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2006年5月

2006年5月31日 (水)

おしゃぶりについて

本日、2つ目の記事です。

「おしゃぶりであご変形」 母子がコンビに賠償提訴

だんだん、訴訟もアメリカナイズされているのでしょうか?

『訴状によると、おしゃぶりはドイツのメーカーが開発し、コンビが輸入した。少女は生後2カ月ごろから1歳まで1日約15時間使用。その後も3歳10カ月で歯科医に止めるよう言われるまで、就寝中に使った結果、あごが変形したほか、歯並びが悪くなった。
 歯並びは矯正治療で改善したが、「受け口」や舌足らずな発音、口でしか呼吸しないなどの症状が残ったという。』

訴状に対するコメントは避けますが、今後の指導はどうあるべきか?をまとめてみます。

小児歯科学会:おしゃぶりについての考え方には小児歯科学会と小児科学会の間で取り決められた方針が記載されています。

『おしゃぶり使用の考え方
  おしゃぶりは出来るだけ使用しない方がよいが、もし使用するなら咬合の異常を防ぐために、次の点に留意する。

(1) 発語やことばを覚える1歳過ぎになったら、おしゃぶりのフォルダーを外して、常時使用しないようにする。
(2) おそくとも2歳半までに使用を中止するようにする。
(3) おしゃぶりを使用している間も、声かけや一緒に遊ぶなどの子どもとのふれあいを大切にして、子どもがして欲しいことや、したいことを満足させるように心がける。子育ての手抜きとし便利性からだけでおしゃぶりを使用しないようにする。
(4) おしゃぶりだけでなく指しゃぶりも習慣づけないようにするには、(3)の方法を行う。
(5) 4歳以降になってもおしゃぶりが取れない場合は、情緒的な面を考慮してかかりつけの小児科医に相談することを勧める。』

要約すると、「なるべく子供と触れ合って、おしゃぶりを使わなくても育児できるようにしてください。」ということですね。一時期、「鼻呼吸を確立するためには、おしゃぶりを年長児になるまで使いましょう。」というようなキャンペーンがはられていましたが....これには、根拠が少ないようです。マスコミからの情報は、鵜呑みにせず良く吟味して使用した方がよいという一例でもあるかもしれません。

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リンク集を作りました

2006年5月31日 晴れ
向かって右側のカラムに日常的に徘徊(すいません巡回です)して回っているサイトのリンク集を作りました。これらのサイト、ブログは非常に参考にさせていただいています。

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2006年5月30日 (火)

医師不足の記事2

2006年5月30日 晴れ
少し、朝晩が涼しい数日です。昼と夜の気温差が大きいと気管支喘息の患者さんが調子悪くなります。一昨日の夜に一人、入院しています。

さて、医師不足の記事(毎日新聞より)

『医師が最も不足する場合、供給は2035年ごろまで需要を下回り、医学部の定員を5%増やしても、30年ごろまではほとんど効果がないという。』厚生労働省の「医師過剰」の論拠は、退役した医師や、女性医師の増加などを計算に入れていない様です。しばらくは、特に地域において深刻な医師不足が続く事になるでしょう....

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2006年5月29日 (月)

頭部打撲

2006年5月29日 晴れ
今日は、夕方に頭を打撲した後、耳から出血している。との患者さんがこられ、結局、後方病院に搬送しました。

3mほどの高さの遊具より転落し、どこかで頭部などを打撲した様です。左耳より出血があり救急車にて搬入されました。搬入された時には、意識は清明でお話もできましたが頭部CTを撮るうちに眠り込んでしまいました。CT上は、明らかな頭蓋内出血(注1)はありませんし、頭蓋底(注2)の骨折の所見もありません。

恐らく、『特にマズい状態ではないだろう』と思いながらも、『うちには脳外がないし、緊急時の対策がおくれるかも?』と考えて、後方病院へ同乗のうえ搬送しました。ついたころには、目が覚めてお話ができるようになっていましたが...

少し、疲れました....

(注1)頭蓋内出血:頭蓋骨の中の脳が入っている空間に出血が起こる事。閉鎖された空間であるため、大きな出血だと、中の圧力が上昇し、脳に行く血流が途絶え生命の危機を含む、重篤な状態となる。
(注2)頭蓋底:頭蓋骨のなかで脳を支えている骨の集まった部分。

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2006年5月28日 (日)

医師不足の記事

2006年5月28日 曇り時々晴れ

昨日が地域の輪番だったので、今日は一日お休みです。でも、入院患者さんがいれば、1回は病棟に顔を出すのですが....

日赤病院、67%が医師不足=小児科、産科で深刻−初の全国調査との記事が目に入りました。日赤病院は正式には赤十字病院といって、日本赤十字社が運営している、ほぼ公的といってよい病院群です。こういった病院でも医師は不足している状況が明らかになっているという記事です。

「日本赤十字社(東京)が全国で運営する92すべての病院のうち、67%に当たる62病院が医師不足を訴えていることが28日、分かった。」

「日赤は「特に小児科と産婦人科の医師不足が深刻。解消の特効薬はない」としており、小児科を休診したり、お産の受け入れをやめたりする病院が地方で相次ぎ、地域の医療全体に影響が及んでいる。」

『日本の医療は地方から崩壊が進んでいる』ということなのでしょうね....

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2006年5月27日 (土)

拒食症

2006年5月27日 雨

『Top of the world』などの世界的なメガヒットをとばしたカーペンターズのボーカル、カレンさんは32歳という若さで亡くなりました。(1983年2月4日)原因は拒食症(Anorexia Nervosa:神経性食思不振症)と呼ばれる、食事を摂らず、あるいは、食事を摂った後、意図的に嘔吐したりする事で体重減少を得ようとする病気にて「心停止した」ということです。

ここ数年で私が初診し診断した患者さんが数例おり、実質的に増加の傾向があるものと感じています。ここでは、病気の一般的事項と診断などについて触れますが、治療に関しては高度に専門的知識を必要とし、経験のある医師そしてスタッフがそろった施設でないと不可能であるため深くは触れない事とします。

いつもながら...小児科の教科書はNelson 16th ed.です。
The incidence of anorexia nervosa (AN) and bulimia has increased over the last 2 decades. It is esitimated that 1 in every 100 females, 16 - 18 yr old, has anorexia nervosa. A bimodal distribution occurs, with one peak at 14.5 and the other at 18 yr; 25% may be younger than the age of 13.
訳:神経性食思不振症と過食症の頻度はここ20年間増え続けている。16から18歳の女性100人に1人は神経性食思不振症をもっていると推計される。分布は2峰性で一つのピークは14.5歳、もう一つは18歳であり、25%は13歳以下で発症する。

DSM-Ⅳという精神疾患の診断基準では以下のようになっています。
(1) intense fear of becoming obese, which does not diminish as weight loss progresses;
(2)disturbance in the way in which one's body weight, size, or shape is experienced (e.g., claiming to "feel fat" even when one is emaciated or believing that one area of the body is "too fat" even when obviously underweight);
(3)refusal to maintain body weight over a minimal normal weight for age and height (e.g., weight loss leading to maintenance of body weight 15% below expected, failure to make expected weight gain during period of growth leading to body weight 15% less than that expected);
(4)in females, absence of at least three consective menstrual cycles when otherwise expected to occur (primary or secondary amenorrhea).
訳:
(1)過度の肥満に対する恐怖。これは、体重が減少してもなくならない。
(2)自分の体重や体の大きさ、形に対する感覚の障害。(例:やせ細って衰弱していても「まだ太っている」と訴えることや、明らかにやせているのに、体の中の一部分が「まだ太りすぎている」と信じているなど)
(3)身長や年齢から予測される最低限の標準体重を維持する事の拒否(例:標準体重の15%以下にまで体重減少が進む。その期間で増加が予測される体重増加の15%以下の増加となることなど)
(4)女性であれば、連続する3クールの月経が来ない、或は発来が予測される月経が来ない。(原発性あるいは二次性無月経)

Most youth are described as having been "model children" before the onset of the illness.
訳:病前は、ほとんどの子供が『模範的児童』と形容されるような子供である。

The death rate in AN is approximately 10% and is usually caused by severe electrolyte disturbance, cardiac arrythmia, or congestive heart failure in the recovery phase. Bradycardia and postural hypotention are common, with pulse rates as low as 20 beat/min. Both improve with nutritional therapy.
訳:神経性食思不振症の死亡率は約10%とされ、通常は重度の電解質異常や不整脈、回復期における「うっ血性心不全」が原因とされる。徐脈と体位性低血圧はよくみられ、脈拍が20/分程度まで減少する。どちらも、栄養管理による治療にて改善する。

Death from congestive heart failure is a late event and may result from unduly rapid rehydration and refeeding. On a regimen achieving a daily weight gain limited to 0.2-0.4kg, none of our patients has experienced this complication.
うっ血性心不全による死亡は過度な急速輸液や栄養負荷による晩期合併症である。1日の体重増加を0.2から0.4kgに制限した治療では、この合併症をおこした患者はいない。

以上が、神経性食思不振症の一般的特徴ですが、私のこの病気に対する感覚は『エネルギーのある病気』です。辛い(はずの...)食事制限を自分で課した上、通常であれば倒れてもおかしくないようなやせ、徐脈、低血圧でも、患者さんは平気な顔をして、ニコニコしています。だからこそ、治療が難しいということではないか?と思っています。治療は、前述の全身状態の改善と、食行動に対する行動療法がメインとなると思いますが....患者さんは「何故太らなくてはならないのか?」理解できないこともあります。その場合、カロリー摂取を控えた上(或は一旦食べたものをわからない形で吐いて)、日々の体重測定の時に、「コインを体に貼付けてのぞむ」というようなこともおこりえます。

ここまで書いてくると理解できると思いますが、治療に関しては経験のある医師が、経験のあるスタッフがそろった施設で慎重に行う必要があります。また、全体の死亡率が10%という高いものであるということを知っておかなければなりませんし、初期の徴候を見つける努力が必要と感じています。

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2006年5月26日 (金)

