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2006年4月24日 (月)

気道異物

2006年4月24日 晴れ
そろそろ、花粉症のシーズンも終わりとなります。最近、くしゃみが出なくなりました。

昨日に引き続いて、小児の事故に関する記事です。「気道異物」とは、喉頭(のど)から肺胞(実際にガス交換を行う、肺の中の小さな風船)までの、「通常空気しか通らない」部分に、空気以外のものが入った状態という事です。ほとんどは3歳以下の乳幼児に起こります。そして、入っている異物で一番多いのはピーナッツなどの乾いた豆類です。

症状は、異物誤嚥(あやまって気道に吸い込む事)直後は、激しい咳と呼吸困難がある事があります。それを過ぎるとほとんどの場合は、軽い喘鳴(ゼイゼイいう事)と軽い咳が続きます。その状態で1日から2日経つと、熱が出て来て、咳がひどくなるといったものです。誤嚥する場面を見ていない場合は、すぐには医療機関を受診せずに、熱が出て来て受診し、レントゲンを撮って「肺炎」とか「気管支喘息」などと間違われる場合があります。

また、ごく稀にですが...左右の気管支(左右の肺に入るために気管が分かれて2本の管になったもの)に分岐する前の所に異物がはまり込んでしまった場合、窒息して亡くなる事もあります。

さて、気道異物の診断は、「何かを吸い込んだ」という情報がある場合は比較的容易になりますが、その情報がない場合は前述のように、「肺炎」とか「気管支喘息」として見逃される場合があります。疑った場合は、レントゲンで吸気相(息をいっぱい吸い込んだとき)と呼気相(息を吐いたとき)の写真を撮ります。そして、呼気相で「本来ならばしぼんでいるはずの片方の肺がしぼんでいない所見」(ホルツクネヒト徴候)がみられると、診断に結びつきます。

治療はとにかく異物を取りにいく事です。しかし、この手技は非常に危険なもので、「臨床医としてできればこんなことをしたくない」と思うようなものです。通常、全身麻酔下に硬性気管支鏡という硬い筒状のチューブを異物があるところまで入れて、鉗子(ものをつまむ道具)で異物をつかんで気管支鏡と一緒に抜いてくるということをしますが、途中で落ちたりすると大変で、これも前述の「左右の気管支に分岐する前の所に異物がはまりこんだ状態」と同じになります。

異物が新鮮な時(吸い込んでから余り時間が経っていない場合)は、ピーナッツの場合でも豆が余り柔らかくなっていないので、鉗子でつまみ出す時にも崩れる事が少ないですが、数日経った場合はドロドロに溶けていてとれない場合もあります。その場合は、異物が介在している場所に難治性の炎症を起こして、更にそれを繰り返し最終的には肺化膿症となって、肺の一部を切除(肺の一部をとってしまうこと)しなければならないことも考えなくてはなりません。

うまく異物をとれた場合でも、硬性気管支鏡を数回出し入れする必要があり、その事によって喉頭(のど)がむくんで息ができなくなることがあります。よって数日間、そのむくみの危険性がなくなるまで、気管にチューブを入れた状態で人工呼吸する必要があります。

このように、気道異物の治療は非常に難しいものです。一旦、おこしてしまうと大変なことですので、予防につとめなければなりません。①4から5歳になるまで豆類は口にさせないようにする。②動いている車や飛行機など、急な動きがあると予想されるものに乗っているときには、豆類を口にさせない。③上に放り上げて口で受けるような食べ方などをしてみせない。などが対策として必要であると思います。

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