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2006年5月 4日 (木)

輪番制の崩壊

2006年5月4日 晴れ 夕方より風が強い

日本の救急医療を支えてきた、地域での輪番制が崩壊しつつある状況を伝える記事がありました。<救急医療>2次救急体制、63病院が輪番制離脱 本社調査毎日新聞、です。

記事では....
「都道府県が医療計画などに基づき区割りした394地域のうち9割以上の372地域で輪番制を実施しているが、高知県で17病院、鹿児島県で7病院、愛知県で5病院など、各地で輪番制からの離脱が相次いでいた。厚生労働省によると、輪番制に参加する2次救急病院は昨年3月末現在で約3000病院で、ここ1年で約2%減少したことになる。」

など、二次救急を担当する病院の減少を指摘しています。減少の原因は、1.救急医療を担当する医師の不足。(これは厳密に救急医療専門医の減少を示しているものではありません。とにかく、地方において救急をするような病院に医師がいなくなっている事を示しています。)2.地方自治体の財源確保の問題。(輪番制を維持するために輪番を担当してくれている病院群に対して報酬を払う事ができなくなった。)などが取り上げられています。

「輪番制から離脱する病院があると、他の病院の負担が増える。栃木県の芳賀地域では、芳賀赤十字病院(真岡市)が医師減のため昨年4月から、週6日だった当番日数を、少ない時で週1日まで減らした。その影響で、負担が重くなる他の病院が輪番を抜けた。当番病院のない空白日が、多い時で週6日も生じ、他地域の大学病院への患者搬送が必要になった。救急医療体制は多数の病院の参加で成り立っているが、医師の分散配置にもつながり、その弱点を医師不足が直撃している。」

このような状態であると、この地域の2次救急は「ほぼ崩壊している」と考えざるをえません。「医師不足」という言葉を使用していますが、国(厚生労働省)は少なくとも、医師は総数では「足りている」との判断で、これ以上の医師供給は考えていない様です。しかし、拙ブログ「大きな認識の差」でも取り上げましたが、WHO(世界保健機関)の統計によると、先進国の中にあって日本は人口1000人あたりの医師数はほぼ最低レベルで決して多くありません。また、昨今の医師の勤務状況の劣悪さ、訴訟リスクなどから、産科、小児科、救急医療等は専攻する医師が減っています。更に、医師にも「都会志向」があり、地域の病院では医師確保に窮する状態である事などから、複合的に「ただでさえギリギリの人数しか確保できていなかった地域の病院で、更に医師が減少し、輪番制が破綻する」という流れが進んでいるものと思われます。

国(厚生労働省)の現在の考え方を進めていくと、「都会ではある程度の医療を提供できる」、しかし、「地域、特にへき地といわれる範囲に住んでいる方には申し訳ないが一定のレベル以下の医療しか提供できない」、更に、「ひょっとすると、その地域にはまったく医療機関がない状態になるかもしれない」というような体制となる可能性が”高い”と思われます。この「輪番制の崩壊」の記事は、そういった「医療の崩壊」の予兆に思われてなりません。

追記です。
こちらにも参考になる記事があります。ファミリー メンタル クリニック:救急病院の輪番制も困難になってきた

もう一つ追記します。
こちらのブログにも記事があります。新小児科医のつぶやき:二次救急輪番制の崩壊

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[http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060504-00000023-mai-soci:title=毎日新聞の記事]からです。 小児科で言えば夜間救急体制が整備されればされるほど需要が掘り起こされる悪循環があります。乳幼児医療制度は少子化対策と相俟って、拡大傾向にあります。乳幼児医療制度の下では夜間であれ、昼間であれ自己負担はほとんど変わらない事になります。自己負担が変わらないのであれば、わざわざ昼間に仕事を休んで医療機関を受診する必要は無く、夜間の好きな時間に... [続きを読む]

受信: 2006年5月 6日 (土) 14時59分

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