小児科の不採算性

2006年5月26日 雨
今週は、時間外の呼び出しや、その他の仕事が多く疲労が蓄積し、とうとう昨日は更新できずに眠ってしまいました。

さて、前の記事のコメントで紹介するとしていました文献です。同じ日本小児科学会雑誌のものです。

「良質な医療の提供と効率化を目指した病院小児科改革」

<要旨>

当院小児科は、2002年4月より、それまで4名だった小児科医を7名まで増員し、2交代制による小児科24時間体制で、主に小児救急医療に対応できるようにした。収益増を目標にはせず、医療の質の改善と効率化を目指し、過剰医療の削減と業務内容の特化を図った。その結果、救急受診患者数と入院患者数は大幅に増加したが、診療収入の増加は僅かだった。しかし、当院小児科は、診療内容の特化や過剰医療の削減による業務の効率化により、7名の小児科医で、時間的に過剰労働にならずに小児科24時間体制を維持している。当院はすでに急性期病院として運営されており、他科に比し小児科の診療単価があまりにも低いため、小児科は診療収入を増やす努力をしても、病院全体への収入の面での貢献は僅かでしかない。良質の医療を効率よく提供できるように努力することの方が、病院の質の向上と負担の軽減の面から、より病院に貢献できるのではないかと考えている。

[日本小児科学会雑誌 110巻 5号 703〜707 (2006年)]

ここで、過剰医療の削減とは本文中に「受診回数の減、入院期間の短縮を目指す」とされ、業務内容の特化とは「紹介患者、救急患者については100%受け入れる」ということで、その他の部分、例えば慢性重症患者さんや新生児救急、一般の日常診療の部分についてはできるだけ排除している様です。そして、小児科医の過剰労働を排除するために、「当直制ではなく2交代制にて運営する」とされています。

この改革を行う事で、小児科の時間外外来患者さんは平成13年から平成16年にかけて約6.2倍に増加、全体の外来患者さんは55.6%増加しているというすごい数字です。しかし、診療収入は外来で120.6%増加したが、入院では10.7%しか増加せず、全体として36.1%の増加にとどまったようです。

更に、小児科の60%以上の患者さんは時間外加算(注1)されていますが、それでも病院全体の平均外来単価(注2)の51.3%でしかないとのことで、「いかに小児診療が不採算であるか」が如実に語られています。

ここまでくると、「日本の小児医療の評価には構造的な欠陥がある」とまで思えそうです。良質の医療を効率的に提供しようと改革を断行した病院小児科が、病院内の収入の面では「肩身の狭い」思いをする事になっています。

「小児科の不採算性」は日本の診療報酬体系に起因するものと考える事ができます。

(注1)時間外加算:時間外に外来受診した場合、通常時間に受診した場合の報酬に加えて病院に支払われる報酬のこと。
(注2)平均外来単価:その患者のその日の外来受診で病院がもらえる報酬の事を外来単価という。診療科ごとに合計し患者数で除したものが各診療科平均外来単価で、病院全体で平均をだしたものが「病院全体の平均外来単価」となる。

最後に、この論文の中の強いメッセージを.....
「小児科医の使命感による過剰な献身的努力は、日本の小児医療が社会基盤として未熟であることを、社会から隠してしまっている可能性がある。つまり、小児科医の過剰な献身的努力が、社会の要望に応えられる小児医療体制の構築を遅らせていることになる。」.....考えさせられます。

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2006年5月24日 (水)

小児救急外来とニーズ

2006年5月24日 晴れ
今日はこのほど届いた、日本小児科学会誌の中から『小児救急外来受診における患者家族のニーズ』という原著です。

<要 旨>

目的:小児救急外来受診における患者家族のニーズを明らかにする。

方法:2004年1月19日〜25日の1週間に全国6地区、48医療機関でアンケート調査を施行した。問診票と併用する形で診察前に記入を依頼した。4,949名が回答した。

結果:年齢は3歳未満41%、7歳未満73%、曜日別患者数は平日7〜9%、土曜日23%、日曜日35%。受診時間帯別患者数は深夜帯(0〜7時)12%、日勤帯(8時〜16時)51%、準夜帯(17時〜23時)37%。来院にかかる時間は30分以内がほとんど(87%)。交通手段は自家用車が多い(84%)。受診理由は急病に対する親の不安・早期治療希望89%、非改善・小児科医の診察希望37%、親の仕事27%であった。症状は頻度別に発熱、嘔吐、インフルエンザが心配(11%)、咳嗽・喘鳴、腹痛等であった。救急医療施設の情報入手法はかかりつけ医28%、知人・親戚23%、自治体情報誌21%であった。今後の情報入手手段としてインターネットや携帯電話を利用したい66%、電話相談に期待する77%であった。受診不要と判定された者は28%であった。

結論:小児救急外来受診は乳幼児が多く、週末の需要が高い。主たる受診理由は親の不安・早期治療希望で、他には小児科医の診察希望と親の仕事がある。半数がかかりつけ医や知人から小児救急医療機関についての情報を得ている。今後の新しい情報手段としてインターネットや電話相談が期待されている。

[日本小児科学会雑誌 110巻5号 696〜702 (2006年)]

小児救急外来を受診する理由は、「親の不安・早期治療希望」がもっとも多く約9割を占めている様です。この他、受診した子供の兄弟順では1人目が最も多いという結果も本文中に示されており、少子化により親御さんが子供の病気に慣れない状況が生じ、また祖父母の貴重な援助も核家族化により余り受けられなくなったことなどが複合的に影響して受診数が増えているということの様です。これは、既に構造的な問題となっており、なかなか改善させる事は難しいと感じます。

こういった親御さんの不安に対処するための体制を作るとなれば、恐らく今の数倍、小児科医は必要であろうと思います。近くの、ある市立病院では小児科医は7人以上で、24時間体制で診ています。今後は、地域の小児科も集約化を進め、このようなセンター施設で診ていく他は、方法がないのでは?とも考えています。

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2006年5月23日 (火)

小児科志望の数

2006年5月23日 曇りのち雨

厚生労働省が行った、初期研修2年目の医師に行ったアンケートの結果が発表されています。

『新人医師が2年間義務付けられている臨床研修の修了後の進路として、不足が指摘されている小児科を希望する人が、内科、外科に次いで多いことが23日、厚生労働省の調査でわかった。』ということです。
少し、良い風が吹いてきたか?とも思いますが....

『小児科と同様、医師不足が問題となっている産婦人科は4・8%で8位だった。』と、周産期を支えるもう一つの車輪の方は、必ずしも「良い風が吹いている」とはいえない状況です。

また、このアンケートの回収率は『今年3月に研修2年目だった医師7344人を対象に行い、2500人から回答があった。』と約3割程度であり、アンケートに答えた方と答えなかった方の間に何らかのバイアスが生じれば、ひょっとすると全体の傾向から離れたような結果となっているのかもしれません...

そして、厚生労働省はこの結果をもって一安心している様ですが...この3年目の医師たちが育つまで、まだまだ年月がかかるということを考えに入れておかなければなりません。

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2006年5月22日 (月)

小児科の救急診療

2006年5月22日 晴れのち雨
昨日に続き、病院は結構な大忙しでした。日勤帯では、久しぶりに腸重積の児がきて、何とか空気整復で整復できました。外来は6時30分までかかりましたが、病棟でカルテを記載していると、全館にコードブルー(緊急呼び出し放送)で救急室へ、くも膜下出血の患者さんと、脳内出血の患者さんが続いて搬入されたようでした。どちらも、意識状態が悪く気道確保の上、脳外科のある施設に搬送1例、当院で保存的に...1例。

話は変わりますが、南日本新聞に鹿児島市夜間急病センターの記事が...

『運営する同市医師会によると、4月の利用者総数は2089人で昨年4月の1487人に比べ4割増えた。新設の外科が213人、内科は549人(前年411人)、小児科1223人(同1055人)。市外からの患者も多いという。』夜間診療で多くみえるのが、小児の患者さんですが、この統計でも半分以上が小児患者さんです。

『一方、小児科は患者の増加が問題になりそうだ。同科には特に休日、患者が押し寄せる。4月の最高は1日99人。連休中の5月4日は137人にのぼり、待ち時間は最長2時間近くに及んだという。同日担当した太原博史医師は「初めて診る子には、普段の状態や病歴など問診が多く慎重になる。時間がかかり、早急な診察や措置が必要な子には気の毒」。』一人の担当医でこの数を診ているのか?が疑問ですが...かなりのハードさです。私も、地域の輪番で、冬期の休みに日勤帯の外来をする事がありますが、これほどの数にはなりません。この位の数になると、重症、非重症をキチンと短時間で分別できる技量がないと危険ですし、最低限の応急処置をできる能力が必要と思われます。

『微熱での受診、平日には仕事を抱える親が昼に時間を取れず、連れてくるケースもあるという。同医師は「利便性だけが浸透し、夜間診療所化してしまった。本来の目的である急患対応が遅れかねない」と懸念する。』これは、夜間診療を行っている施設はどこも同じ悩みを抱えているのだと思います。ここまで、核家族化が進行し、育児について祖父母の貴重な援助も得られないとなると、育児不安から夜間にも受診する数が増えるのであろうと考えます。また、両親共働きで仕事を休めず、その時間帯しか医療施設に連れて行けないという方もいる様ですが...こういった要望に応えていくためには、いまのような青色吐息状態の小児科医療では追いつかず、小児科を支える人間が増えなければならないように思います。

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2006年5月21日 (日)

多忙による影響

2006年5月21日 晴れ
今日は地域の輪番の日でした。昏睡で搬入された脳出血の患者さんに気道確保の上、脳外科のある病院へ転送など結構バタバタでした。小児科の外来患者さんを診ながらなので、一方では『待たせてしまって申し訳ない』と言う気持ちが...

