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2006年4月16日 (日)

腸重積

2006年4月16日 晴れ

やっと、晴れてくれました。

今日は腸重積という病気について書いていきます。人間が食べ物を食べると、口から食道を通り、胃に達します、ここである程度の消化を受けて、十二指腸、空腸、回腸を通り、結腸、直腸と進み最後は便になって肛門より出されます。つまり、食べ物を通す器官(消化管)は一本の管になっています。この一本の管のどこかが、内側あるいは外側にめくれかえってはまったのが腸重積という状態です。

Invagi

典型的な症状は、間歇的腹痛(定期的に時間をおいて腹痛を訴えること。乳児で腹痛を訴えることができない場合は、時間をおいて定期的に激しく泣く:間歇的てい泣。)、嘔吐、血便などです。注意しなければならないのは、この『腸重積』は、絞約性イレウスといって腸管に血液が通わない状態となって、腸の一部が死んでしまう(腸壊死)ことを起こしかねない一群の病気であることです。腸が壊死すると、全身状態は著しく悪化し緊急手術となります。いろいろな事情で診断が遅れた場合、手術が間に合わず亡くなることもあります。

上記の3つの症状(間歇的腹痛、血便、嘔吐)がそろっていれば、診断は比較的容易ですが、病初期には特に血便はみられず、腹痛だけということもあります。以前は、腹部の触診ではまった腸管の塊を触れて診断することをしていましたが(これはかなり難しい診断法です。)、いまは超音波検査ではまっている腸管をみると、Target sign(的のようにみえることからこの名前がついた。)やPseudo-kidney(psudoは偽、kidneyは腎臓で、はまった腸管が腎臓の超音波像と似ているためについた名前。)という徴候をみて診断することが多いです。

特に、急性胃腸炎などが流行中で、嘔吐している児が多く外来に来ている場合は要注意で、『吐いているのは、急性胃腸炎のためだ』という先入観があると、見落とす可能性があります。

治療は、発症早期の場合(大方24時間以内とされる。)は、おしりから空気を注入して、はまった腸管のところに圧力をかけて元にもどす手技を行います。また、空気ではなくバリウムという造影剤(レントゲンで白く写る液体)をいれて元に戻すこともされています。これは、腸重積整復といわれる手技ですが、うまくいけばこれらの手技のみで手術を行わずに治ります。しかし、特に発症から時間がたっており、はまっている腸管の壁が壊死しかかって弱くなっている場合は圧力を加えることで破れる場合があります。その場合は、やはり緊急で手術となります。ただ、私の経験からいくと、ほとんどの患者さんはこの空気整復で治っていっており、手術をせずに済んでいると思います。

一旦、空気整復で治っても、少しして何度も何度も、同じように繰り返したり、また、空気整復でも治らない場合もあります。そのような場合は、開腹して整復しすることがあります。hatchinsonの手技といって『はまっている腸管を引っ張ってはいけない、押し出すこと』という教えがありますが、それくらいやさしく扱います。腸管を観察して、色が悪い場合は温めてみます。温めても色が戻らない場合は、その部分は壊死しているとして切除します。はまっている腸管を戻した後には、腸管があまり大きく動かないように固定する事があります。

Hatchinson

空気整復で治らない場合は、別の問題が隠れている場合もあります。例えば、はまっている部分に何らかのできものができている場合です。古くから有名なのは、「Meckel憩室」といわれるもので、お母さんのおなかの中にいる時は卵黄嚢という器官と腸がつながっていますが、生後しばらくするとこのつながった道はなくなります。しかし、おおよそ100人に1人ぐらいの方に、このつながった道が残っている事があります。これが、腸重積の原因となるものです。また、回腸末端に発生したリンパ腫という腫瘍が原因となって、腸重積をおこすこともあります。いずれも、空気整復で戻らない事が多く、おなかを開けてみてはじめて診断が付くといったことが多い様です。

腸重積は良く耳にする病気ですが、経験の豊富な小児科医でも初期には診断が難しかったり、急性胃腸炎との鑑別が難しかったりします。また、見逃してしまうと非常に重篤で、絞約性イレウスとなり、場合によっては生命に危険が及ぶこともある小児科医としては悩ましい病気の一つです。

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