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2006年4月21日 (金)

新型インフルエンザとワクチン

2006年4月21日 晴れ

Lancetと並ぶ、権威のある医学雑誌の一つNEJM(New England Journal of Medicine) Vol. 354 No.13の1343ページからにSafety and Immunogenicity of an Inactivated Subvirion Influenza A (H5N1) Vaccine(訳:不活化インフルエンザA(H5N1)サブビリオンワクチンの安全性と免疫産生性)という題の原著が載っていました。

注1:サブビリオンはウィルスの一部という意味で、ここではインフルエンザウィルスの全体をワクチンとして用いるのではなく、インフルエンザウィルスの表面にある「抗原」という部分のみを使用していること。これにより、ワクチンの副反応(望まない悪い反応)を抑制する事ができる。

途中は全て省いて、結論を示しますと...
A two-dose regimen of 90μg of subvirion influenza A (H5N1) vaccine does not cause severe side effects and, in the majority of recipients, generates neutralizing antibody responses typically associated with protection against influenza. A conventional subvirion H5 influenza vaccine may be effective in preventing influenza A (H5N1) disease in humans.
(訳:サブビリオンインフルエンザA(H5N1)ワクチンの90μg2回接種法は、重度の副反応を起こさず、接種を受けたヒトの大多数にインフルエンザに対する防御に関係しているとされる中和抗体を産生する。サブビリオンインフルエンザA(H5N1)ワクチンはヒトでのインフルエンザA(H5N1)を予防する効果があるものと思われた。)

注2:中和抗体...ヒトの血液中にある、その病原体から体を守る働きのあるタンパク質。

インフルエンザA(H5N1)は非常に危険な新興感染症です。インフルエンザはインフルエンザウィルスにより冬期に爆発的に流行する病気で、これまで、スペイン風邪やアジア風邪などで世界中に多数の死亡者を出してきました。この、インフルエンザウィルスは50年から100年に一度、ウィルス自体の大きな変化が起きて、それが流行し始めると、Pandemicと呼ばれる災禍が起こります。これが、スペイン風邪やアジア風邪と呼ばれる大流行です。

ここ、数十年インフルエンザはAソ連型(H1N1)とA香港型(H3N2)とB型が流行しており大きな変化はみられませんでした。しかし、最近になり、高病原性トリインフルエンザとして大きな変化をとげたウィルスが検出されてきており、トリからヒトに感染した患者さんが致命率の高い(死亡率が50%を超える)インフルエンザを発症して亡くなるといった事例が散見され始めました。そして、高病原性トリインフルエンザの原因ウィルスの一つが、このインフルエンザA(H5N1)なのです。幸いなことに現在は、トリからヒトへ感染したことだけが確認されており、Pandemicにつながる、ヒトからヒトへの感染例は確認されていません。しかし、WHO(世界保健機関)は「ヒトからヒトへの感染が起こるのは時間の問題だ」としており、早急な対策が求められています。

紹介した文献は、そのワクチンが作られて、その安全性と免疫を作る作用が確認されたというものです。この文献では、ワクチンを射って、中和抗体が血液中に作られるということを確認したもので、実際に新型インフルエンザを体に入れて病気が起きないか?、症状は緩和されるか?などを検討したものではありませんので、「100%効く」といえる訳ではありませんが、効果を期待できるといったものです。(実際にウィルスをいれて試験をするというのは、恐らく倫理的に許されないと思われます。)

この秋ごろには、接種が開始できるかもしれません。厚生労働省には「素早い対応」を期待します。

追記します。関連情報⇒Canada Web

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