アメリカの論文で『研修医の労働時間と医療ミスの関連』を論じたものがあったのですが、どこにやったか?忘れてしまいました...が、5月15日付けの岩手日報の記事では看護職員の多忙さと医療ミスについて記述されています。

この調査は、看護職員に対するアンケート調査であるため、あくまで主観的な評価である事を考慮しておかなければなりませんが...『「最近、業務量が増えた」と答えたのは71.4%で、前回調査(2000年)より6.7ポイント増加。さらに「この3年間にミスやニアミスを起こしたことがある」全国調査を1ポイント上回る87.1%に上り、看護職員の過酷な労働環境が浮き彫りになった。』と記されています。

数年前だったか?ある高名な医療過誤を検証している医師の先生がテレビに出演されていて、その中で『ミスを忙しさのせいにしてはいけない!』と仰っていました。確かにミスは自分の責任だとは思いますが、医療をとりまく環境を整備しミスが生じにくくする方策を考える事も必要ではないか?と考えます。

私の勤めている病院でも、看護師さんは1日中走り回っています。このような状態で、患者さんに十分なケアができるのか?いつも心配してみています....。

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2006年5月20日 (土)

すごい記事(続き)

本日未明に公開した記事の続きです。
拙ブログ:すごい記事のコメントに、産科でのこのような状況はどの程度の頻度であるのか?を質問する方がおられましたので、少しまとめてみたいと思います。

はじめに、私は小児科医で新生児科と産婦人科は初期研修の折に、少し修行しておりますが、以後それを生業としておりませんし、臨床経験があるものではありません。ここで、お話しする内容については、一般的に文献などで示されている範囲のものですので、その部分を御考慮の上、御参照いただけましたら幸いです。

まず、この患者さんの状態を検討します。

『当直帯への移行と同時に外線あり。「産褥婦(注1)!!子宮からの出血が止まらず搬送をお願いします。」』
とのことですので、お産の終わった患者さん(母体)で子宮からの出血が止まらない状態です。特に産科では、産後の出血が止まらない状態は重篤で、母体死亡につながりかねない急を要する状態であると思われます。

(注1)産褥婦:お産を済ました後の妊婦さん。

ここで、産科領域での出血に関する疾患を考えると....
前置胎盤、常位胎盤早期剥離、子宮外妊娠、頚管裂傷、子宮破裂、弛緩出血などがあります。この事例を考えると、「胎児娩出後(つまり新生児は出生している)で、子宮からの出血が止まらない状態です。」そうすると、頚管裂傷や子宮破裂、弛緩出血などが考えられるのではないかと思います。

また、『教授「解剖学的位置がわからないなぁ。子宮が弛緩しちゃって…。慎重にいくぞ。」』とのことですので、子宮は弛緩しており弛緩出血が関与していると考えられます。しかし、続いて『「あ!!ここだ!ここが裂けてる!」』との記述があり、開腹した状態での所見から考えると、恐らく子宮破裂(それも完全子宮破裂)であったのではないかと示唆されます。

ということで、このブログの記述から考えられる患者さんの状態は、1.子宮破裂、2.弛緩出血の要素も伴っているということでしょうか?

続いて、子宮破裂の頻度ですが...これには日本産婦人科学会誌第51巻5号 N-123〜を参照させていただきます。

その中で『子宮破裂 定義:妊娠又は分娩中に起こる子宮裂傷をいい,裂傷の程度により子宮内腔と腹腔が交
通する完全子宮破裂と,子宮筋層のみに止まる不全子宮破裂に分類される.
頻度:約3,000分娩に 1例
病因:帝王切開術や子宮筋腫核出術後の瘢痕子宮破裂が多い.破裂は既往手術瘢痕部に多く,特に側壁の子宮縦径,斜径に沿って発生する.
臨床症状:破裂部位や程度により異なるが,病的収縮輪の出現,破裂部位での激痛,陣痛の停止,胎児心拍の減少ないし消失,先進部の後退などがみられる.
診断:上記症状を認めればこれを疑う.CTG上,胎児仮死や子宮収縮の欠如が確認される.
治療:緊急開腹手術(帝王切開術,子宮全摘術,内腸骨動脈の結紮) 〈分娩直後の出血〉分娩時500ml 以上の出血は異常出血として扱う.弛緩出血,子宮内反症,産道裂傷,癒着胎盤,胎盤遺残などがある.』

分娩3000例に1例という比較的稀な疾患であると思われます。通常の合併症を伴わない妊娠を扱っている産科施設で、年間300例分娩があったとすると約10年に一度の頻度と思われますが、舞台は大学病院で緊急手術を相当数あつかっている様子ですので、このような患者さんは非常に濃縮されてくると思います。仮に10倍に濃縮されたとして1年に1回『子宮破裂』の患者さんが来るという事になります。(あくまで仮定上の話ですが、舞台となった大学病院が年間300例の分娩を扱う施設を10個関連病院として持っていたならば、単純に計算すると「10倍に濃縮される」と考えられます。)

更に分娩の経過上、非常に怖いとされる『常位胎盤早期剥離』は全分娩の約0.9%に起こるとされています。→参考サイト
これは約1%ということなり年間300例の施設で年間3例程度経験する事になります。更に前述の10倍の濃縮が起これば年間30例ほどあるような状態となります。

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これから先は自分の経験の話ですが、私が数年前に勤務していた病院には産科が併設されていました。(もちろん1人医長でした...(悲))年間100例程度の分娩でしたが、出産があると必ず小児科医として付き添っていました。ある日、ある妊婦さんが胎児仮死徴候(注2)があるとのことで緊急で帝王切開となりました。帝切決断から30分以内には児は娩出されていたと思いますが、新生児の状態を表すApgar score(注3)は1分の値で1点と非常に厳しい新生児仮死の状態でした。何とか新生児を蘇生してNICU(新生児集中治療室)のある病院に送り届け、脳性麻痺などにならずに経過しました。
この時の原因はやはり常位胎盤早期剥離だったのですが、発見が早かったので母体もそこまで影響を受けずに済みました。しかし、同じ病院で過去には新生児死亡の例もあり、その時は「たまたまラッキーであった」と思わずにはいれません。
(注2)胎児仮死徴候:超音波を用いて胎児の心音と子宮の収縮を同時に記録する分娩監視装置を使用した所見で、胎児の心拍数が持続的に徐脈であるなどの、胎児の状態が悪いと考えられる徴候。
(注3)Apgar score:新生児の体色、呼吸、心拍、筋緊張、刺激に対する反応を出生後1分と5分で計測して新生児の状態を把握する尺度。7点以下は「仮死あり」とする。

「赤ちゃんが産まれてくる」ということは大抵の方にとって、一生のうち最も幸せな事の一つと思います。日本では、周産期医療が発達し世界でもトップレベルの妊産婦死亡率、乳児死亡率、周産期死亡率の低さを誇っています。しかし、妊産婦の死亡も含めて、「お産」は完全に安全にはなり得ません。それは、周産期医療に携わるものが100%の努力をしても...です。そして、家族やその御本人にとっては、「自分(或は自分の係累)がすべて」なのです。上記のことが総合されて、お産にまつわる事故や死亡は訴訟に発展することが多いのだと思っています。

実際に事故や死亡として表れてくる数、頻度は少ないかもしれませんが...その1件が後に訴訟や、場合によっては「自らの医師生命を絶つ事になるかもしれない。」と考えれば相当なストレスになると思います。

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すごい記事

日付は変わって2006年5月20日です。
このブログの記事はすごいですね→産婦人科残酷物語Ⅱ:atrue story

一読をオススメします。

産婦人科医や新生児科医のみなさま、おつかれさまです。

しかし、器械出しをするところがすごいです。いざとなれば何でもできるBermuda先生に感服...

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2006年5月19日 (金)

ペシャワール会

2006年5月19日 雨のち晴れ
ペシャワール会はパキスタンなどで診療所などを運営しているNGO(非政府組織)です。代表は、中村哲医師で九大医学部出身、1984年からペシャワルに入り活動を続け、既に22年となるそうです。

西日本新聞に記事がありました。

その中で、『優劣や善悪といった考えではなく現地の人をいかに理解するかが大切』との言葉がありました。国際貢献という仕事は、当然のことながら日本国内での判断の基準は通用しないということですね...勧善懲悪は見た目も聞こえも良いですが、それだけでは成熟が足りないのでしょう。

含蓄のある、深い言葉です。

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2006年5月18日 (木)

モデル事業の問題点

2006年5月18日 雨
日本産婦人科医会栃木県支部:「医療関連死の調査分析モデル事業の現況と将来」「異状死」届け出制の問題点の中で同モデル事業の問題点が指摘されていました。

このモデル事業とは、医療の経過の中で死に至った患者さんの中で「事件性のあるもの」を除いた方をその死の原因を調べるといったもので...『調査対象は、事故など外傷が寄与した可能性のある事例、安楽死・故意殺、悪質な隠蔽、そして重大な過失などは警察に届け出るべきであるが、それ以外はモデル事業の対象になる。言うまでもなく、遺族の同意が必要である。』
『届け出窓口としては、総合調整医が事情を聴取し受け入れの可能性を検討する。医療承諾解剖は法医・病理・臨床医の3者が協力して行い報告書を作成する。臨床専門医は、解剖に協力するとともに評価結果報告書案を作成し、地域評価委員会が最終結果報告書を作成する。評価委員会は、解剖評価報告書の内容を検討し、承認あるいは提言する。』となっています。

まとめると、「(事件性のない)医療事故の可能性のある死亡例を、患者さんを解剖させていただいて原因を調べる。」といったものですが、いろいろな問題点がある様です。

『本事業の前提としているところは、解剖(司法・病理)によって死因が究明できることを前提としているが、医療事故において、解剖が実際に果たす役割は期待されるほど大きなものではない。本事業の本質的なところがこの解剖にあるとすれば一種の幻想であろう。』
確かに、解剖だけでは不十分で、前後の経過などの総合的な判断が必要だろうと思います。

『その他、本事業では、モデル地区のみを対象としていること、人材育成への配慮が不十分であること、死亡例、解剖については遺族の同意を前提としていること、評価結果報告書の提出のみで完結していること、予算が十分でないこと、医師法や死体解剖保存法との関連、医療への司法介入のあり方など多くの問題点が残されている。』
こういった事業は全国で普遍的に行いデータを集めるべきと考えます。また、文面を読む限りでは、人材にはかなりの技量が要求され、なおかつ医療側、患者さんどちらにも与しない中立性が必要です。このような人材を育成する事ができるのか?危惧されます。

