« 白血病治療と感染予防3 | トップページ | 新生児黄疸のはなし »

2006年5月11日 (木)

地域医療の崩壊

2006年5月11日 曇りのち晴れ
NHKの「クローズアップ現代」で地域医療の事について触れた様です。

私の町に医師が来ない
〜空洞化する地域医療〜

「地方を中心に、総合病院が深刻な医師不足に陥っている。」

「北海道などでは、半数以上の診療科が「休診」に追い込まれている総合病院も少なくない。」

「多くの科に精通し専門医療への橋渡しをする医師、いわゆる「家庭医」導入の動きである。
新たな医師制度のなか、浮かび上がっている課題とその解決策を探る。」

最近の地方における医師不足は極めて速いスピードで進行中です。私が勤務する病院は、片田舎の総合病院ですが、内科系の2人の部長と外科系の部長一人が6月に辞任し、外科系の部長の方は後任が決まっていない状態です。また、近くの公的病院でも産婦人科の一人部長が辞任しこれも後任を見つける事ができていません。私の住んでいる県の場合は、県にある医学部の付属病院がまずもって研修医を集める事ができませんでした。(これは、地域の特性もありますが、なかなか研修医を魅き付けるようなカリキュラムを組めなかったことも影響しているのではないかとも考えます)また、初期研修2年間終了後に大学に残る先生は、これも極めて少なく大学の医局を維持していくのも難しい状態となり、それが、巡り巡って末端の病院に影響します。

地域の病院が機能低下し、医師の集約化が進んだならば、地域の病院では「いかに重篤なものをみつけ、そして適切な医療機関に搬送するか」という事が決め手となります。それをこなすのが、この記事で「家庭医」と呼ばれている、primarycare physician, general physician(プライマリーケア医、総合医)などといわれる存在です。一人いれば、かなり広い範囲を診れるので、医師の偏在で医師薄となった地域を支えるのに効率がよいということでしょう...でも、多忙でしょうね....

産科医療や小児科医療、救急医療の現場と同様、地域医療の崩壊は急速に進行しつつあります。このまま、人不足が続けば、医療の谷間のへき地診療所の集約化などにも手を付けなくてはならないでしょう...。

|

« 白血病治療と感染予防3 | トップページ | 新生児黄疸のはなし »

コメント

http://square.umin.ac.jp/pb165/mito/comp/lostdecade.html
83,060名(医師国家試験81-90回)- 76,766(同91-100回)= 6,294名がこの十年で養成抑制、医師の年齢構成も今の日本とおなじで逆ピラミッドであり、医局に自治体の長が頭を下げて割譲してもらうにも如何にも玉が少ない。いまから、逆回転して医学部定員を増やした所で、人的資源が入手されるのは2020年過ぎ。その頃には団塊の痴呆の群れの社会入院で病床も回らなくなる。2020年に110万人余の18歳が大学に入るが、医学部定員を往時に戻す、と140名に一人は「医者」にならないとやって行けない。田中角栄が1県1医大を整備する前は700名に1人しか、医師にならなかった。今年の18歳も180名に1人は医者になる。優秀だったら他の分野の産業活力を削ぎ、無能だったら医療過誤や事故が頻発するのも当然となる。かといって、養成数を単純に増やせないのはよってくだんのごとし。

投稿: sionoiri | 2006年5月12日 (金) 05時40分

>「多くの科に精通し専門医療への橋渡しをする医師、いわゆる「家庭医」導入の動きである。

多くの科とはどれほどを指すかが問題でしょうが、内科、小児科、それと昨今の現状からすると産科でしょうね。おそらくアメリカの家庭医制度をある程度手本に考えているのでしょうが、日本で言えばすべての医学部の自治医大化みたいなものを想定すれば良いのでしょうか。

噂にしか聞いたことはないのですが、自治医大の医師養成目標は家庭医に近いものであった気がするのですが、実態はどんなものかご存知ですか。もし自治医大のプログラムであっても必ずしも養成がうまく行っていないのなら、卒後研修を含めて医学教育を根底から変える必要がありますし、本当の意味での資格制度として家庭医、専門医の免許を分ける必要があります。

