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2006年4月30日 (日)

自分らしく生きる条件

2006年4月30日 晴れ 風が強い

京都新聞という地方新聞の社説の中で終末期医療の緊急アンケートの結果について論じたものがありました。

<日本には延命治療をどのように開始し、どのようにやめるのか明確なルールはない。現場の医師は殺人容疑をかけられるリスクに常にさらされているといえる。この基準の分かりにくさとリスクは「安楽死」が密室的な状況で行われる背景となっている。

ここが、問題です。拙ブログでも尊厳死について記事を書いていますが、その中でもこの点を指摘しています。
起訴困難となった条件
尊厳死報道に感じる事

<個人の責任も大きい。かかりつけの医師や家族と万一の時の対応を話し合って自らの意思を示しておくことが最期まで自分らしく生きることにつながる。日ごろから死と向き合う心構えを持ちたい。

自分にとって「生きている」ということはどのような状態か?重症の頭蓋内出血(注1)で人間らしい営みをしていくために必要な大脳(注2)の機能が停止し、戻らない状態は自分にとって「生きている」といえるのか?更に、人工呼吸器がなければ自分で呼吸できない状態は自分にとって「生きている」状態なのか?このようなことに答えを持っていることは良い事です。
現在の日本の法制度からは、「延命治療の導入」の是非を決める事ができても、「延命治療の中止」については決める事ができません。そして、一旦はじめられた人工呼吸は心停止に至るまで止める事はできません。病前に自分の意志を示しておく事が「自分らしく生きる」ことに必要な条件となるでしょう。

注1:脳出血やくも膜下出血のような、頭蓋骨の中で起こる出血
注2:思考、言葉、運動、精神などの座と思われる人間の脳のうち一番大きい部分

京都新聞 社説 4月14日掲載分

延命治療の在り方など終末期医療に悩んでいる現場の姿が、共同通信が行った公立病院などを対象にした緊急アンケートであらためて浮き彫りになった。
 延命治療に独自でガイドラインを持つ病院が12%あまりにとどまる一方、回復の見込みがない患者に対する延命治療について「ガイドラインや法制化が必要」と回答した病院は85%を超えた。
 終末期医療についてさまざまな意見があり、国民的なコンセンサスが十分でない現状の中で、明確なルールがないままに判断を迫られる現場の実情が映し出されている。
 富山県の病院で表面化した人工呼吸器取り外し問題は富山県警が殺人などの容疑で捜査中だ。表面化した事例は氷山の一角との指摘がある。日本ではこれからかつてない速さで高齢者が増える。終末期医療の社会的な重みは今後ますます大きくなる。
 しかし日本には延命治療をどのように開始し、どのようにやめるのか明確なルールはない。現場の医師は殺人容疑をかけられるリスクに常にさらされているといえる。この基準の分かりにくさとリスクは「安楽死」が密室的な状況で行われる背景となっている。
 安楽死の容認については一九九五年、横浜地裁が東海大病院事件で示した判断が基準とされてきた。事件は患者に薬剤を投与するいわゆる積極的安楽死だったが末期患者の延命治療装置を外すなどの消極的安楽死についても、▽回復の見込みがなく、死が避けられない末期状態にある▽患者の意思表示か、家族による患者の意思の推定がある、などを容認できる条件とした。
 アンケートには「終末期とする基準が医師、患者、家族で大きく違う」「まったく望みがないという結論を誰が出すのか」など現場の悩みが寄せられた。どんな手順で誰の意見を聞きながら末期と判断し、家族による意思の推定はどのように行えばいいのか。横浜地裁の判断からさらに踏み込んだ具体的な指針を示すことは時代の要請といえる。
 川崎二郎厚生労働相は現在厚労省が進めている終末期医療の指針づくりを急ぐ方針を打ち出した。当然ではあるが、難しいのは国民の間には大きく異なる意見がある点だ。
 自らの意思で無意味な延命治療を拒否する「尊厳死」の法制化を求める声がある一方、最期まで手を尽くすのが医療だと反対意見もある。どう死を迎えるかはその人の生き方にかかわっていよう。個人の信条や宗教などによって多様だ。しっかりした方向性と多様さを両立できる指針を目指してほしい。
 個人の責任も大きい。かかりつけの医師や家族と万一の時の対応を話し合って自らの意思を示しておくことが最期まで自分らしく生きることにつながる。日ごろから死と向き合う心構えを持ちたい。

[京都新聞 2006年04月14日掲載]

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