既に、このモデル事業は第1号の答申を出しています。参考のブログ→新小児科医のつぶやき:第3者評価機関モデル事業1号この結果は、医療者側からみると、なかなか受け入れる事が難しそうです。人選の問題、中立性の問題、予算の問題、どれをとっても問題だらけですが...誰もにある程度納得して結果を受け入れていただけるような、そういう真の「第3者機関」ができることを願ってやみません。

追記:周産期医療の崩壊をくい止める会HPに参考になる資料が列記されています。

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2006年5月17日 (水)

産科婦人科学会の見解

2006年5月17日 雨 風が強い
福島県立大野病院の産婦人科医不当逮捕事件で、産科婦人科学会が本日あらためて見解を発表しました。

その中で、「本件の転帰に関してはたいへん心を痛め、真摯に受け止めておりますが、外科的治療が施行された後に、結果の重大性のみに基づいて刑事責任が問われることになるのであれば、今後、外科系医療の場において必要な外科的治療を回避する動きを招来しかねないことを強く危惧するものであります。」と、強い調子で『結果責任』の追求をすることにより生ずる不利益を訴えています。

今後は、このような(私見ではありますが)過失のない医療事故については、司法の手で裁くのではなく、臨床経験の豊富な医師と法曹界の人間、また一般の方々の意見を交えた形での専門機関にまずは委ねるという事が必要であろうと思います。また、無過失で結果が重大な場合には、それを補償する制度も必要であろうとも考えています。現在の日本においては、このような医療事故の場合は、医療サイドに過失がない場合は民事的にも補償されません。それを救済する制度は必要なように思います。

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2006年5月16日 (火)

麻疹の流行

2006年5月16日 雨

しばらく、流行していなかった『麻疹』が関東で流行中のようです。

記事では

『同センターなどによると、茨城県牛久市の小学校と取手市の私立中・高校など、同県内の計11の学校や保育所などで4月以降、今月15日までに、疑い例も含めて計83人の患者が出た。私立校には東京都や千葉・埼玉県からも生徒が通い、こちらにも流行が広がる可能性がある。千葉県鎌ケ谷市の高校でも4月から今月15日までに21人が発症した。』とのことで、免疫をもっていない方には発症する危険があります。

麻疹は麻疹ウィルスによるヒトからヒトの感染症で、感染様式は空気感染(注1)で広く感染が拡大する傾向があります。麻疹(はしか)の説明ですが...

1.非常にタチの悪い感染症で、免疫力をボロボロに低下させるので、10人に1人ぐらいは肺炎や中耳炎を合併する。

2.1000人に1人は脳炎を発症する可能性があり、その場合は生命にかかわるようなこともありうる。

3.特効薬はなく、支持療法が基本的である。また、昔は『はしかは冷やすな』といわれたが、今は熱が上がれば冷やしている。

4.感染力は非常に強く、接触したヒトに免疫がなければ95%程度は発症すると思われる。1回罹患すれば生涯再びかかることのない、終生免疫とされている。

5.亜急性硬化性全脳炎といって、はしかに罹った後数年から10年程度して発症する予後不良の脳炎があり、かかったヒト数十万人に1人程度、出現する。

以上、タチの悪い感染症です。罹患歴、予防接種歴のない方は注意が必要です。(特に医療関係者のかたは注意が必要です。)

(注1)空気感染:患者さんから出されるウイルスが粒径5μm以下であり、空気中を長時間浮遊して感染させる感染様式。患者さんの近くに居なくても、同室あるいは空気のつながりのある別室においても感染が成立する可能性がある。

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2006年5月15日 (月)

アメリカでの医療訴訟

2006年5月15日 曇り時々晴れ

さて、今日はアメリカでの医療過誤訴訟の現状について記述された文献です。また、例によってNew England Journal of Medicineです。(これしか読めていません....)アメリカでは、救急車の後を医事紛争専門の弁護士が追いかけると例えられるように、医療過誤訴訟が多い国です。Harvard School of Public Healthより提出された、このSpecial Articleは医療訴訟の現状をコスト面から論じたものです。

NEJM 354:19 p.2024 May 11, 2006

Claims, Errors, and Compensation Payments in Medical Malpractice Litigation
訳:医療過誤訴訟における請求、過失、補償額

Background
In the current debate over tort reform, critics of the medical malpractice system charge frivolous litigation - claims that lack evidence of injury, substandard care, or both - is common and costly.
訳:(背景)医療訴訟は医療過誤をただして医療事故を減らすために多く行うべきだという論評の中、医療過誤システムに対して批判的な評論家は余り意味のない訴訟(医療による障害や標準レベル以下のケアによるものという証拠のないもの)が多くて、それに対して多くの犠牲を払っているとしている。

Methods
Trained physicians reviewed a random sample of 1452 closed malpractice claimes from five liability insurers to determine whether a medical injury had occured and, if so, whether it was due to medical error. We analyzed the prevalence, characteristics, litigation outcome, and costs of claims that lacked evience of error.
訳:(方法)判決済みの1452例の医療過誤訴訟を5つの信頼できる保険会社からランダムに選び出し、訓練された医師が医療による障害が起きていたか?そして、もし起きていたならば、それは医療過誤によるものか?を判定してもらった。医療過誤の証拠がみられない請求については、その割合、特徴、判決と費用について検討した。

Results
For 3 percent of the claims, there were no verifiable medical injuries, 37 percnet did not involve errors. Most of the claims that were not associated with errors (370 of 515[72 percent]) or injuries (31 of 37 [84 percent]) did not result in compensation; most that involved injuries due to error did (653 of 889 [73 percent]).
訳:(結果)全請求のうち3%は医療による障害を証明できなかった。37%は医療過誤を含んでいなかった。医療過誤と関連のないもの(515例中の370例[72%])と医療による障害と関連のないもの(37例中の31例[84%])では補償金は支払われていなかった。それに対して医療過誤による障害を含んでいるものについてはほとんど(889例中653例[73%])で補償されていた。

Payment of claims not involving errors occurred less fequently than did the converse form of inaccuracy - nonpayment of claims associated with errors. When claims not involving errors were compensated, payments were significantly lower on average than were payments for claims involving errors ($313,205 vs. $521,560, P=0.004).
訳:医療過誤を含んでいない請求に補償金が支払われるのは、その反対つまり医療過誤を含む請求に補償金が支払われないことよりも頻度が少ない。医療過誤を含んでいない請求に補償金が支払われる場合、その補償金は医療過誤を含む請求に支払われる補償金の平均よりも有意に少なかった。($313,205 と $521,560)

Overall, claims not involving errors accounted for 13 to 16 percent of the system's total monetary costs. For every dollars spent on compensation, 54 cents went to administrative expenses (including those involving lawyers, experts, and courts). Claims involving errors accounted for 78 percent of total administrative costs.
訳:全体として、医療過誤を含まない請求が医療過誤システムの費用に占める割合は13から16%にも上る。補償に使われる費用1ドルに対して、実に54セントが法律家や医療専門家、裁判所に支払われる管理費となっている。医療過誤を含む請求が全管理費の78%を占めた。

Conclusions
Claims that lack evidence of error are not uncommon, but most are denied compensation. The vast majority of expenditures go toward litigation over error and payment of them. The overhead costs of malpractice litigation are exorbitant.
訳:(結論)医療過誤を含まない請求は稀ではない、しかし、そのほとんどは補償金の支払いを否定されている。膨大な経費の多くが医療過誤裁判と、その補償金に当てられている。医療過誤裁判の総経費は途方もない額である。

日本とアメリカの間の差を感じる文献です。まだ、日本では訴訟のコストに関した文献は、医学雑誌にみたことがありません...(ただの勉強不足だったりして...)

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2006年5月14日 (日)

隠岐の産科について(続き)

2006年5月14日 曇りのち晴れ
昨日に引き続き隠岐の件です。NEJMの「アメリカにおける医療訴訟の現状」の文献は明日以降とします...。

隠岐の産科の件は一応の決着をみたようです。→隠岐病院、11月から複数医師赴任

「島根県隠岐の島町の隠岐病院が、常勤の産婦人科医師を確保できず院内出産への対応を断念した問題で、同病院を運営する隠岐広域連合(連合長・松田和久隠岐の島町長)は十三日、十一月から複数の常勤医師の派遣を受けられるめどが立った、と発表した。島根県が新たに医師を確保したためで、島内での出産が再開できる見通しとなった。

 県や同連合によると、赴任の内諾を得たのは県外の医師。離島での一人体制では医師の負担が大きく、複数体制の構築が課題だったが、県が医師を確保できたことで県立中央病院(出雲市)が支援体制を組めるようになった。同病院からの派遣も加え、二人体制での常駐を想定している。」

とのことです。62歳の医師一人での派遣よりは一歩前進したかもしれませんが、産科婦人科学会の提言の中では「集約化を進め、1施設あたり3人以上とするのが望ましい」ということですが...2人です。でも、これが現時点での精一杯の線なのでしょうね...

この記事の解説の部分で、地域医療機関への医師派遣の役割を持つ島根大学に「医局」人事でなく、「大学」人事としての医師派遣を一貫して求めた。と受け取れる記述がありますが...これは、ちょっと妙な感覚を受けます。

大学は医師を養成する機関ですが...その所在地の自治体に医師を派遣しなければならないという義務はないはずです。(それがあれば、こんなに医師の偏在が問題になっていないと思いますが....)そして、それを行うのであれば、入学時に「あなたは、卒業後、島根大学の医局に属し、なおかつ県内の医療機関で働く事」という契約書を作らなければ、重大な人権侵害になるのではないかと....思います。

また、新聞記事からは読み取りにくい、この地域の医療をとりまく事情が本件に大きく影響しているのではないか?と考えます。「拙ブログ記事:隠岐の産科についてのコメント」

話を戻しますが、この隠岐問題は2名の複数体制を構築する事で、一応の決着をみようとしています。しかし、基本的な目標(産科婦人科学会の提言)には届いていません。そして、地域を支える産科医師が減少しているという問題には何ら解決をもたらすものではありません。日本の周産期医療の現場が健全化することを願ってやみません。

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2006年5月13日 (土)

隠岐の産科について

2006年5月13日
今日はちょっと疲れ気味です。NEJMの医療訴訟に関した記事をupしようと思っていましたが...こちらの記事が気になったので....