それと刑事免責制度も無過失保障制度も無い日本の医療で、複数の診療科で「医療事故」を絶対に起さない知識と経験を習得するまで、どれほどの歳月がかかるか気が遠くなります。

まさか新研修制度ぐらいで「多くの科に精通した医者」がポンポコ出来上がると妄想している人間がいるのであれば、ガソリンを背負って火事場に飛び込むようなものしか私には見えませんが、現実はいかがなんでしょうか。

投稿: Yosyan | 2006年5月12日 (金) 18時07分

こんばんは
shionoiriさま

数字を示してのコメントありがとうございます。医師養成数の多寡に関しては、ここでは議論しませんが、現状の医師数については拙ブログの記事でも取り上げております。OECD加盟国の中では人口千人あたりの医師数は最低レベルであることは、WHOの調査で実証されています。しかし、現状の医師不足(あるいは「医師不足感」ともいうべきかもしれません)は、総数よりもそのdistributionやproportionの問題によるところが大きいのではないか?と考えています。

新臨床研修制度が始まり、当然のことながら、大学病院は敬遠され、大都市の有名な病院に研修医が集まる。そして、地域には戻ってこない。matchingの結果がそれを物語っています。

それを是正するためには、sionoiriさまが言われる通り医師の養成数全体を増やすのではなく、分布を適正化するように努力するのが本筋であると考えます。

話は変わりますが、いただいたコメントを少々修正させていただき、1行目のURLに同URLへのリンクをはらせていただきました。今後とも、貴重な御意見を御寄せいただけましたら幸いに存じます。

投稿: befu | 2006年5月12日 (金) 22時18分

こんばんは
Yosyan先生

コメントをありがとうございました。
私はまさにそのJ医大の産物ですので、若干は参考になるかと思います。

<自治医大の医師養成目標は家庭医に近いものであった気がするのですが、実態はどんなものかご存知ですか。

他大学のことを存じませんので、比較はできませんが、私の育った時代はとにかく実地が多かったことが特徴でした。机上の勉強よりも、病棟に出て実習する時間が多いということです。あらゆる科目を回り実習するのですが、それがすべて医師になってから生きているとは言いがたいと思います。(ただ、卒後15年以上経過していますので、その間にはいろいろとカリキュラムも変更され、改善された点があると思います。)

<まさか新研修制度ぐらいで「多くの科に精通した医者」がポンポコ出来上がると妄想している人間がいるのであれば、ガソリンを背負って火事場に飛び込むようなものしか私には見えませんが、現実はいかがなんでしょうか。

新臨床研修制度を先取りして、スーパーローテイトにて初期研修しましたが、内科の初療、小外科などについては、まじめにやれば何とかなるかも?といった程度ではないかと思います。初期研修時に産婦人科では3ヶ月で60例以上お産につきましたが、さすがにお産はできません...(友人は一例だけとりあげた人もいますが...)

ただ、私も診療所に3年ほど行きましたが、それまでに野戦病院のようなところで鍛えられますので、そうは苦労しなかったように感じています。

投稿: befu | 2006年5月12日 (金) 22時40分

地方を中心とした「医療崩壊」が、すすんでいます。有効な特効薬は乏しいですが、すべての診療科において「無過失医療保障制度」が、早急に創設される事を、切望します。
この国が「医療と福祉を大切にする国」に、生まれ変わらない限り、産科医・小児科医・勤務医は
厳しいです。
 
   くたびれDr
  

投稿: Dr.usio | 2006年5月24日 (水) 16時55分

こんばんは
Dr.usio先生

コメントありがとうございました。

<この国が「医療と福祉を大切にする国」に、生まれ変わらない限り、産科医・小児科医・勤務医は厳しいです。

全くその通りと思います。医療の重要性を認識していただければいいのですが...政府首脳に...。一旦『焼け野原』にならないと無理かもしれませんが....

投稿: befu | 2006年5月25日 (木) 00時33分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/101068/10024789

この記事へのトラックバック一覧です: 地域医療の崩壊:

« 白血病治療と感染予防3 | トップページ | 新生児黄疸のはなし »