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2006年4月15日 (土)

大きな認識の差

2006年4月15日 雨
ちょっとじめじめ、少し肌寒い日が続いています。

日本の医師数については厚生労働省としては「足りている」との認識 , video(櫻井議員)で、将来にわたり増やす事は考えていないとの解釈を示されています。しかし、医療の現場、患者さんの要望などを肌で感じている臨床医としては、どうしても「医師は足りている」とは思えません。政府と医療者や国民の間に認識の差があると感じずにはおれません。

読売新聞<2006年4月7日付け>ではWHO(世界保健機関)からの報告を以下のように伝えています。
「 医療スタッフの員数・配置問題に焦点を当てた今年の報告は、エイズの感染拡大が続くマラウイやタンザニアで、人口1000人当たりの医師数が0・02人と、アフリカ諸国でスタッフ不足が極めて深刻だと指摘。
<中略>
 一方、日本は平均寿命で82歳の世界最長寿国の座を堅持しながら、1000人当たりの医師数は1・98人と、192か国中、63位の中位水準にとどまった。
<中略>
 OECD加盟国の中では最低クラス。同様に看護師は27位、歯科医師は同28位と、世界のトップ水準には達していない。」

厚生労働省が医師数は足りているとされる根拠はどこにあるのか?は、はっきりしませんが....(勉強不足です)
世界的にみて、人口千人あたりの医師数は先進国の中でもほぼ最低のレベルであることが示されました。また、別のサイトでは、医療費のGDP(国民総生産)に占める割合の比較が出ています。日本はGDPの7.4%、アメリカは12.9%、イギリス6.8%、ドイツ10.3%とアメリカの約半分です。イギリスは「鉄の女」といわれたサッチャー首相の時代に医療改革を押し進め、ここまで医療費を削減した様ですが、医療者の退廃化が進行し提供する医療のレベルを大きく下げてしまい、医療費を増やす動きがあるようですが、一旦崩壊してしまった医療システムはなかなか元の状態へ戻れない様です。

政府は『医師数は足りている』と結論していますが、医療者の勤務状態やWHOの統計などからみて、恐らく日本の医師数は足りていません。また、医療費も決して多い訳ではなく、安い医療費でこれだけの高度な医療を提供している事になります。医師数は足りていない、周産期や小児科の分野は訴訟リスクが高いため新たな担い手が入ってこない。人員が確保できないため、その分野の労働環境は劣悪となり、人員のバランスは更に悪循環を形成する。

政府と医療者の間には大きな認識の差があります。でも、いろいろな傍証から「医師数は足りていない」とするのが正しいような気がします。

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コメント

とりとめのないことをうだうだと記しています。お許しを。

医師は足りているか、と問われれば患者側からすれば、色々でしょうね。何と比べて足りているのか。極めて相対的な判断になるはずです。結局必要と十分を考え合わせねば、無駄な議論でしょうね。


1 人は健康な時はそういうことを考えていませんから。重大な病気になって、初めて「自分に必要な」医師がいないことを知るのです。そこでは自分中心主義です。他人と比べる気はさらさらない。

2 医師の質と量のバランス確保の問題。医師の質と量のバランスが崩れていると感じれば、患者は医師は足りていないと感じるでしょう。いくらいい医師がいても、患者に対して、その人数が足りなければ、不足を感じるでしょう。

3 医師の質の平均レベルの問題。その地域で量的に医師が足りてても、いわゆる藪医者が半数以上を占めれば、足りないと思うでしょう。医師免許は永遠かという問題もあるはずです。

4 地域の年齢特性、専門外の他地域との連携がうまく行っているかどうか。地域における人口構成と専門医師のアンバランスがあり、その問題を解決する仕組みがなければ、患者は医師が足りないと思うでしょう。


結果的に、地域にこれらのアンバランスがあり、優秀な医師の所に患者が集中している時、十分な診療が受けられないと患者は感じ、医師は足りないと感じるでしょう。

またこれらは結局、都市部に人口が集中し、地方との人口構成がアンバランスになっていることも医療活動に大きな弊害をもたらしているようです。そこが自由と平等の争点なのでしょう。

でも、日本の医療や医療の仕組みは世界でも高いレベルの方だと思います。befubefuさんの日夜のご努力により多くの人々が救われています。感謝。もっと多く人が医療に関心を持たなければいけないのでしょう。

投稿: 流風 | 2006年4月16日 (日) 08時05分

こんにちは
流風 さま

患者さんからみた医師の充足感についてコメントいただきありがとうございます。

確かにそうですね、医師が充足しているかどうか?患者さんからの観点では需給のバランスにより決まるものですね...

そこで、現在の状況を考えてみると、医療のうち周産期医療や小児科医療、その他の地域医療などは、患者さんから要望があるにもかかわらず、その要望を満足させることができていないような感じがあります。

医師数という量的な検討だけではなくて、医師の質(それも、医療の技術だけではない...)も検討していく必要があるのかもそれませんが、少なくともそういった分野では、医師の不足(というより医療の不足感...)が存在するのではないか?と思います。

そういう部分を改善させていくためには、一般の方々の意見も十分にお聞きした上での医療のシステム自体の変革が必要なのかもしれません。

投稿: befu | 2006年4月16日 (日) 09時51分

TBありがとうございました。

公衆衛生に携わる方の意見によれば、厚生労働省の見積もりの前提として、医者は24時間365日休みなく働くと考えられていたそうです。

その前提のもと、医学部の定員数は減らされたり、進級が厳しくなっているわけです。

しかし、研修医の過労死など、医師の労働基準法無視の実態が問題になるにつれ、ほころびが見え始めたというところではないでしょうか?

投稿: よし坊 | 2006年4月17日 (月) 01時05分

よし坊さま
こんばんは

コメント及びトラックバックありがとうございました。

<公衆衛生に携わる方の意見によれば、厚生労働省の見積もりの前提として、医者は24時間365日休みなく働くと考えられていたそうです。

「労働基準法違反してもいいから働きなさい」という事でしょうか?机上の論理だけでなく、医療の現場をみていただきたいと思います....

投稿: befu | 2006年4月17日 (月) 21時42分

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こんばんわ。何かのどが痛いです。風邪引いたっぽい・・・よし坊です。 [続きを読む]

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