隠岐島内での出産再開不透明に中国新聞5月11日

「島根県隠岐の島町の隠岐病院が、常勤の産婦人科医師を確保できず院内出産への対応を断念した問題で、後任候補だった安来市立病院の男性医師(62)が、現地での出産や診療のバックアップ体制の不安を理由に赴任を保留していることが、十日分かった。島内での出産再開への見通しは不透明となった。」

隠岐では、隠岐病院の産科が撤退し島内に産科医が不在となりました。これは、昨今の産科医の激減及び訴訟リスクの高さのゆえ、常勤医が1人から2人程度の小さな産科への派遣が見合わされてきている事などが影響したものと思います。産科婦人科学会でも産科の集約化について公式に提言がなされている現状であり、これは致し方のないことと考えます。

さて、不在になった隠岐病院に62歳の産科医の先生が赴任する事が決まったという報道が、その後、流されました。話を聞く限りでは、62歳という(産科医の激務を考えると)高齢であり、大丈夫かな?という、その先生に対して少し失礼にもとれる感情をおぼえたのですが...やはり、このような結末を迎えそうです。

日本の産科医療は、小児科医療の現場よりも多分深刻な状況と思います。地域にある産科施設のいくつかを閉じて、その中の一つ或は二つぐらいに産科医を集約して、お産のリスクの軽減、産婦人科医の環境を整備するのが「集約化」ということですが、今の産科医療の危機を何とかして越えるためには必要悪であるとも考えます。

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2006年5月12日 (金)

新生児黄疸のはなし

2006年5月12日 曇り

今日は新生児黄疸の話です。新生児には黄疸がつきものです。(中にはほとんど可視性の黄疸のない児もいますが...)黄疸は血液中のビリルビンという物質が増えてくると、皮膚や眼球結膜(注1)が黄色く染まってみえることです。このビリルビンという物質は、赤血球の中に含まれている、酸素を運ぶために重要なヘモグロビンという物質が分解され、更にヘムという物質が分解されてくる時に生じます。通常、赤血球の寿命は120日とされています。血液の中の赤血球の量が一定だとすると、だいたい1日に120分の1程度が壊れ、ビリルビンとなっていきますが、それは肝臓で適切に処理され(これを、「代謝する」といいます)黄疸にはなりません。
かたや、新生児ではお母さんのおなかの中では、このヘモグロビンが胎児型のタイプで成人型のタイプとは違うのです。よって、産まれてからはその胎児型のヘモグロビンを成人型に変化させていかないと外界には適応できないため、急速に赤血球を壊し、新たな赤血球を作っていきます。ですから、ビリルビンが生成されて新生児には黄疸がつきものということになります。
しかし、まれにこの赤血球の壊れ方が異常にはやい児がいます。その中には、お母さんと新生児の間で血液型が不適合の場合やその他のこわれやすい赤血球をしている場合があります。(もちろん、そういう異常がなくても壊れるのがはやい児もいます。)その場合、異常に黄疸がひどくなり、そのビリルビンが脳の中の基底核というところに沈着して「核黄疸」という状態となることもあります。そして、脳性麻痺といわれる、四肢の麻痺や発達の遅れ、けいれんなどをあわせもった病気へと進行する事があります。
(注1)「しろまなこ」のこと。

通常、血液中のビリルビンが30mg/dlという値を超えると、「核黄疸」を示してくるとされていますが、それ以下のレベルではどうなのか?明らかではありません。治療は光線療法という赤ちゃんに目隠しをしたうえで、紫外線のでる電灯を使って光を当ててビリルビンを分解させる方法と、交換輸血といって赤ちゃんの血液をかなりの割合で輸血用血液と入れ替えてしまうという方法の大きく分けて二つの方法があります。光線療法は軽症には効果的で施行も容易なので頻用されますが、重症例では交換輸血を行わないと間に合わないことがあります。

「交換輸血を施行するべきだ」というレベルは学会や教科書によりまちまちで、アメリカの小児科学会では「日齢4(注2)までの正期産児は血液中の総ビリルビン値が25mg/dl以上であり、光線療法により十分な効果のない場合は交換輸血を行うべきである」としていますが、最近の新生児学の教科書では「正期産児で血液中の総ビリルビン値が20から25mg/dlのものについても交換輸血するべき」としています。
(注2)産まれてから4日目ということ。

以下の文献は、25mg/dl以上の高ビリルビンで治療をした場合、神経学的予後はどうなるか?を検討したものです。

NEJM 354; 14 May 4, 2006 p.1889

Outcomes among Newborns with Total Serum Bilirubin Levels of 25mg per Deciliter or More
訳:総ビリルビンが25mg/dl以上の新生児の予後

Background
The neurodevelopmental risks associated with high total serum bilirubin levels in newborns are not well defined.
訳:(背景)血清総ビリルビン値が高値の新生児において神経発達学的リスクは十分明らかにされていない。

Methods
We identified 140 infants with neonatal total serum bilirubin levels of at least 25mg per deciliter (428μmol per liter) and 419 randomly selected controls from a cohort of 106,627 term and near-term infants born from 1995 through 1998 in Kaiser Permanente hospitals in northern California. Data on outcomes were obtained from electronic records, interviews, responses to questionnaires, and neurodevelopmental evaluations that had been performed in a blinded fashion.
訳:(方法)1995年から1998年にかけて北部カリフォルニアの帝王切開が行われる病院で出生した、正期産児106,627人のコホートの中から血清総ビリルビン値が25mg/dl以上だった新生児140人とランダムに選択した対照群419人を選択した。予後のデータは電気的記録やインタビュー、質問票の答えや盲目的方法により行われた神経発達学的評価により集められた。

Results
Peak bilirubin levels were between 25 and 29.9 mg per deciliter (511μmol per liter) in 130 of the newborns with hyperbilirubinemia and 30 mg per deciliter (513μmol per liter) or more in 10 newborns; treatment involved phototherapy in 136 cases and exchange transfusion in 5.
訳:(結果)ビリルビンの最高値が25から29.9mg/dlであった高ビリルビン血症群の新生児は130例、30mg/dl以上の新生児は10例であった。治療は光線療法が136例で施行され、交換輸血は5例で施行されていた。

There was no case of kernicterus.
訳:核黄疸を起こした新生児はいなかった。

There was no significant difference between groups in the proportion of children with abnormal neurologic findings on physical examination or with documented diagnoses of neurologic abnormalities.
訳:理学所見で神経学的に異常を見いだされた児及び神経学的異常を診断された児の割合は(高ビリルビン血症群と対照群の間で)有意な差はなかった。

Fourteen of the children with hyperbilirubinemia (17 percent) had "questionable" or abnormal findings on neurologic examination, as compared with 48 controls (29 percent).
訳:高ビリルビン血症の子供のうち14例(17%)が神経学的評価にて異常や境界域異常を指摘されたが、対照群では48例(29%)であった。

Within the hyperbilirubinemia group, those with positive direct antiglobulin tests had lower scores on cognitive testing but not more neurologic or behavioral problems.
訳:高ビリルビン血症のグループでは直接coombs試験陽性の児において理解力の試験で低得点の傾向がみられたが、その他の神経学的や行動上の問題はなかった。

Conclusions
When treated with phototherapy or exchange transfusion, total serum bilirubin levels in the range included in this study were not associated with adverse neurolodevelopmental outcomes in infant born at or near term.
訳:(結論)正期産児で光線療法や交換輸血によって治療された場合、この研究で検討された血清総ビリルビン値は「神経発達学的に望ましくない転帰」と関連していないといえる。

平たくいうと、「血清総ビリルビン値が25mg/dl以上であっても、交換輸血や光線療法を適切に行っていれば、神経学的後遺症を遺さずに回復するだろう」ということと思われます。

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2006年5月11日 (木)

地域医療の崩壊

2006年5月11日 曇りのち晴れ
NHKの「クローズアップ現代」で地域医療の事について触れた様です。

私の町に医師が来ない
〜空洞化する地域医療〜

「地方を中心に、総合病院が深刻な医師不足に陥っている。」

「北海道などでは、半数以上の診療科が「休診」に追い込まれている総合病院も少なくない。」

「多くの科に精通し専門医療への橋渡しをする医師、いわゆる「家庭医」導入の動きである。
新たな医師制度のなか、浮かび上がっている課題とその解決策を探る。」

最近の地方における医師不足は極めて速いスピードで進行中です。私が勤務する病院は、片田舎の総合病院ですが、内科系の2人の部長と外科系の部長一人が6月に辞任し、外科系の部長の方は後任が決まっていない状態です。また、近くの公的病院でも産婦人科の一人部長が辞任しこれも後任を見つける事ができていません。私の住んでいる県の場合は、県にある医学部の付属病院がまずもって研修医を集める事ができませんでした。(これは、地域の特性もありますが、なかなか研修医を魅き付けるようなカリキュラムを組めなかったことも影響しているのではないかとも考えます)また、初期研修2年間終了後に大学に残る先生は、これも極めて少なく大学の医局を維持していくのも難しい状態となり、それが、巡り巡って末端の病院に影響します。

地域の病院が機能低下し、医師の集約化が進んだならば、地域の病院では「いかに重篤なものをみつけ、そして適切な医療機関に搬送するか」という事が決め手となります。それをこなすのが、この記事で「家庭医」と呼ばれている、primarycare physician, general physician(プライマリーケア医、総合医)などといわれる存在です。一人いれば、かなり広い範囲を診れるので、医師の偏在で医師薄となった地域を支えるのに効率がよいということでしょう...でも、多忙でしょうね....

