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2006年6月11日 (日)

代理ミュンヒハウゼン症候群_概念

2006年6月11日 晴れ
予報では曇りのち雨のようでしたが、一日もってくれました。久しぶりに一日freeでした。入院患者さんが2人ほどいましたが、病棟には一度顔を出しただけでした。

さて、代理ミュンヒハウゼン症候群(Munchausen syndrome by proxy: MSBP)について、まずはさわりの部分からです。参考にさせていただいたのは、「子ども虐待の臨床 医学的診断と対応」(南山堂)と、いつもながら参照するNelson Textbook of Pediatrics 16th ed.です。

ミュンヒハウゼン症候群(代理ミュンヒハウゼン症候群ではありません。)は全くの嘘であることを、もっともらしい劇的な病歴に仕立て上げて各地の医療機関を転々と訪れて必要のない検査や治療、あるいは手術までを繰り返す患者さんをもって、18世紀のドイツでの「ほらふき男爵」の逸話に出てくるMunchausen男爵にちなみ命名された症候群です。1951年イギリスのAsherという方が命名されています。
例えば、スゴい腹痛を繰り返して来院される患者さんで、いろいろと検査をするけれども原因が分からない。内視鏡や腹部のCTやその他の腹痛の原因となるものを調べてみるけれどもわからない。患者さんは『何とかしてくれ!』と懇願します。外からの検査ではわからない、何らかの小さな変化があるかもしれないと試験開腹に進む事があります。でも、開腹しても原因はわからない。→実は嘘。
更に、違う病院に行き、今度はもっとうまく病気を演じて更にもう一度開腹。そのうちにお腹にはいくつもの手術痕が残ります。そして、『これが虚言である』ということが気付かれない限りこうした事が続く。というような経過をとることがあります。

そして、本題の代理ミュンヒハウゼン症候群(以下MSBPと略します)は症状が病気の本人(ほとんどは養育者である母親)には表れず、養育者の嘘や捏造されたデータにより、もっぱら代理である子どもに表れるものです。そして、この状態を1977年イギリスの小児科医Roy Meadowが「子ども虐待の奥地: The hinterland of child abuse」と題した原著の中でMSBP: Munchausen syndrome by proxyと報告しています。

実は、私はこの症例を直接もったことはありません....一例をあげると、こういった感じになると思います。「数人の兄弟で、原因不明の激しい下痢が繰り返されます。そして、いろいろな手を尽くすのですが、そのうち一人は下痢に伴う電解質異常で亡くなってしまいます。兄弟の別の児も同様の症状で入院してくるのですが、母が付き添っている時は症状が酷く、母がいないと症状が改善される事がしばらくすると確認されました。そして、ある日、ベッドの脇の台に主治医が何か『白い粉』のようなものを見つけます。『何だろ?』と思って成分分析にまわすと...ビサコジルという下剤の一種で一般の方でも比較的入手しやすい薬剤が検出された。母が(入院中も医療関係者の目を盗んでは)下剤を飲ませていた可能性がある。とのことで診断を進め、最終的にMSBPとされた。」
この例は、実際の事例をもとにして少し脚色をくわえたものですが、代理である「子ども」が亡くなってはじめてMSBPであることに気付かれることも少なくありません。それは、次のような背景も影響しているのだと思われます。

<以下、引用です。>
「MSBPの加害者は通常、実母が多く、男性はまれである。加害者の訴える病歴は巧妙で説得力があり、最初に出会った医療関係者は重篤な疾患を思わず想定してしまい、子どもに不必要な検査や治療をしてしまうというMSBPの病態にすぐ取り込まれてしまうことが多くなる。通常の小児科の臨床では、詳細な病歴聴取が重要で、それをもとに次の検査や治療を考えるようにトレーニングされているため、普通は病歴を伝えてくれる養育者が虚偽の病歴を訴えているなど考えもしない。」つまり、容易にだまされてしまうという事です。しかし、結果が重大なこともあり、我々小児科医も認知して頭の片隅においておかなければなりません。また、社会的にも認知が必要と感じています。

今日は、ここまでとします。頻度や、診断の実際、治療に関しては明日以降とします。

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