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2006年5月26日 (金)

小児科の不採算性

2006年5月26日 雨
今週は、時間外の呼び出しや、その他の仕事が多く疲労が蓄積し、とうとう昨日は更新できずに眠ってしまいました。

さて、前の記事のコメントで紹介するとしていました文献です。同じ日本小児科学会雑誌のものです。

「良質な医療の提供と効率化を目指した病院小児科改革」

<要旨>

当院小児科は、2002年4月より、それまで4名だった小児科医を7名まで増員し、2交代制による小児科24時間体制で、主に小児救急医療に対応できるようにした。収益増を目標にはせず、医療の質の改善と効率化を目指し、過剰医療の削減と業務内容の特化を図った。その結果、救急受診患者数と入院患者数は大幅に増加したが、診療収入の増加は僅かだった。しかし、当院小児科は、診療内容の特化や過剰医療の削減による業務の効率化により、7名の小児科医で、時間的に過剰労働にならずに小児科24時間体制を維持している。当院はすでに急性期病院として運営されており、他科に比し小児科の診療単価があまりにも低いため、小児科は診療収入を増やす努力をしても、病院全体への収入の面での貢献は僅かでしかない。良質の医療を効率よく提供できるように努力することの方が、病院の質の向上と負担の軽減の面から、より病院に貢献できるのではないかと考えている。

[日本小児科学会雑誌 110巻 5号 703〜707 (2006年)]

ここで、過剰医療の削減とは本文中に「受診回数の減、入院期間の短縮を目指す」とされ、業務内容の特化とは「紹介患者、救急患者については100%受け入れる」ということで、その他の部分、例えば慢性重症患者さんや新生児救急、一般の日常診療の部分についてはできるだけ排除している様です。そして、小児科医の過剰労働を排除するために、「当直制ではなく2交代制にて運営する」とされています。

この改革を行う事で、小児科の時間外外来患者さんは平成13年から平成16年にかけて約6.2倍に増加、全体の外来患者さんは55.6%増加しているというすごい数字です。しかし、診療収入は外来で120.6%増加したが、入院では10.7%しか増加せず、全体として36.1%の増加にとどまったようです。

更に、小児科の60%以上の患者さんは時間外加算(注1)されていますが、それでも病院全体の平均外来単価(注2)の51.3%でしかないとのことで、「いかに小児診療が不採算であるか」が如実に語られています。

ここまでくると、「日本の小児医療の評価には構造的な欠陥がある」とまで思えそうです。良質の医療を効率的に提供しようと改革を断行した病院小児科が、病院内の収入の面では「肩身の狭い」思いをする事になっています。

「小児科の不採算性」は日本の診療報酬体系に起因するものと考える事ができます。

(注1)時間外加算:時間外に外来受診した場合、通常時間に受診した場合の報酬に加えて病院に支払われる報酬のこと。
(注2)平均外来単価:その患者のその日の外来受診で病院がもらえる報酬の事を外来単価という。診療科ごとに合計し患者数で除したものが各診療科平均外来単価で、病院全体で平均をだしたものが「病院全体の平均外来単価」となる。

最後に、この論文の中の強いメッセージを.....
「小児科医の使命感による過剰な献身的努力は、日本の小児医療が社会基盤として未熟であることを、社会から隠してしまっている可能性がある。つまり、小児科医の過剰な献身的努力が、社会の要望に応えられる小児医療体制の構築を遅らせていることになる。」.....考えさせられます。

追記です。
ある産婦人科医のひとりごと:日本医師会ホームページ:小児救急医療の現状とその対応策にも参考となる御意見があります。

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コメント

業務お疲れ様です。重なる時は重なるもので、だいたいそういう時は、最後に駄目押しのような厄介事が圧し掛かる事が多いような気がします。そういう時にミスが出やすいですから、お気をつけください。

今回の引用はおそらく中津だと思います。中津の件は又聞きの話程度しか知らないのですが、結局それだけやって赤字なんですか、黒字なんですか。小児科医7人を賄うぐらいの収支が果たして出ているのですか。

それと勤務条件は読む限りであれば、他院が羨む条件ですが、現場の実態はどうなんでしょうか。先生の所からのほうが情報は入りやすいと思いますので、知っておられたらレポートくだされば嬉しいです。

ただ人数とシフト的にはやや恵まれたものがあったにしろ、あれだけやってようやくクロ程度でしたら、病院小児科の行く末は暗いといえますね。

投稿: Yosyan | 2006年5月27日 (土) 15時18分

こんにちは
Yosyan先生

コメントありがとうございます。

<今回の引用はおそらく中津だと思います。中津の件は又聞きの話程度しか知らないのですが、結局それだけやって赤字なんですか、黒字なんですか。

どうも、中津ではなく徳島赤十字病院小児科のようです。ただ、中津の場合(私も又聞きでしかないのですが)も、小児科単科で考えると『恐らく赤ではないか?』あるいは『ようやく黒が出る程度』ということの様です。しかし、病院の診療科再編(潰された診療科もあります)、徹底したコスト削減と収入の掘り起こし、そして、地域からの補助金があって、病院全体での会計は『黒』であると聞いています。

逆に考えると、病院小児科を7人体制24時間で運営するとなると、病院の他の部分からの援助が必要になる。ということじゃないのか?と思います。これは、今後の小児医療体制を整備するにあたって大きな足かせとなると考えられ、日本における小児科の診療報酬体系はスゴく問題であるという事になります。

<ただ人数とシフト的にはやや恵まれたものがあったにしろ、あれだけやってようやくクロ程度でしたら、病院小児科の行く末は暗いといえますね。

恐らく、この文献が本当に問題としているのは、日本の小児医療をとりまくそういった『不当に低い評価』なのではないかと思っています。

投稿: befu | 2006年5月27日 (土) 16時57分

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