産科医療や小児科医療、救急医療の現場と同様、地域医療の崩壊は急速に進行しつつあります。このまま、人不足が続けば、医療の谷間のへき地診療所の集約化などにも手を付けなくてはならないでしょう...。

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2006年5月10日 (水)

白血病治療と感染予防3

2006年5月10日 曇りのち雨
白血病治療と感染予防についてこれまで2回記事にしてきました。これまで、身体側からみた視点で記述していましたが、今日は視点を変えて病原体側からの考察です。そして、このシリーズのまとめを行いたいと思います。

さて、これまでのまとめですが....
1回目は「がんや白血病そのものや治療によって免疫力は低下する。そして、いろいろな病原体に侵されやすくなる。血液中の好中球数が感染のリスクを予測するのに重要である。」
2回目は「好中球が500/μlを切ると重篤な細菌感染が起こりやすくなる。無菌室等の逆隔離は感染予防において十分なデータに裏付けられていない」でした。

これからお話しすることのデータ参照元は、うちの病院の院内感染防止マニュアルです。うちの病院の...ですが、厚生労働省のガイドライン等、Evidence(理論のもと、論拠)はしっかりしているものと思います。また、繰り返しになりますが、私は小児血液の専門医ではありませんので、文献などで一般的に周知されている内容であり、臨床で一番重要であると思われる経験に基づいたお話ではないことを、おことわりしておきます。

感染経路について...
病原体の感染経路には大きく分けて空気感染、飛沫感染、接触感染の3つのルートがあるとされます。空気感染は粒径5μm以下の粒子に付着して長時間空気中を浮遊している微生物により起こされる感染です。飛沫感染は粒径5μmより大きい粒子に付着して短時間(数メートル以内)に落下してしまう微生物により起こされる感染です。接触感染は実際に接触がなければ、感染する可能性が非常に低い感染の形式です。

そして、空気感染する病原体には「麻疹(はしか)」「水痘(みずぼうそう)」「結核」などが含まれます。飛沫感染には「マイコプラズマ感染症」「溶血性連鎖球菌(溶連菌)感染症」「アデノウィルス感染症」「インフルエンザ」「ムンプス(おたふくかぜ)」等が含まれます。接触感染の代表は「O-157」「単純ヘルペス感染症」「ロタウィルス感染症(嘔吐下痢症の代表的原因ウィルス)」などです。

感染経路により予防法が示されていますが、空気感染の場合は同じ部屋や、場合によっては違う部屋にいても空気を通じて感染する事があります。そのため、入院している場合は個室に隔離し、感染予防のため医療者はN95マスク写真を装着して、処置を行います。

飛沫感染の場合は、飛沫が感染した方から数メートル以内を飛びますので、個室への隔離またはベッドを2m以上離しておき、医療者は1m以内で働く時にはマスク(通常のもの)を付けるとされています。

接触感染の場合は直接の感染や、器具を通じて感染する事が考えられ、入院患者さんは様々なレベルの隔離をとられますが、まったく隔離が必要でない事も多くあります。患者さんに使用する器具をできるだけ専用にし、医療者は、ガウンの着用や、手袋、手洗いを徹底することとされています。

ここで、白血病治療後に細胞性免疫が低下している場合に問題となるのは、重症のウィルス感染症や結核などが多いと思われます。特に、水痘は時に非常に重篤な経過をとり、場合によっては生命をおびやかすような事例も報告されています。よって、発疹がでている方との接触は避ける(もちろん発熱している方とも...)、咳が出ている方との接触も避けること、流行している感染症に対して情報をもっておくなどの方策でかなりの割合の感染は防げるのではないか?と考えます。

ただ、標準の感染予防は必要です。その中には、手洗い、マスク(人ごみにいるとき、家族が咳をしているときなど)、お布団は清潔にしておくなどの一般的な方策が含まれます。

ここで、拙ブログに寄せられた、小児血液専門医のコメントを拝借させていただきます。
「感染症はWBC(好中球数)と密接に関係があるのは、ご指摘のとおりで、ゼロから数百ぐらいまででも上昇すれば終息傾向に向かう事が多く、1000も越えれば外泊や一時退院を考えたと記憶しています。

外泊中や一時退院中の感染はあったでしょうが、それで入院まで要する様な事はあまり記憶に無く、あっても外来レベルでほとんど終わっていた様に思います。」

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2006年5月 9日 (火)

一般的な理解

2006年5月9日 曇り
だんだん、蒸し暑くなってきました。今日は「白血病治療と感染予防」シリーズはお休みさせていただき、日頃より参考にさせていただいているブログの記事を御紹介いたします。

新小児科医のつぶやき:士気がそうですが、この中でYosyan先生は

「しかし報酬のわりには報われるものが少ないと痛切に感じている事は間違いありません。それはかつて医師に払われた高い敬意が失われた事です。医師への敬意というものは無形のものですが、医師にとって仕事への最大のモチベーションの一つになっています。これは金銭的に容易には代替出来ないものです。」と述べていますが、この点は良く感じる事です。私が小さいころ、住んでいた別の町で開業されていた内科小児科医の先生がおられました。その方のご子息と私が同級だった事もあり、親しくさせていただいていたのですが、人間的によくできた先生であった事もあり近辺の方々からも尊敬の念をもってみられていました。自分が医師になることを選ぶのは、このずっと後になりますが、この先生に対する尊敬の念が少なからず後押ししたものとも思っています。

医師に対する敬意が何故なくなってきたのか?これに思いを馳せると...様々な不祥事などが浮かんできますが...それだけではないと感じています。学校の教師や警察官の方々、そして一般の方々、お互いの尊敬の念は時代とともに少しずつ目減りしてきているのではないでしょうか?昔は、学校の先生等はそれ自体が侵すべくもない「先生」であったはずです。社会全体が変化し、このようなモラルが崩壊するような時代になってきているのではないか?そう感じずにはいられません。

最後に、御紹介した記事に投稿されたコメントは「一般的な理解」なのでしょうね。もう少し、一般の方々に理解していただけるよう、ブログを続けたいと思いを新たにしました...

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2006年5月 8日 (月)

白血病治療と感染予防2

2006年5月8日 曇り
昨日の続きです。

昨日のまとめは「がんや白血病そのものや治療によって免疫力は低下する。そして、いろいろな病原体に侵されやすくなる。血液中の好中球数が感染のリスクを予測するのに重要である。」とのことでした。

今日は、好中球がどの程度減ると危険なのか?また、好中球が減少した患者さんの感染予防法についてです。
繰り返しになりますが、私は小児血液の専門医ではありませんので、文献などで一般的に周知されている内容であり、臨床で一番重要であると思われる経験に基づいたお話ではないことを、おことわりしておきます。

好中球は一般的に500/μlを下回ると重篤な感染の危険があるとされている様です。

Nelson Textbook of Pediatrics 16th ed. p.785

When the granulocyte (neutrophil) count is 500/mm3 or less, the patient is at heightened risk for a serious infection, usually of bacterial etiology.
訳:顆粒球(好中球)数が500/mm3(=μl)以下の場合、その患者は通常、細菌による重篤な感染の危険が高まる。

好中球が減少した患者さんの感染予防について...
今度はKrugman's Infectious Diseases of Childrenという小児の感染症の成書です。

Chapter 17, p.308

Preventive strategies for the neutropenic child
Ever since the relationship between therapy-induced neutropenia and severe infection was recognized, deliberate strategies have been investigated to prevent infection by isolation measures, immunization strategies, and antibiotic prophyraxis. The rationale has been to suppress colonization flora, which is responsible for the majority of serious infections. In the transplant setting, partial protection from infection has been achieved through cumbersome and expensive intervention, including complete isolation with laminar air flow, dietary restrictions, sterilization of all entering items, and use of oral nonabsorbable antibiotics. Otherwise, there are insufficient data to support the use of reverse isolation precautions or dietary manipulation on the pediatric oncology ward.
訳:治療により惹起された好中球減少と重篤な感染との関連が理解されるにつれ、隔離や免疫を付ける方法、抗生剤による予防などの感染を避ける方法が調査され議論された。原則は重篤な感染の多くの原因である、細菌叢のコロニーを抑える事である。移植医療では、層状の空気流による完全隔離、食事の制限、全ての器具の消毒や経口の非吸収性抗生剤の使用等の、厄介で高価で、不完全な防御法が行われてきた。別の見方からいくと、小児悪性腫瘍学では逆隔離による予防法や食事を制御する方法は十分なデータにより支持されていないといえる。

好中球減少のある患者さんの感染予防については、できるだけ無菌に近い状態で隔離しておくべきと思っていましたが、現在はそうでない流れもある様です。(ちょっと驚きですが...)

今日のまとめは...「好中球が500/μlを切ると重篤な細菌感染が起こりやすくなる。無菌室等の逆隔離は感染予防において十分なデータに裏付けられていない」ということになると思います。

次回は明日以降とします。

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2006年5月 7日 (日)

白血病治療と感染予防1

2006年5月7日 晴れ
昨日はインターネットに接続できる環境になかったため1日更新できませんでした。

拙ブログの急性リンパ芽球性白血病の予後にコメントで、「白血病治療と感染」について御質問がありました。私は、小児血液が専門ではありませんので、一般的に知られている範囲(教科書など)でのおはなしをしてみたいと思います。おはなしの幅が広くなりますので、数回に分けて公開したいと思います。

手元にはNelson(16版)という小児科の教科書があります。その中で785ページに以下の記述があります。

Infections in patients with cancer.
Children with malignancy may be severely compromised from immunodeficiency caused by cancer, the therapy, or both. Increased risk for infection is also associated with damage to the skin and mucous membranes, indwelling catheters, malnutrition, prolonged antibiotic use, hospitalization.
訳:がん患者における感染
悪性腫瘍をもつ子供はがんそのものや治療、あるいは、その両方から免疫不全状態となり厳しい生命の危険にさらされている。感染の危険度は皮膚や粘膜の損傷、挿入されたカテーテル(点滴や排尿のために体の中に入れられる管)、低栄養状態、抗生剤の長期使用、入院期間などに影響され増加する。

