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2006年4月 7日 (金)

トリアージ

2006年4月7日 晴れ

トリアージ(Triage)という言葉は災害医療などに多数の傷病者を重症度と緊急性によって分別することを示します。フランス語の「triage(選択)」から来ているとされます。

トリアージという言葉を聞いたときに自分の脳裏には、ある映画のワンシーンが浮かびます。それは、『パールハーバー』というアメリカ映画で、日本海軍の奇襲攻撃を受けて米軍の基地は壊滅的被害を被り、軍の病院に凄まじい数の患者さんが押し寄せるシーンです。最初は院内に引き入れていた患者さんを、医師が看護師さんに『院外で選別して、治療の必要な患者さんだけを引き入れるように』と指示していました。看護師さんはこれに従い、亡くなられた患者さんや、既に助からないレベルまで損傷を負った患者さんを選別、病院内には引き入れないようしていました。これが、トリアージです。

通常の臨床では使う必要もありませんし、第一こんなこと医師としてしたいわけはありません。しかし、震災などの大規模災害、テロリズムによる攻撃などでは短時間に相当数の重症患者さんが狭い地域に発生し、医療機関に流れ込む可能性があります。全ての患者さんの診療を受けると、たちまちその医療機関の機能はパンクし、重症でかつ迅速な処置で助かる可能性のある患者さんの助かる可能性まで潰してしまうことも考えられます。そこで、トリアージが必要となってくるのです。実際には患者さんの状態を以下の4つに分類して患者さんの手首にそれぞれの色のタグを付けていく作業となります。

Tag


黒(Black Tag)カテゴリー0
死亡、もしくは現状では救命不可能とされるもの。
赤(Red Tag)カテゴリーI
生命に関わる重篤な状態で、救命の可能性があるもの。
黄(Yellow Tag)カテゴリーII
生命に関わる重篤な状態ではないが、搬送が必要なもの。
緑(Green Tag)カテゴリーIII
救急での搬送の必要がない軽症なもの。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より抜粋。

日本ではSTART法:Simple Triage and Rapid Treatmentと呼ばれる方式で、患者さんの状態を評価するのが一般的です。これは、呼吸、循環、意識レベルにより評価する方法で
1.呼吸…30回/分以上あるいは努力性は赤タグ、気道確保しても自発呼吸のない場合は黒タグ
2.循環…橈骨動脈(手首のところのドキドキしているところ)で脈を触れるか?触れない場合は赤タグ、脈が120/分以上の場合も赤タグ
3.意識レベル…『目を開けてください』『手を握ってください』などの簡単な命令に従うかどうか?従わない場合は赤タグ、従う場合で歩ける方は緑タグ、歩けない方は黄タグです。
これを原則一人で行い、患者さん一人にかける時間は60秒以内が理想的とされます。また、評価は行っても治療はしないという原則ですが、『気道の確保』『外出血の圧迫止血』のみは、その場で行ってよいとされています。

実際に大規模災害の場所に居合わせたことがありませんので、どのようなものか?は理解すべくもありませんが、その場で死亡判定をして黒タグを付けることもあるこの仕事は、相当な精神力を要する仕事であると考えます。
阪神淡路大震災を教訓にして努力を続けた結果、尼崎の脱線事故では現場でのトリアージが効果的に行われ役立った、という報告があります。こういった、判断をしないで済めば本当に幸せですが、いざというときには使える心構えを持っていなければならないと自分に言い聞かせています。

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