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2006年4月 5日 (水)

尊厳死報道に感じる事

2006年4月5日 雨のち晴れ
射水市民病院の続報が流れています。当初より、医療者からみると、『なぜ、こんなことに?』といぶかしんでしまう部分が多かったこの事件ですが…徐々に全容が明らかになってきています。

まず、ガン末期の患者さんに対して、『なぜ、人工呼吸器を装着したのか?』です。ガン末期で、救命できる可能性が限りなく少ない場合は、家族や本人とよくお話をして、『気管にチューブを入れてまで、延命をはかりますか?』ということを一度は検討すると思います。最期の部分でどういった処置を希望するか?というのは各人、各家族でかなり違うとは思いますが、じっくりお話しして考える時間があれば、かなりの患者さんで人工呼吸器の装着を希望しないと思います。マスコミ上で流れている数として7例とのことですが、これは全てのTerminal stage(終末期)の患者の一部で、家族が人工呼吸器の装着を希望した数であると思われます。

また、本日の新聞で流れていた情報をみると、『数年前に胃がんと診断され、昨年春にインフルエンザに罹患してから急速に状態が悪化し自発呼吸がなくなり人工呼吸器を装着された』女性で、『回復の見込みのないことを伝えられ』、『本人がチューブにつながれてまで生きたくない』との意思を示していた事から、家族は主治医である外科部長に呼吸器の取り外しを要請したとされています。この患者さんは通常の終末期の患者さんの経過とは異なり、インフルエンザにより急速に状態が悪化した事が考えられ、延命というよりは救命のために挿管したものと考えられます。

残りの患者さんは、恐らく人工呼吸器を装着する事がどういった事なのか?を説明されて、そして、『やはり、トコトンやってほしい』と希望されたのだと思います。しかし、延命治療の中で顔つきが変化してきたり、回復の見込みのないことを実感されて人工呼吸器の取り外しを要望したり、同意したりしたのではないかと推測(あくまで推測ですが…)されます。

前述のインフルエンザで急速に症状が悪化した患者さんの遺族は『気の毒である』とまで思われており、少なくとも今回の渦中の外科部長さんに対して感謝こそすれ、敵意を表すなどはありません。残念なのは、日本ではこのような場合に医師を守る法律が整備されていない事です。法が整備され、一定の条件での『尊厳死』を認める方向に進まなければ、これからもこういった事例は起き続けるでしょう。

しかし、立法化に向けては国民の中に『容認派』から『絶対に許せない派』までピンからキリまでの意見がみられており、容易にコトが進むものとは考えられません。まだまだ、医師や患者さん、そして家族の苦悩は続く事となります。

また、この事件がマスコミに広く伝えられたのは…(最初から、『こういう構図ではないのか?』と思っていましたが)、病院内部のドロドロとした派閥争い、確執があったのではないか?と指摘するメディアもあります。確かにそうです。病院の内部は確執がないところの方が少ないでしょう。(これは私見です。)そして、自分の病院が傷つくのに、それを敢えて、あれほど大々的に公開した病院長は何らかの企みがあったのかもしれないと感じるのは、『穿った』目で見過ぎているのでしょうか??

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コメント

はじめまして

日頃から死に対する臨み方を周囲に明確にしておかなければならないようです。でも、死生観は大切と思いながら、実際は私もまだ明確になっていません。寿命について考え方が甘いのかもしれません。そういうことが医療の現場を混乱させるのでしょう。

投稿: 流風 | 2006年4月14日 (金) 16時47分

こんにちは
流風 さま

コメントありがとうございます。死生観は大切な観念ですね。人間として『生きる』ということは、どういったことか?

人それぞれで考え方があるのだと思います。しかし、日本の風土の中では、それを明らかにする方は少ないと思います。

これからは私見ですが、日本人の『死』に対する考え方は、かなりNegativeな感覚があり、『死』について考えることを避けようとする心の中の動きがあるように思います。(私もそうですが...)

医療がいくら進んでも、『死』をなくすことはできません。それであれば、自分の残された時間をどう使うか?を考えられたら、happyだと思いますし、死生観も自ずと定まってくると思うのですが、私自身もできていません。

投稿: befu | 2006年4月14日 (金) 18時08分

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