Because the immunodeficiency is related primarily to anticancer therapy, the risk of infection is related to the type, intensity, and duration of chemotherapy. More than one dysfunction of the immune system is usually involved. For example, corticosteroid drugs and radiation cause destruction of both T and B lymphocytes; methotrexate and other folate antagonists inhibit DNA synthesis; alkylating agents such as cyclophosphamide block DNA replication; and 6-mercaptopurine interferes with purine synthesis. All of these agents inhibit the inflammatory response to invading microbes. The organisms causing infections in patients with cancer are listed in Table 179-2.
訳:免疫不全状態は主に抗がん治療に関連して発生してくるため、感染のリスクは化学療法(抗がん剤による治療)の持続期間、強さ、種類に影響される。通常、免疫システムの一つ以上の機能低下がみられる。例えば、ステロイド薬と放射線治療はT細胞およびB細胞両方の破壊をもたらし、メソトレキセートやその他の葉酸拮抗剤はDNAの合成を阻害する、サイクロフォスファマイドなどのアルキル化剤はDNA複製をブロックし、6-メルカプトプリンはプリン合成に影響する。これらの薬剤は侵入して来た病原体に対する炎症反応を弱めてしまう。がん患者における感染症を起こす病原体は表179-2に示した。

1792


The significance of the neutrophil count in predicting the risk and response to infections was clearly elucidated in the 1960s. This parameter serves as the basis for management of infections in children with malignancies. While CD4+ T-lymphocyte counts are dependable preditors of certain infections in patients with AIDS, no studies to date have used this measure in patients with cancer. Infections in children with cancer are categorized as those occurring in neutropenia and non-neutropenic patients, keeping in mind that exceptions occur with each category.
訳:すでに1960年代には血液中の好中球数(白血球のなかの1種類で、細菌を食べて殺す役割を持つ)が感染に対する反応とリスクを予測するに重要であると明らかにされている。好中球数は悪性疾患の子供における感染のマネージメントの基礎を提供している。一方、AIDSの患者の感染の指標となるCD4+Tリンパ球数は、がん患者での計測の研究は今日までない。がんを持つ子供の感染は好中球数が正常であるか好中球数が減少しているかの二つのカテゴリーに分けて考えられる。しかし、それぞれのカテゴリーには例外があることをいつも念頭に置いておかなければならない。

まとめますが...
「がんや白血病そのものや治療によって免疫力は低下する。そして、いろいろな病原体に侵されやすくなる。血液中の好中球数が感染のリスクを予測するのに重要である。」ということか?と思います。

次回は明日以降とします。

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2006年5月 5日 (金)

テレビ視聴と言語発達

2006年5月5日 晴れ 風が強い
今日は地域の輪番で、朝8時30分より夕方5時までしっかりしぼられました....私のいる病院は、小児科医は1人でその他の科の先生も、定員割れしている状態で、小児科の輪番の時は、私が一人で全館当直です...
少し疲れましたが、何とか記事を書く気力だけは残りました...(苦笑)

さて、今日は少し前から指摘されている、「テレビ視聴と言語発達」についてです。

まずは、単語の説明です。「発達」という言葉は「成長」という言葉に似ています。もう一つ「発育」という言葉があるのですが、意味の使い分けから行くと、「発育」は主に体の大きさが大きくなることを指し、「発達」という言葉は精神面や行動面の進歩を指します。「成長」は「発育」+「発達」みたいな意味であるとされます。よって、「言語発達」という言葉は、「言語」を使えるようになる進歩を示しています。

しばらく前から、テレビを長時間視聴している児に、「言葉の遅れ」をみることが多いという研究結果が出されるようになりました。実際に乳幼児検診などでみていても、その他の面では発達に遅れがみられず、言葉だけが遅れてくる児をみることが時々あります。

その児のお母さんにテレビを長時間みていませんか?と聞くと、結構な確率で「見せています」との返事が返ってきます。そこで、「テレビの時間を減らすよう努力してください」と伝えて、2ヶ月後ぐらいに来ていただくと、言語面がほぼ正常まで戻ることもあります。

何故、テレビを長時間視聴すると言語発達が遅れるのか?はっきりとした原因は不明な様ですが、テレビから一方的に入ってくる情報は、その児が「喋らなくても楽しめる」ものとなります。それに対して、人間との会話は当然「喋らないと楽しめない」ものです。喋る必要がなくなれば、言葉は発達しなくてもよいという事になります。(「必要は発明の母」と似たような論理です)

以前より、文献を読んでテレビと言語発達との関係を知っていましたが、経験的にもそれに合致する患者さんたちがいることは、学問と臨床の2方向から確認したこととなり、恐らく間違いなくこの2つの事象の関連性はあるものと思います。

最後に、日本小児科学会の提言から...
①.2歳以下の子どもには,テレビ・ビデオを長時間見せないようにしましょう.
内容や見方によらず,長時間視聴児は言語発達が遅れる危険性が高まります.
②.テレビはつけっぱなしにせず,見たら消しましょう.
③.乳幼児にテレビ・ビデオを一人で見せないようにしましょう.
見せるときは親も一緒に歌ったり,子どもの問いかけに応えることが大切です.
④.授乳中や食事中はテレビをつけないようにしましょう.
⑤.乳幼児にもテレビの適切な使い方を身につけさせましょう.
見おわったら消すこと.ビデオは続けて反復視聴しないこと.
⑥.子ども部屋にはテレビ・ビデオを置かないようにしましょう.

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2006年5月 4日 (木)

輪番制の崩壊

2006年5月4日 晴れ 夕方より風が強い

日本の救急医療を支えてきた、地域での輪番制が崩壊しつつある状況を伝える記事がありました。<救急医療>2次救急体制、63病院が輪番制離脱 本社調査毎日新聞、です。

記事では....
「都道府県が医療計画などに基づき区割りした394地域のうち9割以上の372地域で輪番制を実施しているが、高知県で17病院、鹿児島県で7病院、愛知県で5病院など、各地で輪番制からの離脱が相次いでいた。厚生労働省によると、輪番制に参加する2次救急病院は昨年3月末現在で約3000病院で、ここ1年で約2%減少したことになる。」

など、二次救急を担当する病院の減少を指摘しています。減少の原因は、1.救急医療を担当する医師の不足。(これは厳密に救急医療専門医の減少を示しているものではありません。とにかく、地方において救急をするような病院に医師がいなくなっている事を示しています。)2.地方自治体の財源確保の問題。(輪番制を維持するために輪番を担当してくれている病院群に対して報酬を払う事ができなくなった。)などが取り上げられています。

「輪番制から離脱する病院があると、他の病院の負担が増える。栃木県の芳賀地域では、芳賀赤十字病院(真岡市)が医師減のため昨年4月から、週6日だった当番日数を、少ない時で週1日まで減らした。その影響で、負担が重くなる他の病院が輪番を抜けた。当番病院のない空白日が、多い時で週6日も生じ、他地域の大学病院への患者搬送が必要になった。救急医療体制は多数の病院の参加で成り立っているが、医師の分散配置にもつながり、その弱点を医師不足が直撃している。」

このような状態であると、この地域の2次救急は「ほぼ崩壊している」と考えざるをえません。「医師不足」という言葉を使用していますが、国(厚生労働省)は少なくとも、医師は総数では「足りている」との判断で、これ以上の医師供給は考えていない様です。しかし、拙ブログ「大きな認識の差」でも取り上げましたが、WHO(世界保健機関)の統計によると、先進国の中にあって日本は人口1000人あたりの医師数はほぼ最低レベルで決して多くありません。また、昨今の医師の勤務状況の劣悪さ、訴訟リスクなどから、産科、小児科、救急医療等は専攻する医師が減っています。更に、医師にも「都会志向」があり、地域の病院では医師確保に窮する状態である事などから、複合的に「ただでさえギリギリの人数しか確保できていなかった地域の病院で、更に医師が減少し、輪番制が破綻する」という流れが進んでいるものと思われます。

国(厚生労働省)の現在の考え方を進めていくと、「都会ではある程度の医療を提供できる」、しかし、「地域、特にへき地といわれる範囲に住んでいる方には申し訳ないが一定のレベル以下の医療しか提供できない」、更に、「ひょっとすると、その地域にはまったく医療機関がない状態になるかもしれない」というような体制となる可能性が”高い”と思われます。この「輪番制の崩壊」の記事は、そういった「医療の崩壊」の予兆に思われてなりません。

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2006年5月 3日 (水)

急性リンパ芽球性白血病の予後

2006年5月3日 晴れ 比較的静かな一日
急性リンパ芽球性白血病(ALL: Acute lymphoblastic leukemia医療者の間では急性リンパ性白血病などともいいます)は、小児の悪性腫瘍の中では一番多い病気です。治療に反応しやすく、5年生存率は8割程度あるともされています。特に、年齢と初診時の白血球数、脾臓や肝臓が腫れる等の臓器腫大の有無等について検討し重症度が予測されますが、比較的軽症な群では良好な予後を期待できるとされています。しかし、治療して寛解(腫瘍細胞がある程度以下まで低下した状態)に入っても、再発する事はあります。
白血病の病気の形として大きく分けて、骨髄型とリンパ型がありますがリンパ型の再発の特徴として、骨髄だけでなく他の臓器(脳や精巣などなど)での再発といったことが比較的多くみられます。そこで、特に重症と予想される群については、最初の治療の時に、放射線を脳、脊髄やその他に照射して再発を抑えようとしていました。
(私は現在、このような白血病の患者さんを診る機会がありませんので、最新の治療方法はどうなっているのか知りません。また、今回の記事については、患者さんからの御質問に適切に答える事ができない可能性があり、特に「治療中の患者さん」からの御質問はお受けできないことを申し添えさせていただきます。)

以下の文献は急性リンパ芽球性白血病の予後についての2003年の知見です。

Extended Follow-up of Long-Term Survivors of Childhood Acute Lymphoclastic Leukemia
訳:小児期リンパ芽球性白血病の長期生存者の追跡調査

Background
Children who survive acute lymphoblastic leukemia are at risk for leukemia-related or treatment-related complications, which can adversely affect survival and socioeconomic status. We determined the long-term survival and the rates of health insurance coverage, marriage, and employment among patients who had attained at least 10 years of event-free survival.
訳:背景
小児期に急性リンパ芽球性白血病にかかり、生存した患者は生存率や社会経済的に思わしくない影響を与える可能性のある白血病関連あるいは治療関連の合併症のリスクを負っている。我々は、少なくとも10年以上event-free(特に病気せずに過ごす事)で経過した患者に生存率、医療保険の加入率、結婚、就職を調査した。

