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2006年4月19日 (水)

診療録

2006年4月19日 曇り一時雨 風が強い

私のブログにトラックバックしていただいている弁護士のため息というブログがあります。この弁護士さんは医療過誤裁判を手がけており、『患者側の弁護士』といわれていますが、ブログの内容からは少なくとも公平で中立な方の様で、敵意をもつことはできません。臨床医は一般に法律に疎いものですが、こちらのブログを読ませていただき、少しでも勉強したいと思います。そのブログで、医療過誤裁判の『診療経過一覧表』をチェックするという場面があり、これはカルテ(診療録)から時系列で抜き出した情報をみているということだろうと考えをめぐらせました。私は小児科医をしていますが、ある時期から診療情報管理に自分の興味があることがわかり、診療のかたわらそちらの方面の学問もすこしかじっているといった状況です。いつも書いているカルテ。これについて考えてみました。


医師法第24条[診療録の記載及び保存]医師は、診療をしたときには、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。2.前項の診療録であって、病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その医師において、五年間これを保存しなければならない。


医師法での『診療録』の規定はこれだけです。(あとに罰則がありますが...この六法が古いためか?24条違反の罰金が5千円となっています。50万と聞いた気がするのですが....)診療に関した記録すべてが、診療録なのだろうと思います。

『遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない』とありますが、『遅滞なく』とはどのくらいの時間を表すのか?一般的に「24時間」というはなしもありますが、あるところで聞いた話では、「その日の午前中に病棟で回診を行った、その後、重症の患者さんが来てその対応に追われ、カルテを書けなかった。その重症患者さんが、何とか落ち着いたのは翌日の朝3時だった。ヘトヘトに疲れて、つい寝てしまって回診の記録を付けたのが朝8時頃だった。」というのは遅滞なく記載できたこととなり、「その日の午前中に病棟の回診を行った、午後から休みをとってゴルフに行く予定があり、その準備のため少し早めに帰らなければならなかった。そのため、回診の記載をしたのが翌日になった。」というのは遅滞ありという事だそうです。
そして、その回診した患者さんに、もし急変があって亡くなった場合には、その記録を後から書き込む事はできません。そういった意味で、カルテをきちんと書くという事は医師として、半分は「自分を守る」ためになるとも聞きました。(もちろん、基本は患者さんに良い診療を提供するためです。)

カルテの中にはいろいろな情報が詰まっています。医師の経過記録、看護師の経過記録、処置や投薬、注射、食事、安静度、清潔等に関する細かい指示書、検査結果の記録、説明書、同意書などなど。診療の結果、不幸にも医事紛争に発展した場合、まずカルテが差し押さえられます。これから、弁護士さんは医師の記録と看護師の記録などを見比べて、どの時点で、その徴候を覚知したか?情報はうまく伝達されたか?どのような対処をとったか?詳細にみていくのではないかと思います。これが、先に紹介した弁護士さんのブログでも出ていました、『診療経過一覧表』をチェックするということではないか?と考えられます。これは、大変な作業ですね....


話は少し変わりますが、診療録の中の記録について、現在は医師は「医師が書くところ」、看護師は「看護師が書くところ」に別々に記載していますが、情報の伝達の面で問題があることがあるとされています。例えば、看護師さんが気付いた患者さんの変化は看護師さんの記録の所に記載されますが、これは通常、医師の記録のページと離れた場所にあります。医師がそのページを意識して開かなければ、その情報は医師に伝わらないといったことです。そこで、医師も看護師も同じ場所に、書いていったらどうだろうか?ということを実際に取り入れている病院もあります。(少なくともナショナルセンターといわれる旧国立の基幹病院の一つはそうなっています。)もちろん、弊害もありますが、患者さんの利益にはなると思います。また、もし医事紛争となった場合にも、経過がクリアーに見えてくるのではないでしょうか?

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コメント

時系列カルテは使ったことありますが、大変な代物でした。そこでの形式はB5のカルテを真ん中で割って、左が医師記入欄、右が看護記録だったんですが、指示まで医師記入欄に書くので指示確認に膨大な手間ひまがかかります。

その病院では事情で内科医が半年ほど不在だったので、私が病棟まで一人で見ていたのですが、まずカルテを見てもドクターの指示を追うのに一苦労となりました。なにせどこに出てくるかわかりませんし、看護記録は日々量産されて、1ヶ月もすれば当直医も含めてバラバラに出された指示でこんがらがってしまう有様です。

ターミナルで長期に入院を余儀なくされている患者のカルテなんか悲惨なもので、1ヶ月前の指示なんてどこでどう変わったかが誰も把握できないなんて事はザラでした。

医師記録自体もそうで、量的には看護記録に圧倒されますから、飛び飛びの散在記録になり、一体どういうつながりになっているか意味不明のときもしばしばでした。

あんまり使い難いのと指示確認で散々トラブッたので、内科と小児科はスタンダードの医師記録、看護記録、指示録の三部構成にしましたが、どういうシステムも一長一短だと思います。

投稿: Yosyan | 2006年4月20日 (木) 17時20分

こんばんは
Yosyan先生

コメントありがとうございます。

<そこでの形式はB5のカルテを真ん中で割って、左が医師記入欄、右が看護記録だったんですが、指示まで医師記入欄に書くので指示確認に膨大な手間ひまがかかります。

大変な思いをされましたね...確かに、どういうシステムでも一長一短ですね....
私が見た時系列カルテは、A4の罫紙で真ん中には割が入っていませんでした。経過記録のみを時系列にしていたようで、左の端のカラムは日付、右に2行カラムがあって、一つは職名、一つは署名欄となっていました。指示録や説明同意書、検査所見等は別にしてありました。
ただ、これでも問題があります。看護師さん、そして医師の先生が同一の紙に書くのですから、時期を逸してしまうと、「書くところがない」ということにもなりかねません。このことは、そこの診療情報管理士の方に尋ねたのですが、とりあえず鉛筆等でスペースを確保する等している様です。

ちょっと、話はズレますが...その病院はナショナルセンターというだけあって、かなりの規模です。指導医と研修医、これもたくさんいます。そして、実際にカルテの管理をしているのは、研修医の先生で指導医はチェックすることに専念している様です。つまり、十分なマンパワーがあれば、こういった方式でも定着していく事が出来る、でも、私のところのような一人医長の所では到底無理ですね...これは、日本の医療システムの問題点の一つであると思います。

投稿: befu | 2006年4月20日 (木) 20時58分

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 今週、私の担当する医療過誤裁判の期日があった。  名古屋地方裁判所は民事4部と [続きを読む]

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