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2006年5月18日 (木)

モデル事業の問題点

2006年5月18日 雨
日本産婦人科医会栃木県支部:「医療関連死の調査分析モデル事業の現況と将来」「異状死」届け出制の問題点の中で同モデル事業の問題点が指摘されていました。

このモデル事業とは、医療の経過の中で死に至った患者さんの中で「事件性のあるもの」を除いた方をその死の原因を調べるといったもので...『調査対象は、事故など外傷が寄与した可能性のある事例、安楽死・故意殺、悪質な隠蔽、そして重大な過失などは警察に届け出るべきであるが、それ以外はモデル事業の対象になる。言うまでもなく、遺族の同意が必要である。』
『届け出窓口としては、総合調整医が事情を聴取し受け入れの可能性を検討する。医療承諾解剖は法医・病理・臨床医の3者が協力して行い報告書を作成する。臨床専門医は、解剖に協力するとともに評価結果報告書案を作成し、地域評価委員会が最終結果報告書を作成する。評価委員会は、解剖評価報告書の内容を検討し、承認あるいは提言する。』となっています。

まとめると、「(事件性のない)医療事故の可能性のある死亡例を、患者さんを解剖させていただいて原因を調べる。」といったものですが、いろいろな問題点がある様です。

『本事業の前提としているところは、解剖(司法・病理)によって死因が究明できることを前提としているが、医療事故において、解剖が実際に果たす役割は期待されるほど大きなものではない。本事業の本質的なところがこの解剖にあるとすれば一種の幻想であろう。』
確かに、解剖だけでは不十分で、前後の経過などの総合的な判断が必要だろうと思います。

『その他、本事業では、モデル地区のみを対象としていること、人材育成への配慮が不十分であること、死亡例、解剖については遺族の同意を前提としていること、評価結果報告書の提出のみで完結していること、予算が十分でないこと、医師法や死体解剖保存法との関連、医療への司法介入のあり方など多くの問題点が残されている。』
こういった事業は全国で普遍的に行いデータを集めるべきと考えます。また、文面を読む限りでは、人材にはかなりの技量が要求され、なおかつ医療側、患者さんどちらにも与しない中立性が必要です。このような人材を育成する事ができるのか?危惧されます。

既に、このモデル事業は第1号の答申を出しています。参考のブログ→新小児科医のつぶやき:第3者評価機関モデル事業1号この結果は、医療者側からみると、なかなか受け入れる事が難しそうです。人選の問題、中立性の問題、予算の問題、どれをとっても問題だらけですが...誰もにある程度納得して結果を受け入れていただけるような、そういう真の「第3者機関」ができることを願ってやみません。

追記:周産期医療の崩壊をくい止める会HPに参考になる資料が列記されています。

冒頭にも示しましたが、今回参照した文章は→日本産婦人科医会栃木県支部:「医療関連死の調査分析モデル事業の現況と将来」「異状死」届け出制の問題点になります。

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コメント

第3者審査機関が成立するには権威と信用性が必須です。この機関の決定には誰も文句を言えないという実力がないと、有効には作用しないと考えます。裁判所が何のかんのと言っても尊重されるのは、それだけのものがあるからです。

どれぐらいの権威と信用が必要かといえば裁判所とほぼ同等のものが必要です。第3者審査機関の決定は司法に持ち込めない、もしくは持ち込んでも、裁判所が第3者審査機関の決定を尊重して門前払いにするぐらいは最低必要でしょう。

そういう機関の先例はあります。たとえば海難審判所です。しかし司法が喜んでそんな機関の設立を許すかは大きな疑問があります。自らの仕事の領域を狭めるような行為は、官僚たるもの何があっても阻止するのが正義だからです。

そういう官僚の抵抗を排して設立するには、政治的圧力が必要なんですが、政治的圧力の基になるべき世論の風が、吹きそうに無いところに難しさを感じます。

患者にとっては現在の訴訟システムでさして不便を感じてないわけですし、弁護士も医療訴訟というマーケットを手放したくないでしょうから、掛け声だけで実質が進まない事業になりそうな気がします。

投稿: Yosyan | 2006年5月19日 (金) 11時46分

モデル事業な訳ですから、これから是非、なるべくオープンな形で問題点を洗い出し議論を重ね、より良い方向を目指して信頼される事業へと完成させて行って欲しいです。

投稿: そもそも | 2006年5月19日 (金) 20時04分

記事の最後に、参照した本文を付しておりましたが、かなりの長文となり読みにくくなっておりましたので、記事冒頭のリンクと同じものを貼付けさせていただきました。

投稿: befu | 2006年5月19日 (金) 22時05分

こんばんは
Yosyan先生

コメントありがとうございます。

<そういう官僚の抵抗を排して設立するには、政治的圧力が必要なんですが、政治的圧力の基になるべき世論の風が、吹きそうに無いところに難しさを感じます。

そうですね、世論を変えていくには大きな力が必要です。現状では、マスコミから流れる『フィルタ』をかけられた情報しか、一般の方々には伝わっていないような気がします。

先生のいわれる通り、一度『焼け野原』にならないと、認知していただけない問題なのかもしれません....
ただ、こういったブログを続けていく事で、マスコミに比較するとホントにわずかな方々ではあると思いますが、理解していただける方が増えれば...と思っています。

投稿: befu | 2006年5月19日 (金) 22時18分

こんばんは
そもそもさま

コメントありがとうございます。

個人情報保護法の関係もあり、なかなか情報公開は進まない様ですが...なるべく広く意見を集め、問題点を洗い出す必要があります。

リスクマネージメントの領域でも問題となるのですが、『個人の責任追及』に走ると、生きた情報は上がってきません。(ですから、病院内のアクシデントレポートは匿名となっているところが多いと思います。)いろいろな方策を講じて、生きた情報を吸い上げて検討し、我々にfeedbackしてくれることを望みます。

投稿: befu | 2006年5月19日 (金) 22時31分

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