Methods
A total of 856 eligible patients were treated between 1962 and 1992 in 13 consecutive clinical trials. Survival rates, the cumulative risk of a second neoplasm, and selected indicators of socioeconomic status were analyzed for the entire group and for patients who did or did not recieve cranial or craniospinal radiation therapy during initial treatment.
訳:方法
1962年から1992年にかけて行われた13の臨床試験で、総数856人の患者が治療された。生存率、二次的に発症する腫瘍の累積リスク、社会経済的指標をすべての患者において、初期治療時に頭蓋照射あるいは頭蓋脊髄照射を受けた群と受けない群に分けて検討した。

Results
Fifty-six patients had major adverse events, including 8 deaths during remission, 4 relapses, and 44 second neoplasms (41 of them radiation-related); most of the second neoplasms were benign or of low grade of malignant potential.
訳:結果
56人の患者に大きな思わしくないeventが起きていた。そのうち寛解中に8例の死亡があり、4例が再発、44例に二次的に発生した腫瘍を認めた。(そのうち41例は放射線治療に関連していた)、二次的に発生した腫瘍のほとんどは良性あるいは軽度悪性であった。

The risk of a second neoplasm was significantly higher in the 597 patients who received radiation therapy (irradiated group) than in the 259 patients who did not received radiation therapy (non irradiated group) (P=0.04; estimated cumulative risk [±SE] at 20 years, 20.9±3.9 percent vs. 0.95±0.9percent)
訳:二次的に発生する腫瘍のリスクは597人の放射線治療を受けた群が259人の放射線治療を受けなかった群に比べて有意に大きかった。(20年の累積リスクでの比較では放射線治療群は20.9±3.0%、非放射線治療群では0.95±0.9%であった。)

The death rate for the irradiated group slightly exceeded the expected rate in the general U.S. population (standardized mortality ratio, 1.90; 95% confidence interval, 1.12 to 3.00), whereas that for the nonirradiated group did not differ from the population norm (standardized mortality ratio, 1.75; 95% confidence interval, 0.34 to 5.00).
訳:放射線治療群の死亡率は合衆国の一般人口の予想死亡率をわずかに超えていた。(標準化死亡率 1.90、95%信頼区間1.12〜3.00)これに対し、非放射線治療群では一般人口との間に差がみられなかった。(準化死亡率 1.75、95%信頼区間0.34〜5.00)

The rates of health insurance coverage, marriage, and employment in the nonirradiated group were similar to the age- and sex-adjusted national average.
訳:非放射線治療群において、医療保険の加入率、結婚率、就職率は国の年齢及び性別をあわせた平均とほぼ同等であった。

Despite having health insurance rates similar to those in the general population, men and women in the irradiated group had higher-than-average unemployment rates (15.1% vs. 5.4% and 35.4% vs. 5.2%, respectively), and women in the irradiated group were less likely to be married (35.2% vs. 48.8%)
訳:放射線治療群の医療保険加入率は一般人口と同様であったが、放射線治療群の男性及び女性は非就職率が高かった。(放射線治療群男性15.1%、一般男性5.4%。放射線治療群女性35.4%、一般女性5.2%)また、放射線治療群の女性は結婚率が低かった。(放射線治療群女性35.2%、一般女性48.8%)

Conclusions
Children with acute lymphoblastic leukemia who did not recieve radiation therapy and who have attained 10 or more years of event-free survival can expect a normal long-term survival. Irradiation is associated with the development of second neoplasms, a slight excess in mortality, and an increased unemployment rate.
訳:結論
小児期に急性リンパ芽球性白血病に罹患し10年以上異常がなく過ごした患者で放射線治療を受けていないものは普通の長期生存を予想する事ができる。放射線治療は二次的に発生する腫瘍の増加、死亡率のわずかな上昇、非就職率の上昇と関連している。

[New England Journal of Medicine 349:p640-649, 2003]

この文献では、選んだ患者さんは10年以上異常がない生存者ということで、治療が成功しやすい比較的軽症な患者さんたちであったのではないか?と思われます。そのような、「良好な予後を期待できる患者さんに対しては、後に障害を遺す可能性のある治療は選択しないようにする」というのが根底に流れる考え方であろうと思います。そして、「このような、尊い犠牲の上に医療は一歩一歩進歩するのだな」と思いを新たにします。

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2006年5月 2日 (火)

医療と司法という記事

2006年5月2日 晴れのち曇り
日中と夜の間の気温差が激しく、喘息の患者さんには少しきつい気候の様です。

いつも参考にさせていただいている、ある産婦人科医のひとりごとに、こんな記事をみました。

「医療と司法」
外科医で弁護士の古川俊治先生がコメントしておられます。

「手術などの治療には、最善を尽くしても不可避な危険性があります。福島県の産婦人科医の場合も、癒着胎盤など非常に難しい状態で、ほかの医師が担当したとしても、妊婦の死亡は防げなかった可能性が低くはありません。そんな治療で逮捕されるのなら、リスクの高い治療をしなければならない専門の医師は萎縮し、自己防衛として、危ない治療は断るようになるでしょう。」
拙ブログの中でも申し上げていますが、医療には限界があります。医師は所詮、人間であり神ではありません。「人間の生命を自由に操れる」そのような存在ではないのです。ただ、神に近づく様、日夜努力をしています。今回の大野事件では、予見の可能性が著しく低く、そして一旦始まった出血をコントロールすることは不可能に近い、まさに医療の限界の症例であったと思われますが、それを「過失あり」として逮捕、拘留、起訴することは、日本の医療に対して少なからずNegativeな影響を与えるものでしょう。→医療の限界

「また、今回のケースが本当に「異状死」に該当するのかどうかも疑問の余地があります。本来、警察に「異状死」の届け出が必要なのは、人の死亡を伴う重い犯罪の関連が疑われる場合です。医療事故に関しては、一般的には過失を自覚していなければなりません。福島県の産婦人科医の場合も不可避の合併症だという判断で、届け出なかったのだと思います。」
これも、拙ブログの中でとりあげました。異状死については、医師法第21条に届け出義務の規定が記されていますが、この「異状死」についての定義は曖昧で、各学会からガイドラインが出されており、統一された見解がないのが実情です。その、異状死の届け出義務を指摘して逮捕するなどは、まさしく専制的な処罰方法であるといわざるを得ません。→異状死体とは

この記事は、まさに私たちが訴えて来た、最近の法曹界と医療界のあいだの関係を簡潔にわかりやすく示したものといえます。今後、医療事故を専門に検討する第3者機関や無過失補償制度、刑事免責制度等が導入されなければ、日本の医療は「焼け野原」のように無惨な姿をさらすようになるのかもしれません。

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2006年5月 1日 (月)

小児科医という仕事

2006年5月1日 晴れ
ゴールデンウィークのまっただ中。暑くなりました。
今日は午前中から、外来がなにやら賑やかで...午前中50人、午後30人程度の受診でした。中には時間をかけざるを得ない患者さんがいて、外来の椅子からお尻が離れない状態でした。

さて、これまでちょっとネット上を探して、小児科医関係のブログを見つけてきました。
新小児科医のつぶやき
ある小児科医のブログ
enjoy JOI blog
29才のハローワーク

これらのブログの中で、「何故、小児科医となったのか?」が触れられているものがありました。いろいろなきっかけがあると思います。私の場合は、どうだったのか?記憶をたどってみたいと思います。

まず、自分はある「卒業後に義務が発生する医科大学」の出身のため、卒業後へき地診療所に一定期間赴任しなければなりませんでした。その場合は一人で赴任することとなるため、ある程度の幅広い技術の習得が必要でした。このことは、いわゆるマイナー科目といわれる(眼科、耳鼻咽喉科など)方面を選択するには非常に厳しいということで、内科、あるいは小児科、外科などのメジャー科目を選択せざるを得ないということです。

また、卒業前に大学での臨床実習で回ったのは、麻酔科、小児科でどちらも、キビキビした動きの求められる専攻科目でした。そのころから、自分はこういった比較的速い動きを要する科目が好きなのではないか?と思っていました。

卒業後、初期研修を受ける際、私たち(同じ大学の卒業生)には研修先の選択の自由はありませんでした。地元の中央病院がほとんどの受け入れ先だったためです。そして、その受け入れ先の病院で今後、一番自分のためになるのは、恐らく小児科であろうと思われたため、迷わず小児科を選択しました。

その時代には珍しいスーパーローテート(注1)にて研修を受けましたが、最後の10ヶ月は小児科、新生児科を研修する事ができました。結構な症例数がある病院で、研修医も少なかった事から、受け持った患者さんの数は250を超えていたと思います。いわゆるcommon disease(注2)といわれる病気から比較的めずらしい病気まで経験しました。

(注1)スーパーローテート:外科、内科、小児科、産婦人科、救急などの主要科目をまんべんなく研修する方式。
(注2)common disease:通常よく見られる病気のこと。小児科では肺炎や急性胃腸炎などの感染症が圧倒的に多い。

その後は、一番最初の小児科医の現状で触れたような流れで今の仕事をしています。

「小児科医になって良かったか?」
といわれれば、概ね良かったのではないか?と答えると思います。
みなさんご存知のごとく、小児科医を巡る環境は劣悪です。それでも、特に「自分が診断した患者さん」が病気を乗り越え成長する姿をみると、「これが小児科医の喜びの一つなのだな」とも思い、自分を支えているのか?とも思います。ただ、最初の4から5年はいつもビクビクして生活していました。「自分は何かを見落としていないか?」、自分の能力に自信がもてず「重症児がきたらどうしよう」などの思いです。いまは、大抵のことには驚かないまでシンゾーに毛が生えてしまったのですが...

小児科医という仕事をこれからも一生続けていけるかどうか?これはわかりません。小児科医を巡る環境がどのように動いていくか?モチベーションを保つために必要なものが、手元にあり続けるのか?
でも、今はまだ自分にとって「小児科医という仕事」は、まだやりがいを感じる事ができる、そんな仕事です。

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