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2006年5月15日 (月)

アメリカでの医療訴訟

2006年5月15日 曇り時々晴れ

さて、今日はアメリカでの医療過誤訴訟の現状について記述された文献です。また、例によってNew England Journal of Medicineです。(これしか読めていません....)アメリカでは、救急車の後を医事紛争専門の弁護士が追いかけると例えられるように、医療過誤訴訟が多い国です。Harvard School of Public Healthより提出された、このSpecial Articleは医療訴訟の現状をコスト面から論じたものです。

NEJM 354:19 p.2024 May 11, 2006

Claims, Errors, and Compensation Payments in Medical Malpractice Litigation
訳:医療過誤訴訟における請求、過失、補償額

Background
In the current debate over tort reform, critics of the medical malpractice system charge frivolous litigation - claims that lack evidence of injury, substandard care, or both - is common and costly.
訳:(背景)医療訴訟は医療過誤をただして医療事故を減らすために多く行うべきだという論評の中、医療過誤システムに対して批判的な評論家は余り意味のない訴訟(医療による障害や標準レベル以下のケアによるものという証拠のないもの)が多くて、それに対して多くの犠牲を払っているとしている。

Methods
Trained physicians reviewed a random sample of 1452 closed malpractice claimes from five liability insurers to determine whether a medical injury had occured and, if so, whether it was due to medical error. We analyzed the prevalence, characteristics, litigation outcome, and costs of claims that lacked evience of error.
訳:(方法)判決済みの1452例の医療過誤訴訟を5つの信頼できる保険会社からランダムに選び出し、訓練された医師が医療による障害が起きていたか?そして、もし起きていたならば、それは医療過誤によるものか?を判定してもらった。医療過誤の証拠がみられない請求については、その割合、特徴、判決と費用について検討した。

Results
For 3 percent of the claims, there were no verifiable medical injuries, 37 percnet did not involve errors. Most of the claims that were not associated with errors (370 of 515[72 percent]) or injuries (31 of 37 [84 percent]) did not result in compensation; most that involved injuries due to error did (653 of 889 [73 percent]).
訳:(結果)全請求のうち3%は医療による障害を証明できなかった。37%は医療過誤を含んでいなかった。医療過誤と関連のないもの(515例中の370例[72%])と医療による障害と関連のないもの(37例中の31例[84%])では補償金は支払われていなかった。それに対して医療過誤による障害を含んでいるものについてはほとんど(889例中653例[73%])で補償されていた。

Payment of claims not involving errors occurred less fequently than did the converse form of inaccuracy - nonpayment of claims associated with errors. When claims not involving errors were compensated, payments were significantly lower on average than were payments for claims involving errors ($313,205 vs. $521,560, P=0.004).
訳:医療過誤を含んでいない請求に補償金が支払われるのは、その反対つまり医療過誤を含む請求に補償金が支払われないことよりも頻度が少ない。医療過誤を含んでいない請求に補償金が支払われる場合、その補償金は医療過誤を含む請求に支払われる補償金の平均よりも有意に少なかった。($313,205 と $521,560)

Overall, claims not involving errors accounted for 13 to 16 percent of the system's total monetary costs. For every dollars spent on compensation, 54 cents went to administrative expenses (including those involving lawyers, experts, and courts). Claims involving errors accounted for 78 percent of total administrative costs.
訳:全体として、医療過誤を含まない請求が医療過誤システムの費用に占める割合は13から16%にも上る。補償に使われる費用1ドルに対して、実に54セントが法律家や医療専門家、裁判所に支払われる管理費となっている。医療過誤を含む請求が全管理費の78%を占めた。

Conclusions
Claims that lack evidence of error are not uncommon, but most are denied compensation. The vast majority of expenditures go toward litigation over error and payment of them. The overhead costs of malpractice litigation are exorbitant.
訳:(結論)医療過誤を含まない請求は稀ではない、しかし、そのほとんどは補償金の支払いを否定されている。膨大な経費の多くが医療過誤裁判と、その補償金に当てられている。医療過誤裁判の総経費は途方もない額である。

日本とアメリカの間の差を感じる文献です。まだ、日本では訴訟のコストに関した文献は、医学雑誌にみたことがありません...(ただの勉強不足だったりして...)

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