が訪れています。お産のリスクを軽減するため現時点では集約化が必要な地域が多いのではないか?と考えられます。

『医師総数が年々増える中、県内の産科・産婦人科医は九六年から5%減り、〇四年は四百七十人。』

医師総数は多分増えていると思いますが、実際の専門科別の人数、リタイヤした医師の数、女性医師の増加などを考え合わせると...実際の労働力として計算できる人数は、そんなに増えていないのではないか?と思ってしまいます。

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