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2006年5月 7日 (日)

白血病治療と感染予防1

2006年5月7日 晴れ
昨日はインターネットに接続できる環境になかったため1日更新できませんでした。

拙ブログの急性リンパ芽球性白血病の予後にコメントで、「白血病治療と感染」について御質問がありました。私は、小児血液が専門ではありませんので、一般的に知られている範囲(教科書など)でのおはなしをしてみたいと思います。おはなしの幅が広くなりますので、数回に分けて公開したいと思います。

手元にはNelson(16版)という小児科の教科書があります。その中で785ページに以下の記述があります。

Infections in patients with cancer.
Children with malignancy may be severely compromised from immunodeficiency caused by cancer, the therapy, or both. Increased risk for infection is also associated with damage to the skin and mucous membranes, indwelling catheters, malnutrition, prolonged antibiotic use, hospitalization.
訳:がん患者における感染
悪性腫瘍をもつ子供はがんそのものや治療、あるいは、その両方から免疫不全状態となり厳しい生命の危険にさらされている。感染の危険度は皮膚や粘膜の損傷、挿入されたカテーテル(点滴や排尿のために体の中に入れられる管)、低栄養状態、抗生剤の長期使用、入院期間などに影響され増加する。

Because the immunodeficiency is related primarily to anticancer therapy, the risk of infection is related to the type, intensity, and duration of chemotherapy. More than one dysfunction of the immune system is usually involved. For example, corticosteroid drugs and radiation cause destruction of both T and B lymphocytes; methotrexate and other folate antagonists inhibit DNA synthesis; alkylating agents such as cyclophosphamide block DNA replication; and 6-mercaptopurine interferes with purine synthesis. All of these agents inhibit the inflammatory response to invading microbes. The organisms causing infections in patients with cancer are listed in Table 179-2.
訳:免疫不全状態は主に抗がん治療に関連して発生してくるため、感染のリスクは化学療法(抗がん剤による治療)の持続期間、強さ、種類に影響される。通常、免疫システムの一つ以上の機能低下がみられる。例えば、ステロイド薬と放射線治療はT細胞およびB細胞両方の破壊をもたらし、メソトレキセートやその他の葉酸拮抗剤はDNAの合成を阻害する、サイクロフォスファマイドなどのアルキル化剤はDNA複製をブロックし、6-メルカプトプリンはプリン合成に影響する。これらの薬剤は侵入して来た病原体に対する炎症反応を弱めてしまう。がん患者における感染症を起こす病原体は表179-2に示した。

1792


The significance of the neutrophil count in predicting the risk and response to infections was clearly elucidated in the 1960s. This parameter serves as the basis for management of infections in children with malignancies. While CD4+ T-lymphocyte counts are dependable preditors of certain infections in patients with AIDS, no studies to date have used this measure in patients with cancer. Infections in children with cancer are categorized as those occurring in neutropenia and non-neutropenic patients, keeping in mind that exceptions occur with each category.
訳:すでに1960年代には血液中の好中球数(白血球のなかの1種類で、細菌を食べて殺す役割を持つ)が感染に対する反応とリスクを予測するに重要であると明らかにされている。好中球数は悪性疾患の子供における感染のマネージメントの基礎を提供している。一方、AIDSの患者の感染の指標となるCD4+Tリンパ球数は、がん患者での計測の研究は今日までない。がんを持つ子供の感染は好中球数が正常であるか好中球数が減少しているかの二つのカテゴリーに分けて考えられる。しかし、それぞれのカテゴリーには例外があることをいつも念頭に置いておかなければならない。

まとめますが...
「がんや白血病そのものや治療によって免疫力は低下する。そして、いろいろな病原体に侵されやすくなる。血液中の好中球数が感染のリスクを予測するのに重要である。」ということか?と思います。

次回は明日以降とします。

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コメント

befu様

ブログをお楽しみのところ、無謀なお願いで気を悪くされたのでは、と反省しておりました。取り上げて戴いた事に深く感謝致します。有り難うございます。

白神

投稿: 白神 | 2006年5月 8日 (月) 17時23分

私も血液腫瘍に血道を上げていたのは10年近く前になりますが、当時でもALLに放射線療法をやっていた記憶はありません。ただ当時のムンテラでは予後7割と話していた記憶がありますから、BMT普及で1割ぐらい上がったかと理解しています。

化学療法中の感染症の問題は常に付きまとい、ほとんど必発であったように記憶しています。無菌室みたいな贅沢な施設は無く、せいぜいクリーンカーテンが精一杯でしたから、やむを得ないところだったかもしれません。

おおよそ白血病が年に10人ぐらい入院してくる病院でしたが、他の腫瘍も含めて化学療法中の合併感染で死亡するのは数年に1例程度であったと思います。怖かったのは細菌感染症よりもCMVの間質性肺炎で、こいつが来るとジェットコースターの様な綱渡り呼吸管理を必要とし、最後は運を天に任せる必要がありました。

細菌ないし真菌感染症は手強かったですが、CRP50ぐらいでも、WBCが上がってくれば何とか切り抜けられたものです。その点、当時から使えるようになったG-CSFはありがたかったと思います。

手練の血液腫瘍科医であれば、容易ではありませんが、相当なところまではなんとかなるという印象を今も抱いています。それでもWBCがゼロで、CRPのみが鰻上りに上がる日々が10日以上になる世界は、常軌を逸していると今では思っています。

私の経験も古いので、あまり参考にはならないかもしれませんが、少なくとも当時よりは良くなっているとは思っていますが。

投稿: Yosyan | 2006年5月 8日 (月) 18時05分

こんばんは
白神さま
Yosyan先生

コメントありがとうございます。

白神さま
私は一般的な話しかできませんが、現在のところはどんな感じか?を書いていってみようと思います。
別に気を悪くしたわけではありませんので、気にしないで下さい。
ただ、経験に基づいたお話ができないのは、申し訳ありません。

Yosyan先生
CRP 50はちょっとすごい値ですね...やはり、WBCの多寡が感染症の激しさを決めるものですね...
CMVの肺炎はほんとに苦労されたことと思います。デノシンはその頃も使用されたのですか?

投稿: befu | 2006年5月 8日 (月) 18時56分

デノシンは頻用してました。化学療法時の感染症となるとウイルス、細菌、真菌の混合感染が推測され、CRPが20程度を超えますと当時の上司が名づけた「ちゃんこ鍋療法」なるものもよくやっていました。

抗生剤を2種、それに抗真菌剤のジフルカン、とどめにデノシンの組み合わせで、駄目押しはバクタもありえました。

歳がばれるのですが、当時のBMTは兄弟姉妹がマッチしていないと東海バンクぐらいしかなく、再発時のサルベージになると「これでもか」のプロトコールが行なわれました。

当然WBCがゼロの日々が延々と続くのですが、感染症も超弩級と言う事になります。だいたいCRPが50を越えるとよく肝臓にモスボールが出来てしまい、今度はモスボール退治に肝動注ラインを作って持続静注なんて泥縄仕事もよくありました。

感染症はWBC(好中球数)と密接に関係があるのは、ご指摘のとおりで、ゼロから数百ぐらいまででも上昇すれば終息傾向に向かう事が多く、1000も越えれば外泊や一時退院を考えたと記憶しています。

外泊中や一時退院中の感染はあったでしょうが、それで入院まで要する様な事はあまり記憶に無く、あっても外来レベルでほとんど終わっていた様に思います。

ただしかなり前の話なので、記憶がどれほど正確かやや自信がありませんので、ある程度割り引いて聞いてもらったらちょうど良いかと思います。

投稿: Yosyan | 2006年5月 9日 (火) 12時58分

こんばんは
Yosyan先生

コメントありがとうございました。小児血液専門医の経験からでた、コメントは非常に説得力があります。
第3弾はまとめに入る予定としております。コメントの記述を少し拝借させていただき、記事に説得力を持たす様、考えておりますが、よろしいでしょうか?

今後ともよろしくお願い申し上げます。

投稿: befu | 2006年5月 9日 (火) 22時28分

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